第5章総括
本研究では、地方公共団体において快適環境の形成のため取るべき手法を明らかにするために、
景観条例の枠組みと、その規定の中で運用実績が多い大規模事前届出制度と環境影響評価条例又 は要綱における景観影響評価制度を比較して、大規模事前届出制度の運用上の特徴と課題を明らか し、観光振興に関する画像情報を分析することにより、地域の景観資源の積極的な活用のための方策 等を明らかにし、これら景観資源周辺の環境整備について、安全性とし1う観点も必要であることを指摘 し、景観形成と安全性向上策との関係を明らかにした。
得られた知見を以下にまとめて総括とする。
第1章では、本研究の背景と意義、目的、論文の構成、関連の既往の研究について述べた。
第2章では、快適環境を創造していくlつの手法である地方公共団体の景観条例の枠組みと、大規 模事前届出制度の運用上の特徴と課題を明らかした。得られた知見は以下の通りである。
(1)標準的な都市や地域における景観条例は、固有事務型であり、地方公共団体の景観施策を担保 する自主的な制度として位置付けられている。固有事務型の場合、法律による担保性が弱いことと、景 観の概念、の暖味さから、罰則を設けにくし1とし1う特徴を持ち、不完全法規となる場合が多い。そのため、
固有事務型は、景観施策を担保する制度としての機能も十分に果たせないとしづ課題がある。それに 対して、複合事務型は法律によるものであり、固有事務型に比較して実効力を持つ。しかしながら、社 会的に価値が認められた景観資源を持たない都市での適用は、困難であり、京都市や奈良市等の歴 史的資源等を保有した都市に適用が限定されるとしづ課題をもつことが明らかになったo
(2)次に、景観条例の基本的骨格は、まず総則において条例の目的を明らかにし、ついで実体的規 定として景観形成基本計画策定、景観形成地区指定とし1う都市計画的手法と重要建築物認定や大 規模事前届出としち建築誘導的手法を規定し、さらに、景観協定認定や助成を与えることにより住民 等の参加を促す規定を持っていること、そして、それらは、単機能ではなく、総合的なメニューを持つこ とが望ましいことを明らかにした。また、地方公共団体が持つべき景観条例のモデルを提示した。
(3)景観条例を制定している地方公共団体へのアンケート調査からは、景観条例の効果として住民や 企業に対する普及啓発効果が重要であることを指摘した。また、多くの地方公共団体で設けられ、運 用実績も多い規定としては、大規模事前届出規定がある。この規定が、他の規定と比較して実効性の ある規定で、効果的な施策手段であることを明らかにした。さらに、課題としては、施策遂行の過程に おける住民の合意形成の手続きの簡略化が必要であることを指摘した。
(4)大規模事前届出制度と環境評価条例又は要綱における景観影響評価制度は、良好な景観を確 保してして上で、相互補完的な制度になっている。ただし、環境影響評価条例又は要綱による景観影 響評価制度については、都道府県、政令指定都市ベースで、全国的に整備が行われている反面、景
観条例による大規模事前届出制度は、必ずしも整備されていない。今後は、景観条例による大規模事 前届出制度の普及が課題であることが明らかになったo
(5)両制度は、それぞれの目的から「規範的アフ。ローチ」と「システムズ・アプローチJとしづ異なったア フ。ローチがとられている。しかしながら、実際の運用においては、大規模事前届出制度では、CG等に よる景観の予測、評価が、景観影響評価制度では、規範による助言指導が行われている。今後は、そ れぞれの制度がそれぞれの制度技術を取りこんでし骨、互いの制度の充実に努めることが課題である ことが、明らかになったo
(6)以上のことより、快適環境形成のための制度運用については、目的及び状況に応じて、「規範的ア ブローチ」と「システムズ・アフローチ」などの柔軟なアプローチがとれるような仕組みを構築していくこと の必要性を示した。
前章では、快適環境形成に苦干与してきてしも地方公共団体の景観条例の枠組み等を検討した。
第3章では、景観条例を適用してして上で、景観資源の発見の方法を提示した。すなわち、観光振興 に関する画像情報を分析し、観光資源が実は景観資源にも活用できること、したがって、快適環境形 成には観光資源の効果的な活用と整備の必要性を指摘した。得られた知見は以下の通りである。
(1)観光写真は、基本的には再現性のあるものが多いことを確認した。ただし、アミューズメント系の景 観の観光写真では再現性よりも、臨場感が求められ、その再現性は低いことがわかったo
(2)観光写真に撮影されている被写体の全体的な傾向としては、主景は人工的な要素が、その背景 または前景に自然的な要素が撮影されている。つまり、普通の地方公共団体が有してしも地形や、海 岸線等の豊富な自然資源と都市的資源の組み合わせから、観光写真の構図が構成されており、景観 資源としても重要であることを、明らかにした。
(3)撮影の時候により、撮影の視線方向が変化していることが把握できた。つまり、昼夜の時間的特徴 や季節的特徴によって、撮影された景観資源は多様であることを明らかにした。
(4)観光情報に掲載された観光写真の構図の基本特性は、『水辺』、『祭り』、『山・丘陵地』、『建築』の 4つの要素で、説明で、きることを明らかにした。それらの要素から観光写真を『水辺の景観』、『水辺と祭 りの景観』、『祭りの景観』、『自然系の景観』、『建築の景観』、『アミューズメント系の景観』の6つの景観 の構図のグループに分類しうることを明らかにした。また、従来の景観の典型構図に比べると、観光情 報で撮影されている構図では、『祭り』が特徴的な要素として位置付けられることがわかったo
(5) �建築の景観』の視点場としては、建築の全容を捉えることができる、広場や水面等の空間が建 築前面にある地点と、2点透視的に建築を捉えることができる地点が、優れていることが確認できた。
(6)視対象である観光資源周辺の地形条件を、効果的に活用して、視点場の配置に工夫を加えること によって、景観資源の演出が可能であることが確認できた。さらに、視点場の条件には視対象の見え 方だけでなく、視対象周辺の環境や、視点場へのアクセスの容易さが必要で、あることがわかったoつま り、景観資源を効果的に活用するためには、視対象及び視点場周辺の環境整備が重要であることが
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-明らかになったo
第4章では、景観資源周辺を環境整備していくことは、安全性とし\う観点も重要であることを指摘し、景 観形成と安全性向上策との関係を明らかにした。得られた知見は以下の通りである。
(1)地区の安全性を、震災時の消防活動困難区域解消の観点から評価すること目的とし、まず、街区 と街路の安全性に関する指標を作成し、数量化皿類分析を適用することによって街区、街路の安全性 評価を行った。
その結果、安全性からみた、街区の基本特性として『建築特性による危険性』と『土地利用による危 険性』の2つの因子で説明できることが明らかになったoついで、クラスター分析を適用することにより、
街区については、震災時の建物倒壊の可能性が低く、それに起因する火災の発生の可能性も低い街 区タイプ1、住商の混在による出火危険性と、建物倒壊の可能性と、それに起因する出火危険性が高 い街区タイプ2、震災時の建物倒壊の可能性が高く、それに起因する火災の発生の可能性も高い街 区タイプ3、の3つのタイプに分類することができた。
また、街路の基本特性は『震災時の消防空間確保の信頼性』と『消防水利確保の信頼性』の 2 つの 因子で説明できることが明らかになったoついで、クラスター分析を適用することにより、街路について は、震災時の消防空間確保の信頼性は高いが、消防水利確保の信頼性が低い街路タイプ1、消防水 利確保の信頼性は高いが、震災時の、消防活動空間確保の信頼性が低い街路タイプ2、消防水利確 保の信頼性と、震災時の、消防活動空間確保の信頼性が、共に低い街路タイプ3、の3タイプに分類 することができたロさらに、分類された街区と街路の関係から、街区と街路の安全性向上における関係
が見出された。
(2)そして、街区の安全性の向上させるためには、街路の安全性を向上させることが必要であるという ことが、明らかになったDさらに、地区レベノレでの安全性を評価する際の指標として、街区については、
「木造建蔽率」、「老朽木造棟数率J、「接道不良棟数率J、街路については、「幅員J、「延長に対する 震災時消防ホース到達延長比率J、「単位長さ当たりの沿道木造棟数J、「単位長さ当たりの沿道老朽 木造棟数J、「単位長さ当たりの路上駐車台数」、「架空電線敷設状況」、「沿道の防火地域指定状況J が、有効であることが確認できた。
(3)景観形成と安全性向上策の関係をみてみると、共通する点が多いことがわかった。つまり、地区の 安全性の向上のための、河川|周辺の街区、街路の整備が、景観形成においても有効であることが明ら かになったo 逆においても同様である。
安全性と快適性とし1う環境評価指標としては異なった性質で、あるが、この2つの取り組みを有機的に 連携させることにより、より効率的、かっ合理的な環境整備が可能になることを指摘したo