本研究で明らかになったことを以下に箇条書きで記す。
1.液体窒素トラップは、油拡散ホ.ンフ.の油拡散を=ントm一ルし、真空糟や試 料を清浄な状態に保つ。
トラップをかけた試料とそうでない試料を用いて、表面プラズモンの励起角 を測定すると、トラップをかけた方が、かけなかった試料より小さい角度で励 起することがわかった。トラップをかけないで蒸着し薄膜を作製すると、試料 には、油拡散ポンプからの油が付着し、その油がいわゆる多層膜のような状態を 生み出し、複雑に作用して小さい角度で励起するものと思われる。また、油拡 散ポンプの構造上、液体窒素トラップを取り付けると排気効率があがり、目標 真空度に早く到達した。
2.表面プラズモンの励起角には、膜厚依存性、入射レーサ㌧の波長依存性がある。
膜厚が厚くなるにしたがって小さい角度で励起し、波長の長いレーザーに対し て小さい角度で励起する。
波長の異なるレーザーを薄膜に入射した結果、波長の長いレーザーに対して 小さい角度で励起する事が分かった。励起波数は振動数に比例する事から、予 想された結果であった。実験値から求めた曲線は、理論値から大きく逸脱した ものであった。考察の結果、この原因は水晶振動子法による膜厚と励起物質で ある銀の誘電率にある事が分かった。
3.真の膜厚d は、次の式で求められることがわかった。
d : O.77 ×di・ig
(d:水晶振動子法の膜厚)
昨年から、問題視されていた水晶振動子法の校正を行った。水晶振動子法に よって測定された膜厚は、その性格上、基盤に蒸着された肉厚ではなく振動子 に蒸着された膜骨である。また、熱源からの影響も受けやすいという欠点も持 つ。表面プラズモンの励起角から判断してもその信頼性には疑問があった。水 晶振動子が測定する鬼魅は、重量膜様である。異なった種類の測定法での校正 が望ましいので、校正には光学膜厚を測定する偏光解析法を用いた。偏光解析 法は、薄膜自身の膜厚を測定するため、高い精度が得られる。同じ試料の膜厚
を二通りの方法で測定し、互いの相関を見つけた結果が、上式である。
4.表面プラズモンの励起波数から、銀の誘電率が薄膜の状態とバルクでは異 なることがわかった。
表面プラズモンの実測励起波数は、膜厚が十分厚いときは銀の誘電率の実数 部にsr=一198を採用した理論励起波数に非常に近づくが、薄いところでは相関
は非常に低い。誘電率はプラズマ振動に関係し、プラズマ振動は原子の数密度 などに関係するから、薄膜の状態とバルクでは誘電率が異なると考えられる。
そこで、実験値に近づくように、銀の誘電率を変化させていったところ、膜厚 と誘電率の関係が明らかになり、2000A付近までは急激に変化するが、膜厚の 薄いところでは一定値に近づくように振る舞う事が分かった。
5.真空蒸着法で作成された試料表面の様子は、400A付近を境にして異なるこ とが明らかとなった。本研究においては、400A付近で薄膜の生成過程が島状膜 が平行膜へと進んで行くものと考えられる。
今後、島状膜(薄い膜厚の場合)と平行膜(十分厚い膜厚の場合)のそれぞ れの場合に励起する表面プラズモンを考える必要がある。また、真空蒸着の極 限である島状膜の性質は研究対象として非常に興味ある分野である。
本研究ではデータを平均化して用いたが、島脳膜におけるデータを収集する とき、平均化することで微細な情報が隠れてしまった恐れがある。今後、研究 を進める際には、この点に留意したい。
本研究の結果、表面プラズモンには誘電率や膜厚依存性がある事が分かった。
この事は、表面プラズモンを用いて、薄膜の変数を決定することができるとい うことを意味している。今後、表面プラズモンを用いた計測器への応用が期待
できる。
参考文献
1 ) H. Rather
Surface Plasmon osillations and their applications
Physics of Thin Film, ed. G. Hass et al/
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2)福井萬夫、原口雅宣
全反射減衰法による旧記。表面物性の評価 日本物理学会誌 第43巻 11号(1988)862−868
3) Charles Kittel
キッテル固体物理学入門 上 丸善 4)片山茂樹
全反射減衰法による表面励起子の研究 兵庫教育大学学位論文(1993)
5) Richard P. Feynman
ファインマン物理学
岩波書店
6) Richard P. Feynman
ファインマン物理学
岩波書店
光熱波動
電磁波と物性
7)金原栞 藤原英夫
薄膜
応用物理学選書 3 裳華房 8)金原栞
薄膜の基本技術
物理工学実験5東京大学出版会
9)堀JII源一
真空技術
物理工学実験4 東京大学出版会
10)玉井輝雄
接触技術におけるエリプソメトリの有効利用
11)吉田貞史
薄膜;
応用物理工学選書3 培風館
12)小島誠治・澤田昭勝・中村輝太郎 固体の諸性質 Soloid State Physics 東海大学出版会
謝辞
本論文を完成させるにあたり、佐藤光先生には実験の方針、立案、論文の まとめに至るまで丁寧に指導していただき、心よりお礼申し上げます。
ドイツに渡られた庭瀬 敬右先生には、励ましのお手紙をいただき勇気づけ られました。白木原 康雄先生、石原 諭先生、本間先生には日頃からご助言、
励ましのお言葉をいただきありがとうございました。
玉井 輝雄先生には、偏光解析装置の使用法、原理にいたるまで丁寧に指導 していただき、本論文を作成する際にも多大なご助言をいただき心より感謝い たします。西村 年晴先生には、お忙しいにもかかわらず時間を割いて、走査 型電子顕微鏡の使用法等を教えていただき、ありがとうございました。
井田 明人さんの作成されたシグナルアベレージャー解析プログラムのおか げで本研究をスムーズに進める事ができました。コンピュータの活用法などを 伝授してくださった物理研究室の諸兄に感謝いたします。
先生方、院生、学部生のみなさんのおかげで、充実した時間を過ごし、研究 に励むことができました。皆さんのおかげでこの論文を完成させる事ができま
した。