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た高度な研究が進んでいるものと考えられるが、少なくとも実務レベルにおいては、過 去との単純な比較結果を値下げ効果として示している報告が多数見受けられる。

交通需要の将来推計については、数多くの大規模な経済モデルが研究されているが、

料金政策の評価にあたっても、交通量の変化から値下げの効果を抽出するアプローチが 進むことを期待したい。

3.2 今後の課題

本分析には制約が多く、課題は多いが、主なものを挙げる。

(1) 交通需要の推計

まず挙げられる課題が、交通需要の推計方法の改善である。

車種や時間帯によって値下げの体系が異なるため、値下げ効果を分析するためには、

車種・時間帯別の長期の交通量動向を観察することが望ましい。しかしながら、利用で きたデータにはさまざまな制約があったため、本稿においては、一部において大きな仮 定をおいて分析を進めていることは否めない。また、感度分析による不確実性の範囲も かなり広いと言わざるを得ない。

平日の貨物車は、データ数が少なく確度は劣るが、鉱工業生産指数など経済指標と連 動する動きが観察された。さらに長期のデータを観察することができれば、モデルの妥 当性が検証できるものと考えられる。

他方、休日の乗用車については、鉱工業生産指数のような説明力を有する景気指標は 見当たらなかった。以下は推測に過ぎないが、例えば、景気が後退することにより、長 期休暇において遠距離の旅行が控えられ、帰省が増えるといったケースも考えられる。

実際、今回の分析では取り込めなかったが、平成 21 年 1 月の各架橋における休日交通量 は、急速な景気後退にも関わらず前年 1 月よりも随分増加していることが見受けられる。

さらに、将来の交通需要推計20の方法として、貨物交通需要は GDP、旅客交通需要は 人口をベースとしたモデルが用いられているものもあり、上記の貨物車・乗用車に関す る考察はこのこととも整合的である。

なお、本稿は、値下げが始まってから数か月間しか経過していない時点のデータによ る分析である。特に平日については、値下げが直ちに物流を刺激することは考えにくく、

物流コストの下落が交通量の変化に反映されるまで一定の時間を要すると考えられる。

したがって、平日についてより値下げ効果の分析精度を高めるためには、さらに一定の 時間の経過が必要と考えられる。

(2) 便益推計の方法

(1)とも関連するが、本分析では、時間帯別の交通量動向を示すデータがなかったため、

平成 17 年センサスと時間帯構成が同一と仮定して、一律に時間帯配分を行った。また、

20 例えば国土交通省「交通需要推計検討資料」http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/ir-data.html

ODデータが短期間のため、全ODについての便益の推計ができず、ルートの縮約や一 部除外を行った。2.8節で議論したとおり、こうした仮定によるバイアスは大きくないと 見込まれるものの、これらの仮定が現実的かどうかについてより詳細な検証が必要であ る。

(3) 値下げ政策の費用便益分析

本稿では、値下げを前提として、その便益の大きさや最大化する料金体系を分析した が、政策評価の観点からは十分に論じきれていない。

最初の概要の部分でも触れたように、緊急総合対策による料金値下げの原資は、(独)

日本高速道路保有・債務返済機構からの高速道路貸付料の減額であり、その負担は政府 の一般会計に承継されている。

本稿においては、便益を評価する目安として、減収額や承継額との単純比較を試みた が、値下げ政策の総合的な評価のためには、社会的費用として新たに発生している税の 超過負担を含めた費用便益分析を行うことが求められる。

(4) 追加経済対策の分析

「生活対策」に盛り込まれている、休日の乗用車を対象とした追加の値下げ(上限を 1000 円とする等)が、平成 20 年度第2次補正予算の成立により、(関連法案の成立が前 提となるものの)平成 21 年3月を目処として開始される予定である。

本稿では分析ができなかったが、3月からの交通量の変化を分析することにより、さ らなる値下げ政策の評価が望まれる。

(5) 広域的な評価の実施

本稿で分析したのは本四高速のみであるため、得られた結論は局所的であるとともに、

代替する一般道のない海上を渡る道路であるという特殊性もあり、全国的に当てはまる 結論とはいえない。

値下げは全国で実施されていることから、エリアを拡張することによって、さらに有 益な知見が得られることを期待する。

謝 辞

本稿の執筆に際しては、桐越信氏(社団法人雪センター事務局長)、本州四国連絡高速 道路株式会社の職員の方々より交通量データの提供や草稿段階での助言等、様々な形で 協力をして頂いた。また金本良嗣教授(東京大学公共政策大学院長)には、分析の多く の段階で数多くの有益なコメントを頂いた。ここに記して感謝する。なお、ありうべき 誤謬は全て筆者らの責任である。

参考文献・資料

[参考文献]

・ 金本良嗣・蓮池勝人・藤原徹『政策評価ミクロモデル』東洋経済新報社、2006 年

・ 金本良嗣「道路特定財源制度の経済分析」『道路特定財源制度の経済分析』日本交通政 策研究会、2007 年

・ 国土交通省道路局「費用便益分析マニュアル」(平成20 年11月)

・ Anthony E. Boardman et al (2006), Cost-Benefit Analysis: concepts and theory. N.J. : Pearson/Prentice Hall, Pearson Education International.

・ Jeffrey M. Wooldridge (2009), Introductory Econometrics. 4th ed. Ohio:

South-Western, Cengage Learning.

[参考資料]

・ 国土交通省道路局(旧建設省道路局)編『全国道路交通情勢調査(道路交通センサス)

一般交通量調査箇所別基本表』平成17 年度版

・ 国土交通省『自動車輸送統計年報』(平成15 年)

・ 国土交通省『交通需要推計検討資料』http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-data/ir-data.html

・ 国土交通省道路局 道路事業の評価手法に関する検討委員会『時間価値原単位および走 行経費原単位(平成20 年価格)の算出方法』

http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/hyouka-syuhou/4pdf/s1.pdf

・ 「安心実現のための緊急総合対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会 議『安心実現のための緊急総合対策』(平成20年8月29日)

http://www5.cao.go.jp/keizai1/2008/080829taisaku.pdf

・ 新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議『生活対策』(平 成20年10月30日)http://www5.cao.go.jp/keizai1/2008/081030taisaku.pdf

・ 本州四国連絡高速道路株式会社『本四架橋と私達のくらし』

・ 本州四国連絡高速道路株式会社ホームページhttp://www.jb-honshi.co.jp/

・ 経済産業省鉱工業指数(鉱工業生産・出荷・在庫指数、稼働率・生産能力指数、製造工 業生産予測指数)http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/index.html

・ 石油情報センター『価格情報』http://oil-info.ieej.or.jp/price/price.html

・ U.S. Department for Transportation. Valuation of Travel Time in Economic Analysis (Revised). http://ostpxweb.dot.gov/policy/Data/VOTrevision1_2-11-03.pdf

補論 A 交通需要の推定方法に関する考察

ここでは、本稿で用いた交通需要の推定に関して、推定方法の検討経緯と結果を述べ る。

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