• 検索結果がありません。

結論

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 30-40)

地下流体の流速分布からSP分布を計算する二次元の数値シミュレータPTSPを開発し、

これを用いて地形や温度変化の影響がある場合について、 地下の流体流 動によって生じる SP異常を計算したo PTSPは、 与えられた初期条件および境界条件に対し、 各タイムステ ップ毎の系の温度、 圧力、 流速分布を計算した後、 任意のタイムステッ プについて、 与え られた電気物性分布に対してSPの分布を計算するシミュレータである。 運動方程式に基 づいて流速分布を計算するので、 従来の圧力源や熱源を強制的に負荷し てSPを計算する アプローチとは異なり、 実際の流動の様子を物理的に表わしている点が優れている。 また 系の時間変化を再現することができるので、 SP調査を流動系のモニタリングに利用する 際、 モデルのシミュレーション計算を行うのに適している。

まず、 第l章でこれまでのSPモデリングの問題点について指摘し、 本研究の意義と目 的を明らかにした。 第2章では流動電位に伴うSPを計算する基本式の理論的背景につい て述べた。 第3章前半ではシミュレータPTSPの構築について述べ、 後半では理想化した 流動モデルに対するSPプロファイルを計算し、 比抵抗、 カップリング係数および温度分 布といったパラメータが、 SPプロファイルの概形に及ぼす影響について明らかにした。

次に第4章では、 SPモデリングの地熱探査への適用の有効性について述べた。 前半で は地形と物性分布のSPへの影響について調べ、 地下を構成する物質に不均質性が存在す る場合には、 リニアな地形補正は不適切であり、 SPデータの定量的解析には流動モデル に基づいたSPモデリングが不可欠で、あることを明らかにした。 また後半では、 比抵抗 調 査が行われている涌蓋火山周辺について、 比抵抗分布データに基いてSPを計算し、 観測 値とのマッチングを行い、 浸透率分布および広域熱水流動系の流動パターンを推定し、 坑 井データが存在しない場合でも、 SPモデリングによって、 より任意性の少ない水理モデ

ルの構築が可能であることを明らかにした。

さらに第5章では、 北海道濁川地域を例に、 SPモデリングの貯留層モニタリングへの 応用可能性について述べた。 この地域については浸透率及び比抵抗分布が文献に示されて

96

-第61�.結晶

おり、 それらに基づいて自然状態のモデルを作ってSPを計算したところ、 発電所運関前 のSPの測定値とよく一致したので、 次に流体の生産・ 還元時のSPの経時変化をシミュレ

ーション計算した。 すると、 計算上は生産・ 還元によるSPの変化は小さく、 測定値に現 われたような変化を再現できなかった。 そこで、 なんらかの物性あるい は状態の変化があ ったものと仮定してSPを計算し、 経時変化の要因を推定した結果、 各年の変化は、 地表 水流入量の増加、 生産部への流体供給の減少、 浅部比抵抗値の変化により、 それぞれ説明 されることが明らかになった。

以上のように、 運動方程式に基づいたSPの計算結果と観測データとのマッチングによ

り、 より一意性の高い流動モデルの構築が可能であることが示され、 地熱探査へのSPモ デリングの有効性が明らかになった。 特に地下の不均質性や地形の影響の大きい場合には、

このようなシミュレータを用いたマッチングが不可欠である。 また、 このようなシミュレ ータの利用により、 物性変化を考慮して流動系の変遷をシミュレーショ ン計算できるので、

SPプロファイルの変化から地下の物性変化を推定することが可能となり、 SP調査の貯留 層モニタリングへの適用の有効性が明らかにされた。

一方、 インパージョン手法に共通の問題であるが、 地表で測定されたSPからだけでは、

地下の物性分布を一意的に決めることはできない。 従ってSPデータの解析の際は、 まず 水理学的概念モデルに基づいてモデルの概形を構築する必要があり、 少 なくとも比抵抗或 いは浸透率のどちらかの分布が事前に推定されていることが望ましい。 またカップリング 係数は、 実際のフィールドにおける値を測定するのが困難なので、 本論文における研究で は、 代表的な岩石サンプルについての測定値および他のパラメータとの相関性を参考にし ながら、 未知のパラメータとしてマッチングにより推定した。 このよう に、 SPのマッチ

ングにおいては、 シミュレーション計算に不可欠な3つのパラメータを相互に補間しなが ら推定する過程が残されており、 モデルの一意性を高めるためには、 他 の手法との併用が 不可欠である。

謝辞

本論文を執筆 するにあたり、 九州大学大学院工学研究科地球資源シス テム工学専攻の 江原幸雄教授、 同牛島恵輔教授および同工学研究科付属環境システム科学研究センター の神野健二教授より ご指導 いただいた。 論 文 の構成および内容に関して は、 江原教授よ り早い時期からのご助言をいただいた他、 北海道大学地震火山研究観測センターの茂木

透氏 よりきめ細やかなご指導をいただき、 常に激励して いただいた。 シミュレータ

PTSPの作成に関しては、 ローレンス ・ パークレー研究所のG. Bodvarsson氏 お よびロー レン ス ・ リヴァモア研究所のM. Wilt氏よ り長期に渡るご指導 と 激励をいただい た。 涌蓋 山で のSP調査に際し ては、 九州大学 工学部および大学院の学生諸氏にご 協力をい ただ いた 。 また濁川でのSP 調査は地質 調査所と日本重 化学工業(械と の共同研究の一環とし

て 行われ、 地熱エンジニアリング(械の高橋昌宏氏を初め多くの方々にご協力をいただい た。 濁川研究の進め方については 地質調査所の石戸経士氏よりご助言をいただき、 調 査 の実施とデータ 提供におい て日本重化学工業 (械と道南地熱エネルギー(掬のご協力を仰い だほか、 北海道電力(槻からは降水量データを提供していただいた。 さらに、 上司をはじ め勤務先の方々 のご理解 ・ ご協力 のもとに、 執筆を行うことができた。 以上の関係各機

関及び各氏に、 心よ り感謝の意を表します。

98

-参考文献

阿部信,中西繁隆,戸高法文,村上一永,岩井信行(1987) :小国地熱地域自然状態のシミュレ

ーション. 日本地熱学会昭和62年講演要旨集,

51.

Ahmad, M. U. (1964) :

A

laboratory study of streaming potentials. Geophys. Pros., 12, 49-64.

赤淳司史、 黒墨秀行、 小松亮、 伝法谷宣洋(1993) :森地熱地帯におけるフラクチャーにつ

いて. 日本地熱学会平成5年講演要旨集、 A4.

Anderson, L.

A.

and J ohnson, G. (1976) : Application of the self-potential method to geo出ermal exploration in Long Valley, California. Jour. Geopys. Res., 81, 1527-1532.

安藤重幸(1983) :ボーリング結果からみた濁川カルデラの構造. 万冗/地球,5, 116-121.

Archie, G. E (1942) : The electrical resistivity log as an aid in determining some reservoir characteristics. Trans. A. I. M. E., 146, 54-67.

Bodvarsson, G. S. (1982) : Mathematical modeling of the behavior of geothermal systems under exploration. Ph.D. thesis, Univ. of California at Berkeley.

Brace, W. F. (1977) : Permeability from Resistivity and Pore Shape. Jour. Geopys. Res., 82, 3343-3349.

千葉昭彦,熊田政弘(1994) :花南岩及び凝灰岩試料の比抵抗測定一間隙水の比抵抗が岩石 比抵抗に及ぼす影響について一.物理探査,47,161-172.

Corwin, R. F., Morrison, F., Di辺,S. and Rodriguez, B. (1978) : Self-potential studies at the Cerro Prieto geothermal field. First Symposium on the Cerro Prieto geothermal field, Baja Califomia, Mexico, 204-210.

Corwin, R. F. and Fitterman, D. V. (1979) : Geological interpretation of self-potential data from the Cerro Prieto geo出ermal field. Second Symposium on the Cerro Prieto geothermalfield, Bajα Califomia, Mexico, 350-354.

江原幸雄(1996) :地熱構造と貯留層モデルの作成. 地熱エネノレギー,21, 4-22.

Fitterman, D. V (1979) : Calculations of selιpotential anomalies ne訂vertical contacts.

Geophysics, 44, 195-205.

Fitterman, D. V and Corwin, R. F. (1982) : Inversion of self-potential data from the Cerro Prieto geothermal field, Mexico. Geophysics, 47, 938-945.

藤光康宏,湯原浩三(1989) :熱水流動シミュレータKY U-1による岳湯・菅原地熱地域の数 値モデルと低比抵抗帯の解釈. 日本地熱学会誌, 11, 285-306.

藤田武俊,阿部信(1988) :熊本県小国地域の地熱調査. 地熱,25,287-314.

Goldstein, N. E., Halfman, S., Corwin, R. F. and Alvarez, J. R. (1989) : Self-potential anomaly changes at the East Mesa and Cerro Prieto geothermal fields. Proceedings, 14th Workshop Geothermal Reservoir Engineering, Stanford University.

伊関伸一(1994) :岩石の含水状態と比抵抗の関係について.物探学会学術譲渡会論文集 91.205-208.

Ishido, T. and Mizutani, H. (1981) : Experimental and theoretical basis of electrokinetic phenomena in rock-water systems and its application to geophysics. Jour. Geophys. Res., 86, 1763-1775.

Ishido, T. (1989) : Self-potential generation by subsurface water flow through electrokinetic

coupling. Lecture notes in earth sciences, 27, Detection of subsurface phenomena, Springer-Verlag,

Berlin.

Ishido, T., Kikuchi, T. and Sugihara, M. (1989) : Mapping thermally driven upflows by the self­

potential method. Geophysical Monograph 47, IUGG \bl. 2.

Ishido, T., Kikuchi, T., Yano, Y, Sugihara, M. and Nakao S. (1990) : Hydrogeology infered from the self-potential distribution, Kirishima geothermal field, Japan. GRC Transactions, 14, Part II,

919-926.

ハUハU4E‘A

石戸恒雄(1981) :地熱水対流に伴う流動電位一地熱地域における自然電位異常のlつのメ カニズムヒして- 日本地熱学会誌、3,87-100.

石戸恒雄(1985) :豊肥地熱地域の自然電位異常. 地質調査所報告,264,337-349.

石戸経主,杉原光彦(1982) :流動竜位法の研究.昭和56年度サンシャイン計画研究開発成果 中間報告書ー深部地熱資源探査技術に関する研究、57-71.

石戸経士,杉原光彦,菊地恒夫(1992) :地熱レザーパモニタリング.物理探査, 45, 522-534.

石戸経士、 菊地恒夫、 杉原光彦、 松島喜雄(1997) :地熱貯留層のSPモニタリング. 地熱,

34-2.85-103.

J ackson, D. B and Kauahikaua, J. (1984) : Regional self-potential anomalies at Kilawea volcano.

USGS Professional Paper 1350, 947-959.

梶原竜哉,茂木透,高橋昌宏,西村進,桂郁雄,鈴木浩一,楠建一郎,西田潤一(1995) : CSMT およびTDEM1去による森地熱地域の比抵抗構造.物探学会学術譲渡会論文集93,181-185.

梶原竜哉,高橋昌宏,茂木透(1996) : TDEM法、 CSMT法及びシュランジェルジャー法探査 から得られた森地熱地域の3次元比抵抗構造. 日本地熱学会平成8年議演要旨集,P9.

鎌田浩毅(1985) :九州中北部における火山活動の推移と地質構造. 地質調査所報告,264,

31-64.

菊地恒夫,杉原光彦(1986) :流動電位法の研究.昭和59年度サンシャイン計画研究開発成果 中間報告書ー深部地熱資源探査技術に関する研究,123-149.

金藤太由樹,小松亮,黒墨秀行,花野峰行(1993) :森地域の三次元重力解析.物探学会学術譲 渡会議文集,88, 490-495.

熊本県(1969) :岳湯地区地熱基礎調査報告書,155.

'EEA ハU,EaA

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 30-40)

関連したドキュメント