PCThermostat chamber
5.3 結果と考察
5.3.1 Nb2O5が与える触媒活性,耐久性,選択性への影響
1 M KOH + 1%水加ヒドラジン電解液におけるNiO/Nb2O5/C,NiO/C,Ni/C触媒のCV プロファイルをFig. 5.2に示す.NiO/Nb2O5/C(2:1)とNiO/Cはその他の触媒と比較してヒ ドラジン酸化活性が非常に低いことがわかる.NiO/Nb2O5/Cの酸化活性を見るとNiOに対 するNb2O5の添加割合が重要で,Ni:Nb = 16:1にて最大の活性を示し,Ni/Cと同等程度で あることが確認できる.
1 M KOH + 1%水加ヒドラジン電解液におけるNiO/Nb2O5/C,NiO/C,Ni/C触媒の耐久 性評価の結果をFig. 5.3に示す.NiO/Nb2O5/C(2:1)とNiO/Cの耐久性は非常に低く,耐久 試験50時間後の電流密度はどちらもほとんど0 mA/cm2である.Ni/Cにおいて,初期活性 は高いが経時変化が大きく,50時間後には電流密度が大きく低下している.NiO/Nb2O5/C 触媒において,RDE による触媒活性の結果と同様に,耐久性においても NiO に対する Nb2O5の添加割合が重要で,NiO/Nb2O5/C(16:1)において,初期電流密度の90%以上を維持 しており,最も安定で耐久性が高いことが確認できた.Fig. 5.4にNb添加割合と触媒活性,
耐久性との関係を整理する.Fig. 5.4よりNiOに対するNb2O5の添加割合が重要で,Ni:Nb
= 16:1が最適値であることが確認できる.
52
Fig. 5.2 サイクリックボルタモグラム(Cyclic voltammetry: CV)
Fig. 5.3 耐久性評価の結果 Potential (V vs. Hg/HgO)
Mass activity (mA/g)
-50 0 50 100 150 200 250 300 350
-1.1 -1.0 -0.9 -0.8 -0.7 -0.6
NiNb32-1 NiNb16-1 NiNb10-1 NiNb8-1 NiNb4-1 NiNb2-1 NiO Ni
NiO/Nb2O5/C (32:1) NiO/Nb2O5/C (16:1) NiO/Nb2O5/C (10:1) NiO/Nb2O5/C (8:1) NiO/Nb2O5/C (4:1) NiO/Nb2O5/C (2:1) NiO/C
Ni/C
-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 50 100 150 200
NiNb 32-1 NiNb 16-1 NiNb 10-1 NiNb 8-1 NiNb 4-1 NiNb 2-1 NiO Ni
Time (h) Current density (mA/cm2)
NiO/Nb2O5/C (32:1) NiO/Nb2O5/C (16:1) NiO/Nb2O5/C (10:1) NiO/Nb2O5/C (8:1) NiO/Nb2O5/C (4:1) NiO/Nb2O5/C (2:1) NiO/C
Ni/C
53
Fig. 5.4 触媒活性と耐久性の結果まとめ
1 M KOH + 1%水加ヒドラジン電解液におけるNiO/Nb2O5/C,NiO/C,Ni/C触媒の選択 性評価の結果をFig. 5.5に示す.Ni/Cではヒドラジンの分解反応が進み,アンモニア,窒 素,水素の生成量がいずれも多く,選択性が悪いことが示唆された.NiO/Nb2O5/C(2:1)と
NiO/C においては上述の通り,ヒドラジンとの反応性が低いため,分解反応も進行してい
ないと考えられる.一方,反応性が Ni/C と同等程度に高い NiO/Nb2O5/C(16:1)において,
ヒドラジンの分解反応に由来するアンモニア,窒素,水素の生成量はNi/Cより大きく低減 しており,触媒活性と選択性の両立ができていることが確認できた.また,担体カーボン であるカーボンブラック(Carbon black: CB)の結果を見ると,NiO/Nb2O5/C(16:1)におけ る窒素,水素は担体カーボン由来と考えられ,担体種の検討により窒素,水素の生成量を 低減できることが示唆された.
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
0 50 100 150 200 250 300 350
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35
Nb/(Ni+Nb) (NiO/C)
32:1 16:1
10:1 8:1
4:1
Mass activity at -0.6 V (mA/g) 2:1 Current retention
◆Mass activity
□Current retention
54
Fig. 5.5 触媒選択性の比較
5.3.2 第一原理計算を用いたアンモニア生成要因の解析
Fig. 5.6 ヒドラジンのN-N結合分解の反応エネルギーの比較
金属 Ni表面と NiO 表面でのヒドラジン分解によるアンモニア生成を比較するため,第 一原理計算を活用した.Fig. 5.6にヒドラジンのN-N結合分解の反応エネルギーの比較を
0 10 20 30 40 50 60 70
系列3 系列2 系列1
NiO/Nb2O5/C
(8:1) NiO/Nb2O5/C
(4:1) NiO/Nb2O5/C
(2:1) NiO/C Ni/C CB
Decomposition rate (μmol/mg・h)
NH3 N2 H2
NiO/Nb2O5/C
(32:1) NiO/Nb2O5/C
(16:1) NiO/Nb2O5/C (10:1)
-0.4609eV -0.5997eV
+2.1171eV
-2.4964eV 反応進みにくい 反応進みやすい
Ni surface
NiO surface +2.1171 eV
-2.4964 eV
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示す.Fig. 5.6より,NiO表面ではヒドラジンのN-N結合は切るときの反応エネルギー は非常に高く,NiO表面ではアンモニアが生成されにくいことがわかる.一方,Ni表面で は反応エネルギーがマイナスの値を示し,Ni表面上では容易にヒドラジンのN-N結合が 切れることが示唆された.また, Bader 解析を用いてヒドラジン吸着状態での NiO,Ni 表面のN原子の価電子数を比較し,結果をTable 5.1にまとめた.Table 5.1よりNiO表面 よりNi表面上のN原子の電子数が大きく,Ni側からヒドラジンのN原子へ電子が流れ込 んでいることが示唆され,これが選択性の違いに現れていると考える.
Table 5.1 ヒドラジン吸着状態でのNiOとNi表面上のN原子の価電子数比較
5.3.3 触媒の構造解析
合成した触媒のバルク結晶構造を解析するため,XRD を使用した.Fig. 5.7 に NiO/Nb2O5/C, NiO/CのX線回折パターンを示す.回折ピーク2θ = 25°は担体カーボン 由来のC(002)で帰属され,2θ = 36.8,43.0,62.3°はNiO(111),(200),(220)で帰属で きた.全てのNiO回折ピークは立方晶 NiO構造で帰属でき,合成したNiO/C触媒の結晶 構造を理解することができた.2θ = 22.5,28.4,28.7,36.6,45.9,50.3,50.5,54.9,
55.0,58.8°はNb2O5(040), (050), (-202), (240), (080), (212), (-402), (280), (331), (004)で 帰属された.全てのNb2O5回折ピークは単斜晶 Nb2O5構造で帰属でき,NiO/Nb2O5/C 触 媒はNiOとNb2O5の混合物であることがわかった.
H N H H N H
Isosurface = 0.08 e/Å3 Isosurface = 0.08 e/Å3
electron increase of N atoms = 0.28 electron increase of N atoms = 0.88 NiO surface and adsorbed hydrazine Ni surface and adsorbed hydrazine
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Fig. 5.7 XRDパターンの比較(ターゲット:Cu Kα)
Fig. 5.8にNiO/Nb2O5/C(8:1,4:1,2:1)の走査型透過電子顕微鏡写真とエネルギー分散型 X線分光による元素分析マッピング像を示す.電子顕微鏡写真より触媒粒子の粒子径は20
nmから50 nmで分散していることがわかる.マッピング像よりNiとNbは混合物の状態
で分散し,複合化しているようには観察されなかった.この結果はXRDによる結晶構造解 析の結果とも一致する.
20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70
2θ (o)
NiO/C (2:1) (4:1) (8:1) (10:1) (16:1) NiO/Nb2O5/C (32:1)
NiO Nb2O5
○
×
○
○
○
×
××
×
× × × × × ×
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Fig. 5.8 走査型透過電子顕微鏡写真と元素分析マッピング像
ヒドラジン酸化反応に対するNiO/Nb2O5/Cの活性起源を調査するため,XAFS解析を使 用した.Fig. 5.9にNi K吸収端,Nb K吸収端のXAFS解析結果を示す.Fig. 5.9(a,b)よ り活性の低いNiO/Nb2O5/C(2:1)とNiO/CのNi電子状態と局所構造が一致し,ヒドラジン 酸化活性を示すNiO/Nb2O5/C(8:1)と(4;1)の Ni電子状態と局所構造が一致することより,
反 応 性 が 低 い 触 媒 と 高 い 触 媒 と の 間 に 大 き な 変 化 が 生 じ て い る .Fig. 5.9(b)よ り , NiO/Nb2O5/Cの第一ピークはNi-Oの結合の配位数において,NiO/Nb2O5/C (2:1)と比較 して,(8:1)と(4:1)では低下していることがわかる.これはNiO/Nb2O5/C(8:1)と(4:1)では酸 素欠損が生じていることを意味しており,これにより NiO/Nb2O5/C(8:1)と(4:1)の Ni 電子 状態がNiO/Nb2O5/C(2:1)と比較して低エネルギー側へシフトしたと考えられる.Fig. 5.9(c,
d)よりNiO/Nb2O5/C のNb電子状態や局所構造に大きな差異がないことからも,Nb2O5の 添加によりNiOに酸素欠陥が生じて,NiO/Nb2O5/C(8:1)と(4:1)ではヒドラジン酸化活性が 大きく向上したと考えられる.
Nb L
100 nm 100 nm Ni K 100 nm O K
100 nm
O Ni
Nb a) NiO/Nb2O5/C (8:1)
merged
Nb L
100 nm 100 nm Ni K 100 nm O K
100 nm
O Ni
Nb merged
HAADF
HAADF
b) NiO/Nb2O5/C (4:1)
100 nm 100 nm Nb L 100 nm Ni K 100 nm O K
Ni O Nb
merged HAADF
c) NiO/Nb2O5/C (2:1)
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Fig. 5.9 XAFS解析結果
(a) Ni K吸収端のXANESスペクトル (b) Ni K吸収端EXAFS領域の動径分布関数
(c) Nb K吸収端のXANESスペクトル (d) Nb K吸収端EXAFS領域の動径分布関数