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結言

ドキュメント内 LSI 微細 Cu 配線における (ページ 197-200)

8.1. はじめに

システム LSI の性能、微細化を決定する要素として、配線が果たす役割は一 層大きくなる傾向にある。

これまでに述べてきた、電流密度の増大、エレクトロマイグレーションの劣 化、電子散乱効果などが顕在化することにより、微細化に伴う性能の劣化が加 速度的に進行することが一因にある。

配線層間容量の低減を目的として導入された Low-k 絶縁膜について、誘電率 をさらに低下させる試みや、配線層間を完全に空隙化する、いわゆるAir gap配 線[1]の採用が検討されている。これらの技術は、一方で配線の機械的強度や熱 伝導を劣化させてしまうものである。エレクトロマイグレーションに関しては、

層間膜からの応力低下によって エレクトロマイグレーション発生のしきい電 流密度と配線長の積、いわゆる Critical product が低下する。また、ジュールヒ ーティングの加速により副次的に寿命が劣化するなどの不具合が生じることが 予想される[2][3]。

このような背景の中、1990 年代の終わりに新しい技術として世に迎えられた ダマシンCu配線も、量産開始の発表から10年を経て、その高信頼性(第2章)

は盤石とは言えなくなってきた。微細化に伴う信頼性の低下(第 4 章)に対し て、新たな改善策(第 7 章)を導入する必要性は高い。特に、回路規模が指数 関数的に増加する傾向に対して、非常に低い累積故障確率の領域まで信頼性を 確保することが重要となる(第6章)。

本章では、これまでに明らかにしてきたエレクトロマイグレーション特性か ら、今後のシステム LSI のプロセス開発、設計技術、信頼性保証における方向 性と指針、そして課題について述べる。

8.2. エレクトロマイグレーション改善プロセス開発

第7章で示したように、配線性能の視点から、エレクトロマイグレーション の改善を効率高く行うには、CoWPメタルキャップのように、Cu/キャップ絶縁 膜界面そのものを、Cu移動度が低く、かつ不純物添加を伴わない新たな界面に 置換することが必要となる。

これは、本論文で示したダマシンCu配線のエレクトロマイグレーション特性 から鑑みて、妥当性が高いと考えられる。

第一に、ボイド発生の起点であったCu/キャップ絶縁膜界面と結晶粒界の三重 点が、より堅固な界面と粒界の三重点に置換されることで、Incubation timeが大 きく改善されると考えられる。

また、第7章で示したように CoWP によって粒界散乱のわずかな増加がみら れた。これがCoの粒界への拡散によるものであるならば、同時に粒界における 原子空孔がCoに置換されることで、粒界の機械的強度が改善されている可能性 もある。CoWP などのメタルキャップ配線について、Incubation time、および

Critical productの挙動に関する報告はまだなされていない。上記の点を考慮した

検討が、今後の課題のひとつである。

第二に、Cu 移動の支配的拡散経路であった Cu/キャップ絶縁膜界面がより堅 固な界面に置換されることで、ドリフト速度が大きく低下すると考えられる。

寿命に関する評価から報告されている 2.4eV という活性化エネルギー[4]は、

Cu移動の拡散経路が大きく変わったと考えるのが自然である。Huらは、その活 性化エネルギーがCu のBulk 拡散の活性化エネルギー(2.04eV[5])に近いこと から、界面以外でのボイドの発生より、界面の拡散がほぼ完全に抑制されたと 推測している。

32nmノードプロセス以降での実用化を視野におくならば、メタルキャップ技 術のエレクトロマイグレーション改善効果の寸法依存性や、Cu移動のメカニズ ムの明確化が必要不可欠である。特に、微細配線においては狭い溝中において Cuを結晶成長させるため、結晶粒界密度が高くなる。この密度の高くなった粒

界がCu移動に寄与し始めることが報告され始めており[6]、メタルキャップ技術 との組み合わせによる抵抗率、耐エレクトロマイグレーション性の確認が重要 な課題である。

本論文にて提案、実証した測定手法、モデルを応用することにより、上記の 故障物理特性を明確にすることが可能であろう。次世代ノードの高信頼性プロ セス開発の実現には、それら故障物理特性の把握と対策が占める役割が非常に 大きいものと考えられる。

8.3. エレクトロマイグレーション設計技術

微細化に伴うエレクトロマイグレーション耐性劣化は、これまでに述べてき た複数の要因に伴って、加速度的に進むことが予測される。これらを全てプロ セス技術による対策のみで対処、解決することも、非常に難易度が高くなって いる。

ほぼ3年で一世代というテクノロジーノードの開発を達成するには設計技術 上の方策も必要となろう。本論文で示した故障物理特性の中には、配線設計に 応用することが可能な3つの特性が挙げられた。

第一に、エレクトロマイグレーション発生のしきい電流密度と配線長の積、

いわゆる Critical product 以内の条件にある配線を設計において考慮することで

ある。注目する配線に対して、配線長と電流密度の積がCritical product以下の場 合には、エレクトロマイグレーションによるボイドの成長は発生しないと考え られる。この特性を利用すれば、他の故障メカニズムが無視しうる限り、注目 する配線の寿命は無限大となる。

本論文では、さまざまなレイアウト、ストレス条件において Critical product を調査した。表 8-1 にその結果を示す。テクノロジーノード間で差があるもの の、レイアウトやストレス条件、配線材料に対して、Critical productには高い頑 健性があることが分かる。

ドキュメント内 LSI 微細 Cu 配線における (ページ 197-200)