第 5 章 品質損失を評価基準とする計量規準型 Independent Double 抜取検
5.7 結言
るごとに判定を行うため,平均検査回数ASFは平均検査個数ASNと等しいとみな すことができる.そこで,各種抜取検査における平均検査回数ASFの値を表 5.9 に併せてまとめておいた.表 5.9より,本章で提案する計量規準型Independent
Double抜取検査は計量規準型繰返グループ抜取検査や計量規準型逐次抜取検査に
比べてASFが削減できていることがわかる.
既述の通り,提案した計量規準型Independent Double抜取検査は判定に要する 抜取回数はたかだか2回である.一方,計量規準型繰返グループ抜取検査および 計量規準型逐次抜取検査は,判定ごとに常に検査続行領域があり,2回以上の検査 を要する可能性がある.したがって,提案する計量規準型Independent Double抜 取検査は計量規準型繰返グループ抜取検査および計量規準型逐次抜取検査に比べ て検査回数の観点において優れており,またこの特性は実務家にとって好ましい ものといえる.
比較も行った.このことを踏まえて,ASNおよびASFを含む関数を評価関数とし た計量規準型Independent Double抜取検査の検査方式を構築することも考えられ る.この新たな評価関数のもとでの検査方式の設計および比較検討は今後の課題 とする.
表 5.8: (µ, σ)の組合せの下での生産者危険および消費者危険の実現値 τ12 (µ, σ2) 100PR(τ02) (µ, σ2) 100PA(τ12)
1.1 (0.00, 1.00) 4.966 (0.00, 1.10) 9.938 (0.25, 0.94) 4.934 (0.30, 1.01) 9.850 (0.35, 0.88) 4.841 (0.42, 0.93) 9.586 (0.43, 0.81) 4.685 (0.51, 0.84) 9.141 (0.50, 0.75) 4.467 (0.59, 0.75) 8.507 1.2 (0.00, 1.00) 4.965 (0.00, 1.20) 9.908 (0.25, 0.94) 4.934 (0.34, 1.09) 9.785 (0.35, 0.88) 4.841 (0.47, 0.98) 9.414 (0.43, 0.81) 4.687 (0.58, 0.86) 8.785 (0.50, 0.75) 4.470 (0.67, 0.75) 7.887 1.3 (0.00, 1.00) 4.965 (0.00, 1.30) 9.875 (0.25, 0.94) 4.934 (0.37, 1.16) 9.717 (0.35, 0.88) 4.842 (0.52, 1.03) 9.239 (0.43, 0.81) 4.688 (0.64, 0.89) 8.426 (0.50, 0.75) 4.473 (0.74, 0.75) 7.263 1.4 (0.00, 1.00) 4.965 (0.00, 1.40) 9.843 (0.25, 0.94) 4.935 (0.40, 1.24) 9.651 (0.35, 0.88) 4.844 (0.57, 1.08) 9.067 (0.43, 0.81) 4.693 (0.70, 0.91) 8.074 (0.50, 0.75) 4.482 (0.81, 0.75) 6.653 1.5 (0.00, 1.00) 4.965 (0.00, 1.50) 9.802 (0.25, 0.94) 4.935 (0.43, 1.31) 9.577 (0.35, 0.88) 4.845 (0.61, 1.13) 8.894 (0.43, 0.81) 4.694 (0.75, 0.94) 7.731 (0.50, 0.75) 4.483 (0.87, 0.75) 6.068
表 5.8: つづき
τ12 (µ, σ2) 100PR(τ02) (µ, σ2) 100PA(τ12) 1.6 (0.00, 1.00) 4.965 (0.00, 1.60) 9.791
(0.25, 0.94) 4.936 (0.46, 1.39) 9.534 (0.35, 0.88) 4.850 (0.65, 1.18) 8.752 (0.43, 0.81) 4.704 (0.80, 0.96) 7.422 (0.50, 0.75) 4.500 (0.92, 0.75) 5.531 1.7 (0.00, 1.00) 4.964 (0.00, 1.70) 9.750 (0.25, 0.94) 4.935 (0.49, 1.46) 9.465 (0.35, 0.88) 4.847 (0.69, 1.23) 8.597 (0.43, 0.81) 4.701 (0.84, 0.99) 7.121 (0.50, 0.75) 4.495 (0.97, 0.75) 5.031 1.8 (0.00, 1.00) 4.965 (0.00, 1.80) 9.715 (0.25, 0.94) 4.936 (0.51, 1.54) 9.401 (0.35, 0.88) 4.850 (0.72, 1.28) 8.447 (0.43, 0.81) 4.706 (0.89, 1.01) 6.825 (0.50, 0.75) 4.504 (1.02, 0.75) 4.548 1.9 (0.00, 1.00) 4.968 (0.00, 1.90) 9.700 (0.25, 0.94) 4.940 (0.54, 1.61) 9.357 (0.35, 0.88) 4.856 (0.76, 1.33) 8.315 (0.43, 0.81) 4.716 (0.93, 1.04) 6.548 (0.50, 0.75) 4.520 (1.07, 0.75) 4.095 2.0 (0.00, 1.00) 4.967 (0.00, 2.00) 9.666 (0.25, 0.94) 4.939 (0.56, 1.69) 9.299 (0.35, 0.88) 4.856 (0.79, 1.38) 8.183 (0.43, 0.81) 4.716 (0.97, 1.06) 6.293 (0.50, 0.75) 4.519 (1.12, 0.75) 3.698
表 5.9: 計量規準型Independent double抜取検査と各種抜取検査との比較 VIDSP-OC VRGSP-OC VSSP-OC
τ12 ASN ASF ASN ASF ASN (ASF) 1.1 85.81 1.24 77.39 1.61 61.54 1.2 57.58 1.24 52.07 1.63 41.98 1.3 42.48 1.24 38.49 1.60 31.41 1.4 33.34 1.24 30.29 1.51 24.95 1.5 27.32 1.24 24.87 1.46 20.65 1.6 23.08 1.24 21.08 1.51 17.61 1.7 19.98 1.24 18.31 1.53 15.37 1.8 17.64 1.24 16.13 1.47 13.65 1.9 15.78 1.24 14.49 1.45 12.30 2.0 14.31 1.22 13.17 1.46 11.21
第 6 章 結論
本論文では,品質損失を品質評価基準とする統計的品質管理技法のさらなる適 用性の拡大を目的として,この品質評価基準のもとでの抜取検査について考察し,
経済的視点に立ったいくつかの新しい抜取検査法を提案した.
第3章では,品質損失のもとでの計量規準型繰返グループ抜取検査の設計問題に ついて考察を行った.具体的には,計量規準型繰返グループ抜取検査の設計方式に ついて設定条件を導出し,この設定条件のもとで,検査方式(n, c0, c1)を求めるた めの定式化を行った.また,提案する計量規準型繰返グループ抜取検査の設計条件 の定義についての考察を与えた.くわえて,検査方式のひとつの目的である検査量 の削減について,その評価基準を定義した.さらに,具体的に検査方式(n, c0, c1) を求め,品質保証に関する所与の設計条件が,求められた検査方式(n, c0, c1)によっ て満足されることを確認した.また,所期の通り,相当する計量規準型一回抜取 検査方式でのサンプル・サイズに比べて,提案する繰返グループ検査方式での検 査量が,平均検査個数ASNにおいて大幅に削減できることを示した.
第4章では,計量規準型逐次抜取検査について考察を行った.
この,サンプルを1つずつ抜取り,それまでに得られたサンプル・データと併 せて判定を行うことが特徴である逐次抜取検査の設計手順について議論し,OC関 数に基づいて設計条件を満足する検査方式を導出する方法を明らかにした.また,
計量規準型逐次抜取検査の平均検査個数ASNの評価式についても詳細に議論した.
くわえて,提案した計量規準型逐次抜取検査は,同じ条件のもと設計される計量 規準型一回抜取検査や計量規準型繰返グループ抜取検査に比べて平均的に必要な 検査個数を削減できることを示した.
第5章では,計量規準型Independent Double抜取検査について議論した.まず 品質損失に基づく計量規準型Independent Double抜取検査の設計問題について,
検査手順を定義した.また,この検査方式の設計方法についても明らかにし,その
手順がまとめられた.さらに数値検証を通じて,提案した計量規準型Independent
Double抜取検査の検査特性について確認したのち,計量規準型一回抜取検査や計
量規準型繰返グループ抜取検査,計量規準型逐次抜取検査との比較を行った.そ の結果,提案した計量規準型Independent Double抜取検査は計量規準型一回抜取 検査に比べて平均的に必要な検査個数を削減していることを確認した.一方,計 量規準型繰返グループ抜取検査や計量規準型逐次抜取検査との比較を通じて,計
量規準型Independent Double抜取検査は合否の判定までに必要な検査回数を平均
的に小さくできたことを確認した.
一方,第2章でも述べたように,品質損失τ2は工程損失指数Leや工程能力指 数 Cpm に容易に変換することが可能である.これらの指標を用いて,Yen and Chang [6]やAslam et al. [27]は工程損失指数Le を品質評価基準とした抜取検 査を,Pearn and Wu [23]は工程能力指数Cpmを品質評価基準とした抜取検査を それぞれ提案している.このことから,本研究で提案した各種抜取検査をもとに,
工程損失指数Leや工程能力指数Cpmを品質評価基準とした,新しい計量規準型抜 取検査を設計することが考えられる.これらの新しい検査方式の設計方法や運用 方法についての議論は今後の課題とする.
また,本研究での各種数値検証において,設計のためのパラメータとして生産 者危険αや消費者危険βはJIS [1]にて規定された抜取検査での値を用いている.
このαやβをさらに小さくすることにより誤判定の確率は減少し,よりtightな検 査方式を設計することができる一方で,検査に必要なサンプル・サイズは大きく なるため,生産者危険および消費者危険とサンプル・サイズにはトレード・オフ の関係がある.ただし,本研究において,いくつかの近似を援用することにより,
提案した検査方式の設計方法の導出を行っている.ここに,αやβを極端に小さい 値に設定した場合,設計に供される近似式の精度が低下することがある.このと き,構築した設計方法のもとで得られた検査方式が設計条件を満足していない恐 れがある.そのため,αやβによる検査特性の挙動を調べるとき,これらはJIS [1]
で規定されている抜取検査に由来するように数%のオーダーの範囲内で変化させ るべきであろう.一方,品質損失τ02やτ12の与え方について,Arizonoet al. [2]で は不適合品率との関係を考慮し,経済的観点を加味してこれらを決定する方法に ついて検討を行っている.これらを踏まえて,αやβ,τ02やτ12をどのように与え
るかについて考察することも興味深い問題である.ここで,規準型抜取検査では
“合格とすべきロットの品質損失をτ02とし,品質損失がτ02のロットが誤って不合
格となる確率をα以下にする”ことを保証するため,τ02およびαはそれぞれ単独 に与えられるのではないことに留意されたい.もちろん,βおよびτ12に関する関 係も同様である.
くわえて,本研究で提案した検査方式について,実環境での運用に関するケー ススタディも興味深い内容である.たとえば,JIS [1]では計量規準型抜取検査に 供される品質特性値を機械部品の軸径や蛍光放電管の寿命としたときの検査方式 の設計方法や運用方法について概説している.これらの製品に対して,本研究で 提案した検査方式を適用する場合の具体的な手順を整備することは,運用のため にも重要な課題と考える.Michlin and Pistiner [38]は,地下貯水タンクの気密試 験について考察している.ここに,Michlin and Pistiner [38]では,タンクからの 漏れの分布を正規分布で評価していることから,本研究での検査方式が適用でき る可能性がある.これらの適用方法についても,今後の課題とする.
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付 録 A χ 2 ϕ (ε)/ϕ の最大・最小
ある確率εでのχ2ϕ(ε)/ϕは,Wilson-Hilfertyの公式[31]を用いて χ2ϕ(ε)
ϕ =
( 1− 2
9ϕ +uε
√ 2 9ϕ
)3
(A.1) と近似される.ただしuεは標準正規分布の上側100ε%点である.これをϕで微分 すると
d dϕ
(χ2ϕ(ε) ϕ
)
=
√ 1 2ϕ3
( 1− 2
9ϕ +uε
√ 2 9ϕ
)2(√
8 9ϕ −uε
)
(A.2) となる.式(A.2)をもとに,式(A.1)の最大値および最小値を与える(µ, σ2)∈Ω(τ2) の組合せをεの値に基づき考察する.
(a) 0≤ε <0.5のとき
式(A.2)が0になる条件はuε =√
8/(9ϕ)である.このとき,ϕの最小値nで のuεの最大値として√
8/(9n)を得る.これより,uγ =√
8/(9n)の関係を満 足するγを用いて以下のように細分化し,(µ, σ2)の組合せを考察する.
(a-1) 0≤ε < γのとき
この範囲のεのもとで,uε > √
8/(9n) ≥ √
8/(9ϕ)であるので,式 (A.2) はϕの値にかかわらず常に負である.これより,式 (A.1)はϕに対して単 調減少である.よって,ϕの最小値ϕminで式 (A.1)は最大となる.さらに,
式 (2.7)より,ϕはξに関して単調増加であり,ξ ≥ 0であるため,ξ = 0
のとき式(A.1)は最大となる.結局,これを与える(µ, σ2)の組合せとして,
(µ, σ2) = (µT, τ2)を得る.一方,ϕが最大値ϕmaxとなるとき,式 (A.1)は 最小となる.これより,ξが最大化されるとき,式 (A.1)は最小化される.
ここに,ξはσ2に関して単調減少である.よって,式 (A.1)は(µ, σ2) = (µT ±√
τ2−σ2T, σT2)のもとで最小となる.
(a-2)γ ≤ε <0.5のとき
このεの条件において,式 (A.2)が0になるϕが必ず存在し,ϕ= 8/(9u2ε)
のとき式 (A.1)は最大値をとる.このときのϕおよびそれに対応するξを
それぞれϕ∗, ξ∗とおくと,ξ∗は
ξ∗ =
√(ϕ∗ n −1
)2
+ (ϕ∗
n −1 )
+ (ϕ∗
n −1 )
(A.3) となり,(µ, σ2) =
(
µT ±√
(τ2ξ∗/(1 +ξ∗)), τ2/(1 +ξ∗) )
を式 (A.3)のξ∗を
与える(µ, σ2)の組合せとしてを得ることができる.ここで,式(A.1)の最
大化に関して,ϕ∗とϕmaxの大小関係により,式 (A.1)を最大化するϕが異 なる.
ϕ∗ < ϕmaxの場合は既述のとおり,ϕ =ϕ∗で式(A.1)が最大化され,このと き(µ, σ2) =
(
µT ±√
(τ2ξ∗/(1 +ξ∗)), τ2/(1 +ξ∗) )
となる.また,ϕ∗ ≥ϕmax の場合,式(A.2)は常に正となるため,式(A.1)は単調増加となり,ϕ =ϕmax のとき,すなわち(µ, σ2) =
(
µT ±√
τ2−σ2T, σ2T )
のとき式(A.1)は最大化 される.
つぎに,式(A.1)の最小化についても考える.ここで,式(A.1)はϕminおよ びϕmaxのいずれかで最小となる.ϕminのときはϕ=nであるから,(µ, σ2) = (µT, τ2)のとき,式 (A.1)が最小となる.また,ϕmaxのときはσ2が最小の ときであるから(µ, σ2) =
(
µT ±√
τ2−σT2, σ2T )
の組合せで式(A.1)は最小 化される.
(b) 0.5≤ε≤1のとき
uε<0であるので,式(A.2)は常に正である.よって,式 (A.1)はϕに関して 単調増加である.このことからϕ=ϕmaxのとき,式 (A.1)は最大となり,こ のときの(µ, σ2)の組合せとして(µ, σ2) =
(
µT ±√
τ2−σT2, σT2 )
が得られる.
また,ϕが最小値のとき,すなわち(µ, σ2) = (µT, τ2)のとき式 (A.1)は最小 値をとる.
付 録 B 既知の c のもとでの Pr {
ˆ
τ 2 > c | τ 2 }
の評価
表記の単純化のため,pを
p= Pr{ ˆ
τ2 > c|τ2}
(B.1) と定義する.式 (B.1)より,つぎの関係
c= χ2ϕ(p)
ϕ τ2 (B.2)
を得る.また,Wilson-Hilfertyの近似より,upを標準正規分布の上側100p%点と して
χ2ϕ(p)
ϕ =
{ 1− 2
9ϕ +up
√ 2 9ϕ
}3
(B.3) と近似することができる.式 (B.3)に式 (B.2)を代入し,upについて解くことに より
up =
√9ϕ 2
{
3
√ c τ2 + 2
9ϕ −1 }
(B.4) を得る.cが既知であるので,式 (B.4)よりupはϕの関数とみることができる.そ こで,以下upをup(ϕ)と表記すれば,Pr{τˆ2 > c|τ2}の最大化/最小化問題はそれ ぞれup(ϕ)の最小化/最大化問題に帰着される.
up(ϕ)を微分すると dup(ϕ)
dϕ =
√9 2ϕ−12
{1 2
(
3
√ c τ2 −1
)
−1 9ϕ−1
}
(B.5) となる.一方,ϕはξ = (τ2/σ2)−1に対して単調増加であり,ξはσ2に対して単 調減少である.したがって,ϕはσ2に対して単調減少な関数である.