6. 1 本研究の要約
再滑動型地すべり研究のアプローチとしては
①地すべり再滑動の場としての地形や地質構造特性
②すべり面を含むせん断帯の構造と土質特性
③再滑動型地すべりの運動特性 の解明などがある.
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本研究では 地すべり防止対策を実施する地すべりの大半が再滑動型の地すべりであり 安定化に向けた対策工法の立案に当たっては最も重要なすべり面のせん断強度特性とその 発現機構を解明するために②をメインテーマとした.研究対象の地すべり発生の場として は,いわゆる第三紀層地すべり・破砕帯地すべり・温泉地すべり(小出(1955)112))に分 類されるもの,地すべり運動型としては岩盤すべり・風化岩すべり(渡・小橋(1987) )96)
を主なタイプとする比較的規模の大きな地すべりを対象としている.
においては,著者が 年かけて現場から採取した木片等による地すべりの年代
第1章 22
測定値を元に,地すべりの発生年代について述べ,現在の地すべり地形に占める初生地す べりの割合が 4 %程度(磯崎(1977) )であることと併せて,再滑動型地すべり研究17)
の意義を述べた.また,これまでの再滑動型地すべり研究の問題点,特に実際のすべり面 粘土を試料とした研究が少ないことなどを指摘し,本研究の目的を位置づけた.
においては,室内実験によるせん断帯の構造と実際の地すべりによるせん断帯の 第2章
これまでの研究を概観した.特に岸本ほか(199744),199845))の中距離せん断試験機に よるせん断帯の研究に注目し,野外の観察事例との類似性を述べた.せん断帯の土質特性 については,従来指摘されていた塑性指数Ipおよび粘土含有率CFと残留強度定数の φr'との相関は,個々の研究者あるいは個別の地域におけるデータにおいては相関が見ら れるが,本研究で多くの研究者のデータを総合して新たに作成した散布図では,その相関 が明瞭でないことを指摘し,その理由も述べた.また,Collotta 1989( )69)が実用的な 相関式として提案しているφr'=f CALIP( )についても概説した.
においては,地すべりによるせん断帯の構造解明は,テストピット(観測井)で 第3章
の観察とサンプリングが重要であると述べたが,すべり面深度が深い場合は,ライナ-プ レ-トを用いて掘削する必要があるため経費もかかり,ほとんど実施されていないことを 指摘した.そこで,地すべり対策工として施工される集水井に注目し,掘削時に壁面ある いは底面に現れるすべり面に対して行った,多数の観察事例を紹介した.更に,実際のす べり面において観察される地下水の湧出位置とすべり面の確定している地下水検層結果お よび岸本(1997)81)の研究を総合し,すべり面に揚圧力として働く地下水について解明 した.
一方,間接的なせん断帯の観察方法として,超音波(ボアホールテレビューア)を使っ た孔内検層を実施し,孔壁画像の解析を行った.その結果,岩盤すべりでは,すべり面の 走向傾斜や破砕層を明瞭に捉えることができ,良好な結果が得られることが判明した.
すべり面粘土の鉱物分析を線回折で行い,新第三系の泥岩・凝灰岩および温泉変質岩 を母岩とするすべり面粘土はモンモリロナイト,古第三系の泥岩を母岩とする場合はイラ イト,結晶片岩が母岩の場合はクロライト・セリサイト,御荷鉾緑色岩類を母岩とする場 合はクロライトをそれぞれ主要粘土鉱物とすることを確認し,すべり面粘土のリングせん 断特性を解明するために,この4種類の高純度粘土鉱物を選択してリングせん断試験を実 施した根拠を明らかにした.
土質試験,特に粒度分析により,すべり面粘土の粒子破砕のパターンが明らかになり,
粒度分析から地すべりに関与する粘性土かどうかの判別の可能性も指摘した.なお,すべ り面粘土の自然含水比が,塑性限界に近いことを多くの試料で確認し,リングせん断試験 の試験精度を評価する上においては,液性指数が0.2を下回る必要のあることを述べた.
においては,実際のすべり面粘土と対比するために,高純度粘土鉱物のリングせ 第4章
( ) . ( )
ん断試験による大変位 最大240cmの変位 の試験を実施した クロライト chlorite のリングせん断試験としては国内で2例目の報告である.また,変成岩を母岩とするすべ り面粘土に対比させるために,クロライトとセリサイトの混合試料,第三系を母岩とする すべり面粘土に対比させるために,モンモリロナイトとイライトの混合試料に対してリン グせん断試験を実施したが,国内では始めての試みであり,海外での報告もない.
更に,実際の地すべり運動と,対策工の工事効果を反映させるため,試験停止や上載荷 重の変更を行い,残留強度からの強度強化(回復)も検討した.高純度粘土鉱物のリング せん断試験結果で得られた知見は以下のとおりである.
① 残留強度のφr’はイライト(Illite)φr’=14.5゚>クロライト(chlorite)φr’=11.0゚
>セリサイト(sericite)φr’=9.7゚>モンモリロナイト(montmorilonite)φr’=3.8゚ となった.
② モンモリロナイトは残留強度達成後の荷重変更により,膨張圧が発生し,膨張圧 と残留強度からの強度回復には相関が認められた.
③ セリサイトは残留強度達成後,上載荷重を変更しても強度の回復はほとんど認め られなかったが,イライトは荷重変更により強度回復が認められ,クロライトも若 干回復があった.ただし,試験荷重が大きくなるにしたがい,残留強度からの回復 は小さくなる傾向があるので,すべり面深度が深い地すべりでは,強度回復はほと んどないと考えられる.
④ 残留強度は荷重変化にも関わらず,すべての試料で安定した値を示した.
⑤ クロライトとセリサイトの混合試料はクロライトの含有率 49 %を境に遷移点が あり,これを越えるとクロライトの残留せん断強度を示した.
⑥ モンモリロナイトとイライトの混合試料はモンモリロナイト含有率が 30 %を越 えるとほぼモンモリロナイトの残留せん断強度φ ’r =4.0゚の値を示し,含有率とせ ん断強度に不連続な関係がある.せん断面へのモンモリロナイトの集積に原因があ ることが走査型電子顕微鏡の観察で判明した.
高純度粘土鉱物のリングせん断試験結果のみで,その応用的な意味を判断すると,
① セリサイトを多く含む泥質片岩地すべりにおいては,残留強度に低下したのちの 強度回復はないことになるが,一般的には泥質片岩にはクロライトも含まれるた め,単純ではない.
② クロライトを多く含む御荷鉾帯緑色岩類起源の地すべり地では,すべり面深度の 浅い地すべりに対しては,残留強度からの強度回復があり得る.
③ モンモリロナイトを多く含む第三系の泥岩と凝灰岩起源の地すべりでは,すべり 面深度の浅い部分または浅層地すべりに対しては強度回復があり得る.すべり面 深度が深い場合は,回復は大きいが,僅かの地すべり滑動(数 cm 以内)でたち まち残留強度に低下するので,滑り出しには大きな水位上昇が必要であるが,一 旦すべり出すと,僅かの水位上昇ですぐに滑動を始めることが予測される.
④ イライトを含む古第三系の地すべりで,すべり面に働く有効応力が 250kPa以下 の地すべりでは,強度回復があり得る.
においては,現位置で採取したすべり面粘土のリングせん断特性を,地質ごとに 第5章
分類してその特徴を解明した.リングせん断試験に供した試料は 112 に達し,国内にお ける全てのタイプの地すべりを含んでいる.
高純度粘土鉱物の試験結果との対比(Ipとφr')では,以下の知見を得た.
① クロライト・セリサイト混合試料が緑色岩類を母岩とするすべり面粘土とほぼ同 じ値を示し,変成岩類起源のすべり面粘土残留強度定数φr'の下限値を与える.
② モンモリロナイト・イライト混合試料は,第三系(古第三系を含む)の泥岩を母 岩とするすべり面粘土に良く対応しているので,第三系泥岩のφr'はモンモリロ ナイトの含有率に大きく影響を受け,モンモリロナイト含有率が増加すると,残 留内部摩擦角は一定値(φr'=4.0゚)に近づく.
母岩の地質の違いによるIpとφr'の関係は,以下の結果となった.
① 第三系の泥岩はIpとφr'の相関が最も高く相関係数はr=0.894を示す.
② 第三系の泥岩と凝灰岩を併せてもIpとφr'の相関が認められ,相関係数は r=0.783を示す.
③ 新第三系の凝灰質砂岩は Ip とφr'の相関がやや認められるが(r=0.668),新 第三系の凝灰角礫岩も含めた細砂含有率との相関の方が高い(r=0.842).どち らも広い意味では砂岩・礫岩の部類に入るものが含まれているため,粘土鉱物に φr'が支配されるよりは,すべり面粘土を構成する石英や長石の影響を受けてい ると考えられる.なお,凝灰角礫岩は,Ipとφr'の相関がない.
④ 第三系全体では,Ip とφr'の相関は認められるが,相関係数はr=0.629 と低く なる.
⑤ 変成岩類はIpとφr'の相関は全くないが,Ipが15~35という狭い範囲に集中 し,φr'は緑色岩類を母岩とするすべり面粘土の方が,結晶片岩を母岩とする場 合より小さい傾向を示す.これは,緑色岩類に僅かに含まれるモンモリロナイト の影響と考えられる.
母岩の地質の違いによるCFとφr'の関係については,以下の結論に達した.
① 新第三系の凝灰質砂岩に相関(r=0.734)が認められるが,海外の個別の研究 者が指摘するような高い相関は,そのほかの地質では認められない.
② 変成岩類には相関は認められないが,相関係数が他の地質より高くr=0.428 を 示す.
③ Collotta 1989( )69)の提案するφr'= f CALIP( )を本研究で用いたデータで検