6. 高齢者を取り巻く経済環境の変化
6.3. 老後の生活費比較:日本・アメリカ・ドイツ・スウェーデン
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図
16
退職給付額の推移(大卒・定年退職)注
1:大卒(管理・事務・技術職)で勤続 20
年以上かつ年齢45
歳以上の定年退職者に対する給付額。注
2:退職一時金制度のみの場合は退職一時金額、退職年金制度のみの場合は年金現価額、退職一時金制度
と退職年金制度併用の場合は退職一時金額と年金現価額の合計。
出所:厚生労働省「就労条件基本調査」
33
図
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老後の生活費に対する50
歳代までの備えの有無・内容(男女別)出所:内閣府「平成
27
年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」(https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/pdf/kourei_h27_3-4.pdf)
34
図
18 60
歳以降の1ヶ月当たりの平均収入額(税込)(男女別)出所:内閣府「平成
27
年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」(https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/pdf/kourei_h27_3-4.pdf)
第二に、60 歳以降の1ヶ月当たりの平均収入額(税込)について確認する。これを示す のが図
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である。これを見ると、大きく2
つのことがいえる。1
つ目は、我が国では30
万 円未満が全体の7
割以上を占めるのに対し、他の3
国ではその割合がより小さいというこ とである。それが顕著なのがスウェーデンであり、男性では3
割強程度しかいない。アメリ カやドイツでも4
割強~5割であり、3国とも我が国より収入が多いことがわかる。注目す べきは5
万円未満や5
万円~10万円未満といった特に低所得である層の小ささであり、収 入なしを含めて我が国が男女計で15.3%であるところ、アメリカは 10.3%であり、ドイツ
35
は
6.5%、スウェーデンに至っては 1.5%である。もう 1
つは、ボリュームゾーンの違いである。我が国におけるボリュームゾーンは
10
万円から30
万円未満の範囲であり、このゾ ーンが全体の6
割程度を占めている。ドイツは我が国に近いところがある。他方で、アメリ カでは収入層の偏りは見られない。スウェーデンではむしろ40
万円以上あるいは30
万円 以上といった高所得域がボリュームゾーンとなっている。図
19 60
歳以降の生活の主な収入源(男女別)出所:内閣府「平成
27
年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」(https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/pdf/kourei_h27_3-4.pdf)
最後に、60 歳以降の生活の主な収入源(男女別)について確認する。これを示すのが図
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である。前述の通り、収入面では我が国よりも多い3
国であったが、その収入源には違 いが見られる。我が国においては、男女計で見るとおよそ7
割が公的年金によるもので、さ らにおよそ2
割が仕事によるものである。加えて、男性の方が女性に比べて公的年金の割 合が少なく、仕事による収入の割合が多い(それぞれ10%ポイント程度)。他方で、他の 3
国のうちドイツとスウェーデンは仕事による収入の割合が相対的に小さい。特に小さいの がドイツであり、およそ1
割程度に過ぎない。日本・アメリカ・ドイツが男性の方が女性よ りも仕事による収入の割合が高い(特に日本では10%ポイント以上差がある)のに対して、
スウェーデンでは女性の方の割合が若干高いこともまた特徴といえる。公的年金への依存 度で見ると、アメリカが低く
5
割程度である。他の2
国は我が国と同程度か若干高い程度 であり、7割台である。したがって、ドイツやスウェーデンでは、我が国に比べて仕事による収入に依存せずとも、
公的年金その他の収入で我が国以上の収入を得ているということがわかる。アメリカは、そ れ以外にも私的な年金や預貯金などの引き出し、財産からの収入が合わせて
2
割程度あり、日本より多い収入はこれらの寄与も無視できないといえる。
ドキュメント内
日本の高齢者の就業行動・引退行動:パネルデータを用いた属性要因・政策効果の実証分析
(ページ 35-39)