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第4節  考察

 CPKを説明し得るものとしてはPOMSの6つの 因子のうち緊張,怒り,活動性および情緒混 乱の4っの因子が抽出された.

 CPKは筋肉の運動に重要な役割を示すもの で,第ll章および取皿章で示したように他の 血清逸脱酵素,電解質および総蛋白に比較し て運動選手にとって筋疲労の指標として十分 耐え得ることを示唆する結果を示していた.

 ラグビー選手の場合,試合中に移動するこ とが多く,移動する際にT。p走など無酸素的エ ネルギー供給でなく,3/4あるいはハーフスピ ード走など有酸素的エネルギー供給で移動す ることが有利である.そこで,ゲーム申にい かに3/4走を多くするかが運動量だけでなく,

コンタクトプレ・一一などの筋出力の発揮を大き

くするものであると考えられる.

 図26は1例ではあるがSHの試合申のTop走,

3/4走,歩行の出現の割合と試合日のPOHSから 求めたCPKの推定値との関係について,試合期 の全試合(8試合)の結果を示したものである.

Top走とCPKとの間の相関係数は低いものの(

図上),3/4走とCPKとの間には逆相関(図中),

歩行とCPKとの間に正の相関が有意に認めら

れた(図下).

 このことから,試合日のCPKの推定によって 試合申の移動中の良し悪しが伺われるもので あった.また,逆にPOXSから推定したCPKが有 効なものとして利用し得ることを示唆するも

 20 誓15

至 含

E10

g

−5

o

r=O.425 no significance

e

  ● ●

e o

e

e

 60

q so 9

藷 40

30

160 180 200

e

220 240 260 280 300

CPK−cal.(IU/1)

e

Y=91.48−O,198X

r=一一〇.753(p〈O.05)

e

e

e

60

tr 50 歪

g

 40

30

160 180 200

Y=7,77+O.t 69X r=O.754(Pく0.05)

e e

220 240 260 280 300

CPK−cal.(tU/1>

e

o e

 160 180 200 220 240 260 280 300

        CPK−cal.(IU/1)

図26試合中のTop走,3/4走,歩行の出現の    割合とCPKの推定値との関係

一39一

のであった.

 結果で示したように試合期の試合の1日後の30分間のランニング(RPE=11)を実施させた 場合には次の日だけでなく,次の試合日にはCPKが低値を示す傾向を示していた.

 Zawadzki et al.41)は,筋出力発揮の場合にはその直後からの栄養摂取と有酸素的運動,

積極的休養が有効であることを実験的に示している.よって,試合の終了と同時に次の試 合の開始時までにいかに生体を回復させ,さらに向上させるかを考慮していく必要がある.

 つまり,第ll章でみられたようなF腿手の試合後の筋疲労の蓄積を防ぐためには,試合 後の有酸素運動が効果的であると考えられた.また,同じく第ll章の練習期間申において 筋出力発揮量の比較的少なかったBKにおいては,有酸素運動によって筋疲労は回復してい たことから,試合期のコンディションプログラムに有酸素運動を多く取り入れることが良 好なコンディションを保つことになると考えられる.

 本研究においてPOMSを採用したのは,試合期は身体的だけでなく,精神的にも重要な時 期であり,フ(一ルド実験のため強制的に条件を一定にしたり,毎日の採血等は選手に大 変負担をかけることになる.このことをふまえてチームのコンディション,特に精神的コ ンディションを早期に知ることだけでなく,POMSとCPKとの密接な関係から十・分にPOMSから CPKを推定でき,身体的コンディションについて知ることができた.さらに,積極的休養と 完全休養との間にCPKの差が認められたことは,試舎による筋疲労を早期に回復させるため には完全休養でなく積極的休養,特に有酸素的運動によって効果のあることが明らかであ

った.

 これらから,コンディションプログラムを作成するためには,早期に各選手の精神的コ ンディションだけでなく身体的コンディションを把握し,特に,試合後の休養は完全休養 よりも積極的休養を取り入れるべきであることが明らかにされた.

 今後これらの結果をもとにし,さらにコンディショニングつくりの上で重要な要素を占 める栄養面からの検討を含めた試合期におけるラグビー選手のための識ンディションプロ グラムを作成し,実際に試合をさせながら試合との関連性について検討したい.

第5節 小括

 精神的コンディションの指標として用いられるPOMSをラグビー選手を対象にして,身体 的コンディションの指標となる血清逸脱酵素および電解質等との関係について検討し,さ

らに,試合期のコンディショニングについて検討した結果,次のことが得られた.

1)POMSの6っの因子ならびにPOHS総得点と血清逸脱酵素との間には有意な相関関係が認 められた.なかでも,活動性についてはLDH,CPKおよびCPK−MMとの間に1%水準で負の相 関関係が認められた.

2)血清逸脱酵素(CPK)を目的変数,POMSの6つの因子の得点を説明変数として変数増減法

による重回帰分析(F=2.0)を行い以下の式を得た.

 leg CPK=3・08−O.O159Vig.+O.O144Ang.一〇.0231Con.+O・O113Ten., (r=O.621,R2=38.4%)

3)POMSは精神的コンディションだけでなく,約40%の確率で血清逸脱酵素(CPK)を推定で きることが認められた.

4)試合後の積極的な休養(30労間のランニング)の方が,消極的な休養(完全休養)よりも POMSから推定したCPKは早期に回復していることが認められた.

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第V章 総括

 ラグビー競技は,球技的要素や競走的要素だけでなくコンタクトプレーにみられるよう な格技的要素を含む運動量の多い激しいスポーツである.したがって,競技力向上のため の専門体力は必要不可欠なものである.

 これまで,ラグビー選手にとって動的で大きな筋出力の持続,いわゆる筋持久力が重要 であり,また,エネルギー供給の面からは無酸素性,特に解糖系のエネルギー供給が重要 であることが明らかになっている.

 ところで,試合期における公式リーグ戦は1週間に1試合,期間申に7〜8試合で,2

〜3ヶ月間行われ,この時期のコンディショニングは勝敗を大きく左右するものと考えら れるが,この重要な試合期のコンディションについて実際に選手を検討したものは見当ら

ない.

 そこで,筋疲労や身体コンディションの指標として用いられる血清逸脱酵素を用いて,

試合期におけるコンディショニングの現状を調べ,コンディショニングを高める方法につ いて検討し,試合期におけるラグビー選手のコンディショニングプログラム作成のための 基礎的資料を得ようとした.

 まず,身体的コンディションの指標としてよく用いられる血清逸脱酵素および電解質等 を用いて,試合期のコンディションの現状について検討した.

 対象者は関西学生Dリーグに所属する某チームの7名(FW:3名,BK:4名)である.

 期間は試合期の或る試合の前後およびその試合から次の試合までの1週間の練習期間中 で,試合の前後および練習期聞申の毎日の午前中の空腹:時に採血を行い,血清逸脱酵素の CPK,LDH,GOTおよびGPT,電解質のKとNa,ならびにTPを測定し,試合前後の変化および1 週間の変化から,筋疲労の面から身体的コンディショニングについて検討した.

 次に,試合期における練習内容についての基礎的資料を得るために,1日の筋出力の発 揮量と休養の取り方の違いが身体的コンディションに及ぼす影響について以下の方法で検

討を行った.

 健康な男子大学生3名を対象に,Cybex Hによる等速性筋持久力テストを180./sの:角速度 で連続50試行を1セットとして,毎日1セットを行わせた場合(負荷A),2日目毎に2セ

れそれ実施し,実験期間の毎日の午前中の空腹時に行われた採血から測定されたCPKの変化 および筋出力の変化から,試合期において筋出力発揮に関する適切な練習内容について検

討した.

 さらに,精神的コンディションの指標として用いられているPOMSテストから,血清逸脱 酵素などの身体的コンディションに関わるものが推定できるのかについて検討を行い,試 合期のコンディションについて検討を行った.

 まず,関西学生Aリーグに所属する某チームの42名を対象に,春季に行われた或る練習 試合の1時間前に採血およびPOMSテストを実施し,血清逸脱酵素とPOMSとの関係について 重回帰分析を用いて,POMSから身体的コンディションについて検討を行った.

 また,関西学生DV一一グに所属する某チームの18名を対象に試合期の公式リーグ戦の期 聞中に毎日POMSテストを実施し,積極的休養として行わせた試合1日後の30分間の有酸素 的なランニング(RPE=11)の効果について,CPKの推定式やPO下総得点などから検討を行った.

 得られた結果の大要は次の通りである.

1)試合や練=習によって血清逸脱酵素は一過性に増大し,休養によってその多くは回復し ていたものの,FWではCPKの増大の傾向がみられた.

2)筋出力の発揮の仕方と休養の取り方によって筋疲労の程度が異なっていることが明ら かにされ,試合期においては筋出力の発揮や休養の取り方に十分な注意が必要であること を明らかにした.

3)血清逸脱酵素(CPK)を目的変数,POHSの6つの因子を説明変数として重回帰分析を行っ た結果,次の式が得られた.

log CPK=3.08−O・0159Vig.+O.O144Ang.一〇.0231Con・+O・O113Ten. (rl O.621,R2=38.6fil)

4)3)で得られた式と試合中の走パターンとの関係から,CPKの推定値の増大にともなっ て歩行の割合が増え,減少によって3/4走の割合が増加しており,CPKの推定が身体コンディ ションを表す指標となることを示唆していた.

5)試合1日後の有酸素運動によってCPKの推定値は早期に回復し,次の試合でもその値は 低くなる傾向にあったことから,ラグビー選手の試合期のコンディションプログラムにお いて積極的な有酸素運動が重要であることを指摘した.

43 一

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