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総合的な学習の時間のさらなる充 実のために

ドキュメント内 Microsoft Word - 提出論文 全0227docx.docx (ページ 37-45)

 

第1節  研究の成果と課題     

①  八つの学習過程と適切な支援 

  今回の実践において,探究的な学習を充実させ ることができた要因は二つ考えられる。一つは学 習過程を八つ設定したことであり,もう一つは教 師が適切に支援したことである。この二つの要因 について考察を加えたい。 

a  八つの学習過程 

これまで,本市の小学校において取り入れられ ている学習過程は,第1章であげた「調べて,ま とめて,発表する」という三つの過程をはじめ,

「ふれる,つかむ,むかう,生かす」に代表され る四つの過程,「ふれる,つかむ,調べる,伝える,

生かす」といった五つの過程であった。それらの 過程を基に,「①事象と出会う」や「⑧学習を振り 返る」という過程を新たに設定したり,追究活動 を「⑤調査する」と「⑥課題を解決する」に分け たりした。このことにより,一つ一つの学習活動 のめあてが明らかとなり,充実した活動を行うこ とができたと考える。これまでも,事象に目を向 けたり,学習を振り返ったりする活動を行ってき た学校もあるだろうが,学習過程上に位置付ける ことにより,だれもがこれらの活動を意識できる ようになると考える。このことは,子どもたちが 主体的に学ぶ上で,必要不可欠なことである。  

また,「活動内容がわかるようにそれぞれの過 程に具体的な名称をつけたこと」「各教科等と共通 する学習過程にしたこと」によって,教師も子ど もも学習の内容がイメージしやすくなり,見通し をもって学習を進めることができた。 

b  教師の適切な支援 

  ここでいう教師の適切な支援とは,「協同的な学 びの場を設定する」「言語活動を充実させる」ため に行った指導行動のことである。今回,実際に行っ た支援は,筆者が拙稿「主体的な学びを支える総 合的な学習の時間における言語能力の育成」(30)

の中で定義した「示唆する」「引き出す」「意味付 ける」などはもちろんのこと,具体的には,以下 のものがある。 

               

  このような支援をすることによって,協働的な 学びが充実するとともに,思考も深まった。 

また,ポスターの表現様式と表現の工夫を学 び,ポスターで表現することで,自分の学びを確 かにすることができた。ほかにも,ポスターセッ ションの準備のときに国語科で学んだ「発表のし かた」を提示するなど,教師が各教科等との関連

・「パーソナルワーク→グループワーク→クラスワーク」 

というプロセスを設定する 

・活動の見通しがもてるようなワークシートを作成する 

・交流するときに思考するためのツールを提示する 

(地図や座標軸など) 

・板書を構造的に工夫する 

・コミュニティティーチャーと事前にていねいに打合  せを行い,目的を共有する      など 

を意識することにより,子どもも意識して既習の 知識や技能を活用することができた。 

「こん虫パラダイス」の学習が終わったとき,

18名の子どもが,「『総合』が好きになった。」と答 えた。「わからないことが,どんどんわかるように なったから。」「今まで,大嫌いだった虫が好きに なったから。」などと笑顔で話をしてくれた。この ことからも,八つの学習過程や支援が,探究的な学 習を充実させるために有効であることがわかる。 

今後は,この学習のスタイルを継続させていく ことが重要である。一つの単元だけではなく,今 後も同じように単元を展開していくことで,子ど もに学び方が身に付き生きた力となるであろう。

また,「総合」だけではなく,各教科等においても 同じスタイルで学習を進めることが望まれる。今 回は,第6学年の国語科の学習「学級討論会をし よう」において同じ八つの学習過程で学習を進め たが,1教科でしか実践できておらず,考察を行う までには至っていない。今後,この学習過程を全 ての教科等で取り入れることが有効かどうかにつ いても取組を進めていきたいと考える。 

 

②  学年の系統性 

  今回の実践において,「総合」が「内容」と「知識・

技能」の両面で実生活,実社会と深くつながっている ことを改めて認識できた。この両面から考察を加えて みることにする。 

a  「内容」の各教科等との関連と学年の系統性    第3学年の「こん虫パラダイス」は,理科の「B 生命・地球」の単元「3こん虫をそだてよう」「4 しぜんのかんさつをしよう(2)」と内容の関連が強 い単元であった。学習する時期もほぼ同じであっ たため,教師だけではなく,子どもも関連を意識 して学習を進めることができた。単元の最後に,

「しぜんいっぱい大作戦」を成功させるために大 切なことについて学習を行った際にも,「理科の教 科書に,アリは,アブラムシをテントウムシに食 べられないように守っていると書いてありまし た。」など「総合」で学んだ内容だけではなく,理 科で学んだ内容を発表する子どもがいた。ほかに も,社会科で学ぶ地図の内容など各教科等の内容 と関連させたことで,学びが広がった。 

また,S校では,先に述べたように第3学年から 第6学年まで「環境」についての学習が系統立てて 行われている。そのため,学校が一体となって学習 に取り組み,「環境」についての内容を段階的に積 み上げることができると考える。 

b  「知識・技能」の各教科等との関連と学年の  系統性 

今回,学習計画を立てる際に,子ども自身に,

これまで自分が各教科等で身に付けた力の中のど の力を使うのかを考えさせた。また,学習の最後 に振り返りとして,計画した力を活用することが できたかどうか,どのような力が伸びて,更に伸 ばしたい力は何かについて考えさせた。これらの 活動は,子どもたちが自分の力をメタ認知する上 で有効であった。 

  今回,小学校第1学年から中学校までの「付け たい力の系統表」を作成した。この系統表を手が かりに,各教科等との関連を意識しつつ,段階的 に付けたい力を育成したり,評価を行ったりする ことができる。規準がはっきりしているために,

だれが担任をしても,学校として一人一人の子ど もに確実に力を付けることができると考える。 

教師と子どもの両者が,「内容」と「知識・理 解」において学年の系統性と教科等との関連を意 識することで,子どもは,様々な場面で学びの有 用性を実感できた。そしてこれらの学びが,実生 活,実社会とも密接につながっていることに気付 いた。これは,「12歳の自分」の学習が終わったと き,子どもたちが自分の成長したところとして「自 分も社会の一員だという自覚がもてた。」「これか ら,ボランティア精神を大切にしたい。」「多面的 に物事を見られるようになった。」「考え方が身に 付いた。(この力は)どの場面でも使えるから,生 活にも生かしていきたい。」などの点をあげたこと からも明らかである。 

今回の実践や考察から,付けたい力を系統的に 育成することの重要性が明らかとなった。ところ が,今回実施したアンケート調査によって,系統 的に力を育成するための指針となるべきものの一 つである系統表が,多くの学校で作成されていな いことが明らかになった。そこで,今後の課題と しては,付けたい力の系統表を各学校が作成して いくことが求められる。このことは,本市の小学 校の教員が一番課題であると感じている「評価」

の問題を解決するためにも,子ども一人一人に確 かな力を育成するためにも,急務であると考える。 

 

③  単元展開の工夫 

  今回取り組んだどちらの実践においても,当初 立てた単元構想どおりに展開できない部分があっ た。そこで,それぞれの実践についての課題を考 察したい。 

a  第3学年「こん虫パラダイス」 

この単元では,急に気温が下がり生きものが姿 を見せなくなってしまい,当初計画していた観察 を十分行うことができなくなってしまった。この ことから,今後の課題として,単元を扱う時期を 再検討することがあげられる。「環境」の内容を扱 う場合,自然が相手であるので,多少のリスクは 仕方がないとしても,できるだけよい条件のもと で活動できるのが望ましい。そう考えるならば,

もっと多くの生き物が活発に活動している季節を 選ぶのがよいのではないだろうか。 

生きものが観察しにくいという状況の中で,な ぜいま,生きものが少ないのかを考えたり,図鑑 等の図書を活用して情報を収集したりしたことを 基に,もう一度「いのちの庭・あかしやの森」の 自然を観察したことは,意義のあることであった。

実際,この学習で,ある子どもはセミを観察する ことができなかった。しかし,図鑑で,幼虫は地 面の下で木の汁を吸って生活し,地上に出てきて 羽化をすることや成虫は木の樹液を吸うことを知 り,実際にあかしやの森に出かけ,地面に空いた 穴の数を数えたり,樹液を観察したりすることが できた。 

b  第6学年「12歳の自分」 

  この単元では,高齢者,障害のある人,小さな 子どもとふれあう場がなかなか見つからなかっ た。また,見つかった後も,日程調整が上手くい かず,三つのグループは別々の日に交流すること になってしまった。このことから,今後の課題と しては,できるだけ早い時期に相手先を見つけ,

打合せをすることがあげられる。 

  ふれあう場がなかなか見つからない状況の中 で,担任は熱心に相手先を探し,交渉を進めていっ た。また,別々の日に交流する活動を設定するの は,学習をする上で足並みが揃わず大変であるに もかかわらず,時間割を調整し,それぞれ2回,場 を設定することで,充実した交流を行うことがで きた。 

  以上,それぞれの実践において課題はみられた ものの,教師の熱心な思いのもと,どちらの実践 においても充実した探究的な学習を展開すること ができた。今回のように,自然環境が変わったり,

途中で困難な状況が発生したりしても,その時々 に応じ,どうすれば子どもに充実した学びを保証 できるかを考え,柔軟に対処することが大切であ ることを実感した。このような教師の姿勢が,子 どもの学びを充実させるのである。 

第2節  生きる力を育む総合的な学習の時間   

  井上が,魅力ある授業であるための条件を次の ようにあげている。 

                       

  ここにあげた三つの条件は,「総合」の学習その ものである。このような学習が「総合」において 充実するために,これまでの研究を踏まえ二つの 提言をしたい。 

 

(1)主体的に学ぶ 

  学習の主体者は,子どもである。主体的に学ぶ ことで,知識が実生活や実社会において生きて働 く「知恵」に変わるのである。 

筆者が担任をしていたとき,常々,子どもたち に「マスターキーを持ちなさい。」と言っていた。

一つの部屋を開ける鍵をいくつも持つよりも,ど の部屋でも開けられる鍵を一つ持つ方が実際的で あるということである。ここでいう「部屋」とは

「物ごと・課題」のことで,「開ける」というのは

「成す・解決する」ということである。つまり,

鍵は「知識」のことであり,マスターキーは「知 恵」のことである。マスターキーを持つためには,

主体的に学ぶことが大切である。 

では,主体的に学ぶとは,どういうことなのだ ろうか。それは,自己の考えを高め,確立するこ とである。そのために第2章で提案した「パーソ ナルワーク→グループワーク→クラスワーク」と いう協働的な学びのプロセスを大切にしたい。と いっても,プロセスを経ることが大切なのではな く,プロセスを経て自分の考えを確立したり,自 分のことを多面的に見たりできるようになること が大事なのである。パーソナルワークで,自分の 考えをしっかりともち,グループワーク,クラス ワークで友だちと交流して,考えを深めると同時

に,多面的なものの見方や「比較する」「分類する」       

(略) 

条件5  学習過程がつながっていること 

◆いろいろなことをやれる(学習活動の多様化) 

◆つながりが分かる(学習方法の手順化) 

◆感動と壮快さが広がる(達成点と連帯感の意識化) 

条件6  自分を創造できること 

◆一人が認められる(個性の尊重) 

◆一人でやれる(自己学習力の育成) 

条件7  教師と学級集団に対して輝かしく思えること 

◆役に立てる(学級集団への位置付け) 

◆発表できる(自己表現の保証) 

◆まとめて残してある(学習活動の記録化)  (31) 

ドキュメント内 Microsoft Word - 提出論文 全0227docx.docx (ページ 37-45)

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