3.1概説
従来の盤下げ掘削の施工サイクルを分析した結果,小規模発破に起因する発破退避等 のロス時間の積み重ねが,施工性を低下させている一因であることから,発破規模を大き くした場合,発破回数が減少し,施工サイクルが向上する可能性がある.一方で,大規模 発破を適用した場合,支保工完了までの無支保時間が長くなり,地質不良部を中心に空洞 の安定性に影響を及ぼす可能性があることから,その適用にあたっては地山条件等を見極 めていく必要がある.また,大規模発破の適用を考えた場合,従来,主流であった比較的 小規模な発破を繰り返す中割先進側壁切拡工法に代わり,空洞横断方向に断面分割をせず,
一括して発破を行う全断面一括工法の適用が考えられる.従来の中割先進側壁切拡工法の 適用は,分割して発破を行うことで,周辺岩盤への発破による損傷を低減することを目的 としていること1)から,全断面一括工法適用時に周辺岩盤の損傷低減に着目した発破パタ ーン選定手法を確立する必要がある.
関西電力奥多々良木発電所増設工事地下空洞盤下げ掘削1〜5リフトでは,中割先進側 壁切拡工法による比較的小規模な発破を繰り返していたが,空洞の大部分が岩盤等級CH 級以上の良好な岩盤であること,周辺岩盤の計測結果から注意すべき岩盤の範囲を掌握で
きたことから,6リフト以降大規模発破の適用を試みた.
本章2)では始めに,空洞周辺の計測結果等に基づき,大規模発破を実施し支保完了まで 多少のタイムラグがあったとしても,空洞の安定に大きく影響を与えない掘削時の指標を 明らかにした.次に,全断面一括工法を適用した場合における周辺岩盤への損傷低減に着 目した発破パターンを提示するとともに,その有効性を奥多々良木発電所増設工事地下空 洞の施工実績を基に示した.あわせて,全断面一括工法と中割先進側壁切拡工法との周辺 岩盤に与える損傷範囲が同等であることを明らかにした.最後に,実施工結果に基づき工 程,経済性の観点から,地下空洞盤下げ掘削を対象とした施工サイクルの最適化検討を行
った.
以上の大規模発破適用検討を踏まえ,一連の大規模発破適用時の施工フローを示した.
3.2 奥多々良木発電所増設工事地下空洞の概要3)〜ll)
奥多々良木発電所増設工事は,昭和49年に運転を開始した既設発電所の上部調整池と 下部調整池を現状のまま利用し,既設の地下発電所空洞に隣接して地下揚水式発電所
(36万kW×2基)を建設するものである.このうち発電所地下空洞は地表面下250mに 位置し,掘削横断面は幅25m,掘削高さ47mの弾頭型空洞で空洞延長は130mである.
図一3.2.19)に地下発電所縦断面図,図一3.2.29)に地下発電所横断面図を示す.
川地下空洞周辺の地質状況
空洞周辺岩…盤の地質は中生代白亜紀中期(110百万年〜90百万年前)の生野層群の火山 岩類に属する流紋岩を主体としており,最大幅5m程度のひん岩の貫入が認められる.ひ ん岩の貫入面近傍や破砕帯,変質帯などの狭い範囲に電力中央研究所のダム基礎岩盤分類 で,CM級以下のやや劣化した岩盤が分布しているものの,主たる地質である流紋岩の岩 盤等級はB〜CH級と良好である.
図一3.2.34)に地下空洞掘削時の地質展開図,図一3.2.44)に電力中央研究所の岩級区分に 基づく岩級分布図を示す.また,地下空洞掘削前に既設発電所横坑,調査横坑で各種岩盤 試験・室内岩石試験を実施している.このうち,表一3.2.14)に平板載荷試験結果,表一 3.2.24)にボーリングコアによる室内岩石試験結果を示す.
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図一3.2.1 地下発電所横断面図9)
空調機室5信000 8.000 9,000 8.500 9{500 9.500 8.000 6.5003250 10,500 3フ50 7,000 5,500 8,000 1,000
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図一3.2.2 地下発電所縦断面図9)
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表一3.2.1 平板載荷試験結果4)
載荷時
除 荷 時D
Es Et Es Et クリープ率kfアcm2 kfrcm2 kf/cm2 kf/cm2 kfycm2
168,000 191,000 187,000 195,000 188,000 0.⑪5
〜 〜 〜 〜 〜 〜
B級流紋岩 262,000 278,000 266,000 280,000 273,00⑪ 0.09
(ヱ96,000) (228,⑪00) (227,⑪00) (232,000) (244,00⑪) (0・07)
34,000 78,000 79,000 81,000 フ9,000 ⑪.05
q殻流紋岩 〜
P14,00⑪
〜 P60,000
〜 P60,000
〜 P60,000
〜 Q08,000
〜0.07
79,000 127,000 127,000 13仏000 160,000 (0.06 D:変形係数、Es:割線弾性係数Et:接線弾性係数 {)内数字は平均値を示す.
表一3.2.2 ボーリングコアによる室内岩石試験結果4)
流紋岩 凝灰岩 ひん岩(
B級 CH級 CM級 B級 B級
表乾比重 Gt
2.56
@ 〜・2.62
@ 258
2.49
@ 〜2、60
@ 2,56
2.49
@ 〜2.60
@ 255
2.5ヱ
@ 〜2.55
@ (2.54
2.77
@ 〜2.80
@ f2.79
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⑪.98
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@(1.36
⑪.63
@ 〜2.75
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1.02
@ 〜3.26 ミ.97
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@ 〜2.86
@ 2。36
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5.27
@ 〜5.%
@ 553
5.62
@ 〜626
@ 5.96
弾性波
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2.66
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@ 2.97}
2.19
@ 〜3.25
@ 2.84
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2.⑪5
@ 〜2.94
@ (2.64
2.60
@ 〜3.01
@ (2.87
弓1弓長強度 {ヨt(kgガcm2) 93 46 51 121 62
圧縮強度 σs(kgf〆Cmう 1,475 1,36⑪ 643 1,007 974
静弾性係数Es
@ fx1ぴk卸Cm2)
535
5.8⑪ 4」7 5.69 5.03 静ボアソン比 聡 0.22 0.23 ⑪32 0.25022
強度定数
粘着力c(kg鈎mう
160 75 150 12ユ内部摩擦角 φ(°) 49 54 63
( )内数字は平均値を示す。
(2)地下空洞支保パターン
地下空洞の支保パターンは,吹付けコンクリート,ロックボルトを基本とし,事前解 析(非線形粘弾性逐次掘削解析)より得られた補強対象領域内に仮定した崩落(抜け落ち,
すべり)岩塊をロックアンカーの導入力で支えるものとしている.アーチ部では破壊領域 の岩盤荷重をロックアンカーの導入力で支保し,側壁部ではすべり力に対してアンカーの 導入力と岩盤i自重による摩擦抵抗で支保することとした.図一3.2.58)に地下空洞初期支保 設計パターンを示す.
当地下空洞の支保パターンの設計にあたっては,建設コストの低減や工期短縮を可能 にする合理的な地下空洞建設を行うために,NATMの最大の特徴である「地山保持能力 の最大限利用」の観点から,必要最小限で初期支保設計を行い,施工時の情報化施工によ り,必要な箇所に追加補強する考え方に基づいている.したがって,ロックアンカーの配 置は空洞断面左右非対称の配置とし,事前解析からロックアンカーの配置が不要と判断さ れたアーチ部鉄管路側と側壁部放水路側については,計測を目的とした緊張力を導入しな いロックアンカーを若干配置している.
ロックボルト L=5m ・
PSアンカー L=10m 45.5tf/本 PSアンカー L=10m c・t・c・4.5m
10tf/本 、 、 、
L=15m
c.t.c.3.Om 47.5tf/本
竃嶢
1(放綱)
25000
溶接金鋼2層 PSアンカー
t・=24cm
(ブレーン2層十SFRC1層)
溶接金鋼1層
L=10m
c.t.c.6.Om
10tf/本 図一3.2.5 地下空洞初期支保設計パターン(横断面図)8)
(3)地下空洞の施工概要
掘削はアーチ部を中央導坑先進側壁切拡工法で掘削したあと,1ベンチ3m程度の盤下 げ掘削を11回繰り返して行った(図一3.2.65)参照).このうち,1〜5リフトの盤下げ掘 削においては,比較的小規模な発破を繰り返して行う中割先進側壁切拡工法にて行い,6
リフト以降全断面一括工法による大規模発破の適用を試みている.
1〜5リフトで実施した中割先進側壁切拡工法のうち,中割部の1発破あたりの規模は
幅15m,長さ10m,高さ3m,1発破掘削量450m3のベンチ発破であり,側壁部を各々5m
残している.側壁部発破については,ホイールジャンボによる水平発破を実施しており,幅5m,高さ3m,1発破進行長3mで掘削している.
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図一3.2.6奥多々良木発電所増設工事地下空洞断面図5)
3.3大規模発破適用にあたっての課題と対応
(1}空洞の安定性に関する課題と対応
大規模発破を適用した場合,発破後から一次支保完了までの無支保時間が長くなるこ とで,地質不良部を中心に空洞の安定性に影響を及ぼす可能性がある.現状の地下空洞盤 下げ掘削の実績から,地質不良等の要因により変状等が見られた場合には,1発破あたり の掘削領域を小さくし,早期に支保を実施することで空洞の安定性を図っている事例が報 告されている7).したがって,大規模発破を実施し,支保完了まで多少のタイムラグがあ ったとしても,空洞の安定に大きく影響が及ぼない適用範囲を示す指標を明らかにする必
要がある.
地下空洞の安定性については,岩盤の不連続面が地山の応力状態等に及ぼす影響など により,事前に予測することは難しい.そこで,掘削の進行にあわせて空洞壁面の切羽観 察,周辺に発生する空洞変位,支保工の健全性を各種計測機器により測定する情報化施工 を実施することにより,空洞の安定性を評価している.したがって,大規模発破適用の指 標は,切羽観察による地山評価と空洞周辺に発生した変位の計測値に着目して確立してい
く必要がある.
a}地山評価
地山評価を行うにあたって用いる岩盤分類は道路,鉄道,水路トンネルなど,その用途 別の分類方法があり,わが国においては,高速道路各社12)(東日本高速道路株式会社,中
日本高速道路株式会社,西日本高速道路株式会社)による岩盤分類,日本鉄道建設公団13)
(現,鉄道建設・運輸施設整備支援機蒲)による岩盤分類,電力中央研究所(菊池・斉 藤)14)による岩盤分類等が代表的である.また,海外においてはトンネルを対象とした岩 盤分類15)としてWickham−TiedmannによるRSR法(Rock Structure Rating),Bieniawskiによ
るRMR法(Rock Mass Rating),BartonによるQシステム等が挙げられる.図一3.3.116)に,
トンネルを対象とした日本国内および主な海外の岩盤分類の評価値の比較を示した.この なかで,国内における地下式発電所等の地下空洞の地山評価として用いられる岩盤分類と
しては,電力中央研究所による岩盤分類(以下,電中研式岩盤分類)が広く用いられてい る17)ことから,この岩盤分類を用いて,大規模発破適用の指標を策定する.岩盤分類と無 支保により許容される空洞スパンとの関係は,.主に海外の岩盤分類で示されている.この