第 3 章 メカニカルアロイングにより調製したリチウムイオン二次電池の負極用 Sn 合金
3.1 緒言
39
第 3 章 メカニカルアロイングにより調製したリチウムイオン二次電池の負極
40
Fig. 3- 1 Schematic illustration for the large volume change and pulverization of tin and silicon crystals occuring during the lithium insertion/extraction cycles.
この充放電サイクル寿命を改善するために、多くの研究がなされ積極的な微粒子化や合
金化[15-18]が試みられている。
また、いくつかの研究において、Liとの挿入脱離反応で、Snが微粒子化し結晶子サイズ が低下すること[19]やSiが非晶質化すること[20]が報告されている。我々は上記結晶子サイズ が小さくなる微粒子化や非晶質化に着目し、積極的に結晶子サイズを小さくした、あるい は非晶質化したSnやSiの合金を電極活物質に用いることで、体積膨張をより小さくしさら なる微粉化を抑制でき電極の寿命を伸ばすことができると考えた。
41
Fig. 3- 2 Sn, Si の大粒子と微粒子へのLi挿入反応の模式図
Fig. 3- 3 Sn, Siの結晶と非晶質へのLi挿入反応の模式図
Fig. 3- 2とFig. 3- 3はそれぞれSnあるいはSiの、大きな粒子と微粒子にLiが挿入した
42
場合、結晶と非晶質にLiが挿入した場合を想定して模式的に示した図である。Li挿入反応 は粒子界面で析出したLiが粒子内部に拡散して合金化反応が進行すると考えられる。大き な粒子では、表面の電界は均一ではなく、局所的にLiの析出が起き、粒子内部へのLiの拡 散も拡散距離が長いために均一には起こらず、Li との合金化が進行する境界でストレスが 発生し、粒子の崩壊・微粉化が起きると考えられる。一方、微粒子表面では大きな粒子に 比べ電界は均一でLiの析出は均一に起こり、拡散距離も短いので瞬時にLiとの合金化が均 一に起き、粒子の崩壊・微粉化を引き起こすストレスは発生しないと考えられる。また、
非晶質は原子配列の短距離秩序性はあっても長距離秩序性がないので、非晶質へのLi挿入 反応では、原子間へのLi挿入でのSn, Siの原子配列の構造緩和も容易である。これに対し、
結晶ではLi挿入時に結晶格子は広がろうとし歪が発生し結晶構造の緩和は容易でないと考 えられる。
そこで、結晶子サイズ低減や非晶質化の方法として微粒子化と合金化が可能なメカニカ ルミリング(メカニカルアロイング)法を主に採用して、リチウムイオン二次電池用負極 材料として種々の結晶子サイズが低下した合金系活物質を調製し、それらを用いた電極の 研究を行って来た[21-26]。しかしながら、合金の結晶子サイズとサイクル寿命の相関、合金 の結晶子サイズを低減しやすい添加元素については明確にすることができていなかった。
本研究では、Snを主元素とする合金系負極活物質に関わる上記課題点を検討した。