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IV. 結  び

 本稿では,国際振替価格の実態調査あるいは実証研究を行うにあたって留意 すべき点について指摘するとともに,研究のフレーム・ワークを提示しようと

試みた。

 まず第一に,国内振替価格と国際振替価格の研究における異同について指摘 しておきたい。そもそも,国内振替価格(内部振替価格)と国際振替価格の問 題を扱うスタンスには,以下の三つがあると思う。

 ①両者を全く別の話と捉えるか(したがって,決定要因あるいは目的も別個 のものと考えるか),

 ②国際振替価格の研究は,国内振替価格の研究の延長線上にあり,国際振替 価格決定要因は国内振替価格の決定に際して考慮される決定要因よりも広い決 定要因を考慮して決められると考えるか,

 ③国際振替価格の研究は,国内振替価格の研究成果をとり入れながら,国際 振替価格独自の決定要因に関しては,独自の取組み方をするかである。筆者は,

③のスタンスが妥当ではないかと考える。

 第二に,振替価格設定にあたって配慮される「要因」あるいは「目的」とし ては,どういうものがあり,どれが重要であるかということに関していくつか の研究をレビューした。だが,研究対象と研究方法の相違により研究者によっ て「要因」あるいは「目的」の分け方もその重要度にも差がある。

 諸要因の中で,企業がなんらかの意味で操作の余地があり,かつその企業が 重要視するものが「目的」として設定されるのであろう。目的間にはトレード

・オフ関係にあるものがあり,それらの:重要度に応じて振替価格は決定される。

 国際振替価格設定では,国内振替価格の場・合によく議論される業績評価,マ ネジメント・コントロールを志向した振替価格設定よりも,むしろ節税を配慮 した振替価格設定が中心問題であろう。しかし,業績評価と節税という目的を 考えただけでも,両者の間にはトレード・オフがある。これらは,別のシステ

ムとして考えられるのではないか。また,トレード・オフのある多数の国際振

       国際振替価格研究における留意点  241 替価格設定に影響する変数あるいは目的をすべて考慮にいれて,全社的利益の 極大化や節税を考えることは技術的に可能であろうか。可能であっても実務上 どの程度行われているだろうか。地域別に分権化していたり,あるいは,各国       53)

に振替価格の設定を規制する法律があることからも,全社的な節税は困難であ

ろう。

 本稿でレビューした研究であげられていたような諸要因について,IH−2.

で触れたように,日本企業独自の状況を考慮して,いらない要因は削除し新た な要因を付け加え,要因あるいは目的の階層を想定して,日本企業のケースを 調査してみる価値は十分にあると思う。

 第三に,国際振替価格が設定されるメカニズムを解明するための手がかりに なるいくつかの研究を紹介したが,調査対象の企業をいくつかの基準でグルー プ分けして,2つのグループのどちらの方が外部要因の影響を受けやすいかに ついて論じたBurnsの研究や,政策変数と外生的要因の関係分析を行った Yunkerの研究は評価できる。

 それらの研究間の比較が困難なことや,主観的調査データをもとにしている ことなど限界があるとしても,数多くの質問票調査とインタビュー調査の積み 重ねによって,なんらかの仮説を導き出せる可能性がある。

 実態調査をするにあたっては,(1)企業の特性(業種・海外進出の段階等)に よる分類,(2)その企業が置かれている環境要因相互の関係の明確化,(3)振替 価格政策については,振替価格設定基準だけではなく,設定主体,振替価格の 修正頻度等,さまざまな点を調査すべきだろう。前節で提案したような分析フ

レームワークは一例に過ぎない。実態調査を行う過程でこれは修正される。

 第四に,こういつた研究を行う意義は,ある状況下でどのような振替価格政 策を(例えば,どの様な目的にはどのような振替価格設定基準を)とればよい かが明確になれば,振替価格政策はよりたてやすくなることにある。国際振替 価格設定目的間でトレード・オフがあるので,それらの調整は困難であるが,

その重要目的ごとに最適な国際振替価格を考察することができよう。ただ,再

53) Tang (1992) p. 23.

242 蜷木實教授追悼号(第276・277号)

卒すれば,企業の価格操作の可能性を規制する法律のために国際振替価格政策 がかなり引きずられ,さまざまな目的の達成が抑制される傾向があることは否 定できない。したがって,移転価格税制の動向を調べる必要があろう。

〈付記〉本稿は,平成4年度科学研究費補助金(奨励研究(A))による予備的研究の一 部です。拙稿執筆にあたっては,会計フロンティア研究会,神戸大学管理会計研究会 における研究報告の席上において,諸先生方より有益なコメントを戴きました。ま た,後藤實男先生には特にお世話になりました。ここに謝意を表明します。限られた 紙面で十分な結果を示せておりませんが,戴いたコメントを参考に質問票を作成し,

インタビュー調査をするのは将来の課題です。

       【参考文 献】

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Burns, J.O.,  Transfer Pricing Decisions in U.S. Multinational Corporations , Journal of   International Business Sutudies, 11. Fall, 1980.

Kim, S.H. & S.W. Miller,  Constituents of the lnternational Transfer Pricing Decision   Columbia Journal of Business 14. Spring, 1979.

Salem, A.,  A Study of Determinants of Transfer Pricing in Multinational Corporations :   The Case Between U.S. Parents and the Egyptian Units , The University of   Mississippi, Ph. D. 1986, University Microfilms lntemational, 1988.

Shulman, J.,  When the Price is Wrong−By Design , Columbia Journal of World Business,

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  1983,

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大河原健&ジョージ・カールソン「米・移転価格のチェック強化」日経新聞,1992年4月9   日。

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