本研究は、チャージアンプを用いた新しい表面計測手法の開発を目的として
自作UHVのnc-AFM/STM装置にチャージアンプを組込んで計測を行った。
第2章ではSPM技術の中でSTM、AFM、nc-AFM、およびKPFMの計測原理 について説明し、その装置構成を示した。また、周辺技術について紹介し、本 研究で使用した力センサー(qPlusセンサー)の特徴を詳細に説明している。加 えて、上記のSPM技術を基盤とした応用例を示した。
第 3 章ではチャージアンプの原理について解説し、本研究でのチャージアン プ出力モデルを示した。また、チャージアンプ出力への理解を深めるために、
チャージアンプの計算モデルを、回路シミュレーションソフトLTSpiceを用いて 構築し、その入出力特性を示した。加えて、チャージアンプ出力像および出力 信号を解析するために、使用したHQA-15M-10Tの正確な計算モデルとしてフィ ッティングを行った。
第 4 章 で は 、観 察し た 試 料 の 調整 方 法に つ い て 述べ た 。Si(111)お よ び ZrB2(0001)/Si(111)の清浄表面を得る手順を示した。
第5章では、計測結果を示し、第6章では結果の考察を行った。Si(111)清浄表 面での観察は、主にチャージアンプの出力特性を実証するものである。これに より、チャージアンプ出力がCTS、VCPDおよびそれらの変化分ΔCTS、ΔVCPDの寄 与によるものであることがわかった。ある VCPD分布をもつ表面上で距離を変化 させてチャージアンプ出力の変化を計測することでΔCTSおよび、それを積分し て得られる CTSを距離に応じてプロットすることができることが示されている。
加えて、KPFMの観察結果と照合することでチャージアンプ出力からCTSを見積 もることができることを示した。さらに、静電容量の変化曲線から、探針の形
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状および探針‐試料間の距離を推定できる可能性を示した。
800 oCでアニールして得られるZrB2(0001)/Si(111)上のシリセンのnc-AFMと STM 観察から、探針の近接による引力でシリセン薄膜が柔軟に動いていること がわかった。絶縁性の膜が覆った探針を用いて衝突させて取得した Δf-z カーブ と、同時に取得したチャージアンプ出力から、探針-シリセン間、およびシリ セン‐ZrB2(0001)間でそれぞれ電荷移動相互作用が起こっている可能性を見出 した。これによりチャージアンプを用いた電荷移動相互作用の検出手法となり 得ると考察した。
本研究で取得されたチャージアンプ出力によるデータはすべて探針‐試料間 電圧を 0 V にして計測されたものである。得られた結果のまとめとして、チャ ージアンプの広い帯域特性から、KPFM に代わり接触電位差を計測する高速な 表面計測手法として確立できることを示した。また、表面の電荷分布の揺らぎ や、電荷移動の兆候の検出など、チャージアンプを応用した物体表面の局所的 電子状態変化や物体間の相互作用検出の可能性を見い出した。電荷の揺らぎや 電荷移動といった、物体の成長や化学反応に重要となる因子を解析できる計測 法の開発は、将来のボトムアップ技術には不可欠である。現在までに取得し、
解析したデータから、2つの近接する物体間で起る電荷分布変化の解析に向けた 新たな計測手法としての可能性を拓くことができたと考えている。
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謝辞
本研究を行うにあたり、主指導教員の富取正彦教授には的確なご助言や研究 方針のご指導を賜りました。5年間の研究生活では、必要な物品等を快く揃えて 頂き、不自由なく研究に邁進できました。博士前期・後期課程の研究生活を支 えて頂き、誠に有難うございます。
笹原亮助教には、試料の調整法や実験装置の使用法について丁寧なご指導を 賜りました。また、お忙しい中にも関わらず、私の研究について幾度となく議 論を交わして頂けたことを、ここに深く感謝いたします。
また、主テーマ研究と副テーマ研究の関連から、副テーマ指導教員の高村由 起子准教授からはシリセンに関するご助言およびご協力を賜りましたことを心 より御礼申し上げます。
ここに、本紙面をかりまして謝辞とさせていただきます。
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業績
( 1 ) 国内学会
野上 真、新井 豊子、笹原 亮、富取 正彦、チャージアンプを用いた
NC-AFM/STM による電子状態解析、応用物理学会 北陸信越支部学術講演会
(2012.11)
野上 真、新井 豊子、笹原 亮、富取 正彦、チャージアンプを用いた非接 触原子間力顕微鏡による表面状態解析、応用物理学会 北陸支部学術講演会
(2012.12)
野上 真、新井 豊子、笹原 亮、富取 正彦、チャージアンプを用いたNC-AFM による探針試料間相互作用の検出、応用物理学会 春季学術講演会(2013.03) 野上 真、新井 豊子、笹原 亮、富取 正彦、チャージアンプを用いたnc-AFM による表面状態観察、応用物理学会 北陸信越支部 学術講演会(2013.11) 野上 真、新井 豊子、笹原 亮、富取 正彦、チャージアンプを組み込んだ
NC-AFMによる表面状態解析、応用物理学会 春季学術講演会(2014.03)
野上 真、新井 豊子、笹原 亮、富取 正彦、NC-AFM に組込んだチャージ アンプの出力解析、応用物理学会 秋季学術講演会(2014.09)
野上 真、新井 豊子、笹原 亮、富取 正彦、NC-AFM に組み込んだチャー ジアンプと電流アンプ出力の同時計測、応用物理学会 春季学術講演会(2015.03) 野上 真、新井 豊子、笹原 亮、富取 正彦、チャージアンプを備えたnc-AFM による表面電子状態解析、応用物理学会 春季学術講演会(2016.03)
( 2 ) 国際会議
Makoto Nogami, Tatsuya Sakuishi, Hiroaki Ooe, Toyoko Arai, Akira Sasahara, Masahiko Tomitori, Analysis of surface electronic states using nc-AFM with a charge amplifier, NC-AFM international conference 2013(2013.08)