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緩め発破適用による効率性向上に関する検討

ドキュメント内 簸麟 (ページ 67-119)

4.1概説

 前章で1発破あたりの発破面積を拡大させた大規模発破を地下空洞盤下げ掘削に適用す ることで,掘削の効率性が向上することを明らかにした.しかし,大規模発破は地質条件 が良好で,空洞掘削時の周辺岩盤の変位が小さく,空洞の安定性が高いと判断される場合 のみ適用できる工法であり,この適用条件を外れた場合における標準的な掘削量に対する 効率的な施工法を確立していく必要がある.

 一方,最近わが国の石灰石鉱山,砕石鉱山等で打掛け発破1)〜3)と称するベンチ発破が適 用されてきている.打掛け発破は以前から明かり発破において用いられてきた先行緩め発 破4)〜6),もしくは予備発破4Σ7)とも呼ばれる一自由面に対しての発破と類似したものと考え ることができ,破砕されたずりを撤去せずに,そのまま次回以降の発破を行う工法である

(以下,地下空洞内に適用した発破については緩め発破に用語を統一する).この工法を適 用することにより,明かり発破では飛石が防止できること,穿孔・装薬とずり処理が併行 で作業可能であることから,施工性が向上するなどの利点が得られている.

 九州電力小丸川発電所地下空洞では,この明かり部で適用されている緩め発破に着目し,

地下空洞盤下げ掘削の標準的な掘削工法である中割先進側壁切拡工法のうち,ベンチ掘削 となる中割部への適用を図った.本章では,実際に緩め発破を適用した場合の空洞周辺の 壁面変位計測結果等を分析することで,発破後,ずりを存置している期間における空洞の 安定性に対する影響を検証し,緩め発破の適用範囲を明らかにした.また,従来の中割部 の掘削方法と比較した場合における工程,コスト等といった施工性の観点からの優位性に

ついて検討した8).

42小丸川発電所地下空洞の概要9)〜17)

 小丸川発電所は,小丸川の支流大瀬内谷川の最上流部に上部ダム,小丸川中流部に下部 ダムを築造し,この間の有効落差約646mを約2.8㎞の水路で,毎秒222m3の水を導水するこ とにより,地下に設けた発電所で最大出力120万kW(30万kW×4台)の発電を行うもので ある.このうち,発電所本館となる地下空洞は,地表面下400mに位置し,掘削幅24m,掘 削高さ48.1m,最大長さ188.Om,総掘削量約16万m3,最大掘削断面積1,000m2を超える弾頭 型大規模地下空洞である.

 図一42.113)に地下発電所横断面図,図一42.213)に地下発電所縦断面図を示す.

川地下空洞周辺の地質状況

 発電所本体地下空洞付近は,新生代古第三紀始新世〜漸新世の四万十累層群の日向層群

(砂岩,頁岩)に貫入している木城花闇閃緑岩の幅約300mの岩脈状岩体に位置している.

図一42.315)に水路系の地質縦断図を示す.       .  花闇閃緑岩の岩級としては,電力中央研究所による岩盤分類で概ねCH級であり,部分的

にCM級が分布している.地下空洞掘削前の地質調査結果からは, CH級岩盤iの基質は一軸圧 縮強度170MPa程度,小断層又は節理間隔が5〜15cm(細区分A皿a)あるいは15〜50cm(細 区分AHa)程度,弾性波速度は5.Oc〜5.4㎞secであり,堅硬な岩盤である.

 図一42.49)に本体地下空洞掘削時に観察された切羽観察記録に基づく地質展開図を示す.

掘削中の地質観察結果からも,概ね想定どおりの地質性状であることを確認した.しかし,

当初はCH級岩盤の分布に関してAIIa岩盤が主体となり,その中にA皿a岩盤が分布すると予 想していたが,掘削中の地質観察結果からは本体空洞全体は概ねA皿a岩盤を主体としてお り,その中にAHa岩盤が分布する結果となった.調査段階では,鉛直ボーリングによる不 連続面調査に頼らざる得ないことから,高角度系の不連続面が集中することによる細区分 評価が十分でなく,AHa岩盤が連続して分布すると評価していたためと考えられる.

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図一42.1地下発電所横断面図13)

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図一42.3 小丸川発電所水路系地質縦断図15)

CM級(B)

小丸川発電所地下空洞における地質細区分表陶

B     I 15〜50c皿 b面は褐色化している

C硬 皿15〜15cmc 割れ目沿いに変質が認められる

図一424 小丸川発電所地下空洞地質展開図9)

②地下空洞支保パターン

 大規模地下空洞の初期支保設計は,岩盤i試験,初期地圧試験等の試験結果を基に設定し た解析用物性値を用いて設計した.つまり,空洞全体を平均化した代表的な岩盤と考えて いることから,局所的な地質不良部に対するリスク管理が必要となる.また,空洞全体に 分布する不連続面の位置や挙動を安全側で想定した設計を行うと,初期設計支保が増える こととなり,結果的に不経済となる.これらのことから,当地点では支保量を初期設計支 保工と情報化施工に基づく追加支保工に分けて考え,局所的に地質の悪い箇所や不連続面 によるキーブロックに対しては個別に補強対策を講じることで,必要最小限とすることを

目指した.

 初期設計時の支保工としては,吹付けコンクリート(t=16〜32cm),ロックボルト(L=5m),

PSアンカー(L=10〜15m,アンカー耐力110t)を主な部材としているが,このうち主要 な支保部材となるPSアンカーは,岩盤を平均化した均質体としてモデル化し,二次元有 限要素法を用いた逐次掘削解析から推定されるゆるみ領域を補強対象領域としている.

 図一42.5に地下空洞における初期支保パターン図を示す.

(3)地下空洞掘削工事の概要

 地下空洞の掘削は,空洞アーチ部を中央導坑先進側壁切拡工法で掘削完了した後,1リフ ト3mの盤i下げ掘削を合計13回繰り返している.図一42.5地下空洞断面図に掘削時の加背割 りを示した.盤下げ掘削は1リフトから7リフトまで中割先進側壁切拡工法で掘削しており,

緩め発破の適用はベンチ発破となる中割部に適用している.中割部の1発破あたりの規模は,

幅18m,長さ10m,高さ3m,1発破当り掘削量540m3であり,側壁部を各々3m残している.

 側壁部発破についてはホイールジャンボによる水平発破を実施しており,幅3m,高さ3m,

1発破進行長3mで掘削している.

PSアンカー

PSアンカー

鉄管路側側壁部L=mm

アーチ部L・10m

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地下空洞断面図

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OPSアンカー 12.Or㎡/本         OPSアンカー 9.Or㎡/本

●ロックボルト 3.0㎡/本      ●ロックボルト 4.5㎡/本   アーチ部支保工配置図       側壁部支保工配置図      図一4.2.5 小丸川発電所地下空洞初期支保パターン図

(4}地下空洞掘削に適用した情報化施工 a)計測計器設置状況

 緩め発破の適用にあたっては,発破後ずりを存置するため,空洞の安定性に影響を及ぼ す可能性がある.したがって,緩め発破の適用にあたっては,空洞の岩盤挙動を正確に把 握し,安定性を的確に評価していく情報化施工の適用が前提となる.今回,空洞の周辺岩 盤の挙動を把握するため,空洞長軸方向にほぼ均等に計測断面を設け,断面毎に地中変位 計,PSアンカー荷重計,ロックボルト軸力計等の埋設計器を設置し,岩盤挙動を監視す ることとした.このうち,空洞の安定性については,地中変位計による周辺岩盤の変位挙 動を中心に評価を行っている.

 計測断面は,空洞の変状を確認するとともに,解析による検証を行うための主計測断面 と空洞全体の変状を均等に把握するための従計測断面を設けた.主計測断面は,掘削断面 積が大きく,変形が最も大きくなると予想されるA,B断面及び断面形状の異なるC断面

とし,その他の断面(D,E, F, G, H)は従計測断面としている(図一42.611)参照),図 一42.711)に主計測断面Aにおける埋設計器配置図を示す.

 計測システムとしては,1}計測結果の図化処理を自動化,2}工事関係者で計測結果を共 有し,変状発生時には迅速かつ適切な分析・評価の実施を行うことを目的に,新たに計測 管理システムを開発,導入している18).

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中間調査坑

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̀−10EL 36AA^1   AD−9 AR−8 ▽AC−8    AC−9▽AR−9

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一←H地中変位計 ロ PSアンカー軸力計

→…・ロックボルト軸力計

▽ 吹付け応力計

  図一42.7 埋設計器配置図(A断面)11)

b)管理レベル・管理基準の設定      一  計測された岩盤挙動に対しては,管理レベル・管理基準を設け,空洞の安定性を定量的

に評価している.表一42.1に小丸川発電所地下空洞管理レベルと管理基準を示す.管理基 準策定にあたっては,傾向管理と絶対値管理を併用している.傾向管理としては,1日当

りの変位量を変位速度,アンカー荷重の増分をアンカー軸力増分値と定義し,前日より増 加する場合には管理レベル2に示される対策工より実施し,変位速度等が前日より上回ら ないことを確認するまで,管理レベルを上げていく手法である.したがって,変位速度,

アンカー軸力増分値に対して管理レベルを区切る管理基準は示していない.一方,絶対値 管理は,計測値の絶対量で評価し,予め定めておいた対策工実施方針に従い対処する手法 である.なお,絶対値管理の管理基準の設定にあたっては,地下空洞盤下げ掘削が鉛直方 向下向きの掘削となるため,掘削リフトと計測位置とが大きく離隔し,対策工の実施が必 要となった場合,最適箇所への対策工の施工が難しくなることも想定し,掘削リフト位置 によって次リフト以降に見込まれる変位増分を予め最終の管理基準値より減じて管理して いく手法を適用した.すなわち,事前に実施したFEM解析結果による変位発生量の予測 値等をもとに,掘削リフト位置によって最終の管理基準値より減じる処置を行った管理基 準値を策定している.

ドキュメント内 簸麟 (ページ 67-119)

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