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品質損失のもとでの尤度比の定式化

第 4 章 品質損失を評価基準とする計量規準型逐次抜取検査 29

4.3 品質損失のもとでの尤度比の定式化

この節では,提案する品質損失を評価基準とした計量規準型逐次抜取検査の設 計について記述する.第3章での定義と同様に,製品の品質特性値xiが正規分布

N(µ, σ2)に従うものとする.ただし,ここでもµおよびσ2は未知である.また,

合格とすべき品質損失および不合格とすべき品質損失の値をそれぞれτ02およびτ12 とし,生産者危険および消費者危険をそれぞれαおよびβとする.

一方,第3章で述べた通り,分散σ2には現実的には製造コストに見合う工程能 力において実現可能な最小値が存在する.計量規準型逐次抜取検査の設計にあたっ て,この下限値をσ2T とする.これにより,σ2 σT2 の関係が想定される.また,

合格とすべき品質損失τ02を理想的な製品製造状態においても回避できない損失と して定義する.このとき,τ02は(µ0, σ02) = (µT, σ2T)の組合せによってのみ与えら れる.したがって,τ02は具体的にはτ02 =σ02 =σ2T として評価される.

ここで,平均µと分散σ2のもとで与えられる品質損失τ2のロットが最終的に 合格と判定される確率をL(µ, σ22)と表記する.このとき,生産者危険に関する

条件式として

L(µ0, σ0202)1−α (4.3) を得る.

一方,τ12は不合格とすべきロットの製品品質であり,τ12 > τ02の関係をもつ.さ らに,τ12と(µ1, σ12)には

τ12 =σ21 + (µ1−µ0)2 (4.4) の関係が成り立つ.そのため,任意の(µ1, σ12)の組合せに対して

max

121)Ω(τ12)

L(µ1, σ1212)≤β (4.5) を満足する必要がある.ここで,Ω(τ12)は式 (4.4)で定義されるτ12を与える平均と 分散の組合せの集合である.この式 (4.3)および(4.5)が,今回設計する計量規準 型逐次抜取検査が満足すべき条件式となる.

つぎに,サンプルより得られる品質特性値xiとサンプル・データyiの関係につ いて議論する.既述のように,品質特性値がxiの製品1個から生じる品質損失は (xi−µ0)2として定義される.そこで,yi

yi (xi−µ0)2

σ02 (4.6)

と定義する.品質損失がτ02で与えられるとき,品質特性値xiは正規分布N0, σ02) に従うから,yiは自由度が1の中心カイ2乗分布に従う.このとき,yiの確率密度 関数f(yi;µ0, σ20)は

f(yi;µ0, σ02) = 1 212Γ(1

2

)y

1 2

i eyi2 (4.7)

となる.

一方,品質損失がτ12であるとき,式 (4.6)を式変形して yi = σ21

σ20

(xi−µ0)2

σ21 (4.8)

と表すことにより,yiは係数σ1220と自由度1,非心度 δ1 = (µ1 −µ0)2

σ12 = τ12

σ12 1 (4.9)

の非心カイ2乗分布に従う確率変数の積と解釈することができる.

すでに述べたように,非心カイ2乗分布をそのまま取扱うことは容易ではない.

そこで,ここでもPatnaik近似の手法を用いて,非心カイ2乗分布を中心カイ2乗 分布に近似することを考える.統計量

ρi = 2E[yi]

V [yi] yi (4.10)

の期待値と分散は

Ei] = 2{E[yi]}2 V [yi]

= (1 +δ1)2 1 + 2δ1 Vi] = 4{E[yi]}2

V [yi]

= 2(1 +δ1)2 1 + 2δ1 となることから,これらは自由度

ν1 = 2{E[yi]}2 V [yi]

= (1 +δ1)2

1 + 2δ1 (4.11)

の中心カイ2乗分布の平均と分散にそれぞれ一致していることがわかる.したがっ て,ρiを自由度ν1の中心カイ2乗分布に近似することができる.結局,ρiν1を 用いて

ρi = σ02

τ12ν1yi (4.12)

と表すことができる.よって,品質損失がτ12であたえられるときのyiの分布は,

χ2ν1を自由度ν1の中心カイ2乗分布として yi τ12 σ20

χ2ν

1

ν1 (4.13)

と記述することができる.また,このときのyiの確率密度関数f(yi;µ1, σ21)は f(yi;µ1, σ12) = 1

2ν21Γ(ν1

2

) (σ02

τ12ν1 )ν21

y

ν1 21 i e

yi 2

(σ2 0 τ2 1

ν1

)

(4.14) となる.結局,尤度比λnは式 (4.7) および(4.14)より

λn =

n i=1

f(yi;µ1, σ12)

n i=1

f(yi;µ0, σ02)

= {

21−ν21 Γ(1

2

) Γ(ν1

2

) }n(

σ02 τ12ν1

)21n

i=1

{ y

ν11 2

i e

yi 2

( 1στ202

1

ν1

)}

(4.15) となり,この尤度比λnをもとに,品質損失を評価基準とした計量規準型逐次抜取 検査が設計される.