第五章 Y字に枝分かれする放電路の光強度の推移について
5.3. 解析・考察
5.3.3. 各放電路の光強度の和と、キルヒホッフの法則の比較について
次の図 5.6 に、図 5.2 における放電路 A と放電路 B の和と、放電路 C を比較したグラ フを示す。
図 5.6 放電路 A+B と放電路 C の光強度の比較
放電路 A・B・C が、右の図のように分岐していると仮定するならば、キルヒホッフの法 則により IA+IB=IC のように各放電路で電流の和が成り立っているはずである。また、光強 度もそこで流れる電流に比例していると仮定すれば、光強度で LA+LB=LC が成り立つはずで あるが、図 4.6 では A+B の波形と C の波形では、パルスのタイミングはほぼ完全に一致し ているにも関わらず、波形の大きさ・絶対値では一致していないことが読み取れる。
そこで、各放電路が結合する場合は、電流においては IA+IB=IC、光強度においては LA+LB>LC が成り立っているとして、次の図 4.7 に述べる一次方程式による光強度の和の補 正式におけるαとβを仮定した。
図 5.7 放電路における光強度の和の補正式の仮定
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2012/11/14 の落雷と 2012/12/8 の落雷の放電路における 4 例の Y 字放電で、各波形を 5
~10 ブロック程の区間に分けてαとβを決定した。その結果を次の図 5.8 に示す。
図 5.8 各例での光強度の和の補正式α・βの推定
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次の図 5.9 に、先の図 4.8 のグラフより求めたαとβの値のヒストグラムを示す。ただ し、2012/12/8 の落雷の C・D・E の放電路のように、高速度カメラの出力が飽和していると 考えられる点は除外した。
図 5.9 αとβの値の分布
今回の解析では、図 4.8 におけるブロックの分け方にも依存するが、αとβの最頻値を 求めることができた。
放電路 C が放電路 A と B に分岐する際には、光強度においては単純にキルヒホッフの法 則で LA+LB=LC は成り立たず、(LA+LB)*β=LC+αの補正式が必要になる。その値はα≒0、
β≒1.3 であることが、今回の解析で分かった。
図 5.7 のグラフから分かるように、(LA+LB)*β=LC+αの補正式において、α>0 であるこ とは、放電路の進展を考える上では、「一度形成された放電路では、電流がなくてもある程 度光る」現象のことを意味する。放電路上か空間上に何らかのキャパシタンス成分が存在 していたことが考えらえる。また逆に、α<0 であることは、「ある程度以上の電流が流れな いと発光を始めない」現象のことを意味する。これに対しては、放電路上に何らかのリア クタンス成分が存在することや、暗流の成分などが考えられる。
今回解析したαの値は、最頻値はα≒0 であったが、今回の四例の結果においては、-45 から+30 まで分布していた。α>0 の効果とα<0 の効果の両方が起こっていたと考えられる が、その割合はわずかにα<0 の方が大きかった。
βの値はほとんどのフレームでβ=1.3 が成り立っていて、ほぼすべての個所でβ>1 であ った。また、βはαに比べて振れ幅も少ない。αと同様にβの値を考察すると、
(LA+LB)*β=LC+αの補正式において、β>1 であることは、「放電路が結合すると導電率が 下がる」現象のことを意味する。これもα同様に、放電路のリアクタンス成分による非線 形成や、ピンチ効果などが原因として考えられる。
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図 5.6 の波形の例からも分かる通り、各放電路の光は弱くなっていても、パルスの位置 はほぼ完全に一致しているため、何らかの形で流れ続けていることが想像できる。また、
今回求めたα・βの値の分布は、(M. Zhou et al; 2014)などで行われている研究の知見とも ある程度一致する。すなわち、放電路の光強度がそこで流れる電流に比例していると仮定 すれば、放電の過程において導電率が変化していると考えられる。
次の図 5.10 のグラフは、2012/11/14 の落雷の各放電路で、光強度(A+B)-C の表している。
図 5.10 2012/11/14 の落雷における光強度(A+B)-C
この図 5.10 の波形は、各枝の光強度が LA+LB=LC の仮定からずれている量を表す。仮に キルヒホッフの法則により、LA+LB=LC が完全に成り立っているとしたら、この波形がゼロ 点の一直線になるはずである。
この波形をゼロ点の一直線に補正する式が(LA+LB)*β=LC+αであるが、この図 5.10 にお いて、放電路が形成されたばかりの前半部分は上下への細かい変化が多いが、後半になっ てくると変化が安定してくるという傾向を見ることができる。
今回解析した4例の Y 字放電路のすべてで、この性質を確かめることができた。この結 果も、放電の過程によって導電率が変化し、その結果αとβも序盤はよく振動する、とい う効果を裏付けることができる。
また、放電路の導電率が放電のステージによって変化する、と仮定した場合、その導電 率が変化する境目は、各放電路の Y 字の分岐点であることも、今回の観測結果から分かっ た。次の図 4.11 に、放電路 A だけが強く光った例、放電路 C だけが強く光った例の画像を 示す。放電路の分岐点においては、電荷の流入量が急激に変化するため、先に述べたリア
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クタンスやキャパシタンスの成分が大きくなっていると考えられる。
図 5.11 2013/4/30 の落雷 (1)分岐点を境に、放電路 A だけが強く光る例 (2)分岐点を境に、放電路 C だけが強く光る例