調査年度の違いによる比較
今回の調査は,男性データのみ2011年度に追加で調 査を行っているため,父親および母親の年代,年齢,属 性(社会人= 0,学生= 1)について,2006年度データ と2011年度データの比較を行った(Table 1)。その結 果,父親の年代と子の年齢が共に2006年度データよ りも,2011年度データの方が有意に高かった(t(129)
= 3.657,p < .001;t(135)= 2.453,p < .05)。
各尺度の主成分分析と信頼性
まず各尺度の主成分分析を行い,それぞれの信頼性
係数(CronbachのD係数)を算出した。「夫婦間の信頼
感尺度」を父親について分析したところ,22項目はす
Table 1 調査年度の違いによる基本属性の比較
2006年度 2011年度 t値
M SD M SD
父(夫)年代 47.96(4.99) 51.71(6.05) 3.657***
母(妻)年代 46.88(4.68) 47.63(5.79) 0.760 息子の年齢 21.71(2.18) 22.86(3.29) 2.453*
息子の属性 0.75(0.44) 0.63(0.49) 1.433
*p < .05,***p < .001
べて第1主成分に.50以上で負荷していたため,全ての 項目を分析に用いることにした。寄与率は57.06%であ り,D係数は.96であった。同様に「夫婦感の信頼感尺 度」を母親について分析したところ,22項目全てが第1 成分に.50以上で負荷していたため,すべての項目を用 いて尺度化した。寄与率は57.95%,D係数は.97であっ た。次に「両親から子への支持的な関わり尺度」を父親 について分析したところ,全ての項目が第1成分に.50 以上で負荷していたため,16項目全てを分析に用いた。
寄与率は40.07%,D係数は.90であった。同様に「両
親から子への支持的な関わり尺度」を母親について分析 したところ,16項目全てが.45以上で第1成分に負荷 していたため,16項目全てを分析に用いることにした。
寄与率は37.55%,D係数は.88であった。
「自己肯定感尺度」では,1個の成分が抽出され,寄
与率は44.53%,D係数は.84であった。「抑うつ尺度」
では全20項目中4項目が第1成分への負荷量が低かっ たため,その4項目を除き,再度主成分分析を行った。
その結果,16項目全てが第1成分に.36以上で負荷して いたため,全ての項目を分析に用いることにした。「抑 うつ尺度」の寄与率は30.87%,D係数は.84であった。
「主観的幸福感尺度」では,15項目全てが.45以上で第 1成分に負荷していたため,15項目全てを分析に用いた。
寄与率は38.74%,D係数は.88であった。「子の認識す
る父親からの支持的な関わり尺度」では,16項目全て が.50以上で第1成分に負荷していたため,16項目全て を分析に用いた。寄与率は44.53%,D係数は.91であっ た。「子の認識する母親からの支持的な関わり尺度」で も,16項目全てが.60以上で第1成分に負荷していた ため,16項目全てを用いた。寄与率は46.60%,D係数 は.92であった。各尺度のD係数より,内的一貫性が確 認されたため,全尺度を分析に使用した。分析では各尺 度に含まれる項目の評定値の合計を算出して使用した。
基礎統計量
次にサンプルの特性を把握するため,父親・母親・子 別に,尺度の平均値と標準偏差を算出した。その結果を
Table 2に示す。抑うつ以外の尺度は全て,最大値の方
に近い平均値となっている。ここから,本研究のサンプ ルは両親間の夫婦間信頼感が高く,両親共に子に支持的 関わりを多く行い,同時に子も両親から多くの関わりを 受けていると感じ,自己肯定感や主観的幸福感が高いサ ンプルであることが示された。
夫婦間の信頼感尺度得点の平均値を夫と妻で比較する ためにt検定を行ったところ,夫から妻への信頼感の方 が,妻から夫への信頼感よりも有意に高かった(t(292)
= 7.333,p < .001)。子への支持的な関わりの両親間の 平均値比較では,母親の方の平均値が有意に高く,母親 の方が父親よりも子に対して支持的な関わりを多く行っ ていると認識していた(t(292)= 7.214,p < .001)。子 の認識する父親からの支持的関わりと母親からの支持的 関わりの平均値も比較したところ,母親からの支持的関 わりの平均値の方が有意に高く,子は父親よりも母親か らより支持的関わりを受けていると感じていることが示 された(t(292)= 6.170,p < .001)。さらに父と子,母 と子で支持的な関わりへの評価が異なるのかどうかを 検討するためにt 検定を行った。その結果,親から子へ の支持的な関わりについて,親子で評価に差が見られ た。父親は子が評価するよりも高く,自身の子への関わ りを評価していた(t(292)= 3.645,p < .001)。これは 母親でも同様であり,母親の方が父親よりも,子の評価 より高く自身の関わりを評価していた(t(292)= 6.719, p < .001)。
さらに,子の性別の違いにより,各尺度の平均値が異 なるかどうかを検討するため,t検定を行った(Table 3)。
その結果,女性の方が男性よりも,父からの支持的関わ り(t(291)= 3.240,p < .01)と母からの支持的関わり(t
(291)= 2.018,p < .05)を多く受けていると感じていた。
Table 2 各尺度の回答者別平均値
回答者 尺度 M SD 範囲
父親 妻への信頼感 67.69(11.24) 22 – 88 子への支持的関わり 50.39(6.43) 16 – 64 母親 夫への信頼感 62.78(12.37) 22 – 88 子への支持的関わり 53.65(5.81) 16 – 64 子 父親からの支持的関わり 48.22(9.29) 16 – 64 母親からの支持的関わり 49.89(8.91) 16 – 64 自己肯定感 25.43(4.03) 9 – 36
抑うつ 32.00(7.26) 16 – 64
主観的幸福感 42.46(5.96) 15 – 60
また女性の方が男性よりも,自己肯定感が高く(t(291)
= 5.866,p < .001),主観的幸福感も高いことが示され
た(t(291)= 3.206,p < .01)。
各尺度間の関連性
夫・妻が評定するお互いへの信頼感と,父・母・子の 認識する父母から子への支持的関わり,及び子の心理的 健康の間の影響関係を検討するために,各尺度間の相関 係数を男女別に算出した(Table 4)。
まず,男女共通の結果であるが,夫から妻への信頼感 と妻から夫への信頼感の間にr = .52〜.54(p < .001)の 有意な正の相関があった。夫から妻への信頼感と,夫(父)
から子への支持的関わりの間にも高い正の相関が見られ
た(r = .54,p < .001)。妻から夫への信頼感と,夫(父)
から子への支持的関わりの間にもゆるやかな正の相関が 見られた(r = .23〜28,p < .01)。
また,父から子への関わりと子の認識する父からの 関 わ り に は 低 い 正 の 相 関 が 見 ら れ た( 男 性:r = .24,
p < .01;女 性:r = .17,p < .05)。 同 様 に 母 か ら 子 へ の 関わりと子の認識する母からの関わりの間にも低い正 の相関が見られた(r = .23,p < .01)。子の認識する父 親・母親からの支持的な関わりと抑うつの間に負の相 関(r = – .26〜– .35,p < .001;r = – .33,p < .001),子の 認識する父親・母親からの支持的な関わりと幸福感の間 に正の相関が見られた(r = .29〜32,p < .001;r = .38〜
Table 3 子の性別の違いによる平均値の差
尺度 男性 女性 t値
M SD M SD
夫から妻への信頼感 68.25 (10.60) 66.84 (11.70) 1.077 父の認識する子への支持的関わり 50.17( 5.75) 50.39 (6.93) 0.297 妻から夫への信頼感 63.45 (12.25) 62.11 (12.66) 0.917 母の認識する子への支持的関わり 53.37 (5.37) 53.77 (6.18) 0.594 子の認識する父からの支持的関わり 46.38 (9.41) 49.88 (9.02) 3.240**
子の認識する母からの支持的関わり 48.78 (8.97) 50.89 (8.87) 2.018*
自己肯定感 24.05 (2.86) 26.62 (4.52) 5.866***
抑うつ 31.34 (6.99) 32.58 (7.52) 1.465
主観的幸福感 41.26 (5.47) 43.47 (6.28) 3.206**
*p < .05,**p < .01,***p < .001
Table 4 各尺度間の相関係数(息子)
夫→妻
信頼感
妻→夫 信頼感
父→子 関わり
(父認識)
母→子 関わり
(母認識)
自己肯定感 抑うつ 主観的 幸福感
父→子 関わり
(子認識)
母→子 関わり
(子認識)
両親評価
夫→妻信頼感 – .52*** .54*** .05 .07 – .07 .01 .02 – .02 妻→夫信頼感 – .28** .16 .05 – .15 .06 .15 .10 父→子関わり
(父認識) – .14 .08 – .03 – .01 .24** .12 母→子関わり
(母認識) − – .08 – .09 – .04 .14 .23**
子評価
自己肯定感 – – .28** .42*** .09 0
抑うつ – – .67*** – .35*** – .33***
主観的幸福感 – .32*** .29***
父→子関わり
(子認識) – .83***
母→子関わり
(子認識) . –
**p < .01,***p < .001
42,p < .001)。そして子の認識する父親からの支持的関 わりと母親からの支持的関わりの間には非常に高い相関 が見られた(r = .83〜91,p < .001)。
次に男女で違いが見られた結果であるが,娘の場合,
夫からの妻への信頼感や妻から夫への信頼感,父親から 娘への関わりと,母から娘への関わりの間に有意な相関 が見られた(r = .21,p < .01;r = .35,p < .001;r = .23,
p < .001)が,息子の場合には,そのような有意な相関 は見られなかった。また娘の場合,父親の妻への信頼感 と娘の抑うつの間には負の相関が見られたが(r = .19,
p < .05),息子の場合にはそのような相関は見られなかっ た。同様に娘の場合,母から娘への関わりと娘の幸福感 との間に正の相関が見られたが(r =.19,p < .05),息子 の場合にはそのような相関は見られなかった。さらに 娘の場合のみ,母親の夫への信頼感と娘の認識する父 母からの関わりとの間に正の相関が見られた(r = .34,
p < .001;r = .31,p < .001))。同じく娘の場合,母から 娘への関わりと娘の認識する父からの関わりの間に正の 相関が見られた(r = .21,p < .05)。そして娘の場合の み,娘の認識する父母からの関わりと娘の自己肯定感の 間に正の相関が認められた(r = .27,p < .001;r = .36,
p < .001))。
仮説モデルのパス解析
両親の夫婦間信頼感や子への関わりから子の心理的健 康へ至るパスモデルを検討するため,Amos18を用いた パス解析を行った。なお,パス解析を行う前に,前述の 調査年度による差が見られた男性の年齢と父親の年代を
統制変数として代入した重回帰分析を行ったところ,男 性の年齢による影響は全く見られなかったが,父親の 年代による影響が1か所のみ見られた。年代が高いほ ど,息子の自尊心が低下することが示された(E= .20, p < .05)。また,これまでの分析で性別による差異が認 められたため,多母集団の同時分析を用いて,男女間の パスの比較も行った。なお,子の認識する父親からの支 持的な関わりと子の認識する母親からの支持的な関わり の間には.87という高い相関があり,多重共線性の問題 が発生するため,それぞれを2つのモデルに分けて個別 に導入した。
まず 「子の認知する父親からの支持的な関わり」 をモ デルに導入した場合,Figure 2及びFigure 3に示すよう な結果が得られた。子の性別に関係なく,妻から夫への 信頼感と夫から妻への信頼感はお互いに影響しあう関 係にあり(E= .52,p < .001;E= .54,p < .001),夫から 妻への信頼感が高いほど,父から子への支持的関わり が多くなることが示された(E= .29,p < .001;E= .32, p < .001)。子の認識する父からの支持的関わりは,子の 抑うつを減らし(E= .26,p < .001;E= .20,p < .01),
子の幸福感を高めることが,息子・娘に共通して見られ た(E= .19,p < .001;E= .26,p < .001)。
子の性別による違いも示された。子が息子の場合,父 親の認識する父から子への支持的関わりが高くなるほ ど,息子の認識する父から子への支持的関わりも増加す ることが示された(E= .33,p < .001)が,娘の場合に そのような関係は見られなかった。一方,子が娘の場合,
Table 5 各尺度間の相関係数(娘)
夫→妻
信頼感
妻→夫 信頼感
父→子 関わり
(父認識)
母→子 関わり
(母認識)
自己肯定感 抑うつ 主観的 幸福感
父→子 関わり
(子認識)
母→子 関わり
(子認識)
両親評価
夫→妻信頼感 – .54*** .54*** .21** .19* – .19* .16 .15 .15 妻→夫信頼感 – .23** .35*** .10 – .14 .17 .34*** .31***
父→子関わり
(父認識) – .23*** .12 – .12 .10 .17* .12 母→子関わり
(母認識) – .08 – .13 .19* .21* .23**
子評価
自己肯定感 – – .73*** .74*** .27*** .36***
抑うつ – – .65*** – .26*** – .33***
主観的幸福感 – .38*** .42***
父→子関わり
(子認識) – .91***
母→子関わり
(子認識) –
*p < .05,**p < .01,***p < .001