第1節 調査1 「勇気づけメッセージ」に対する自由記述より
調査1では,予想通り,うれしい,やる気が出るなどの反応,それに加え て,いい感じ、自信が出るなどのポジティブな反応が多く出た。反対に,自 分内に不満が残ったり,相手への不満,違和感を感じるなどのネガティブな 反応も見られた。感じ方や内容により同類の10グループに分けた。実際に は,「勇気づけ」ζ言われるメッセージに対して人々は多様な感じ方をして いるということが明らかになった。
第2節 調査∬ 「勇気づけメッセージ」の感じ方についての場面・質問紙
より
調査1および文献をもとに,28項目からなる勇気づけられたときの感じ 方について,質問紙による調査を行った。調査Hを因子分析をしてみると,
「ポジティブ因子」「ネガティブ因子」の2因子を抽出した。2因子は,A,
B,Cの場面でほぼ共通であった。
これらのことから,同じ「勇気づけメッセージ」を受けても,受ける人に よって,このように二つの感じ方を生じさせることが判明した。そして,う れしい,やる気が出る,などのポジティブな感情はポジティブな感情の間で 関連して動いていると考えられる。同じように,不満が残ったり,違和感を 感じたりのネガティブな感情もその間で関連して動いていると考えられる。
第3節 調査皿・「勇気づけメッセージ」の感じ方と精神健康度の関係につ いて
調査1,Hの結果から,「勇気づけメッセージ」にはポジティブな受け取 り群とネガティブな受け取り群があることが分かった。調査皿では,「勇気 づけメッセージと」と精神健康度の関係を知りたいと考えた。「勇気づけメ
ッセージ」の質問紙を見直して,共同体感覚の尺度とGHQを使い,「勇気 づけメッセージ」と精神健康度の関係を調査した。以下,各々について考察
一32一
を加える。
(1)「勇気づけメッセージ」の種類による感じ方について
調査皿では,調査Hの結果が「ポジティブ因子」「ネガティブ因子」の2 因子であることから,因子負荷量をもとにそれぞれ6項目,計12項目にし て,設定揚面A,B, Cと「ポジティブ因子」「ネガティブ因子」の2因子 の相関を見た。その結果を考察してみる。まず,Aポジティブ「感謝,貢献,
共感,私メッセージ」と,Bポジティブ「失敗をも受け入れる,個人の成長,
過程,肯定的」には正の相関があった。また,AネガティブとBネガティブ にも同じように正の相関があった。それぞれの揚面内のAポジティブとAネ ガティブ,BポジティブとBネガティブの間には,負の相関が見られた。こ れら,「感謝,貢献,共感,私メッセージ,失敗をも受け入れる,個人の成 長,過程,肯定的」といったメッセージは,同じような感じ方を与えると言 ってよい。そして,その感じ方は,ポジティブな感じ方が増えてくればネガ ティブな感じ方が減っていき,途中に中立的なところを通って,逆になって いくと考えられる。
また,AポジティブとCポジティブ, BポジティブとCポジティブの間は 弱い正の相関があった。AネガティブとCネガティブ, BネガティブとCネ ガティブの間には相関は認められなかった。また,同じ場面内の,Cポジテ ィブとCネガティブの間にも相関は認められなかった。つまり,場面Cの「相 手の判断,意見言葉」メッセージは,場面Aと場面Bのメッセージから,かなり 独立した反応を引き起こしていると考えることができる。ポジティブな感じ方と ネガティブな感じ方が入り交じる,複雑な反応であった(図11)。しかも,図12 のように,場面Cは,ポジティブな受け取り方とネガティブな受け取り方が同じ
くらい存在しており,A, Bのようにポジティブな反応が多いわけではなかった。
「判断,意見言葉」は,他の勇気づけメッセージとは違う性質があると考えられ
る。
以上のことから,「感謝,貢献,共感,私メッセージ,失敗をも受け入れる,
個人の成長,過程,肯定的」のメッセージは,「勇気づけ」になる場合が多 いが,「相手の判断,意見言葉」のメッセージは,必ずしも「勇気づけ」になる とは限らないということになる。理由として,肯定的メッセージに比べて伝え方
が難しいこと,相手の判断を求めるため送り手の気持ちが伝わりにくいこと,送 り手の意見が相手の望んでいることとは違う場合があること,などが考えられる。
24「 1
22 1
Q0 P8
P6 P4 P2 P0
W6
1; A
脅
a C
■ポジティブ 12.97 15.00 11.54
■ネガティブ 9.72 8.75 11.54
●ポジティブ 0ネガティブ
「勇気づけ」メッセージ
図12 「勇気づけ」メッセージ平均点
(2)共同体感覚について
共同体感覚の項目を作るにあたっては,自己受容,信頼感,所属感,責任 感,貢献感,勇気,誠実,のキーワードをもとにした。因子分析の結果,4 因子を抽出した。それは,自分と他人を区別しない「平等,協調因子」,自 己のよい面に着目して,有能感を表している「自己肯定因子」,自分をコン トロールしながら自分で決断して行動できる「自立,自己統制因子」,あり のままの自分を受け入れられる「自己受容因子」である。因子分析の結果よ
り,共同体感覚は一方で自分を肯定的に受け入れ,他方で自分と同じように 他者も受け入れる感覚であった。
一34一
(3)GHQについて
GHQの判別区分点について,北村(1995)が7/8を,大坊(2001)が,6/7を 示している。また,大坊(2QO1)が有効性検討のため大学生でGHQ28を調査したと
ころ,平均値が《男6.765(±5.315),女6.254±(4.500),t<1.0》であり, GHQ 3Qについても平均値の比較は,ほぼ同様であると報告している。
本調査では,平均値が《7,724±5,1219》である。GHQ30は,最高点がGH:Q28 に比べ2点高いことを考えて本調査と比べれば,本調査の平均点と標準偏差は,おおむね 標準的と言える。平均的な集団と見なすことができたので,調査対象者としては適切であ
った。
(4)共同体感覚と精神健康度について
共同体感覚を,その得点によりH(高)・M(中)・L(低)の3群に分 け,GHQの得点と分散分析を行った。その結果は,有意傾向を認めた。 Tukey 法を用いた多重比較を行うと,H群とL群の間に有意傾向が認められた。 G HQ得点の平均値が共同体感覚H群よりもL群の方が,4,73点高いことから,
共同体感覚の高い方が精神健康度も高い傾向にあると言える。M群には差を 認められなかった。
(5)「勇気づけメッセージ」の受け取り方と共同体感覚の関係性
共同体感覚を,その得点によりH(高)・M(中)・L(低)の3群に分 け,「勇気づけメッセージ」をポジティブに受け取る人とネガティブに受け 取る人の得点と分散分析を行った。その結果は,場面Cに対するポジティブ 反応に有意傾向が見られた。Tukey法を用いた多重比較を行うと,}1群とL 群の間に有意傾向が認められた。場面Cポジティブ反応得点の平均値が,共 同体感:覚H群がし群よりも2.27点高いことから,場面Cに対してポジティ ブに反応する人は共同体感覚が高い傾向にあると言える。M群には差を認め
られなかった。
(6)「勇気づけメッセージ」の受け取り方とGHQの関係性
GHQについて,その得点によりH(高)・M(中)・L(低)の3群に
グループ分けを行い,「勇気づけメッセージ」の得点と分散分析を行った。
分散分析の結果,GHQの3群と「勇気づけメッセージ」得点の差に有意 差は認められなかった。
本研究では,「勇気づけメッセージ」の受け取り方とGHQの関係性は,
認められなかった。
一36一