本研究で得られた結果について以下にまとめる。
(1) 北海道内に生育する天然生のアオダモについて地域的な材質変異を明らかにするた め,各強度指標の分散分析を行ったところ,バット重量,反発係数の指標であるSG
と5%LBSについて有意差が検出された。一方,バットのしなり,折れにくさの指標
であるMOEとMORについては有意差が検出されず,今回対象とした胆振・日高地 方について曲げ性能に関わる指標の地域的な材質変異は小さいことが示唆された。
(2) ARWが2㎜を超えるアオダモについて,ARWとSGの間に相関は見られなかった。
年輪幅の広い厚真産アオダモでは,孔圏幅も広く孔圏道管径が大きいことが観察され,
このことが,ARWが増大しても SGが増加しなかった要因であると考えられた。
(3) アオダモのARWと他の強度指標の関係について,既往の研究よりARWの広い範囲
(>2㎜)についても U を除いて顕著な関係性が認められず,また,極めて肥大成長の
良好な厚真産アオダモの強度特性が天然生アオダモに劣らなかったことから,アオダ モの人工造林において速い成長速度とバット材に適した材質の両立が可能であるこ とが示唆された。
(4) 主要なバット用樹種であるアオダモ,ホワイトアッシュ,シュガーメープルについて,
各強度指標の分散分析を行ったところ,G,Ed,MOE,MOR,5%LBS,CS,SSに ついて有意差が検出された。特に,MOE,MOR,5%LBS といったバット性能に関 わる強度指標について樹種間差が顕著であった。各樹種の材質的特徴をまとめると,
3 樹種間に比重(操作性,スイングスピード)の点で差はないが,アオダモは打球時に しなりやすく,材表面が硬いため反発係数が大きい,シュガーメープルはしなりにく いが材表面の硬さは他に劣る,ホワイトアッシュはアオダモとシュガーメープルの中 間的な材質を持つ,と評価することができた。
(5) プロ野球・大学野球バットの試験結果から,実際の製品に用いられている材料は天然 生アオダモの中でも比ヤング率(MOE/MOR)の値が大きな材であることがわかった。
このことは,バット製造の現場において比ヤング率の大きなものが選択的に使用され ていることを示す結果となったが,同時に,天然生アオダモのうちバット材に適した 材質を持つ個体の割合が低いことも示唆していた。したがって,今後アオダモ育成を 行う場合には比ヤング率による優良木の選抜が有効であることが示唆された。
謝辞
本研究を進めるにあたり,木材工学研究室の平井卓郎教授,佐々木義久技官,森林資源生物 学研究室の矢島崇教授,福長絢一郎氏,樹木生物学研究室の佐野雄三助手には平素からご指導,
ご助力いただきました。また,木材工学研究室の院生,学生諸氏には多大な協力をいただきまし た。そして,本研究室の小泉章夫助教授には3年間終始一貫してご指導いただきました。最後に,
㈱北海道バット産業の西村勝宏氏には試験材料のほとんどを提供していただき,さらに貴重な助 言を賜りました。本研究に協力していただいた全ての皆様に深く感謝の意を表します。