1.本研究から明らかになったこと
研究から以下の3点が明らかになった。
①小学校教員の「気になる児童」に対する心理臨床家の見方について 小学校教員が「気になる児童」として,心理臨床家に情報を提供 した場合,心理臨床家はその情報を「社会的ルール」,「子どもの反 応」,「友だち力」,「学校外」に振り分けた見方をしていた。
②小学校教員の「気になる児童」に対する別の小学校教員の見方につ いて
小学校教員が「気になる児童」として,別の小学校教員に情報を 提供した場合,その小学校教員はその情報をr多動・衝動」,r食事
上の問題」,「不適切な学習問題」,「家庭の影響」,「仲間関係」,「元 気がない」,「周りを支配」,「やるべきことをしない」,「望んでいる のに消極的」に振り分けた見方をしていた。
③小学校教員から見た「気になる児童」に対する,心理臨床家の把握 と小学校教員の見方の異同
心理臨床家によるKJ法では4つの大カテゴリーに,現職の小学校 教員によるKJ法では9つの大カテゴリ]に分類された。カテゴリ』
の数は両者で違いがあり,心理臨床家の方が少数にまとめられてい
る。
r望んでいるのに消極的」という大カテゴリーは小学校教員のみ の見方であった。
心理臨床家も小学校の教員もr児童の仲間との関係」r児童の様子」
「ルールを守れているか」「家庭について」日を向けている。児童に 対する同じ情報を用いた際に,作りだすカテゴリーは違うが,両者 は同じような見方をしている。
これらをもとに,本研究の仮説を検討する。
仮説:「異なる専門家同士なので,児童に対する同じ情報であって も理解は異なる。」について
上記①と②から,小学校教員が「気になる児童」をした同じ情報 のカテゴリー分けは心理臨床家と小学校教員では異なることがわか
ったが,情報の見方には共通するところが多い。よって,仮説は支 持されない。心理臨床家や小学校教員はそれぞれ心理臨床と児童教 育の専門家であるため,高嶋ら(2008)が報告しているように 教 師は「指導」「解決志向」などの視点が特徴的で,心理臨床家には「内 面に焦点を当てる」「保留する」などの視点が特徴的である という
ように,専門家独自の視点がある。しかし,両者とも児童を対象と する対人援助職であり,同じ教員の話を通じて児童を理解しようと すると,同じような見方になるのではないか。予備調査ではあるが,
小学校に勤務経験のあるスクールカウンセラーの「気になる児童」
に対する情報を,心理臨床家がKJ法分類をしてみると,研究とはち がった分類となった。
同じ情報からの見方がほぼ同じだということは,同じところを両 者で共有しながら,連携を促進していくことができる可能性がある。
同じような見方をしている内容を話題にあげながら,それぞれの専 門分野に基づく知見や意見を伝え合うことで,児童に対する理解が 広がり,学校全体としてよりよい学校教育を行っていく事につなが
ると考えられる。
3.本研究の限界と課題
はじめに,本研究の限界について述べる。
第1に,研究でKJ法分類を行ったのは,スクールカウンセラーでは なく,臨床心理学専攻の大学院生であったことである。臨床心理学専 政の大学院生は心理臨床の知識があるとはいっても,実際の学校現場 で仕事をしているスクールカウンセラーではない。現職の小学校ズク ールカウンセラーにKJ法分類をしてもらうと,ちがった分類がなされ る可能性がある。
第2に,研究では自由記述式質間紙を用いたが,回答の文章の中に は,小学校教員が書き切れていない「気になる児童」があるかもしれ ない。半構造化面接を用いて,各小学校教員に「気になる児童」を具 体的に話してもらうことで,小学校教員の印象に近い「気になる児童」
を抽出することができるのではないか。
第3に,予備調査ではスクールカウンセラーに回答を依頼したが,
研究の性質上,小学校でのスクールカウンセラー経験がある方に限定 した。その条件に合うスクールカウンセラーの人数を十分に集めるこ とができなかった。
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第4に,今回は予備調査という位置づけで行ったが,本来ならば,
十分な人数のスクールカウンセラーが見た「気になる児童」の回答を,
別のスクールカウンセラーや現職の小学校教員によりKJ法分類を行 う必要がある。スクールカウンセラーから見た「気になる児童」を知 ることにっながり,また,スクールカウンセラーからの情報を小学校 教員がどのような見方をするのかを確認することで,両者の連携促進 の一助になる可能性がある。
これらのことから,今後の課題としては,本研究の知見を基に,(a)
小学校教員の「気になる児童」の情報に対する,スクールカウンセラ ーの見方の研究,(b)小学校教員とスターノレカウンセラーのそれぞれに 半構造化面接を行い「気になる児童」の見方の異同と両者の連携促進 の方法を探る研究,(。)小学校教員とスクールカウンセラ』の話し合い から探る連携促進の研究,(d)スクールカウンセラーの「気になる児童」
の情報に対する,スクールカウンセラーと小学校教員のそれぞれの見 方の研究などが考えられる。
また,職員研修等の場を設定し,教育現場への積極的な研究成果の フィードバックと,連携に対する実践的な研究の蓄積が重要であり,
必要であると考える。
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