本研究は、 高レベル放射性廃棄物の地層処分 における障壁材中の核種移行 挙動を、 核種の拡散挙動、 障壁材の構造および核種の熱力学的側面から究明 したものである。 本論文の第2章では、 完全閉じ込めを期待されて いる障壁
材である鉄製オーノミノてックの腐食に伴う、 鉄イオンの緩衝材中での拡散につ いて実験を行い、 それが核種の移行に与える影響について検討した。 第3章 では、 緩衝材中のプルトニウムの拡散について の実験を行い、 緩衝材がプル トニウムの移行に対する障壁として充分な性能を持つことを示した。 第4章 では、 処分場の補強材であるコンクリート中への核種の浸透について実験し、
核種の拡散経路を考慮して拡散挙動を検討した。 第5章では、 地層処分の最 終障壁となる岩石、 特に花両岩の障壁としての 性能を収着挙動について実験 し、 その機構を検討した。 第6章では、 花両岩マトリックスへの核種の拡散 について実験し、 核種の拡散挙動を花岡岩の微細構造を考慮しながら検討し た。 各章で得られた本研究の成果は以下の通りである。
(1)ベントナイト系緩衝材中の鉄の移行に関する研究 (第2章)
1 )これまで、 ベントナイト系緩衝材中での核種の移行挙動の研究はベン トナイトと石英砂等の混合物中での核種の移動のみに注意がはらわれ て きた。 しかし、 実際の処分場では、 鉄製オーバパックが緩衝材中で腐食 して いる状態、で核種の移行が起こる。 そ こで、 本研究では、 まず、 ベン トナイト系緩衝材中での鉄の拡散挙動について、 バルクの鉄が共存する 系としない系において、 ベントナイトの充填密度、 混合物の影響に着目 しつつ実験し、 拡散係数を測定した。 その結果、 バルクの鉄 を含まない 系での鉄の拡散係数が10・15---10・14m2jsで、あるのに対し、 バルクの鉄共存系 では10・12m2jsと2ないし3桁高い拡散係数を得た。 この速い拡散係数はベ ントナイト 系緩衝材中のセシウムやストロンチウム等の陽イオンの拡散 係数と同程度の拡散係数であった。
2)鉄の熱力学データを用いて、 ベントナイト系緩衝材中での鉄の拡散種 について検討した。 熱力学 データに よって計算された鉄の化学形は、 バ ルクの鉄を含まない系では中 性の水酸化第2鉄もしくはその陰イオン錯
体、 バルクの鉄共存系では2価の鉄イオンであった。 これらの鉄の化学 系から、 ベントナイト系緩衝材中の拡散挙動に ついて次のよ うに考察し た。 バルクの鉄を含まない系では、 ベントナイト系緩衝材中の鉄は酸化 された状態(3価)で存在し、 pH8--9に化学的に緩衝された空隙水 中で加水 分解される。 生成した水 酸化錯体は分子が大きく、 緩衝材中の 毛細管空隙において漉過効果により移動を妨げられる。 陰イオン錯体と して存在する場合 には、 さらに、 ベントナイト表面の負の電荷によって 排斥をうけ拡散経路を確保 できない。 したがって、 バルクの鉄を含まな い系において鉄の拡散は極めて遅くなる。 一方、 バルクの鉄が共存する 系では、 バルクの鉄が常に腐食することにより系内が還元状態で保た れ る。 この状態では 鉄は溶解度の高い2価のイオン状態、で存在できる。 ベ ントナイト表面は負に帯電しており、 毛細管空隙中の水は電気2重層を
形成し、 陽イオン濃度の高い拡散層となっている。 陽イオンとなった 鉄 は、 この拡散層中を拡散することができ、 セシウムやストロンチウム等 の陽イオンと同等の拡散係数を得ることができる。
3)石英砂の混合と充填密度の影響について、 バルクの鉄を含まない系に おいては、 密度が低く石英が混合されているほど拡散 し易くなる。 これ は、 ベントナイト密度の低下によって拡散経路が確保され易くなるため であると考えられる。 バルクの鉄共存系ではベントナイト表面層を拡散 するため密度の影響をあまり受けない。
4)バルクの鉄共存系にお いてウランの拡散係数の測定を試みた。 バルク の鉄共存系ではウランの拡散係数は10・14m2/s程度となり、 酸化性雰囲気に おける拡散よりも遅くなる。 これは、 ウランが還元され溶解度が低く な るためと考えられる。 鉄の拡散よりも2桁遅いことから、 ウランが鉄コ ロイドによって運ばれる現象は起きていないと考えられる。
(2)緩衝材中のプルトニウムの拡散に関する研究 (第3章)
1 )ベントナイトとして、 精製ナトリウムベントナイト、 それを塩酸処理 したH型ベントナイト、 山形県月布産、 青森県黒石産ベントナイトを用 い、 プルトニウムの拡散係数を測定した。 結果として、 精製ナトリウム
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ベントナイト、 月布産ベントナイト中のプルトニウムの拡散係数として 10・14m2/s以下、 H型ベン トナイト、 黒石産ベントナイトについて10-13---10・12m2/sという値を得た。
2)
H型ベントナイト中のプルトニウムの拡散係数は、 充填密度依存性を 示し、 密度増加とともに拡散係数は減少する。 また、 日型ベントナイト への石英砂、 赤鉄鉱の混合の効果は見られなかった。3)精製ナトリウムベント ナイト、 H型ベントナイト中の空隙水の性状を 実験により推定した。 精製ナトリウムベントナイト中の空隙水のpHは8---9、 Eh (酸化還元電位)は約0.3V、 H型ベントナイト中の空隙水のpHは 約五Ehは0.6Vであった。 これらの値から、 プルトニウムの化学形を、
精製ナトリウムベントナイト中ではPU02+、 H型ベン トナイト中では PU(OH)3+と推定した。
4)プルトニウムが陽イオンであるにも 関わらず拡散が極め て小さい理由 として、 これらの空隙水の条件ではプルトニウムの溶解度が極めて小さ く表面拡散が有効に作用しないことが考えられる。
(3)コンクリート中の核種の移行に関する研究 (第4章)
1 )コンクリート中のセシウム、 ストロンチウム、 コバルトの拡散係数を 浸入実験によって測定した。 従来、 この方法で測定された濃度分布は 、 表面付近に急な勾配、 深い部分で緩やかな勾配を持ち、 単純な拡散モデ
ルでは解析できなかった。 多くの研究者は、 その分布を単純な拡散モデ ルで別々に解析し、 早い拡散係数と遅い拡散係数を得ていた。 本研究に おいては、 コンクリートの微細構造を、 電子顕微鏡(SEM)観察、 水銀圧入 法を用いた細孔径分布の測定によって検討し、 拡散経路として次の2つ を考慮した拡散モデルを作成した。 核種の拡散経路は、 SEMによって観 察されるセメントペースト部分の幅数μmの亀裂と、 測定された細孔径 分布から予想、されるコンクリートマトリックス 中の毛細管空隙の2つ が 考えられる。 この2つの拡散経路からなる拡散モデノレを作成し、 濃度分 布を説明することができた。 すなわち、 表面付近の急な濃度勾配は、 溶
液から直接コンクリートマトリックスの毛細管空隙に拡散するものの分
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『唱咽,
布であり、 毛細管空隙中の拡散であるため遅い拡散である。 一方、 深い 部分の緩やかな 濃度分布は亀裂を介した早い拡散である。
2) 2種の 骨材と2種の混和材によるコンクリートへのセシウム、 ストロ ンチウム、 コバルトの収着係数の変化をバッチ法によって測定した。 セ
シウム以外の核種には大きな 収着係数の変化は 見られ なかった。 セシウ ムについて は、 砕砂を骨材としたコンクリートの収着係数が、 人造エメ リーを骨材とした ものより約l桁高かった。 これはセシウムがシリカと 反応し易いためであり、 シリカ分の少な いエメリーの収着係数が小さく なったものと考えられる。
3)収着係数が異なるコンクリートであるにも関わら ず、 コンクリートマ トリックス中の拡散係数は同じオ ーダーであった。 このことから、 マト リックス中の核種は吸着された状態で拡散する 、 いわゆる表面拡散をし ている可能性がある。 一方、 亀裂内の見かけの 拡散は吸着が大きい程小 さくなる傾向を示しており、 マトリックスへの拡散によって 遅延を受け ていることが分かった。
(4)花両岩中のウランの収着に関する研究 (第5章)
1 )地層処分の最終障壁である岩石(特に花両岩)中の核種の遅延に関わ るパラメータの測定を行った。 バッチ法によって測定した稲田産花筒岩 へのウランの吸着係数はpH6'"'-'7付近で極大値を持つ。 花両岩構成鉱 物へのウランの吸着係数は、 いずれ も、 pH6'"'-'7付近に 極大値を持ち、
これら鉱物へのウランの吸着のpH依存性は、 鉱物の種類よりもむしろ 溶液のpH依存性によって支配されていると考えられた。 鉱物の中で黒 雲母が最も吸着が大きく、 他の鉱物(長石、 石英)よりも約l桁大きな 吸着係数を持つ。 吸着係数の大きさは鉱物の比表面積と相関があると考 え られた。 また、 中性付近において、 ウランの吸着係数の炭酸濃度依存 性を調べた結果、 炭酸濃度の上昇と共にウランの吸着係数は低下した。
2)溶液中のウランの化学形を地球化学計算コードPhreeqeとOECD川EAの 熱力学データベースを用いて評価した。 支配的な 化学種は、 低pHでは ウラニルイオンやその水酸化錯体、 中性付近から高pHにかけては炭酸
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