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第 4 章 シリカガラスの加熱接合に伴う OH 濃度変化

4.4 考察

られる。この場合は熱処理時間が短い方が OH の増大が大きい。これは,一旦 拡散して中に入った OH が熱処理時間の進展とともに出て行ってしまうことを 示している。

以上のように、接合界面付近の OH 濃度分布の変化には空気中に存在した水 蒸気や試料に吸着した水分などが関係してきていることが考えられる。しかし ながら、何れの場合も90分熱処理した場合は分布が一定になった。これは、シ リカガラス板同士の接合が完了し OH が界面間で十分拡散して均一になったた めと考えられる。

仮想温度について、III型同士では接合面でOH濃度は低下している。II型、I 型については、OH濃度は増大している。それに伴って、仮想温度は、III型で は上昇、 II型、I型では下降している。これはOH基でボンドが切れ、構造が 緩和しやすくなっているためだと考えられる。

II,Iは緩和時間が長いため,全体が急冷になっている。特に,II型でわずか 上がるのは,表面が急冷したためにより高い仮想温度で凍結されたためである と考えられる。III型の場合緩やかに変化するのは,表面付近は緩和時間が短く,

十分徐冷となったため,より低い仮想温度まで緩和するが,内部は比較的緩和 時間が長くなるためより高い仮想温度で凍結されてしまったためではないかと 考えられる。

4.4.2 異種のシリカガラスの接合の場合

図4.13~4.16にII型とIII型を接合した場合を,図4.17~4.24にI型とII型を 接合した場合を示す。これらは,OH濃度の異なる者同士の接合である。II型と III型,I型と III型とOH濃度が極端に変わるものでは緩やかにOH濃度が変化 している。熱処理時間依存性はあまりないが,I型とIII型の接合では60分熱処 理したものが,I型とII型を接合したものでは20分の場合が他の場合よりも比 較的急に変化しているように見えるがサンプル間のバラツキや両者で変化が比 較的急激なものが違うことを考えると,熱処理時間による差は無いと見るべき

だろう。

仮想温度については、I型,II型,III型それぞれの接合面付近で緩やかに仮想 温度が変化している。

OH濃度が変わっている部分に接線を引き,その接線と,それぞれの領域で一 定になった部分の値を延長した直線との交点の間を結ぶ距離を求めた。この値 を OH 濃度変化幅と呼ぶことにする。同様に仮想温度についても変化幅を求め る。それらの値を表4.1に示す。

OH 濃度の変化幅と仮想温度の変化幅は同じサンプルでは互いにほぼ等しく なった。変化幅は,III 型とI型または II 型と接合した場合は,やく 0,.2 mm であったが,I型とII型の場合は,0.25 mmと大きくなった。このことから,I 型とII型の場合はその他の組み合わせに比べてよりOH濃度の拡散が進んでい ることがわかる。

それぞれの部分の仮想温度は,接合しない場合とほぼおなじであった。すな わち, OH濃度が多いと仮想温度は低く、OH濃度が低いと仮想温度高くなる。

表4.1 接合界面付近のOH濃度および仮想温度の変化幅

I型+II型 I型+III型 II型+III型

OH濃度 0.25 mm 0.18 mm 0.20 mm

仮想温度 0.24 mm 0.18 mm 0.18 mm

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