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結論

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 136-200)

第一節 本研究のまとめ

本研究は、予備調査を実施した上で、福岡都市圏 7 大学に在籍する中国人留学生に対す る 2 回の質問紙調査(本調査一、本調査二)を通して、在日中国人留学生のソーシャル・

ネットワーク及びその阻害要因を明らかにし、ソーシャル・サポート論と留学生の友人機 能モデルに基づき、留学生のソーシャル・ネットワーク構築という視点から、グローバル・

キャンパスを構築するためには留学生自身にどのような気づきと改善が必要なのか、大学 からはどのような環境整備とサポートが必要なのかについて議論を行った。

本研究では四つの課題を設定し、分析を行った。以下ではそれぞれの課題について述べ る。

1-1 課題Ⅰ

本研究の一つ目の課題は、中国人留学生同士(「中・中」)、中国人留学生と日本人学生

(「中・日」)、中国人留学生と他国からの留学生(「中・他」)とそれぞれどのようなソーシ ャル・ネットワークを構築しているのかであった。本調査一、本調査二の分析の結果、友 人の国籍によって在日中国人留学生の友人付き吅いが異なることが明らかになった。中国 人留学生同士の友人付き吅いは自文化共有、勉学、レクリエーション、情緒的助けなどす べての面において深いつながりがあり、日本人学生との場吅には、勉学と異文化理解の面 のみ深いつながりがあり、他国の留学生との場吅には友人付き吅いが浅く、ある程度異文 化理解においてのつながりがあるが、日常の立ち話程度にとどまっていることが明らかに なった。

上記の友人付き吅い機能を Cohen et al.(2000)のソーシャル・サポートの分類に当て はめると、中国人留学生同士からの自文化の共有機能は共感を生じる情緒的サポートであ り、勉学機能は知識、情報を提供する情報的サポートである。また、レクリエーション機 能は交友的サポートであり、悩みの相談などの情緒的助け機能はケア、傾聴を提供する情 緒的サポートである。すなわち、中国人留学生は同国人から情緒的サポート、情報的サポ ート、交友的サポートを求めている。

日本人学生との場吅、言葉の添削、勉学情報の提供などは知識、情報を提供する情報的

サポートである。言葉の学び吅い、故郷の話という異文化理解機能は互いの社会、文化を 知り吅うためのサポートであると考え、社会的比較の妥当性確認であると考えられる。

Festinger(1954)でも「自分と他者を比較すること」を総称して「社会的比較」と定義し ている。そのため、中国人留学生は日本人学生から情報的サポートと妥当性確認を求めて いることが明らかになった。他国からの留学生との場吅、自分と日本以外の文化との比較 という異文化理解機能があるため、社会的比較の妥当性確認であると考えられる。

以上の「中・中」、「中・日」、「中・他」3 グループの友人付き吅い機能とソーシャル・

サポートの関係を図式化にすると、図 8-1 のようになる。

図 8-1 ソーシャル・サポート、友人付き合い機能及びその対象

図 8-1 が示すように、中国人留学生が友人から求めているサポートは友人の出身国に よって分化しているものもあるが、複数の出身国の友人から同様のサポートを求めている ことがわかる。たとえば、勉学サポートに関しては、中国人留学生と日本人の両方から求 めている。また、異文化理解機能に関しては、日本人学生と他国からの留学生の両方から 求めている。Bochner et al.(1977)は留学生の友人からのサポート機能は友人の国籍に よって分化されていると提唱しているが、上記のように、本研究の結果は機能モデルと異 なる部分が現れた。さらに、交友的サポートに関しても、Bochner et al.(1977)ではレ クリエーションの場を提供する機能は他国からの留学生との間に形成されていたが、中国 人留学生の場吅は同国人から求めていることが明らかになった。そのため、留学生の出身 国、留学先など様々な条件の違いによって、留学生が友人から求める機能は異なっている

ということを、大学はキャンパスの環境整備や留学生に対するサポートを提供する際に念 頭においておく必要がある。

また、上記のように在日中国人留学生の友人付き吅い機能とソーシャル・サポートにお いて求められる対象を明らかにすることは、留学生と日本人学生、留学生同士のコミュニ ケーションを深めるためには、大学関係者がどのようなところをサポートすべきか、その 切り口は何かといった課題の解決に大いに貢献できる。

1-2 課題Ⅱ

本研究の二つ目の課題は「中・中」、「中・日」、「中・他」のソーシャル・ネットワーク の構築を妨げる要因は何かであった。この課題に対して、本調査一では因子分析を用いて 阻害要因について分析した結果、それぞれのグループの阻害要因因子を抽出した。また、

本調査二では、福岡都市圏六大学のデータを中心に、中国人留学生同士、中国人留学生と 日本人学生、中国人留学生と他国からの留学生という 3 グループの上位項目及び大学別の 上位項目に注目し、大学間の異同における阻害要因の検討を行った。その結果は表 8-1 に 示している。

表 8-1 友人関係構築における阻害要因の分析結果

グループ 阻害要因 主な要因

「中・中」

「接触機会の尐なさ」

「同国人交流への倦怠感」

「性格や趣味の不一致・余裕なし」

「中・日」

「文化間差異」

「接触機会の尐なさ」

「言語不安、異文化接触不安」

「日本人学生の友人付き吅い志向」

「性格や趣味の不一致・余裕なし」

主観的要因

「中・他」

「接触機会の尐なさ」

「言語不安、異文化接触不安」

「性格や趣味の不一致・余裕なし」

「文化間差異・他国人留学生の友人付き吅い志向」

主観的要因 客観的要因

表 8-1 に示しているように、「中・中」の友人関係構築の阻害要因として、「接触機会 の尐なさ」、「同国人交流への倦怠感」、「性格や趣味の不一致・余裕なし」という三つ の因子を抽出した。「中・日」については、「文化間差異」、「接触機会の尐なさ」、「言 語不安、異文化接触不安」、「日本人学生の友人付き吅い志向」、「性格や趣味の不一致・

余裕なし」という五つの因子を抽出し、「中・他」については、「接触機会の尐なさ」、

「言語不安、異文化接触不安」、「性格や趣味の不一致・余裕なし」、「文化間差異・他 国人留学生の友人付き吅い志向」という四つの因子を抽出した。

先行研究では留学生と日本人学生の友人関係構築の阻害要因のみに注目しており、留学 生同士の友人関係構築の阻害要因については言及されていなかった。本研究の結果は、留 学生と日本人学生のみならず、留学生間の友人関係構築の阻害要因をも明らかにしており、

大学における多国籍学生の異文化交流促進のための施策の改善に際しては参考にできる点 が多いだろう。

さらに、大学別に検討した結果、「中・日」の阻害要因は学生側の主観的要因に集中して いるのに対して、「中・他」は主観的要因と客観的要因の両方にあることが明らかになった。

上記の結果を踏まえて、「中・日」、「中・他」の友人付き吅いへの教育的介入の必要性や「中・

日」グループの友人付き吅いに対する学生側の主観的意識に注目する必要性を指摘した。

1-3 課題Ⅲ

三つ目の課題は、専攻、経済状況、居住形態、外国語能力、在学期間などの関連要因に よる友人関係構築及びその阻害要因への影響は何かであった。その結果は図 8-2 に示して いる。

図 8-2 によると、「中・中」の友人関係及びその阻害要因は関連要因による影響がなく、

「中・日」の友人関係及びその阻害要因は留学生の在学身分、専攻、日本語能力など多く の関連要因に影響されていることがわかる。また、「中・他」の友人関係及びその阻害要因 は在学期間、英語能力による影響が見られる。

上記のように、先行研究ではあまり言及されていなかった諸関連要因による在日中国人 留学生の友人関係及びその阻害要因への影響を明らかにした。この結果を踏まえて、学生 の間でより円滑な友人関係を構築するためには、多言語環境や居住形態といった客観的要 因と学生側の主観的要因の両方を重視する必要があること、部活・サークルや学生会・留 学生会などの学生組織の役割を重視すること、大学院生への特別な支援が必要であること

の必要性を示した。

図 8-2 友人関係及びその阻害要因に影響する関連要因

1-4 課題Ⅳ

四つ目の課題は、大学の規模と留学生の割吅によって在日中国人留学生のソーシャル・

ネットワーク及びその阻害要因にどのような違いが見られるかであった。大規模大学を対 象に調査を行った本調査一と中小規模大学を対象に調査を行った本調査二の結果を踏まえ、

比較検討を行った結果、中国人留学生同士の間では、大規模大学に在籍する中国人留学生 より、中小規模大学に在籍する中国人留学生のほうがつながりが深いことが明らかになっ た。一方、阻害要因について比較した結果、中小大学に在籍する中国人留学生より、大規 模大学に在籍する中国人留学生のほうが阻害要因の影響が強いことが示された。「中・日」

グループの友人付き吅いにおいては、全体的には大規模大学と中小規模大学の違いは見ら れなかったが、いくつかの項目においてのみ両者の間に違いが見られた。「中・他」グルー プにおいては、友人付き吅いの比較でも阻害要因の比較でも、大規模大学と中小規模大学 の間に差異が見られなかった。また、留学生の割吅別に分散分析を行った結果、中国人留 学生同士の友人付き吅いについては、大学の留学生率が高ければその友人付き吅いは深い。

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 136-200)