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試合期におけるラグビー選手のコンディショニングに関する研究

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(1)学位論文. 試合期におけるラグビー選手のコンディショニングに関する研究. 兵庫教育大学大学院 教科・領域教育専攻 生活・健康系コース. M9375!H 青 木 敦 英.

(2) 目 次. 一・. P. 第1節 目的. 一・. S. 第2節方法. 一・. T. 一・. U. 第1章 緒言. 第日章血清逸脱酵素からみた試合期の身体的現状について. 第1項対象者および血液検査の時期 第2項 血液検査項目. 第3節 結果 第1項 試合前後の血液検査の成績. 第2項 練習期間中の1週間の血液検査の成績. 第4節 考察. … 15. 第5節三星. … 16. 第頭注筋出力の発揮の仕方と休養の取り方との関係について. 第1節 目的. … 17. 第2節方法 第頭対象隷ついて. … 18. 第2項 筋持久力の負荷について. 第3節 結果. …20. 第1項筋出力の変化について. 第2項鰍麟こ?いて 第4節考察. …22. 第5節 小括. … 23. 第IV章 試合期におけるコンディショニングについて. 第1節 目的. …24. 第2節 方法. … 25.

(3) 第1項 血清逸脱酵素および電解質等とPO”Sとの関係について. 第2項 試合期のコンディショニングについて. 第3節結果. … 29. 第1項 血清逸脱酵素および電解質等とPOKSとの関係について 第2項 試合期のコンディショニングについて. 第4節考察 第5簾小括. …39 … 41. 第V章総括. …42. 引用・参考文献. … 44. 図表一覧.

(4) 第1章 緒言. ラグビー競技はハンドリング,キッキングにみられる球技的要素,ランニング,ステッ プにみられる競走的要素の他にタックル,スクラムなどのコンタクトプレーにみられる格 技的要素も含みt),運動量の多い激しいスポーツである.したがって,ラグビー競技にお いて,競技力向上のための専門体力の向上は欠かせないものである.ラグビーの試合にお いて発揮されるプレー事象のほとんどは,体力の申でも特に動的でしかも大きな筋出力の 発揮によって行われており,そのプレー事象は試合中に頻繁に出現していることから,選 手にとってその筋出力を持続する能力,すなわち高い筋持久力を有していることが重要で ある11)34) 351.一方,エネルギー供給の面からみるとラグビーの試合時間は80分と長時間. で有酸素的であるものの,そのほとんどのインプレー時間は20秒以内と短時間であり,そ の競技特性からみて無酸素的であることから,石指らio㌧高松ら3t)および辻野ら33>35)は,. ラグビー選手にとって高い無気的パワーを有していることが重要であると報告している. また,辻野ら36)37>は試合中の乳酸産生について調べ,無酸素性エネルギー供給,特に解. 糖系のエネルギー供給の持続および乳酸耐性の向上が競技力向上の要因の1つであること を明らかにしている.. ところで,日本では試合期になるとほぼ毎週日曜日に試合が行われることが多く,その. 状態が2,3カ月間続くことから,この時期のコンディショニングは選手やチームにとっ て重要であり,勝敗を左右する大きな要因ともなりうる.そこでコンディショニングの内 容を知る手だてとして,国内外の試合期の練習内容について文献的に検討を試みた. 表1は,ラグビー指導書22>に掲載された,日本の某大学ラグビーチームの試合期におけ る1週間の練習内容で,日本の典型的なものである.その内容は試合の次の日は休養し, その後,チーム練習を中心として,徐々に練習強度をあげ,試合前日には軽い練習で調整 を行うといった形がとられている.また,他のラグビー指導書1)での一流大学ラグビーチ ームでも同じ様な形で試合期の練習が行われていた.. 1.

(5) 表1 日本の某大学ラグビーチームの練習内容 月曜……休み. 『. 「. .. ●. 火曜……体力測定と個人の自由練習. 水曜……ユニット・スキル 木曜……チーム・スキル(ゲーム形式の練習). 金曜……コンビネーション(少ない人数のディフェンス,フォワ’ド5,バックス5 の10人くらいをつけて行う). 個人練習(SHとフッカー, HB団のキックとFBのブイールディング,カ ウンター・アタックなど) 土曜……調整,相手なしの軽いコンビ.ネーションとユニット・スキルの調整 日曜……試合. 一方,ラグビー先進国についてみると,ニュージーランドの某ラグビークラブチームで は表2のような形で練:習が行われている.この形態は多くの外国チームで行われている典 型的なものである(試合は土曜日に行われている).. 表2 ニュージーランドの某ラグビークラブチームの練習内容 IN SEASON. SUNDAY. MONDAY TUESDAY WEDNESDAY THURSDAY FRIDAY. Long slow Weights swim/runl or. bike aerobics. Practice. Weights or Practice. Rest. speed work. SATURDAY Morning preparation. or aerobic. work (私信;オークランドクラブチームの練習マニュアルより抜粋). 日本の大学チームの練習内容と比較して大きな違いは,日本では試合の次の日は休養を 取っているのに対してニュージーランドなど諸外国では,長距離走,水泳,自転車などの 有酸素運動を取り入れて,いわゆる積極的回復を行っている.また,練習の頻度もチM一一bム. で行う練習がニュージーランドでは週に2日ほどであり,他の日はウェイトトレーニング などが中心で,選手が個人的に練習を行っている.また,ニュージーランドでは試合前日 に休養を取っており,練習による疲労を試合に残さないようにしているものと思われる. また,Ratherford26)や,イングランドのリーグラグビーの指導書17)においても,ニコ.一. ジーランドと同じ様な形で練習を行うことを薦めていることから,ラグビー先進国と日本 では試合期におけるコンディショニングの考え方が異なっているようである.. 一2一.

(6) このようなコンディショニングの考え方の差は,試合に対する意識やスポーツ文化や習 慣の差だけではなく,科学的な根拠に対する監督やコーチの受け入れ方の差があるのかも 知れない.. ところで,1992年の大幅なルーール改正に伴って,試合申のインプレー時間が増えたこと から21),試合申の選手の疲労の程度は一層大きくなったものと考えられる.. これらから選手にとって前の試合や練習による筋疲労を次の試合までに速やかに回復さ せ,次の試合においていかに体力,特に筋持久力を高めておくか,すなわち身体的コンデ ィションの良否が競技力を向上させることにもなる.. そこで本研究では,筋疲労や生体調整の指標としてよく用いられる血清逸脱酵素等の変 化から,試合期における身体的コンディションの現状について調べ,次の試合でのコンデ ィションを高める方法を検討し,試合期におけるラグビー選手のコンディショニングプロ グラムを作成するための基礎的資料を得ることを目的とした.. 一3一.

(7) 第9章 血清逸脱酵素からみた試合期の身体的現状について. 第1節 目的. 血清逸脱酵素は臨床医学の診断面に用いられるだけでなく,近年運動負荷によってその 活性が上昇することから運動選手における身体的コンディションの指標として用いられて いる6).. 長谷4)らは,強化合宿中の柔道オリンピック候補選手に血液検査を行い,CPKで全選手の. 95%,LDHおよびGOTでそれぞれ86%,52%の選手が正常域を越えた高値を示し過度の練習 に注意すべきであると報告している.また,鈴木30)らは夏期強化練習時の高校生野球選手 に血液検査を行い,CPKやLDHが顕著に増大したと報告している.また,小林14)は国内の一. 流長距離選手の高所トレ無記ング期間申に血液検査を行い,高い強度のトレーニングを実 施した後にCPKやGOTなどの酵素活性が上昇していることから,コンディショニングを考え た場合に練習強度のリズムを考慮することが重要であると述べている. このように運動によって血清逸脱酵素の活性が上昇しているものの,特に,CPK(または CK)は,ATP分解や再合成を触媒し骨格筋に最も多く存在する29>ことから筋作業や筋疲労の. 指標とされることが多く,利用価値が高い.. しかしこれらは,練習時や強化合宿時について検討したもので,年間の練習計画を考え た場合,これらの期間はいわゆる準備(または鍛錬)期2ωに相当し運動強度が比較的高く,. 筋疲労が増大していたものと考えられ,選手の身体的コンディションが最も重要である試 合期の状態について検討されたものではないe ところで,辻野ら36)37>はこれまでにラグビー競技の試合時において,高い解糖系のエ. ネルギー供給をいかに持続するかが勝敗に関わる要因であることを明らかにした.すなわ ち,試合期のコンディショニングを考えた場合に,試合前に筋グリニーゲンを貯蔵してお くかが重要であり,同時に試合による筋疲労を次の試合までに速やかに回復させることが 競技力を維持することにつながるものと考えられる.. そこで,筋疲労に関連する血清逸脱酵素等から検討を試み,試合や試合後のトレーニン グが筋疲労やその回復にどの程度影響を及ぼしているのかを確認し,試合期におけるラグ ビー選手の身体的コンディションの現状について検討した.. 一4一.

(8) 第2節 方法 第1項 対象者および血液検査の時期 対象者は関西学生Dリーグに所属するチームの7名(FW:3名,BK;4名)で,試合期の 或る試合前後およびその試合から次の試合までの1週間の練習期間申の血液検査を行った.. 第2項血液検査項目 検査項目(ltems),測定法(Meth。d)および正常値(Normal Range)は表3に示した.採血は. 試合前の空腹時および試合直後,ならびに毎日の午前中の空腹時に肘静脈から医師によっ て行った,. 表3 血液検査項目について. Items. Method. CPK(IU/l) UV法 LDH(IU/l) UV法. GOT(IUll) UV法 GPT(IU/1). UV法. TP(g/d1) BIURET法 K(mEq/1)イオン電極法 Na(mEqA)イオン電極法. Normal Range. 50 180 5 5. .v 200 一一 460 一.“ 40. 一一 35. 6.7. 一一 8.3. 3.5. 一一 5.0. 135. .一v 150. CPK;クレアチンフォスフォキナーゼ (Creatine Phosphokinase). H)H;乳酸脱水素酵素 (Lactate Dehydrogenase). GOT;グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ (Glutamate Oxalacetate Transaminase). GPT;グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ (Glutamate Pyruvate Transaminase). TP. ;総蛋白 (Total Protein). K. ;カリウム (Potassium). Na. ;ナトリウム (Sodium). 一5一.

(9) 第3節 結果. 第1項 試合前後の血液検査の成績. 表4 試合前後の血液検査の成績 B.一GAME(一1) A.一GAME(O) A.一IDAY(1) A.一2DAYS(2) 195.0 ± 66.4 CPK(IUA) 133.6 ±55.9 246.0 ±75.8 286.0 ±131.9 791.4 ± 238.1 366.4 ± 58.9 472.7 ± 139.3 LDH(IUA) 320.1 ±37.9 20.0 ± 3.1 GOT(IUA) 16.9 ±2.7 30.3 ±9.4 21.1 ±2.5 9.3 ± 2.4 11.0 ±2.0 10.7 ±2.8 GPT(IUA) 9.0 ± 2.8 0.461 ± O.078 0.375 ±O.065 O.506 ±O.113 GPT/GOT O.539 ± O.170 TP(g/dl) 7.60 ± O.46. 8.19 ± O.33 7.37 ± O.18. 7.43 ± O.36. K(mEqA) 4.02 ± O.26. 4.29 ± O.54 4.09 ± O.32. 4.34 ± O.32. Na(mEqA) 140.6 ± 1.9’. 141.1 ± O.9 141.0 ± 2.3. 141.1 ± 1.3. B.:Before,A.:After. 表4は試合前後の血液検査の成績である.各検査項目の試合前野はいずれも正常範囲に あった.図1∼8は血液検査の各項目の成績について全体の平均値と標準偏差から,それ ぞれの測定値の標準得点を求め,その標準得点をもとにしてTOTAL,FWおよびBKの各項目の 試合下値を100として,試合直後(A.一・ GAME),1日後(A.一1DAY)および2日後(A.一2DAYS)の変. 化率を示したものである.野中の黒丸は7名全員(TOT糺)の平均値,白三角は3名の四の平 均値,白四角は4名のBKの平均値を示している.なお,横軸の一1は試合前,0は試合直後,. 1は試合後1日目,2は試合後2日目を表している. 図1はTOTAL,四およびBKのCPKの変化率を示したものである.TOTALでは試合前値に対し て試合直後で140%に増大し,さらに試合後1日目になると154%と:最大値を示し,試合2 日後になって122%と試合前納に戻る傾向を示した.四では試合呼値に対して試合直後では. 127%に増大し,さらに試合後1日目に175%と最大値を示し,試合2日後になって減少が みられたものの,試合前値の140%といまだに高い傾向にあった.BKでは試合二値に対して 試合直後に151%と最大に増大し,Fblよりも高くなっていたが,試合1日後に139%と減少 がみられ,FWに対してBKの方が回復が早く,試合後2日目では108%とほとんど試合前値に まで戻っていた.. 図2はTOTAL,四およびBKのLDHの変化率を示したものである.TOTALでは試合前値に対し. 一6一.

(10) て試合直後で249%と最大に増大し,試合後1日目に124%とほとんど試合前値に回復し, 試合後2日目に181%と再度増加する傾向を示した.Fblでは試合前値に対して試合直後では. 286%と最大に増大し,試合後1日目に137%とほとんど試合前値に回復し,試合後2日目 に194%と再度増加する傾向を示した.BKでは試合前値に対して試合直後で298%とFWの増 加よりも大きい傾向を示し,試合後1日目に114%とFllよりもBKの方が速やかに試合前値に 回復していた.しかし,試合後2日目には170%とFWと同じように再度増加する傾向を示し た.. 図3はTOTAL,四およびBKのGOTの変化率を示したものである.TOTALでは試合前値に対し て試合直後で199%と:最大に増大し,試合後1日目に131%,試合後2日目で123%と順次減 少していた.FWでは試合前値に対して試合直後で170%と最大に増大し,試合後1日目に140. %,試合後2日目で135%と順次減少していた.BKでは試合前値に対して試合直後で221% とF珊に対してBKの方が大きく増大し,試合後1日目に122%,試合後2日目で115%でFWよ りtb BKの方が減少の程度は大きい傾向にあった.. 図4はTOTAL,関およびBKのGPTの変化率を示したものである.TOTALでは試合前値に対し. て試合直後で114%とわずかに増大しており,試合後1日目に112%,試合後2日目で102% と試合前値まで減少していた.闘では試合前値に対して試合直後で112%とわずかに増大し,. 試合後1日目に112%と変化がなく,試合後2日目で102%と試合前値まで減少していた. BKでは試合前値に対して試合直後で115%と四に対してBKの方が大きく増大し,試合後1日 目に112%,試合後2日目で101%と試合前値まで回復していた. 図5はTOTAL,四およびBKのGPT/GOTの変化率を示したものである.TOTALでは試合前値に. 対して試合直後で81%と減少し,試合後1日目に96%と試合三値に回復する傾向にあった が,試合後2日目で91%と再度減少する傾向にあった.田では試合前値に対して試合直後. で82%,試合後1日目に89%,試合後2日目で96%と試合前回に対してそれぞれの試合後 の値は常にGPTよりもGOTの方が大きいことを示すものであった.BKでは試合前値に対して 試合直後で79%と四に対してBKの方が大きく減少していた.しかし,試合後1日目には102 %,試合後2日目で96%と四よりもBKの方が速やかに試合前値に戻る傾向がみられた.. 図6はTOTAL,四およびBKのTPの変化率を示したものである.TOTAL,蹄およびBKのいず れも試合前値に対して試合直後にわずかに増大する傾向にあった(TOTAL:126%,FW:124%,. BK:127%).しかし,試合後1日目には試合前値に戻る傾向にあった. 図7はTOTAL, F1tfおよびBKのKの変化率を示したものである.TOTALでは試合直後に121%. 7.

(11) とわずかに増大する傾向にあったが,試合後1日目には105%と元に回復する傾向にあった.. BKでは試合直後の増大は131%とT◎TALや蹄よりも大きいものであったが,試合後1日冒に は100%と試合前値に回復していた.. 図8はTOTAL,FWおよびBKのNaの変化率を示したものである.TOTALはほとんど変化がみ られなかった.BKでは試合直後に117%とわずかな増大がみられたが試合後1日目には回復 していた.. 以上のことから,試合によって大きな変化を示していたのは,CPK, LDH, GOTであった.. その中でもFWではCPKおよびGOTが試合後に試合前値に回復する時間が長く,心筋や骨格筋 に大きなダメージがあったことを示唆するものであった.. 600. 400 一一一. ?黶E一 TOTAL. 500. “ FW 一→=トー一BK. 300. 十FW 一一一. 嘯煤IS一一・ BK. 400 ハ 巴 = 300. ハ 巴. ¥200. 0」. ユ. 0. 200. 100. 100. 2. o. 一 TOTAL. 8. o. L2 t一1 O 1 2 3 (days) 図1 試合前後のCPKの変化率. 2 呂. 2 ”1 O 1 2 t (days) 図2 試合前後のLDHの変化率. 8一. 3.

(12) 400. 400 一一 怺t一 ’rOTAL. 一 TOTAL 300. t mト・BK FW. 300. 一一. A. バ δ. 0ト200 σ. 」 σ. 2. 2. g. 8. o. e2 ”1 O 1 2 3 t (days). e2 ”1 O 1 2 3 t (days). 図4 試合前後のGPTの変化率. 図3 試合前後のGOTの変化率. 400. 400. 一 TOTAL. “ TOTAL. 十 FW. 300. 一{ F一・ BK. ト 。. 十 FW 一 BK. (. §200. σ200. 年. □\ローe・StS・R.. 100. 2. o. ,,..・e[NN−a. 100. o. 0」100・. 一 BK. 1_200. 100. ^300. −IV一 Fw. [r一’C“N g・. g. 魔=C. o. 一2画10123. 一2 t(days) 一1 O・ 1 2 3. t (days). 図6 試合前後のTPの変化率. 図5 試合前後のGPT/GOTの変化率. 一9一.

(13) 400. 400 TOTAL FW BK. d一一一 ?鼈鼈. 一一一. 300. 堰I)r一. 十. . 一 ’一一一. 300 傘. バ 巴200. 奄撃嶋鼈鼈. TOTAL FW BK. 罵200. Z. 100. 100 o E. o. 窪. 呂. 一2 t一1 O 1 2 (days). o. 巴. L2. 3. ”1 0. 1 2. t (days). 図7 試合前後のKの変化率. 図8 試合前後のNaの変化率. 一10一. 3.

(14) 第2項 練習期間申の1週間の血液検査の成績 表5は試合後から1週間の練習の内容を示したものである.練習の多くはウェイトトレ ーニング,有酸素運動(AEROBICS)および技術練習であった.特に, FWでは次の試合のため. に1週間の後半ではコンタクトプレーであるスクラムや,ラック,モールの練習が申心で あった.. 表5 練習内容 SUN.(O). GAME. MON.(1) TUE.(2) WED.(3) ’IHU.(4). FRI(5). SAT.(6). 肥ST PRA(]rTI(E REST PRAenCE REST PRAcrl(E. AEROBICS AEROBICS. WEIGHTS T. WEIGHrS T. 表6 試合期における■週間の血液検査の成績 SUN.(O). MON.(1). WIM.(3). TUE.(2). THU.(4). IRI.(S. SAT.(6). CPK(IUA) 133.6±55.9. 286.0 ± 131.9 195.0 ± 66.4 276.6 ± 133.9 230.7 ± 199.4 354.3 ± 220.2. 228.6 ± 193.8. LDH([UA) 320.1±37.9. 366.4±58.9 472.7±139.3 585.1±12Ll 355.3±40.2 342.7±36.3. 310.3 ± 36.6. GOT(IUn) 16.9±2.7 GPT(IUA) 9.0 ±2.8. GPT/GOT O.539 ±O.170. 21.1±2.5 20.0±3.1 22.7±2.8 18.0±4.2 21.0±5.6 10.7±2.8. 9.3±2.4. 11.0±2.9. 10.0±4.0. 11.4士5.7. 0.505 ± O.113 O.461 ± O.078 O.491 ± O. 140 O.575 ± O.256 O.544 ± O.184. TP(gldl) 7.60 ± O.46. 7.37±0。18. K(mEqA) 4.02±O.26. 4.09 ±O.32 4.34 ±O.32 4.54 ±O.24 4.30 ±O.32 4.20 ±O.24. Na(mE(Yl) 140.6±1.9. 7.43土0.36. 7.54±0.31. 7.39±0.20. 7.33±0.29. 141.0 ±2.3 141.1 ± 1.3 143.4 ± 1.6 143.1 ±1.2 142.9 ±1.2. 17.3 ± 4.3. 8.4 ± 3.8. 0.501 ± O.209 7.24 ± O.27. 4.23 ±O.15 141.0 ± 1.2. 表6は1週間の血液検査の成績である,図9∼16は前項と同様に標準得点を求め各検査 項目の試合前の標準得点を100としてその後の変化率を示したものである.図申の黒丸は7 名全員(TOTAL)の平均値,白三角は3名のFWの平均値,白四:角は4名のBKの平均値である.. 横軸は日曜日(試合日)を0として,曜日を順次数字で表したものである[1:月曜日,2 :火曜日(練習日),3:水曜日,4:木曜日(練:習日),5=金曜日,6=土曜日(練習日)].. なお,日曜日はある試合前の午前中,月曜日以降は午前中の空腹時の成績である.. 図9はTOTAL, FWおよびBKのCPKの変化率を示したものである.1,3,5日目,すなわ ち試合,練習の次の日の値が増加(5日目,TOTAL:179%,Fbl:227%,BK:142%)し,そ. の増大はBKよりもFWの方が大きくなっている.また,BKでは休養日の次の午前にはいずれ も試合前や練習前の値に戻ってくる傾向があるのに対して,FWでは休養日の次の日の減少 は少なく,1週間の間に大きく増大(6日目,TOT糺:134%,田:173%,BK:104%)してお. 11.

(15) り,疲労が蓄積されていることを示唆するものであった. 図10はTOTAL, FllおよびBKのLDHの変化率を示したものである.FW,BKいずれも試合直後. 一時的に試合前値にまで戻っていたが,その後休養していたにも関わらず3日目まで順次 増大(3日目,T◎TAL:240%,照:242%,BK:238%)し,試合の影響がいまだ残存してい. たことを示すものと考えられる.その後減少し4日目以降になると,明らかに試合前値(6 日目,TOTAL:95%,FW:107%,BK:85%)まで回復していたことがみられる. 図11はTOTAL, FWおよびBKのGOTの変化率を示したものである.試合および練習によって わずかに増大(3日目,TOTAL:143%,FW:153%,BK:137%)していたものの,大きな変動. はみられなかった.しかし,四の方がBKよりも増大の程度は大きいようであった.. 図12はTOTAL,FWおよびBKのGPTの変化率を示したものである.GOTと同じように試合およ び練習によってわずかに増大(5日目,TOTAL:117%,Fki : 107%,BK=125%)し,FHもBK. もほとんど同じ傾向を示していた.. 図13はTOTAL,FWおよびBKのGPT/GOTの変化率を示したものである.FWは試合および練習 によってGPT/GOTの値は低下する傾向にあったが,全体的には変動はほとんどなかった. 図14はTOTAL,FWおよびBKのTPの変化率を示したものである.闘は試合直後から減少する 傾向にあったが,TOTALではほとんど変化はみられなかった. 図15はTO’1]AL ,即およびBKのKの変化率を示したものである.TOTALは試合後3日目まで増. 大する傾向にあったが(3日目,TOTAL:140%,F歓138%,BK:143%),その後回復する傾 向にあった.. 図16はTOTAL,四およびBKのNaの変化率を示したものである.BKは試合2日後から増大す る傾向を示したが(4日目,TOTAL:126%,F歓103%,BK:151%),四ではほとんど変化は みられなかった.. 以上のことから,試合や練=習によって大きく変化していたのはCPK,LDHおよびGOTで,多. くの場合には次の日の休養によってほとんどもとに戻っていた.このことは試合直後から の消長においても見られた一過性の現象と捉えることができそうである.ところが,FWの CPKの場合には休養によって減少がみられたものの,その減少の程度は少なく,練習によっ てCPKは増大する傾向を示していたことから,心筋や骨格筋の疲労の蓄積が大きくなってい たものと解釈できる.. 一12一.

(16) 400. 400. “ TOTAL −2Cbr一 Fw. 一■ 怐w匿丁0’rAL. −A一一 Fvv. 300. A. 300. 一 BK. 一[トー BK. バ §. =200. >c:200 匹. 0 」. o. 100. 100 2. 壽. 壽. 壽. 昌. 乙. a. a. o 一1 O 1 2 3 4 5 6 7. 窪. o. (. . 十 一. 壽. ヒ. a. a. t (days). 図9 試合・練習期間中のCPKの変化率. 300. 壽. ’1 01234567. t (days). 400. g. 壽. 図10試合・練:習期間申のLDHの変化率. 400. TOTAL FW. 一 TOTAL. BK. 300. 十 FW 一 BK. バ 巴. ト200 」. 卜200. 00. σ. 100. 100 窪. 壽. 語. g ヒ a o ’1 O 1 2 3 4 5 6 7. 震. 壽. a. o. g. 壽. 薯. 壽. a. 益. a. 一1 01234567 t (days). −t (days). 図11 試合・練習期間申のG◎Tの変化率. 図12試合・練習期間中のGPTの変化率. 一13一.

(17) 400 ..300. 400 駒賜・. 寤?TOTAL. “’一. cr一一一 FW. “y)s一一 TOTAL FW 一一一一一. 一 ’BK. 300. v. 一 BK. バ. eO 200. δ200 年. 珪. e loo. 100. []一R11“1=R−eKgi11i. o. ゆ §. 壽. 壽. 壽. a. La. a,. a. g g g・ g o. 一1 01234567. 一1t (days) 01234 5−67. t (days). 図13試合・練習期間中のGPT/GOTの変化率. 図14試合・練習期間中のTPの変化率. 400. 400 伽一【●一一 TOTAL. 一`一一一 TOTAL Fw. di FW 一 BK. 一一一一. 300. [kwt?i1SSp一一[)一一g. 300. 一{ト 8K. ヒ. 雰・. バJ∼200 〈. り N 200. Z. と. 100. 100 2. o. g. o.’. 壽. 壽. a. a. E. 2 巴. o. 葱. 壽. ぎ. a. a. 15.. 一1 01234567. 一1 01234567. 図15試合・練習期間申のKの変化率. 図16試合・練習期間申のNaの変化率. t (days). t (days). 一14一.

(18) 第4節 考察 血清逸脱酵素6>は,血液中で機能していない酵素をいい,血液申に或る一定の正常域で 存在するものである.一般に血清逸脱酵素が上昇する原因としては次のことが挙げられる. (1)組織における酵素の過剰形成,(2)細胞の損傷,必死による遊出,(3)細胞膜の透過. 性の高進による遊出,(4)酵素の撲出系の障害による貯留からのあふれである.これらの うち,運動によって上昇する原因として,(2)と(3)が挙げられ,特に(3)が主な原因と. されている14).この透過性の高進は運動時の組織の無酸素,低酸素や血流不足などによっ. て生じるからである.G◎Tは心臓,肝臓,骨格筋,腎臓に多い酵素で,GPTは肝臓に多い酵 素である.LDHは乳酸とピルビン酸の代謝に関与し,腎臓,心臓,骨格筋,脾臓,膵臓など に多い酵素である.CPKはATPの分解や再合成に関わる化学反応を触媒し,骨格筋に最も多 く,心筋にも多い酵素である29).. 図1∼3に示したように,試合後に大きく変化していたのはCPK, LDHおよびGOTであった ことから試合によって骨格筋や心筋に大きなダメージを受けていたことが推察された.ま た,対象となった選手は競技力も低く体力的にも優れているとはいえないものの,LDHはオ リンピック候補柔道選手4]’に比べでも高かったことから[柔道選手;375±881U/1(male),. 541±1351U/1(female),ラグビー選手;791.4±238.11U/1],ラグビー競技において解糖. 系エネルギー供給が重要であることが再確認された.また,1週間の練習は隔日に行われ ており,休養日が他のチームよりも多いにも関わらず,餌のCPKの顕著な上昇が認められた.. これは週末の練習内容にスクラムやモール,ラックといったコンタクトプレーの要素を多 く含んだ練習のために,骨格筋などに大きなダメージを受けたものと考えられる。実際, 次の試合でのBKは平素の動きがみられたものの,他方Fbiの動きが悪く疲労を感じさせるも のであった.. 一般に日本では,試合期の練習内容は試合後に完全休養をとり,その後徐々に練習強度 を上げていき,試合の2∼3日前から調整する形がとられている1)22>。本研:究の対象とな. ったチームの練習量が一般的に行われているものよりも少ないにも関わらず,このような CPKの増大がみられたことから,試合前日までにコンタクトプレーを練習内容に入れた場合 には一層大きなCPKの増大,筋の疲労が現れ,試合を重ねるごとにコンディションが悪くな るといった状態になる可能性は大きいものと考えられる. これらのことから,試合期の試合直前のコンディションづくりは前の試合による筋疲労 の回復だけでなく,その後の練習の内容にも十分な寵慮をしなければならないこと渉示唆 された.. これらのことから,次の試合までに骨格筋の疲労に関わる練習をどの程度行い,どのよ うに休養をとれば疲労の蓄積が抑えられるのかについて検討していく必要がある.. 一15一.

(19) 第5節 小括. 試合期における試合を含めた1週間の練習時の血液検査,特に骨格筋や心筋に関与する 血清逸脱酵素等について検討した結果,次のことが明らかになった.. 1)試合によって,血清逸脱酵素のほとんどは一過性に増大していたが,その申でもFWの CPKの増大が大きく,回復に長時間を要していた.. 2)練習によって,血清逸脱酵素は増大していたが次の日の休養によって回復していた. しかし,休養をとっているにも関わらず,FKのCPKが順次増大していたのは練Pt r特V: nン. タクトプレーなどの過度の筋出力の発揮によるものと考えられた.. 一16一.

(20) 第皿章 筋出力の発揮の仕方と休養の取り方との関係について :第1節 目的. 前章で,血清逸脱酵素の変化から試合期におけるコンディショニングについて検討を行 い,試合や練習によって血清逸脱酵素が上昇し,特に,FWI:ついては試合や練習によって CPKが上昇していたことから,疲労が蓄積していることを示唆していた.. この時の練習は隔日に行われ,他のヂームが一般的に行っているものよりも休養日は多 いものであった。しかし,このような筋疲労の蓄積が認められたことから,試合期のコン ディションプログラムについてもっと深く検討する必要があると考えられた.. 試合期において,コンディショニングは常に試合で最大のカが発揮できるようにするこ とが重要なことである.. 久野ら16>は,一流サッカー選手の約1ヶ月間の試合期の前後における身体的コンディシ ョンについて検討し,この間に高速度域における等速三筋出力ならびに筋エネルギー代謝 の低下が認められ,試合期のコンディショニングとして適度な筋力トレーニングの導入の 必要性があると報告している.また,岡本ら23>は大学ラグビー選手を対象に,3月∼6月. の約3ヶ月間の最初の1ヶ月間を体力トレーニング期,あとの2ケ月間を技術練習期と設 定し,トレーニングや技術練習による体力の推移を観察し,体力トレーニング期終末で筋 力系の項目は増大する傾向が認められたが,技術旧習期終末では減少する傾向にあったこ とを報告している.このことから,ラグビーの競技特性を考えた場合,試合期における筋 力の維持のためのコンディショニングプログラムは欠かせないものである.よって,前章 での対象チームの行った練習内容の申にもウェイトトレーニングによる筋出力発揮が含ま. れていたが,結果的に試合直前に筋疲労の蓄積が生じていたとすればコンディショニング としては不都合である.また,前述したように休養日が多かったにも関わらず,筋疲労の 蓄積がみられたことからも,休養の取り方についても検討する必要がある.しかし,これ までに筋出力の発揮量や休養についてどのような形で,どの程度の頻度で行えば筋出力を 低下させずに疲労を抑えることができるのかといったことはまだ明らかにはされていない.. そこで,本章では試合期におけるコンディショニングプログラム作成の基礎的資料を得. るために,1週間の筋出力の発揮量を一定として,1日の筋出力の発揮量および休養の取 り方が異なる3種類の筋持久力の負荷を設定し,筋出力の発揮および休養の形態の違いが 生体にどのような変化をもたらすのかについて,生理学的な身体コンディションの指標と なる血清逸脱酵素(CPK)を用いて検討を行った.. 一17一.

(21) 第2節 方法. 第1項対象者について 運動クラブに所属する健康な男子大学生3名を対象とした.その身体的特性は表7に示 したとおりである.. 表7 被験者の身体的特性 Subj ect Age(yrs) Height(cm) Weight(kg). MI.. 22 22. K.F.. 21. S.K. 173 176 173. 63 70 65. 第2項 筋持久力の負荷について Cybex H(Lu魏ex社製)を用いて等速性筋持久力テストを180./secの角速度で最大努力に. よる膝関節伸展屈曲動作5Q試行を1セット,1週間の運動量を一定(アセット)とした図 17に示す様な3種類の負荷を設定した.図の縦軸はセット数(Sets),横軸は初日を1とし. て日経過を示している.負荷Aは毎日1セットを7日間連続で行わせた.負荷Bは!日目,. 3日目,5日目に2セットずつ行い,7日目に1セットを行わせた.負荷Cは1日目,4 日目i: 3セットずつを行わせ,7日目に1セットを行わせた.. 3. 口. O A A B o c. 口. (1set=50times). 2. A. 1. o. A. A. v‘”. 甜. o. o. o. o. o. o. v. Ol 234567 days. 図17実験設定. 一18一.

(22) この3種類の負荷を1週間の休養期間をおいて,S.K.には負荷A→C→B,M.1.には負. 荷C→B→A,K.F.には負荷B→A→Cの順番で負荷実験を実施した.なお,実験期聞中 はクラブ活動や生体に負担のかかる運動は行わせないようにした.また,採血は毎日の午. 前申の空腹時に肘静脈から医師によって行われ,血液検査項目は第H章,第2節,第2項 血液検査項目に示したものと同じ項目を測定した.. なお,筋持久力テストの結果から平均ピークトルク値は50試行の平均値,初期値は1∼ 5試行までの平均値,終末値は46’)50試行までの平均値を求め,ならびに低下率は以下の 式から算出した. 低下率(%)=(初期値一終末値)/初期値×100. 19.

(23) 第3節 結果. 120 一一. Z一一 A. 一▲一一 B. 第1項筋出力の変化について. 一ロー C. 図18は1日目の1セット目の値を100とし g}’. tlO. たときの平均ピークトルク値(PT−MEAN),初期 ¥ 値(PT−INT.)および終回(PT−FIN.)のそれぞ奎. e loo れの変化率を各負荷別にみたものである.平 a 均ピークトルク値(図上)は,負荷Aおよび負. 荷Cでほとんど変化はみられなかったが,負. 90. 荷Bで筋出力が順次増大する傾向にあった.. Ot days 23 4567. 120. 初期値(図申)は,どの負荷実験においてもほ. 一く)一一 A. とんど変化はみられなかった.しかし,終末. 一””. `e”一 B. 一[ト C. 値(図下)は負荷Bで増加する傾向にあった。. “o. このことから,負荷Bの平均ピークトルク値巴 の増大は終補の増大によるものであると考塞. えられた.. Si。。 se o t20. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. days. 一 A 十 B 一[一 c. tio. ま ヨ 午 左 1 OO 1一一. 90. Ol 234567 days. 図18 各負荷実験による筋出力の変化. 一20一.

(24) 第2項 血液検査について 表8は初回の採血での被験者3名のそれぞれの血液検査項目の平均値(mean),標準偏差 (S』・)および正常範囲(N。rmal Range)を示したものである.いずれの検査項目も正常範囲 内にあった.. 表8 血液検査項目について. Items mean. SD. No皿al Range. CPK(IUII) 76.3 ± 10.1. 50 一一 200. LDH(IUA) 276.3 ± 31.9. 180 一一一 460. GOT(IUII) 17.0 ± 4.4. 5 一一 40. GPT(IUII) 12.3 ± 5.9. 5 一一 35. TP(g/dl) 7.30 ± O.44. 6.7 一一 8.3. K(エnEqβ). 4.67± 050. 3.5 一一 5.0. Na(mEq/1) 142.3 ± O.6. 135 一一 150. 図19はCPKの1日目の値をIOOとして,各負荷別に!週間の変化をみたものである.縦軸 にCPKの変化率(CPK−Rate(%)),横軸は初日を1とした日経過(days)を示している.負荷A. およびCにおいて,CPKの値は増大する傾向にあった.しかし,負荷Bでは負荷AやCと比 べて増加の傾向は明らかに少ない傾向にあった.. 500 400. 一K)一 A. 十 BC 一ロー一. §3・・. n. 華. 差200 り. 100 o. days 図19 各負荷実験によるCPKの変化. 一 21.

(25) 第4節考察 村木20>によると,試合期のコンディショニングは準備期のトレーニングを通じて形成さ. れた競技的状態を重要な試合の全期間を通して維持し,試合を通してそのレベルでの可能 な最大の競技達成(記録成績)の実現を目指す過程であると述べている.つまり,筋力や 持久力といった体力の向上を目指したトレーニングの必要はなく,試合期までに作った体 力を維持し,疲労を蓄積させないことが重要であることを意味するものと解釈できる.. 今回実施したどの筋出力の発揮の仕方においても筋出力の低下はみられず,試合期のコ ンディション作りで重要である筋力を維持するにはどの筋出力の発揮方法でもよいことを 示唆するものであった.また,ジム・ブレアi3)は試合期における筋力トレーニングは週1. 回程度で十分であると述べている.つまり,試合期のコンディショニングに関しては筋出 力を維持することよりも試合や練習での疲労をいかに蓄積させないかが重要となってくる.. ところでCPKは,筋収縮の直接的なエネルギー源であるATPの分解や再合成に関わる酵素 であり,骨格筋に多く含まれていることから筋疲労や筋の損傷,筋肉痛の指標として用い られている2)3)7>.今回の実験では,毎日50回の膝関節伸展屈曲による筋出力を1セット. 行った負荷Aと2日おきに3セットの筋出力を行った負荷Cにおいて,CPKの上昇の程度は 負荷Bに比べ,一層大きいものであり,これらの筋出力の負荷方法によって筋に与えたダ メージが大きいことを示唆するものであった.すなわち,1週間に行った運動量は一一定で. あり,また,1日の筋出力発揮量はC,B,Aの順に負荷が大きいものであったことから, 筋出力の発揮量や頻度(休養)によって筋組織に与えるダメージや筋の損傷の回復の程度が. 異なっていたものと考えられる.しかし,負荷BにおいてもCPKの上昇率は少ないものの上. 昇する傾向にあり,実際のラグビー競技における試合期では,試合は2∼3ヶ月間は続く ことから,もっと効果的な休養の取り方について検討する必要がある.. ところで,宮島捌によると試合期の休養は英気をいかに養い,いかに試合当日に最高能 力を発揮できるよう身体の調子を整えるもので,試合の準備として身体を調整する積極的 な休養が必要であると論じている.特に,試合期においては消極的な休養(完全休養)より. も,筋疲労の回復そして次の試合の為のコンディショニングを考慮した積極的な休養を取 ることが重要である.積極的な休養は,運動の種類や時間によって休養法を選択すること が必要である9)24>32>。. 22 一.

(26) 第5節 小括 運動部に所属する健康な男子大学生3名に1週間の運動量を一定として,1日の筋出力 の発揮量と休養の取り方の異なる3種類の筋持久力の負荷実験を実施し,筋出力およびCPK の日変化から試合期における身体的コンディションについて検討を行った. 得られた結果は次の通りである.. 1)負荷B(1日2セットの筋出力,1日おきの休養)の場合にはCPKの上昇の程度は他の負 荷方法の場合に比べて低く,試合期における筋出力の発揮は疲労の蓄積を防ぐために1日 おきに行うのがよいと推察された.. 2)試合期においては筋出力の発揮量や休養の取り方に注意し,特に休養については積極 的な回復を取り入れていくことが望ましいと考えられた.. 一23一.

(27) 第IV章 試合期におけるコンディショニングについて. 第1節 目的. 前章までに著者は試合期におけるラグビー選手の血清逸脱酵素等の日変化から身体的コ ンディションについて検討してきた.その結果,選手の試合前の身体的コンディション, 特にCPKをいかにして下げておくかが重要なことであることを明らかにした.さらに,指導 者にとって精神的なコンディションも早期に把握する必要がある.. ところで,スポーツ選手の精神的なコンディションやオーバートレーニングの程度を知 るスクリーニングテストとしてPOMS(Profile of Mood States)テストが最近よく用いられ. ている.POMSテスト(以下POMSとする)はアメリカの精神科医McNairらによって1971年に開. 発された心理検査テストで,このテストば精神疾患を診断するために使用されていたもの であった.その後,Morgant g>が一流スポーツ選手を対象にして,POMSの成績によって競技. の成功を予測できることを示唆している.また,大学水泳選手を対象とし,トレーニング によってPOMSの成績が悪くなってきたことから,POMSがオーバートレーニングの指標にな りうることを示した.これらの研究によってPONSIまスポーツの分野で広く用いられるよう になった12).. 日本では猪俣らB>によって英語の形容詞から記述的表現に改められ,同一の意味となる 範囲で日本語に訳され,近年,スポーツ選手の精神的コンディションの指標として多く用 いられている5)15>38>39) 40).. このPOMSの質間項目の中には身体的な状態に関する質問も含まれていることから,POMS から血清逸脱酵素等の筋疲労に関わるものの予測が可能であれば,POMSによって精神的コ ンディションだけでなく身体的コンディションを早期に把握することが可能である.. そこで,実ee 1として,POHSと血清逸脱酵素および電解質等との関係について検討を行 った.そして実験2として,公式リーグ戦;期間申,約2ヶ月間ほど毎日連続してPOMSを実 施し,その変化から試合期のコンディショニングについて検討し,ならびに積極的回復と しての有酸素運動の効果についても検討した.. 24 一.

(28) 第2節 方法 第1項 血清逸脱酵素および電解質等とPOHSとの関係について (1)被験者および採血について. 関西学生Aリーグに所属するラグビー選手42名を対象とし,平成6年6月に行われた2 試合の練習試合の1時間前にPOMSおよび採血を実施した.採血は医師によって肘静脈から 採取した.. なお,血液の検査項目は第H章,第2節,第2項血液検査項目に示した項目に加え,骨 格筋に関与するCPK−MM,心筋に関与するCPK−MBをアイソザイムによって測定した.求めら れたCPK−HMおよびCPK柵の%値とCPKの値からCPK−MMおよびCPK−MBの量を算出した. (2)POftsについて. 質問内容はMcNairのものを猪俣らが翻訳した日本語版8>を用いた.質問用紙は表9に示. したもので65の質問項目に対して0∼4までの5段階の得点で試合1時間前の気分の状態 をマークさせた. 採点は,表10に示した採点表に従って緊張(Ten.),姉欝(Dep.),怒り(Ang.),活動性(Vig.),. 疲労(Fat.),情緒混乱(Con.)の6つの因子別の合計点を算出し,表11のPONSプロフィール. シートにプロットした.. POMSから求められる6つの因子は以下の通りである. ①緊. 張(Ten.):緊張や不安のレベル. ②卿. 欝①ep.):悲しみ,寂しさ,孤独感のレベル. ⑧怒. り(Ang.):他人に向かう怒りや敵意のレベル. ④活動性(Vig.):元気,活動力のレベル ⑤疲. 労(Fat.):疲れ,不活動,生気のなさのレベル. ⑥情緒混乱(C。n.):情緒の混乱した状態や焦り,うろたえなどのレベル. この6つの因子に加えて,精神的ロンディションの指標となり,運動量や練習量とも関 係の深いPOKSee得点(TotaHood Disturbance)28>40)を次の式から算出した. T.M・D.=Ten.+Dep.+Ang.+Fat.+Con.+100−Vi’ g・. 一25一.

(29) 表9 P⑪薦テ:ストの質問用紙 今の気分の状態に当てはまる番号の所を黒く塗ってください.. 0:全くそんなことはない 3:かなりそうだ ・. 2:ある程度そうだ. 1:わずかにそうだ 4:非常にそうだ. 01234. 0馨234. 1.他人に対して友好的だ。 ロロロロロ. 2.精神的に緊張している。 ロロロロロ 3.怒っている。 口臼日ロロ. 34.一口しゃすい。. 4.疲れ切っている。 5.不幸せな気分だ。. 37.頭が混乱している。. 35.孤独だ。. ロロロロロ. 36.みじめだ。. 口臼ロロロ ロロロロロ. 日日ロロロ. 38.陽気だ。. 6.頭が冴えている。. 二一二日口. 39.苦い体験をした。. ロロロロロ ロ八州ロロ. 40.力尽きてしまった。. 41.心配事がある。 43.心穏やかだ。. 49.疲労困ばいしている。 50.うろたえている。 51.気が充実している。. 口口口口ロ. 17.「人にむっつりしている。. 石臼ロ同着. .18.気がめいっている。. 日日日日口. ig.精力的である。 20.あわてふためいている。 21.失望している。. 25.思いやりがある。. 26.不安だ。 27.落ち着きがない。. 0ロロロロ ロロロロロ. 自門雨月ロ 日[]口呑口.. ロロロロ[]. 52.(誰かに)だまされている気がする。. 口口日日口 0月月円筒 ロロロ月済. 53。怒り狂っている。 54.自分を有能だと思う。. ロ同旨昌昌. 百日再再ロ 言託ロロロ 口ロロロロ. 58.自分を役立たずだと思う。 ロロロロロ 59,忘れっぽい。 ロロ0ロロ 』60.心配事がない。 日日ロロロ. 口口口口ロ. ロロロ日日 ロロ目口[]. 28.物ζとに集中できない。 口口口口ロ 29.疲れている。・ 日高ロ門門 30.(誰かの)役に立っている。 日日門門ロ. 6星.大変おびえている。 62.罪悪感がある。 63.元気旺盛だ。. 31.(他人に)悩まされている。. 64.万事に確信がもてない。 65.へトヘトにくたびれている。. 32.やる気をなくしている。. 33.憤慨している。. ロロロロロ. 円満言言日 ロ昌昌ロロ. 55.物事を信じやすい。 56.活気に盗れている。 57,(人に)気難しい。. 22.ゆったりした気分だ。 口口ロ口口 23.自分をとりえのない人間だと思う。 匂[旧口口. 24.意地が悪い。. ロロロロロ. ロロロロロ. 46.無気力で怠けている。 翻刻ロロロ 47.反抗的だ。 []ロ一向ロ 48.自分ではどうしようもない。 ロ門門ロロ. 日嗣ロ汽筒. 16.神経質だ。. ロロロ旧口. ロロロロロ. 44.ふさぎこんでいる。 45.絶望的な気分だ。.. ロロロロロ 月済日石ロ. 15.活動的だ。. ロロロ幽幽. 42.(人に対して)攻撃的である。. ロロロロ[]. 10.心が揺れ動いている。 ロロロロロ 日.物事に気乗りがしない。 .ロロロロロ 12.人のことでイライラしている5 ロロロロロ. 13.人に親切だ。 14.悲しい気分だ。. 0ロロロロ ロロ山繭ロ. 7.活き活きしている。 8二気持ちが混乱している。. 9.ヘマをやったと後悔している。. ロロロロロ. ロ口口口口 [■}日門門. ロロロ0目 言言ロロ[] ロロロロロ 自門日日日 ロ言言ロロ. 高高旨旨ロ Xすべての項目に回答をお願いします。. (文献15から一部改変). 表10 P側Sテストの採点表 採点項目. 因子. 煙弾 抑欝. ; Ten. (Tension). 怒り. ; Ang. (Anger). 活動性 疲労 情緒混乱. ; Dep. (Depre$sion). ; Vlig. (Vigor). ; Fat. (Fatigue). ; Con. (Confusion). 2 5 3 7 4 8. 10 16 20 22 26 27 34 41. 9 14 18 21 23 32 35 36 44 45 48 58 61 62 12 17 24 31 33 39 42 47 52 53 57 15 19 38 51 56 60 63 11 29 40 46 49 65 28 37 50 54 59 64. 注;22および54は採点を逆転する. 一26一.

(30) POMSプロフィールシート. 表11. 因. Tスコア. 緊張. 抑うつ. 一一一一 W0一一. 活動性. ・44−5・. 一31−2一. 43 42. 79 78 77 76 75. 48 59−0. 40 39 38. .56r7. 37.. 58. 74、. 73 72. 36 35. 55. 71. 53−4. 一一一一 V0一一一. 69 68 67 66 65 64 63 62. 一一一. R6一 .35.. 一一b T2一. .32. 44−5. 30. 61. 28.. 59 58 57 56 55 54. 一一一 Q7一.. 26 25. 24 23. 昭. 41−2. 40. 38−9 37「. 卿 一 一. 35−6. 34. 32−3 31 28−9. 53.. 21. 52. 20. 25韓6.. 51. 19. 一一一. Q4一. 23 22. 27 24. 28 27. 17. 23. 47 46 45 44 43. 15 14 13 12. 42. 日. 21 21. 12−3 ll. 18. 10.. 16−7. 9 8 7 6 5 4. .i5. 13−4 重2. lo一1 、9. 」4θ一一一. 39 38 37 36 35 34 33 32. 一一一 ア〇一. 一一・. V−8. 9 8 7. 4−5. 6. 喧一2. 5 4. 一. 6. 3.. 3 2 1. 20. 20 19. 17. 15. 2蓼. 41. 24 23 22. 22. 20. 19−0. 薩6. 一。 Q5。,. 24.. 一一一一 g}一. 28 27. 27 26. }25 一 一 一 一 一 一 〇. 19 18 一. 鴨. 一. 一. 響 一. 17 16 15. 一一. ユ一 25 24 23 22 21. 20 一一一 P9・一. 18 17. 14 13 12. 16 15. 13 畢2. 日. 壁3. 纏4. 藍4. 22−3. 49 48. 28. 26.. .16. .15. 混乱 一 噴 一 一 一 一. 30 29. 2醒. 19 18 17 16. 30.. 22. 疲労 一 一 一 曽 一 一. 31. 30 29 28 27 26 25. 46. 29.. 一一一 ?ニ一一●.. 33 32. 49 47−8. 31. 一,一34●. 150一犀. 34 33. 子. 怒り. 9 10 9. 8 6. 10 9. 5. 8. 4 3. 7. 7. 8. 12 日. 7 6 5. 一一一・ U一。. ,. 4 3. o. 5. 2 1. 4 3. 0 2. 0. 2. ε. 0. 8. 0. 3 2. 31 一一 Re一一一. 一一. Z一1・. 一。。. 旬一一. o卜一. Tスコア 得 点 ・:. τbn. Dep. Ang. Vig. Fat. Con. (文献15より転載). 一27一.

(31) 第2項 試合期のコンディショニングについて (1)被験者および実験期間 対象者は関西学生Dリーグに所属するラグビー選手18名である.実験期間は試合期の公 式リーグ戦8試合の期間(1994年9/11∼10/30:7週間)である.試合日は試合開始1時間前,. 練習日は練習開始15分前に,休養日にはなるべく午後から夕方の間に毎日POMSを行わせた.. (2)試合期の練習内容について 表12は公式リーグ戦期間中に対象チームが行った練習内容の一例である.. 前章で得られた結果をもとにして,試合前1週問の練習内容は体力の現状維持を目的と した筋力トレーニングおよびコンタクトプレーなど筋出力発揮の伴う練習はなるべく隔日. に行わせ,練習終了時に有酸素運動を取り入れた.なお,試合の1日後には主観的運動強 度が,’楽である’,(RPE=11)の強度25>で30分の軽いジョギングを無作為に抽出された選手 に実施させた.. 表12練習内容 日. 試合. 月 永 火 休養 チーム練習 チーム練習 (30分間走) グリッド タックル. 木. 休養. 野 土 チーム練習 チーム練習. タックル. コンビネーション. スクラム モール. ラインアウト スクラム ラインパス モール 補助筋トレ ラック. ラック 補助筋トレ. 2000m走. 2000m走. (3)CPKの推定について POMSからCPKを推定するために,試合期の全期間にわたって各選手のPOMSの調査を実施し た.. 28 一.

(32) 第3節 結果. 第1項 血清逸脱酵素および電解質等とPOMSとの関係について 表13は42名の筋疲労に関連する血清逸脱酵素(CPK,CPK−MM,CPK−MB,LDH,GOT,GPT),総蛋白. (TP)および電解質(K,Na)の平均値と標準偏差を示したものである.CPKは正常範囲の上限を. 逸脱していたものが42正中36名(86%)で,その他の血液検査項目の平均値は正常範囲内に あった.. 表13 血液検査項目について. Items mean. CPK(IUA) 351.7 ± CPK−MM(IUA) 339.9 ±. S.D. Normal Range 20 一一 160 296.9 297.8. CPK−MB(IUII) 4.0 ±. 2.5. LDH(IUA) 357.8 GOT(IUA) 19.8 GPT(IUII) 11.7 TP(g/dl) 7.23. 62.7. ± ± ± ±. 200 ・一一 460. 6.2 4.2. 5 一一 38 5 一一 37. 0.22. 6.3 一v 8.2. K(mEqA) 4.00 ±. 0.24. 3.3 ’v 4.8. Na(mEqA) 138.4 ±. 1.8. 137 ’v 145. 表14は採血と同時に調査したPOMSの緊張(Ten.),抑欝(Dep.),怒り(Ang.),活動性(Vig.),. 疲労(Fat.),情緒混乱(C。n.)の6っの因子およびPO聡総得点(T.M.D.)の平均値と標準偏差. ならびに最小値と最大値を示したものである.. 表14POMSテストの成績について mean S.D. min. max. Ten.. 48.7. 9.1. Dep.. 45.1. 8.3. Ang.. 50.7. 10.7. Vig.. 49.8. 7.5. Fat.. 52.8. 9.0. Cbn.. 48.3. 8.0. 34 35 37 38 37 36. 68 69 75 74 74 66. 9冒…齢欝iy”. 奄戟fMl’b’1’t”””’i’g’grg””. ”’. 29.

(33) 42名のPOMSのプロフィ・・一…ルの型を分類したところ,図20に示したように4種類に分ける ことができた.A型はMo rgant 8)が示した氷山型と活動性が50点以下で氷山型に近似しta型. 状を示すもの,B型は疲労の得点が50点以上と顕著に高く,その他の因子の得点が疲労の 得点に比べて低いものである.C型は6つの因子の各得点が10点以内で近似し,水平的な 型状を示しだものである.D型はMo rgant 8>が示した活動性のみが50点以下を示す逆氷山型. と活動性を除いた他の因子も50点以下を示すものの逆氷山型に近似した型状を示したもの である.. eo. eo. Type;A. 70. Type;C. 70. g 60. 書60 coO. 多. F so. ト50. Nv一!N”一一””. oo. 30,. eo. co 30. Ten. Dep. Ang. Vig. Fat. Con.. eo. Type ;B. 70. 暮60. Type;D. 70 g. ,,. 昂. ,fli. 卜50. ト50. co. 40. 30. Ten. Dep. Ang. Vig. Fat. Con.. 30. Ten. Dep. Ang. Vig. Fat. Con. VV Ten. Dep. Ang. Vig. Fat. Con.. 図20POMSプロフィールの分類について. 30 一.

(34) 表15はこれら得られた4つの型の出現率および各型ごとのCPKおよびPOMS総得点(T.M.D.) の平均値(mean),標準偏差(S.D.)と変動係数(C.V.)を示したものである.出現率はA型が. 33.3%と最も多く,ついでB型とC型が23.8%,D型が19.0%と最も少なかった.CPKの平. 均値はA型くB型くC型くD型と順次高値を示し,変動係数も同様に順次高値を示してい た.また,精神的コンディションの指標となるPOHS総得点も,CPKとほぼ同じ様に得点が増 加する傾向にあったことから,身体的コンディションの指標となるCPKから精神的健康状態. も推察できるものと考えられた.また,A型では活動性が他の因子よりも顕著に高く,D 型ではA型とは逆に活動性が他の因子よりも顕著に低くなっていることから,少なくとも CPKと活動性との間には密接な関係のあることを示唆するものであった.しかし,A型およ びD型だけでなく,他の型によってCPKの平均値が異なっていたことから,活動性だけでな く他の因子もCPKと関わっていることを示唆するものであった.. そこで,筋疲労に関わる血清逸脱酵素等を目的変数,POMSの6つの因子を説明変数とし てPOMSから筋疲労すなわち身体的コンディションを説明できるかを検討することにした.. 表15POMSプロフィールの分類によるCPKおよびT.M.D.の平均値,標準偏差および変動係数 CPK(ruA). Typ e n (90) mean. T.M.D.. SD. C.V.(90) mean. S.D. C.V.(90). A 14 33.3 253.2 ± 79.9 31.6 129.1 ± 29.4 22.8 45.5 159.1 ± 16.1 10.1 B 10 23.8 282.7±128.5 C 10 23 .8 283.8 ± 175 .8 62.0 147.7 ± 19.5 13.2. D 8 19.0 695.3±52S.1. 75.5 224.5 ± 24.7 11.0. 表16は血濠検査項目とPOMSの6つの因子との相関関係を示したものである.これらのな かで5%水準で有意な相関が認められたのはGOTの緊張の正相関,活動性の逆相関,LDHの 活動性の逆相関,CPKおよびCPK一闇の緊張,怒りの正相関,活動性の逆相関であった.なお, GOT, GPT,LDH,CPK,CPK−MBおよびCPK−MMは対数にした方が相関係数が高値を示したので. 対数表示を採用したものである.POMSの各因子と有意ts相関が認められたのは血清逸脱酵 素といわれるG◎T,LDH, CPK(CPK一照)だOjであり,なかでも活動性とLDH,CPKおよびCPK−MM. では1%水準で有意な相関が認められた.. 一31.

(35) 表16 血液検査項目とPOMSテストの各因子との相関 Correlation analysis. IP CI Na K log GOT log GPT log IDH log CPK log C?K−MB log Cf{K−MM. 鵡::. O.376. O.357. 蟹 :. O.378. 一。.、27鵬 :. : 一e.328. 0.360 −O.460. 濫 : O.385. O.333. T.M.D.. O.387. p〈O.05, 一 : no significance. 表17は先ほどいずれかの1因子と有意な相関の認められたCPK,CPK一三,GOTおよびLDHを 対数変換したものを目的変数,POMSの6つの因子を説明変数として,変数増減法(F=2.0)を. 用いて重回帰分析の結果を示したものである.図下のR2は寄与率を示したもので,CPKおよ びCPK一興では緊張,怒り,活動性および情緒混乱の4つの因子が抽出され,その寄与率は それぞれCPKが38.6%,CPK一醐が38.4%であった.GOTでは緊張および活動性の2つの因子が. 抽出され,その寄与率は19。1%であった.LDHでは活動性が抽出され,その寄与率は18.2%. であった.また,この各POMSから抽出された因子の寄与率が全体の何%に当たるのかを求 めたところ,CPK, CPK一闇およびLDHは大半が活動性で,GOTは緊張が大半を占めていた.. 表17血清逸脱酵素とPOMSテストとの重回帰分析について Multiple regression analysis(stepwise method,F=2.0). log CPK 90 log crK−MM 9e log GOT 90 log LDH % Ten.. 3.5. 9.1. 3.5. 9.1. Ang.. 8.7. 22.5. 8.8. 22.9. Vig.. 21.1. 54.7. 21.2. 55.2. 5.3. 13.7. 4.9. 12.8. 12.8. 67.0. 6.3. 33.0. Dep.. 18.2 100.0. Fat. Co皿.. RZ(90) 38.6 100.0 38.4 100.0 19.1 100.0. 18.2 100.0. なお,重回帰分析の結果から求められた重回帰方程式は以下の通りである. log C P K = 3.08 一 O.0159Vig.+ O.0144Ang.一 O.0231Con.+ O.O113Ten. log CPKntMM = 3.07 一 O.0163Vig.+ O.0145Ang.一 O・0232Con.+ O・OllsTeR.. log G O T = 1.30 +O.00386Ten.’O・00408Vig. log L D H = 2.77 一〇.00452Vig.. 一32一.

(36) これら求められた重回帰式から目的変数を約40%以下しか説明できないことが5i>かった. しかし,この結果から約40%しか説明できないものの,POMSからCPKやCPK−MMを推定できる ことを示唆するものであった. ところで,CPKとCPK−MMとは相関係数が0.999と1に近似しCPKのほとんどが筋組織から逸. 脱していたものと考えられた.このことから,以下CPKを推定する式を用い試合期のPOMSの 結果からCPKを推定することにした,. 一33一.

(37) 第2項試合期のコンディショニングについて 図21は,対象チームの選手2名の公式リーグ戦期間中のPOMSのプロフィールから求めた CPKの推定値の変化を示したものである.黒丸は試合直前の値,黒三角は試合の1日後,黒. 四角は試合2日後で白四角は試合3∼6日後を示したものである.また,試合1日後のと ころに矢印を示したのは30分間の有酸素的なランニングを負荷した場合を示したものであ る.この2名の選手に代表されるように,試合や練習によってCPKの推定値は日ごとに変化. していた.ところで,試合1日後の有酸素運動は第1章でも述べたようにラグビー先進国 では試合期のコンディショニングとして行われているものである.そこでこの試合1日後 の有酸素運動の効果についてCPKの推定値から検討を行った.. 500. :. before game after 1 day. :. after 2 days after 3−6 days. 400. ウ. 30 min. run. ,. ミ. ウ. e一. 奮300. v. 立 ら. 200 Subj.; Y.T.. 100 1. 8. 15. 500. 22 29 t(days). 36. 43. 400 ミ e一. ウ. 石300 蔓. ,. ,. ら. 200 Subj.; S.K.. 100. 1 8 15t(days) 22 29 36 43 50 図21試合期の公式リーグ戦期間申のCPKの推定値の変化. 一34一. 50.

(38) 図22は試合1日後および2B後のCPKの推 定値を比較し,試合の1日後に対して2日後. pa) CPK−cal.;game−After 2days 80r 1・y7weeks. 一 30min.run. に上昇した場合(up)が左側に,下降した場合. EZiiE] rest. (down)が申央に,変わらない場合(even)を右. 側に示したものである.. 黒の棒グラブは試合1日後に30分問の有酸 素的ランニングを実施させた場合,斜線のグ ラフは完全休養させた場合である.なお,図. 上は試合期の全期間,図中は前半の1∼3週. up. 間目まで,二丁は5∼7週間目,それぞれ3 悩1. 80r 1・一一3weeks. 週間について示したものである.. 試合の1日後に30分間のランニングを実施 した場合にはいずれの場合にも試合1日後に. 60. 対して試合2日後にCPKの推定値が低下するも のが明らかに多く出現していた.これに対し. co. て,試合1日後に完全休養した場合には,全 期間中(図上)のCPKの推定値は上昇するもの. 20. が明らかに多く出現していた. o. 前半(図申)および後半(図下)に区分した場. down. up. even. 儀} 80’秩f. 合,完全休養を行った時には,前半で試合1. s一一7weeks. 日後から試合2日後にCPKの推定値が上昇した 時の出現率は明らかに多くなっていた.しか. 60. し,いずれの場合にも後半になると試合1日. 後よりも試合2日後にCPKの推定値が減少し. co. た時の出現率が多くなる傾向を示していた. 20. o. up. down. ev帥. 図22試合1日後から試合2日後への CPKの推定値の増減の出現率. 35.

(39) 図23は前の試合日と次の試合日のCPKの推. ca CPK−oal.;game−game. 定値を比較し,前の試合直前のCPKの推定値よ. りも次の試合直前のCPKあ推定値の方が上昇 している場合(up)が左側に,減少している場 合(down)が中央に,変わらなかった場合(even). が右側に示したものである.黒の棒グラフは. 試合1日後に30分間の有酸素的ランニングを 実施させた場合,斜線のグラフは完全休養さ せた場合である.. 全期間申(図上),前半の1∼3週目(図中) ぐ%). および後半の5∼7週目(図下)のいずれの場. eo. 合にも,試合の1日後に30分聞のランニング を実施させた場合のCPKの推定値は,前の試合. oo. のCPKの推定値よりも減少した時の出現率が 多くなっていた.逆に,完全休養したときの. co. 次の試合日のCPKの推定値は明らかに上昇し 20. た時の出現率が多く認められた.また,その 傾向は前半の方が明らかに顕著であった. o. down. up. even. pt). 80r s−v7weeks. eo. co. 20. o. 叩. down. even. 図23前の試合直前から次の試合直前への CPKの推定値の増減の出現率. 一36一.

(40) この時のPOMSの結果,すなわち気分や精神. 的コンディションの状態の・つを示すP騰・・ll)1一黙;ga醐2曲 得点(T.M.D.)について,試合1日後と2日後,. `,。m、。.,、n. 囮rest. および前の試合日と次の試合日の場合におけ oo る試合の1日後に30分間のランニングを実施 した場合と完全休養を行った場合を比較検討 40 した.. 図24は試合1日後に30分のランニングを実 20 施した場合(黒の棒グラフ)と実施しなかった. 場合(斜線の棒グラフ)の試合1日後のP稠S総 O. up. d。wn. even. 得点と2日後のPONS総得点とを比較したもの 80凶1∼3week、 である.PO器総得点が低いほど;活動的であ り,得点が高いほど精神的状態が悪いことを 60 示すものである.. 全期間中(図上),前半の1∼3週目(図申)40 および後半の5∼7週目(門下)のいずれも全. 体的には試合2日後にはPOお総得点がいずれ 20 も上昇した時の出現率の方が高くなっていた.. しかし,30分間のランニングを実施した場合 O. up. d。wn. even. の方が,完全休養の場合よりもPO,Ws総得点が・・Pt》,一,week、. 減少した時の出現率が多くなる傾向を示して いた.. 60. 40. 20. o. up down even. 図24試合1日後から試合2日後への P鯛S総得点の増減の出現率. 37 一.

(41) 図25は試合1日後に30分のランニングを実 儀}丁.M.D.;game−game. 施した場合(黒の棒グラフ)と実施しなかった 場合(斜線の棒グラフ)について前の試合日と. 次の試合日のPO器総得点を比較したものであ る.いずれの場合も次の試合日に前の試合日 に比べてPOMses得点が減少していた時の出現 率は多くなっていた.特に,30分間のランニ. ングを試合の1日後に実施していたものの方 が実施しなかったものよりP側S総得点の減少 した時の出現率は多く,前半(図申)の方が後 悌). 半(図下)よりも一層多い出現率を示していた.. 80r IN3weeks. oo. co. 20. o. up. down. even. 悌). 80r 5・一一7weeks. 60. 40. 20. o. up down even. 図25前の試合直前から次の試合直前への PO聡総得点の増減の出現率. 一 38.

(42) 第4節 考察 20. CPKを説明し得るものとしてはPOMSの6つの. r=O.425. no significance. 因子のうち緊張,怒り,活動性および情緒混. 誓15. 乱の4っの因子が抽出された.. 至. 含. CPKは筋肉の運動に重要な役割を示すもの. E10 箋. で,第ll章および取皿章で示したように他の. o. g. 血清逸脱酵素,電解質および総蛋白に比較し. e. e ● ●. −5. e. e. て運動選手にとって筋疲労の指標として十分 o. 耐え得ることを示唆する結果を示していた.. 220 240 260 280 300. 160 180 200. CPK−cal.(IU/1). ラグビー選手の場合,試合中に移動するこ とが多く,移動する際にT。p走など無酸素的エ. 60. ネルギー供給でなく,3/4あるいはハーフスピ. Y=91.48−O,198X r=一一〇.753(p〈O.05). 竃. ・. 器. ード走など有酸素的エネルギー供給で移動す. q so. :. 9. ることが有利である.そこで,ゲーム申にい. e. 唇. かに3/4走を多くするかが運動量だけでなく,. e. e. {. 藷 40. e. コンタクトプレ・一一などの筋出力の発揮を大き. e. くするものであると考えられる. 30. 図26は1例ではあるがSHの試合申のTop走,. 220 240 260 280 300. 160 180 200. CPK−cal.(tU/1>. 3/4走,歩行の出現の割合と試合日のPOHSから 60. 求めたCPKの推定値との関係について,試合期. Y=7,77+O.t 69X. の全試合(8試合)の結果を示したものである.. Top走とCPKとの間の相関係数は低いものの( 図上),3/4走とCPKとの間には逆相関(図中),. 歩行とCPKとの間に正の相関が有意に認めら. r=O.754(Pく0.05). 衷. o. e. tr 50 歪. g. e e. 睾. 40. れた(図下).. e. このことから,試合日のCPKの推定によって. 試合申の移動中の良し悪しが伺われるもので あった.また,逆にPOXSから推定したCPKが有. 効なものとして利用し得ることを示唆するも. 一39一. 30. 160 180 200 220 240 260 280 300 CPK−cal.(IU/1). 図26試合中のTop走,3/4走,歩行の出現の 割合とCPKの推定値との関係.

(43) のであった.. 結果で示したように試合期の試合の1日後の30分間のランニング(RPE=11)を実施させた 場合には次の日だけでなく,次の試合日にはCPKが低値を示す傾向を示していた. Zawadzki et al.41)は,筋出力発揮の場合にはその直後からの栄養摂取と有酸素的運動,. 積極的休養が有効であることを実験的に示している.よって,試合の終了と同時に次の試 合の開始時までにいかに生体を回復させ,さらに向上させるかを考慮していく必要がある.. つまり,第ll章でみられたようなF腿手の試合後の筋疲労の蓄積を防ぐためには,試合 後の有酸素運動が効果的であると考えられた.また,同じく第ll章の練習期間申において 筋出力発揮量の比較的少なかったBKにおいては,有酸素運動によって筋疲労は回復してい たことから,試合期のコンディションプログラムに有酸素運動を多く取り入れることが良 好なコンディションを保つことになると考えられる.. 本研究においてPOMSを採用したのは,試合期は身体的だけでなく,精神的にも重要な時 期であり,フ(一ルド実験のため強制的に条件を一定にしたり,毎日の採血等は選手に大 変負担をかけることになる.このことをふまえてチームのコンディション,特に精神的コ ンディションを早期に知ることだけでなく,POMSとCPKとの密接な関係から十・分にPOMSから. CPKを推定でき,身体的コンディションについて知ることができた.さらに,積極的休養と. 完全休養との間にCPKの差が認められたことは,試舎による筋疲労を早期に回復させるため には完全休養でなく積極的休養,特に有酸素的運動によって効果のあることが明らかであ った.. これらから,コンディションプログラムを作成するためには,早期に各選手の精神的コ ンディションだけでなく身体的コンディションを把握し,特に,試合後の休養は完全休養 よりも積極的休養を取り入れるべきであることが明らかにされた.. 今後これらの結果をもとにし,さらにコンディショニングつくりの上で重要な要素を占 める栄養面からの検討を含めた試合期におけるラグビー選手のための識ンディションプロ グラムを作成し,実際に試合をさせながら試合との関連性について検討したい.. 一40一.

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