第3章 結果
第6節 考察のまとめ
本研究では、重障児の踏面を構成する要因を検討するために、各群の属性,自発 運動と原始反射,DA,身体要因の発達プロフィールの特徴を求めた。それらにもと づいて定頸を構成する要因について考察する。
各群の発達プロフィールの特徴を整理した結果、定説に関係する要因は3つの タイプに分けることが可能と思われた。その結果を表4−2に示した。
第1のタイプは、A群で最も高率に認められ、 B群, C群と減少または消失してい く要因である。項目としては、ATNR, STNR, TLRなどの原始反射や側轡,頭部を正中 線上に保持できない,身体の左右の非対称性,後弓反張,蛙様姿勢,頭部を常時片方 へ向けているなど原始反射の影響による身体の変形が挙げられる。これらは、定 頸の発達を阻害する要因と考えられた。
第2のタイフ。は、A群では、未熟であるか低い得点を示すがB群, C群と成熟が進 んでいくタイプである。項目としては、霊位での立ち直り反応(後方,側方),ラン
ドウ反応,頭部の自発運動,全身の自発運動(腹臥位),NOBであった。これらは、定 頸の獲得経過とともに成熟していく反応でありその発達と定頸との関連が示唆さ
れた。
第3のタイプは、A群では反応が認められないか未熟な反応を示すのに対し、 B 群およびC群では成熟した反応が観察されたもの、あるいはB群でC群と同じ様な評 価得点が得られたものである。項目としては、背臥位での方位反応,BOB,片忌での 頸の立ち直り反応(前方),全身の自発運動(背臥位)およびDA,頭囲測定結果である。
このうち、姿勢反応は、定心が完成していないB群でも成熟がみられた。B群でも C群と同様の結果が認められたことにより、これらの反応は定頸以前に成熟し、定 頸を準備する反応と考えられた。また、DA,高論がこのタイプに含まれるという結 果から、B群とC群の脳損傷の程度は同程度と推測された。
て考えた場合、B群はC群と同様に、定頸を準備する第3のタイプは出現している。
また、DAと頭囲の結果より脳損傷の程度が同程度と推測された。このことから、
B群が定頸に至っていない原因として第2のタイプの反応が成熟していないこと、
もしくは定頸の阻害要因である第1のタイプがC群よりも強いことが考えられた。
表4−2各要因のタイプ別分類
①定頸とともに消失していく要因
②定頸の発達と関連して成熟する要因
③定頸以前に成熟する要因
原始反射(ATNR, STNR, TLR)
坐位での頸の立ち直り反応(後方,側方)
ランドウ反応,引き起こし反応,
頭部の自発運動,全身の自発運動(腹臥位)
背臥位での方位反応,BOB, DA,頭囲 全身の自発運動(背臥位)
坐位での頸の立ち直り反応(前方)
3のタイプ 成
熟
レ
ベ
ル
t
/
2のタイプ1のタイプ
A群 B群 C点
以上から、重障児の定頸を促す指導法について考察する。。本研究の結果から、
A群に属する児には、定頸にかかわる要因の中で、原始反射の抑制と定頸以前に成 熟する反応すなわち背臥位での方位反応,BOB,坐位での頸の立ち直り反応,背臥位 での全身の自発運動をまず発達させ、次に定頸の発達と関連して成熟する反応で ある坐位での頸の立ち直り反応(後方,側方),ランドウ反応,引き起こし反応,頭部 の自発運動,腹臥位での全身の自発運動を促していくことが必要と考えられた。
B群に属する児には、定頸の発達と関連して成熟する反応である坐位での頸の立ち 直り反応(後方,側方),ランドウ反応,引き起こし反応,頭部の自発運動,腹臥位での 全身の自発運動を中心に促していくことが必要と考えられた。
このように、重障児の定頸を促すには原始反射の抑制と定頸以前に発達する反 応,定頸の発達と関連して成熟する反応を総合的に捉え、子ども達の実態に適応さ せながらその指導目標,指導方法,指導内容を設定していく必要があると考えられ
た。
第5章 研究のまとめと今後の課題 第1節 重障児を理解するために
本研究では、重障の子ども達の行動を観察し運動発達の基礎となる定頸を構成 する要因について検討した。
運動姿勢反応,反射の結果から、子ども達は、運動発達のある段階でとどまっ ていることや彼らの特徴的な属性から特異な発達を遂げていることが考えられた。
方位反応や立ち直り反応,頭部の自発運動等の自発運動の出現、ATNR, STNR, TLR 等の原始反射の消失とは、評価項目に属する得点の人数の割合などにより雷魚の 発達と関連があることが示された。子ども達を3群に分けて行った観察の結果か
ら、脳に重篤な障害を有する児において、彼らが被った障害の程度が定頸の獲得 を阻害する要因として大きいことが示された。このことは、重障児に対する教育 の限界を感じるものであったが、反面、教育の限界を知ることで、子ども達に対
して足りない部分を他の領域と連携し、協力する大切さが浮き彫りとなった。
方位反応(生命的視覚刺激生命的視聴覚刺激)の結果には、事前調査で高い得点 の反応を充分に期待できる児が、筆者に対しては低い結果を示し、担当保母や看 護婦の声掛けには良く反応するということがあった。このことは、児と筆者の信 頼関係が築かれていないために生じた結果と考えられた。反対に、以前担任をし ていた児は、彼らがもっていると考えられる運動能力を超える結果がみられた。
以上のことから、子どもとの信頼関係が基本であると考えられた。
重障児教育のかかわる側の資質としては、子ども達のささやかな自発的な動き や感情や要求といったものの発現をくみ取り、それを子ども達にフィードバック するといった指導やかかわりが大切であった。同時に、子ども達の僅かな変化や 発達を喜ぶといった姿勢も必要とされる。このことについて、高松(1995)は、そ の著書(地域社会と療育を考える)で重障の子ども達の自立を挙げ、些細なことで
第2節 重障児に対する指導のあり方
重障児に対する養護・訓練の指導内容としては、本研究の結果より、自発運動 の促通と原始反射の抑制を目指したものが考えられた。特に定頸を促す指導とし ては、定頸以前に発達する反応である方位反応や回旋性の立ち直り反応、坐位へ の前方への頸の立ち直り反応を促すことと思われた。
本研究の結果と、松永の乳児の定頸に至る運動発達の結果を比較すると両者の 結果の特徴の一致と差違があった。両者の違いは、運動の質と量であった。質的 な違いとは、重障児の運動は原始反射の影響を受け、運動パターンが限られてい ることである。正常パターンをもっていたとしてもそのバリエーションが少ない ことであった。健康な乳児は、四肢の交互運動や対称運動など運動のバリエーシ ョンが豊富であると報告されている。量的な違いとは、重障児の運動量は少なく、
乳児の運動量は非常に多く、自発的な運動を活発に行うといわれている。重障児 と乳児との運動の差違をどのように埋めていき、足りない部分をどう支援してい くかが、今後、養護・訓練を考えていく上で基本原則の一つになるのではないか と考えられる。
身体要因である身長や体重の結果から、思春期以降の身長の伸びに比べて体重 の増加は不良であることが示された。重障児に対する健康管理の重要性が指摘し、
食事指導の大切さがわかった。医療の領域では、OTやSTが中心となって、重 障児の食事指導の実践から理論や技法が確立しているが、教育側も医療機関と連 携,協力し、これらを活用することによって、重障児の健康管理面の質が向上して
いくものと考えられる。
第3節 今後の課題
今日の肢体不自由児教育には、多くの課題が混在している。
それは、重障の子ども達への教育の理念をどう捉えるかといった基本的な事柄 を考え直す必要にあること,学校に在籍する重障児の割合が増え、子ども達の教育 べのニーズが医療的なケアも含めて迫られていることなどがその背景として挙げ
られる。肢体不自由養護学校において重障児の割合が増え、重障児の教育は、教 育側だけではあまりに無力であり、子ども達の将来への展望がみえてこない現状 がある。子ども達の将来を豊かなものにするには、医療側や福祉側との頻繁な連 携や相互理解が必要となる。
本研究において、以下のことが今後の課題として残った。
第一に、本研究の結果や考察から導き出されたことを個々の事例に合わせて、
検証していく作業が残されている。
第二に、運動発達の面で、自発運動の量的な側面からの検討を図る必要がある。
第三に、複数の観察者や評価者で研究を進めることから信頼性や妥当性を高め る必要がある。
最後に、自分自身の実践を振り返ると、実践一記録一分析一評価一考察といっ た手順を大事にしていなかった。今回の研究を通して、この当たり前の作業をき ちんとしていくことで、重障児教育の実践研究が生まれ育つことを痛感した。子 ども達の実態を記録し書くこと、単純ではあるがこの作業こそが実践を次に高め るために必要である。今後は、さらに書く作業を怠ることなく実践を深めていく ことを大切にしたい。