V聞
第3節 結論として
筆者は本論文において、「マンガは社会に対して影響力を持つ」という推論をた てたのである。勿論、その際マンガの影響力については、 「正」 「負」いずれの影 響力であるかは、限定せずに仮説をたてたものであるが、その仮説は「正」 「負」
両面に亘るものであったと言える。すなわち、以下の2つの仮説であった。
仮説1:『マンガの継続的な読書が、青少年の反社会的な行動の要因となる』
仮説2:『マンガの読書の継続性が、他の書籍の読書の度合いの要因となる』
この二点を設定した。そして、意識・行動調査でのデータ分析と検証において、
仮説1は、支持され得る検証結果を得たのであるが、その有意性は低位であった。
また、仮説2は、支持される検証結果とはならなかった。しかしながら、補足的に 行った聞き取り調査及び、意識・行動調査からのデータの分析結果においては、逆 に、仮説1については、明瞭な結果は出なかった。それは質問の質にも影響してい たからと考えられるであろう。また、仮説2については、極めて変則的ではあった が、明瞭な答えを、得ることができたのである。ここにおいて、その内容について 論及はしないが、 (第3章にて論及済み、第3章を参照)結果については、兵庫教 育大学大学院・修士課程の修士論文として、一応のまとまりを示す結果であった。
このことを、最後に付け加えておきたい。 1998年12月21日 了 一163一
脚 註
(1)1997年のマンガ単行本、マンガ文庫の推定販売金額は2,421億円で、前年比 4.5%減となった。この種のデータを取り始めて、1995年度の0.5%減に次いで 2度目のことで、前回より大幅な減少である。原因は消費の減退などであるが マンガの取り巻く環境の変化も大きい。
出典:出版科学研究所編『出版月報 983,月号』出版科学研究所 P4 1998年
(2) 中心的購買層であった中高生が、マンガだけでなく、あらゆるものに興味を 示し、余暇を過ごそうとしてきた。特に、一方的な情報の流入ではなく、コミ ュニケーションを重視した、携帯電話などの「パーソナル・コミュニケーショ ン」に注目したためであろう。また、タウン情報誌やファッション情報誌にも 興味を移し、ヒット作がなく、ステレオタイプの女性を描いた少女コミックス 離れを起こした。
出典:『日本経済新聞 1998年5月16日付け 朝刊
(3)筆者の意識・行動調査における質問31で、回答者の72.3%が、 「マンガを好 き」と答えた。また、質問30では71.6%が「マンガを読む」と答えたことから も明らかであろう。
(4) 学校における「イジメ」社会における「飲酒」 「喫煙」 「単車:、車の暴走」
「暴力」 「傷害」 「万引き」 「不純な性的関係」 「援助交際」など、行為その ものは、成人が行う「犯罪」 「反社会的行為」とほぼ同じような内容である。
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(5)京都精華大学の美術学部デザイン学科のマンガ分野(マンガコース)を、芸 術学部マンガ学科として独立させようというもの。マンガコースは1972年に大 学では、初めて設置されたもの。
出典=『朝日新聞』1998年11月25日付け 朝刊
(6)全国の高校生が「漫画日本一」を競う全国高校漫画選手権大会(高知県等主 催、朝日新聞社後援)1991年から開催され、今年1998年は第7回大会は8,月8 ・9日高知市ぢばさんセンターで開催された。
出典:『朝日新聞』1998年8月12日付け 夕刊
(7)東京の繁華街で始まったもの、ルーツは明らかではないが、マンガを読むた めの喫茶店、時間制の入店料で一杯のドリンクがついているのが普通である。
サラリーマンや大学生が主な客層であり、数千冊の単行本を置いている店もあ る。この流行で、週刊、月刊のマンガ雑誌の売り上げが低下したと言われる。
出典:『朝日薪聞』1998年5月16日付け 朝刊
(8)インターネットを通じて公開される、前出のCGを応用して作成されたマン ガ。基本的には無料で読めるが、ダウンロードによる画面の無断使用等、著作 権上の問題点も多い。
出典:『朝日新聞』1998年5月16日付け 夕刊
(9)インターネットを通じて公開される、個人や法人の情報を掲載したもの。ア クセスにより誰もが簡単に見ることが出来るが、性的な画面のものや有料サイ トもあり、ルールや使用法がまだ十分には確立していない。
出典:自由国民再編『現代用語の基礎知識』自由国民社 一165一
1996年度版
(10) 新聞、雑誌、書籍等紙に情報が固定されていて、解読のために特別な再生装 置が必要としないハードコピーメディアに対して、レコード、映画、TV等々 情報を受け取り、解読するのに一定の再生装置を必要とするメディアを、ソフ トコピーメディアと言い、CD−ROMは、映像、文宇等の情報を大量に記憶 できるメディアで、マンガもこのメディアによって表現出来るものである。
参照文献:井上 宏『テレビ文化の社会学』世界思想社 P5 1987年
(11) 1945年の日本からの独立以来、目本文化の輸入禁止を守ってきた韓国が、19 98年に53年ぶりに、日本文化の輸入に踏み切った。しかし、禁止は表向きで、
レコードやCDは密かに売られ、日本製のマンガやそれをもとにハングル語に 翻訳した韓国製マンガも売られていた。鎖国といっても、電波は自由に行き交 い、TVやラジオ放送は、既に見られていたし、近年のインターネットの発達 は、こうした文化の遮断を、無意味なものにしたのである。しかし、マンガは 既に1991年に「外国漫画審査」を受ける条件で解禁されていた。日本の若者と 同じように韓国の若者もまた、マンガを好み、学生街では「マンガ喫茶」すら ある。しかし、 「不良マンガ」というレッテルを貼られた未審査の暴力的マン がが没収されるという事件が起こっている。特に、性的な表現については、儒 教道徳観の強い韓国社会では、こうしたマンガで言葉や行動や風俗に対して、
低俗化しているとして、厳しい取り締まりを受けた。つまり、極めてマンガの 影響力は強いと言わざるを得ない現状である
参照文献:『朝日新聞』1998年9月13日付け 朝刊
『西日本新聞』1998年8月15日付け 朝刊
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(12) 大学院同期(18期生)の藤原美代子氏よりの情報と写真。同氏によれば、氏 の論文テーマが「ベトナムの村落研究」であり、幾度もベトナムの地方の村を 訪れたが、そのたびに目にしたのが、日本のマンガを翻訳したマンガ『ドラえ もん』などを読む、少年たちであったという。
写真提供:藤原美代子氏 撮影日時 1997年8月19日 場所 ベトナム
(13)戦後急速なマンガ雑誌の増大に対して、 「日本子どもを守る会」 「母の会連 合会」各地のPTAが児童マンガ雑誌の低俗さ、俗悪さを問題とした。内容の 荒唐無稽さ、刺激的暴力場面、エログロのどぎつい描写、乱暴な言葉の使用が 問題となった。
出典:コミック表現の自由を守る会編『誌外戦』創出版 P2191993年
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(14) 1990年、『ヤングサンデー』小学館の人気連載マンガ「ANGEL」が突然 休載となった。1990年10月12日発売号であった。読者には告知されなかった。
理由は、和歌山、徳島、佐賀、熊本、大阪などで、 「子どもを主人公としたセ ックスコミック本」への排除運動のやり玉となり、マンガ家の遊人と編集部が 取った緊急措置であり、単行本も出庫:差し止めとなった。1990年夏からの行政 教育関係団体、警察関係団体、 「青少年の健全育成」を唱える草の根曳民間育 成団体など官民一体の自粛要請の働きかけは 悪書狩り であった。大手出版 社の他の作品も卑下に挙げられ、各都道府県の青少年保護育成条例に基づく、
「有害」図書の指定を受けた。さらに、業界の関連団体、総務庁、国会への訴 えにまでいく勢いであった。
出典:月刊『創』編集部編『有害コミック問題を考える』創出版1991年
(15) 1988年8月に「黒人差別をなくす会」有田利二とその家族が結成したもの。
我が国の流布されている黒人の姿がデフォルメされている。(1)まん丸で大き な目(2)大きく厚く誇張された唇(3)ずんぐり太った身体、これらがステレ オ・タイプ化され、黒人に対する差別、偏見を助長していると抗議した。お菓 子玩具はこの指摘で発売中止としたが、その抗議は出版物にも及び、『ちびく ろサンボ』が絶版となった。手塚治虫の作品にも数多くこのステレオタイプ化 された黒人が登場する。1990年このことにジョン・G・ラッセルも、その著書 『日本人の黒人観』 (新評論社)で「日本人の黒人観は、白人の持つそれであ り、誤ったものである。ステレオ・タイプのデフォルメされた黒人像を描くこ とは差別」であると指摘をした。これに対して、手塚プロでは「マンガは、特 徴を誇張し、パロディー化することがユーモアの重要な手法である」と答え、
また作者が亡くなり、改訂は困難であるとして注釈文付きで、マンガの発行を 続けた。
出典:コミック表現の自由を守る会編『誌外戦』創出版 P2761993年
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