究 開 発
5.3.4 結 言
歯 科 金 属 焼 付 用 陶 材 の 補 修 用 陶 材 に つ い て 、諸 物 性 、補 修 部 の 観 察 、 黄 変 、 臨 床 的 検 討 を 行 い 考 察 し た 。 そ の 結 果 、 ゼ オ セ ラ イ ト は 、 補 修 用 陶 材 と し て の 要 件 で あ る 熱 膨 張 と 耐 溶 解 性 を 併 せ 持 ち 、 さ ら に 、 黄
で 作 業 す る こ と が 可 能 な 陶 材 で あ っ た が 、溶 解 率 が 0.113wt% と 高 く 化 学 的 耐 久 性 に 劣 っ て い た 。
2 . B 陶 材 は 、 臨 床 的 試 験 で 合 金 の 熱 膨 張 係 数 を 問 わ ず 、 陶 材 に ク ラ ッ ク が 発 生 し た 。 こ れ は 、 熱 膨 張 係 数 に お い て デ ン チ ン ・ エ ナ メ ル と 補 修 陶 材 の 差 が 3.8×10‑ 6・℃‑ 1で あ る 事 が 原 因 と 考 え ら れ た 。 3 . C 陶 材 は 、 補 修 部 の 観 察 で 界 面 に 気 泡 が 多 数 観 察 さ れ た 。 こ れ
は 、 微 粉 末 の 割 合 が 高 い こ と に よ る と 推 測 で き た 。
4 . D 陶 材 は ト ラ ン ス 陶 材 に 黄 変 が 観 察 さ れ た が 、 補 修 陶 材 自 体 の 黄 変 は 観 察 さ れ な か っ た 。
5 . 組 成 分 析 よ り 、B, C 陶 材 は 著 し い 毒 性 を も つ Sb2O3を 含 有 し て い る こ と が 分 か っ た 。
こ の 論 文 は 、 山 添 正 稔 , 山 本 裕 久 , 安 楽 照 男 : 金 属 焼 付 用 補 修 陶 材 , 第 23 回 日 本 歯 科 技 工 学 会 で 発 表 し た 。(2001 年 8 月 26 日 )
参 考 文 献
1) 星 川 武 , 山 添 正 稔 , 田 中 秀 和 , 山 本 裕 久 , 安 楽 照 男 , 大 田 陸 夫 : 新 し い 陶 材 ゼ オ セ ラ イ ト の 開 発 と 臨 床 − 貴 金 属 メ ー カ ー の 挑 戦 − Part 1( メ タ ル の 現 状 , 陶 材 の 製 法 , 粉 体 物 性 お よ び 熱 膨 張 特 性 ), QDT 25(6): 42〜 48, 2000.
5) 山 添 正 稔 , 田 中 秀 和 , 星 川 武 , 山 本 裕 久 , 安 楽 照 男 : ガ ラ ス セ ラ ミ ッ ク ス 及 び そ の 製 造 方 法 , 特 願 2000‑ 133619 .
6) 星 川 武 , 山 添 正 稔 , 田 中 秀 和 , 山 本 裕 久 , 安 楽 照 男 , 大 田 陸 夫 : 新 し い 陶 材 ゼ オ セ ラ イ ト の 開 発 と 臨 床 − 貴 金 属 メ ー カ ー の 挑 戦 − Part 2( 光 学 特 性 ,機 械 的 お よ び 接 着 強 さ ,溶 解 性 ),
QDT 25(7) : 50〜 6 2, 2000 .
本 論 文 で は 、 筆 者 が 勤 務 す る 山 本 貴 金 属 地 金 ㈱ で 企 画 、 研 究 開 発 か ら 事 業 化 ま で を 行 っ た 歯 科 用 セ ラ ミ ッ ク ス に つ い て の 研 究 を 基 礎 と し 、 本 高 知 工 科 大 大 学 院 工 学 研 究 科 起 業 家 コ ー ス に お い て 得 ら れ た 新 し い 知 識 と 学 識 を 加 え 、起 業 実 践 の も と に 、総 括 的 に ま と め た も の で あ る 。 第 1 章 で は 、 本 研 究 開 発 お よ び 事 業 化 の テ ー マ で あ る 歯 科 用 セ ラ ミ ッ ク ス に つ い て 、 分 類 、 歴 史 、 特 長 、 物 理 ・ 化 学 的 物 性 か ら 製 造 工 程 と セ ラ ッ ミ ッ ク ス 製 義 歯 の 作 製 工 程 ま で を ま と め た 。
第 2 章 で は 、 歯 科 業 界 の マ ー ケ ッ ト と 山 本 貴 金 属 地 金 ㈱ の 位 置 付 け を 述 べ 、 ど う し て 歯 科 用 セ ラ ミ ッ ク ス で あ っ た の か と 事 業 化 計 画 を 交 え て 研 究 開 発 の 背 景 に つ い て 記 述 し た 。
第 3 章 で は 、 こ れ ま で 行 っ た ニ ー ズ 調 査 と 開 発 コ ン セ プ ト さ ら に 、 本 研 究 開 発 で 得 ら れ た 特 許 に つ い て 記 述 し た 。
第 4 章 で は 、 中 小 企 業 に と っ て 困 難 で あ る 新 規 事 業 立 ち 上 げ に 必 要 な 資 金 調 達 に つ い て 山 本 貴 金 属 地 金 ㈱ が こ れ ま で 獲 得 し た 補 助 金 に つ い て 記 述 し た 。
第 5 章 で は 、 開 発 し た 歯 科 用 セ ラ ミ ッ ク ス の 機 械 的 性 質 、 光 学 的 特 性 の 蛍 光 性 、 補 修 用 セ ラ ミ ッ ク ス に つ い て 、 他 社 市 販 品 と の 比 較 試 験 検 討 結 果 に つ い て 記 述 し た 。 そ の 成 果 を ま と め と し て 下 記 に 示 す 。
1 . ニ ー ズ 分 析 を 行 い 、6 つ の 開 発 コ ン セ プ ト を 目 標 と し た 。 2 . 資 金 調 達 と し て 、 補 助 金 の 活 用 。
3 . 開 発 コ ン セ プ ト を 技 術 的 、 実 験 的 解 明 に よ り 、 9 つ の 高 性 能
最 後 に 、 本 章 で は 、 総 括 と し て 新 歯 科 用 セ ラ ミ ッ ク ス 『 ゼ オ セ ラ イ ト 』 の 製 品 説 明 と 現 在 の 事 業 化 状 況 と 今 後 の 課 題 に つ い て 下 記 に 記 述 す る 。
新 歯 科 用 セ ラ ミ ッ ク ス 『 ゼ オ セ ラ イ ト 』 ニ ー ズ に 応 え う る 6 つ の 開 発 コ ン セ プ ト か ら 、 従 来 品 を 超 え た 画 期 的 な 陶 材 つ い に 誕 生 !
本 品 は 、 陶 材 焼 付 用 貴 金 属 メ ー カ ー が 、 独 自 の 歯 科 用 貴 金 属 技 術 と 多 く の ノ ウ ハ ウ か ら 、 陶 材 と の 適 応 性 や 接 着 技 術 等 の 情 報 収 集 に 長 年 取 り 組 ん で 開 発 し た 製 品 で あ る 。 ま た 、 開 発 コ ン セ プ ト で は セ ラ ミ ス ト や デ ン テ ィ ス ト の ニ ー ズ に 応 え う る 焼 付 用 金 属 に と っ て 最 適 な 陶 材 と し て ① 天 然 歯 と 同 様 な 蛍 光 ② 天 然 歯 の 微 妙 な 色 調 再 現 ③ 安 定 な 熱 膨 張 に よ る ク ラ ッ ク 防 止 ④ 強 固 な 接 着 ⑤ 理 想 的 な 焼 成 温 度 ⑥ 安 全 性 に 優 れ た 黄 変 抑 制 を 掲 げ 、 約 5 年 間 で 完 成 し た 陶 材 が ゼ オ セ ラ イ ト で あ る ( 国 内 ・ 国 外 特 許 出 願 中 )。
本 品 の 特 徴 は 、 蛍 光 性 に つ い て こ れ ま で の 陶 材 と は 異 な り 、 特 殊 化 合 物 の 使 用 に よ り 天 然 歯 の 持 つ 蛍 光 特 性 を 忠 実 に 再 現 す る 事 に 成 功 し た ま っ た く 新 し い 陶 材 ( ス ー パ ー オ ペ ー ク 、 ガ ム を 除 く す べ て の 陶 材 に 蛍 光 性 を 付 与 ) で あ る 。 色 調 は 、 ビ タ シ ェ ー ド を 基 本 色 と し 、 よ り 白 い 歯 の た め の 0 を A, B シ ェ ー ド に 追 加 。 さ ら に 、 よ り 天 然 歯 の 微 妙 な 色 調 を 再 現 す る た め に 、 オ パ ー ル 効 果 等 を も っ た 特 殊 陶 材 ア ク セ ン ト を ラ イ ン ナ ッ プ ( 全 121 色 )。 ま た 、 ス テ イ ン は 内 部 用 と し て も 併 用 で き 、 基 本 的 な 築 盛 か ら 多 様 な テ ク ニ ッ ク に も 対 応 。
5 μm) を 均 一 に 安 定 化 し て お り 、 繰 り 返 し 焼 成 に お け る 熱 膨 張 の 安 定 性 と ク ラ ッ ク の 抑 制 を さ ら に 拡 大 す る こ と に 成 功 し た 。 ま た 、 オ ペ ー ク 陶 材 に 接 着 効 果 の 向 上 と メ タ ル 酸 化 膜 の 違 い に よ る 色 調 補 正 効 果 を 目 的 と し た ス ー パ ー オ ペ ー ク を ラ イ ン ナ ッ プ 。 特 殊 微 粒 子 の 採 用 で 、 メ タ ル の 種 類 を 問 わ ず 接 着 強 さ が 飛 躍 的 に 増 大 し た 。 焼 成 温 度 帯 は 790〜920℃ で 、 メ タ ル フ レ ー ム や 前 ろ う 材 の 変 形 の 心 配 が な く 、 後 ろ う 着 時 に も 陶 材 の 表 面 性 状 が 悪 影 響 を 受 け る 心 配 が な い 。つ ま り 、 金 属 焼 付 用 陶 材 と し て 最 も 理 想 的 な 焼 成 ス ケ ジ ュ ー ル 設 計 に 工 夫 さ れ て い る 。 さ ら に 、 高 い 曲 げ 強 さ (125MPa) と 硬 さ (HV 485) が 天 然 歯 に 近 い こ と か ら 、 対 合 歯 へ の 磨 耗 抑 制 が 期 待 さ れ 、 口 腔 内 装 着 後 も ク ラ ッ ク や ハ ク リ 等 の ト ラ ブ ル の 心 配 が な く 、 こ れ ま で に な い 高 性 能 な メ タ ル セ ラ ミ ッ ク ス 修 復 物 の 実 現 を 可 能 に し た 。
生 体 親 和 性 と 安 全 性 に 優 れ た 陶 材 と し て の 配 慮 で は 、 こ れ ま で 、 多 く の 陶 材 に は 銀 に よ る 陶 材 の 黄 変 抑 制 の た め に 有 害 元 素( ア ン チ モ ン ) が 使 用 さ れ て い る 。 本 品 は 、 新 規 な 技 術 ( 酸 化 セ リ ウ ム ) に よ り 有 害 元 素 を 使 用 せ ず に 優 れ た 黄 変 抑 制 効 果 を 実 現 さ せ た 。
以 上 の こ と か ら 本 品 は 光 学 、 機 械 、 化 学 的 な 理 工 学 上 の 物 性 に お い て 従 来 品 を 上 回 る 最 高 性 能 を 発 揮 す る こ と が 明 ら か で あ る 。 つ ま り 、
「 審 美 生 」 「 耐 久 性 」 「 生 体 親 和 性 」 「 安 全 性 」 を 兼 ね 備 え た 理 想 的 な 新 陶 材 と 言 え る 。
さ ら に 、 売 上 額 に 占 め る 原 料 の 割 合 が 本 セ ラ ミ ッ ク ス(2.45%)は、当
現 在 の 事 業 化 状 況 と 今 後 の 課 題
表 6.1 に 2001年 度 ゼ オ セ ラ イ ト の 出 荷 額 と 表 6.1 に 2000 度 の 歯 科 用 セ ラ ミ ッ ク ス ( 歯 科 金 属 焼 付 用 陶 材 ) の 生 産 量 と 出 荷 量 の 動 向 を 記 載 し た 。
平 成 13 年 5 月 よ り 試 験 的 な 生 産 販 売 を 開 始 し て き た が 、 現 在 の 生 産 工 程 で は 国 内 総 生 産 量 の 約 10% (100Kg/月 ) が 限 界 で あ る 。2002 年 の 正 式 発 売 に 向 け て 生 産 ラ イ ン の 拡 充 と 効 率 化 を 図 る と と も に 、 最 近 の 傾 向 と し て 物 理 ・ 化 学 的 特 性 に つ い て は 、材 料 の 高 性 能 化 に 伴 い ほ ぼ 満 足 さ れ て き て い る が 、 欠 陥 の な い 高 付 加 価 値 を 有 す る ニ ー ズ の 要 求 は 、 多 く 未だ 解 決 さ れ て い な い の が 現 状 で あ る 。
こ れ ら の 高 付 加 価 値 を 、具 体 的 数 値 に 示 す と 作 業 温 度 900℃ ±3℃ に お い て 、収縮は 13% 以 下 、 色 調 は 天 然 歯 再 現 の た め 色 差 が 1 以 内 で あ り 、 表 面 性 状 は 良 好 で 、 白 濁 や 気 孔 が あ っ て は い け な い 。 こ れ ら を 解 決 し 、 量 産 化 3 年 後 は 国 内 シ ェ ア 40% (2.5 億 円 ) 以 上 の 販 売 量 が 期 待 出 来 る 。 加 え て 、 国 内 に 限 定 す る こ と な く 海 外 ( 既 に 、 イ ン ド 、 韓 国 、 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 、 タ イ 、 フ ラ ン ス か ら の 問 い 合 わ せ が あ る ) へ と 販 路 を 拡 大 で き 、 海 外 で は 、 約 10 億 円 を 目 標 に し て い る 。
表 6.1 に 2001 年 度 ゼ オ セ ラ イ ト の 出 荷 額
2 0 0 1 年 度 ゼオセライトの出荷額
415 543
310 400 372
500 600
表 6.1 に 2000 度 の 歯 科 用 セ ラ ミ ッ ク ス の 生 産 量 と 出 荷 量 の 動 向
国内 輸入 計 国内 輸出 計
1 20 1,202,807 9,966 1,212,773 201,162 531,389 732,551 1,724,178 2 18 1,789,869 4,565 1,794,434 289,322 893,173 1,182,495 1,558,957 3 24 1,333,295 2,159 1,335,454 352,986 556,201 909,187 1,504,398 4 7 1,015,575 13,042 1,028,617 153,338 0 153,338 1,866,225 5 6 778,295 6,301 784,596 115,763 0 115,763 1,696,837 6 22 1,810,184 3,462 1,813,646 243,954 799,071 1,034,025 1,708,234 7 6 779,480 8,816 788,296 134,255 0 134,255 1,716,159 8 4 809,660 13,926 823,586 109,567 0 109,567 1,560,490 9
10 11 12
合計 107 9,519,165 62,237 9,581,402 1,600,347 2,779,834 4,371,181 13,335,478 平均 13.375 1,189,896 7,780 1,197,675 200,043 347,479 546,398 1,666,935 薬事工業生産動態統計月報より
月 品目 生産量(g) 出荷量(g) 月末在庫
0 400,000 800,000 1,200,000 1,600,000 2,000,000
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
生産量(g)
計 輸入 国内
400,000 800,000 1,200,000
出荷量(g)
計 輸出 国内