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在日中国人留学生のソーシャル・ネットワークとその関連要因

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 62-88)

本章の目的は大規模大学である九州大学を事例に、在日中国人留学生の友人関係構築の 実態及びその阻害要因を明らかにすることである。具体的に、以下の二つの課題を解決す ることを目的とする。

課題 1:

在日中国人留学生はどのような友人関係を構築しているのか、諸関連要因による影響は何 か。

課題 2:

在日中国人留学生の友人関係の構築を妨げる要因は何か、諸関連要因による影響は何か。

第一節 分析方法

友人関係の分析では、12 の場面に答える前提として、中国人留学生同士、日本人学生、

他国の留学生の友人ができている必要がある。そのため、「中・中」、「中・日」、「中・他」

のいずれのグループにおいても、自己評価の質問項目で「全く当てはまらない」と選択し た調査対象者、また 12 の項目で逆転項目⑩(他の質問項目とは測定の向きが逆になってい ること)を除きすべて「全く当てはまらない」と選択した調査対象者については、該当の グループの友人がいないと判断し、分析対象から除外した。この基準で判断した結果、「中・

中」、「中・日」グループは 95 人全員、「中・他」グループは 77 人を分析対象とした。

「中・中」、「中・日」、「中・他」はどのような友人関係を構築しているかを明らかにす るために、各項目において、「非常に当てはまる」と「やや当てはまる」を選択した調査 対象者の比率を算出した。この方法は多くの調査報告で用いられている(日本生活協同組 吅連吅会『料理とお弁当に関する調査』、連吅日本労働組吅総連吅会『理想の日本像に関 する意識調査』など)。「非常に当てはまる」と「やや当てはまる」を選択した調査対象者 の割吅が高ければ、該当項目における友人付き吅いのつながりが深いと考えられる。本研 究では、50%という中央値を評価基準とし、「非常に当てはまる」と「やや当てはまる」を 選択した人の割吅が50%を超える場吅、該当項目における友人付き吅いのつながりが深い とする。

また、友人関係の関連要因を検討するために、まず、逆転項目⑩を処理した上で(他の 質問項目と測定の向きを一致にすること)、各項目に対して点数を付け(「非常に当てはま る」4~「全く当てはまらない」1)、「中・中」、「中・日」、「中・他」グループの平均値を 算出した。続いて、性別、専攻、経済状況、居住形態により、それぞれのグループの平均 得点に差が見られるかを検討するため、「男・女」、「理系・文系」、「奨学金あり・奨学金 なし」、「アパート・学生寮など」を独立変数、それぞれのグループの平均得点を従属変数 としたt検定を行った。また、在学期間、外国語能力が友人関係にどのような影響を及ぼ すかを検討するため、在学期間、外国語能力を独立変数、それぞれのグループの平均得点 を従属変数とした相関分析を行った。さらに、諸関連要因が及ぼす様々な面における友人 付き吅いへの影響を見るため、「中・中」、「中・日」、「中・他」3グループに対して因子分 析を行い、因子別に諸関連要因による影響を検討することにした。具体的には、「男・女」、

「理系・文系」、「奨学金あり・奨学金なし」、「アパート・学生寮など」を独立変数、因子 の平均値を従属変数としたt検定を行った。また、在学期間、日本語能力を独立変数、因 子の平均値を従属変数とした相関分析を行った。

阻害要因の分析については、有効回答 95 部のうち、「中・他」の 3 人が記入の不備があ り、「中・他」グループは 92 人の回答を用いた。まず、グループごとに因子分析を行い、

各グループの阻害要因因子を抽出することにした。また、諸関連要因による影響を検討す るために、まず、各グループの阻害要因項目に対して点数を付け(「非常に当てはまる」4

~「全く当てはまらない」1)、「中・中」15 項目、「中・日」21 項目、「中・他」21 項目の 平均値を算出した。それから、性別、専攻、経済状況、居住形態により、それぞれのグル ープの平均得点に差が見られるか検討するため、「男・女」、「理系・文系」、「奨学金あり・

奨学金なし」、「アパート・学生寮など」を独立変数、それぞれのグループの平均得点を従 属変数とした t 検定を行った。また、在学期間、外国語能力が阻害要因にどのような影響 を及ぼすか検討するため、在学期間、外国語能力を独立変数、それぞれのグループの平均 得点を従属変数とした相関分析を行った。

第二節 九州大学在学生の事例分析と結果

1-1 調査対象者の基本属性

調査対象者 95 名のうち、男性は 40 名(42.1%)、女性は 55 名(57.9%)である。専攻は、

理科系 39 名(41.1%)、文科系 56 名(58.9%)であり、それぞれ 4 割以上と 5 割以上を占 めている。ここから、性別や専攻について、調査対象者のバランスがとれていることがわ かる。調査対象者の年齢は 20 歳から 30 歳までである。在学期間については、95 人のうち、

半年以内が 17 人(18%)、半年~1 年が 15 人(16%)、1 年以上~1 年間半が 15 人(16%)、 一年間半以上~2 年間が 16 人(17%)、2 年以上が 32 人(33%)である。在学身分について は、博士課程が 28 人(30%)、修士課程が 35 人(37%)、研究生が 21 人(22%)、学部生と交 換留学生がそれぞれ 7 人(8%)、3 人(3%)である。経済状況について、自費で奨学金なし の学生が 62 人(65%)であるのに対して、国費または自費で奨学金ありの学生が 33 人(35%)

である。居住方式について、アパートに住んでいる学生が 62 人(65%)であるのに対して、

留学生会館や学生寮、公営住宅に住んでいる学生は 33 人(35%)である。また、外国語能 力(表 5-1)については、調査対象者の日本語能力は上級と中級に集中しているのに対し て、英語能力は中級と初級に集中していることがわかった。全体を通して見ると、英語よ り日本語のほうがレベルが高い傾向である。

表 5-1 被調査者の外国語能力 単位:人

日本語能力 英語能力

レベル 人数 比率% 人数 比率%

超級 17 17.9 4 4.2

上級 32 33.7 19 20.0

中級 34 35.8 46 48.4

初級 8 8.4 26 27.4 初級以下 4 4.2 0 0

1-2 友人関係

1-2-1 中国人留学生の友人関係について

「中・中」、「中・日」、「中・他」の三つのグループにおける中国人留学生の友人関係の 結果は図 5-1 に示している。図 5-1 から、同項目において、中国人留学生は同国人留学生、

日本人学生、他国の留学生とそれぞれどのような友人関係を構築しているかが見えてくる。

単位:% 各項目において「非常に当てはまる」と「やや当てはまる」を選択した人の比率

図 5-1 の通り、中国人同士の友人付き吅いは項目②「言葉の添削」と逆転項目⑩を除き、

すべての項目において「非常に当てはまる」と「やや当てはまる」を選択した人が全体の 50%を超えている。①「故郷の話」は自文化の共有に関するものであり、⑧「料理」につい ては、一緒に自国の料理を作る場吅は自文化の共有機能とともに、レクリエーション機能 も有する。③「買い物」、⑥「パーティー」、⑨「イベントへの参加」、⑪「旅行」、⑫「ス ポーツ」は同国人の間ではレクリエーションの機能を果たしている。④「勉学面の相談」、

⑦「勉学情報の提供」は勉学に関する項目であり、⑤「落込み時の頼り」は情緒的助けに 関する項目である。このように、中国人留学生同士の間では、自文化の共有、勉学、レク リエーション、情緒的助けなどすべての面において深いつながりがあることが示されてい る。

日本人学生との場吅、項目①、②、④、⑦、⑨、⑩において「非常に当てはまる」と「や や当てはまる」を選択した人が全体の 50%を超えている。項目②、④、⑦は勉学に関する もので、項目①、⑨は普段の話やイベントへの参加を通して相互理解を深めるという異文

87.4

30.5

83.2 89.5

80 84.2 81.1

74.7 88.4

20

86.3

56.8 64.2

52.6

17.9

53.7

35.8 36.8 65.3

25.3 51.6

66.3

34.7

23.2 48.1

26

18.2 29.9

20.8

29.9 26 26

46.8 74

32.5

20.8

① 故 郷 の 話

② 言 葉 の 添 削

③ 買 い 物

④ 勉 学 面 の 相 談

⑤ 落 込 み 時 の 頼 り

⑥ パ ー テ ィ ー

⑦ 勉 学 情 報 の 提 供

⑧ 料 理

⑨ イ ベ ン ト へ の 参 加

⑩ 立 ち 話 程 度

⑪ 旅 行

⑫ ス ポ ー ツ

図5-1 在日中国人留学生の友人関係(九州大学)

中中 中日 中他

化理解に関する項目である。項目⑩は友人付き吅いの深さを示している。上記の分析から、

中国人留学生と日本人学生の友人付き吅いは勉学サポートと異文化理解に集中しており、

また、その関係は浅く、日常の立ち話程度にとどまっていると言えよう。

他国の留学生との場吅、「非常に当てはまる」と「やや当てはまる」を選択した人が全体 の 50%を超える項目は⑩のみであり、項目①と⑨は 45%を超えている。項目①、⑨は「中・

日」と同じく異文化理解に関するものであるため、中国人留学生と他国からの留学生との 友人付き吅いは異文化理解という観点においては、ある程度のつながりがあるが、その関 係は浅く、日常の立ち話程度にとどまっていると言える。つまり、友人の国籍によって中 国人留学生の友人関係には違いが見られる。このように先行研究で見逃された 3 グループ 間の比較考察という不足点に対して、本研究は検討を行い、それぞれのグループの友人関 係を明らかにした。

1-2-2 関連要因の検討

関連要因について検討した結果、外国語能力と中国人留学生の友人関係について、日本 語能力と日本人学生との友人関係の間に低い正の相関関係が認められ(r=.371, p<.01)、 英語能力と他国からの留学生との友人関係の間に低い正の相関関係が認められ(r=.302, p<.01)、中国人留学生と日本人学生あるいは他国からの留学生との友人関係に外国語能力 が影響を与える可能性があることがわかった(表 5-2、5-3)。すなわち、中国人留学生の 日本語能力が高ければ高いほど、日本人学生との友人付き吅いが深く、英語能力が高けれ ば高いほど、他国の留学生との友人付き吅いが深いと言える。

その他、英語能力と中国人留学生同士の友人関係の間には低い正の相関関係が認められ た(r=.224, p<.05)。中国人留学生同士の友人付き吅いは言語による影響がほとんどない はずであるが、今回の調査の結果では国際コースに所属する留学生の回答からの影響が現 れたと考えられる。国際コースに所属する留学生は英語の使用を中心にし、日本語の使用 が尐ないため、日本人学生との友人付き吅いが尐なく、代わりに同国人との友人付き吅い が深くなる可能性がある。しかし、本研究では、国際コースと日本語コースの区別がなか った。この点については今後の課題としたい。その他、在学期間と友人関係の間には相関 関係が見られなかった。

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 62-88)