第七章 燃料透過のその場観察と発電特性への影響解析
7.3 実験結果と考察
7.3.1 燃料透過が発電性能に与える影響
Fig. 7.4 乾燥状態での断面方向観察像
GDL CL Membrane CL MPL/GDL
Anode Cathode
80
Fig. 7.4に発電していないときの乾燥状態での観察像を示す.中心の白くコントラストが
付いている部分が電解質膜であり,厚み約20 µmでも明確に観察できることを確認できる.
Fig. 7.5に断面方向観察時の燃料電池の発電特性とアノード,カソードの分極データを示す.
改良した断面方向セルでは燃料電池出力が改善され,電流密度も前章から 1 桁向上してい ることがわかる.Fig. 7.5より,電流密度80 mA cm-2の時にセル電圧が大きく低下してい ることがわかる.そのときのアノード,カソードの分極を見ると,カソード電位が大きく 低下しており,カソード由来によってセル電圧が低下したことが示唆された.Fig. 7.6に断 面方向観察時の燃料電池のインピーダンスを示す.セル抵抗R1の値は反応抵抗R2にくら べて小さく,R1は電流値の増加に伴い低下していることがわかる.セル電圧が大きく低下 する80 mA cm-2のときに反応抵抗R2は向上し,80 mA cm-2以降は電流値の増加に伴い R2も増加している.これらの結果から,80 mA cm-2でのセル電圧の大きな低下はカソード 反応抵抗の増加によるものと考えられ,80 mA cm-2のときにカソード反応がうまく進まな いことが示唆された.
Fig. 7.7にFig. 7.4リブ下の点線枠部分の透過X線強度のラインプロファイルを示す.電
流値の増加に伴いラインプロファイルの形状が変化し,特に電解質膜とカソード触媒層の 透過X線強度が変化し,電流密度が増加すると透過X線強度が低下していることがわかる.
これは燃料透過によってカソード触媒層内に液体が侵入することで X 線の吸収が大きくな り,透過X線強度が低下したと考えられる.また,ラインプロファイルの変化は60 mA cm-2 から80 mA cm-2を境に急激に減少しており,80 mA cm-2にて燃料透過が増加したことが示 唆されたと考える.これらの結果より,80 mA cm-2でのセル電圧の大きな低下は燃料透過 によるカソード反応抵抗の増加であると考えられ,燃料透過によって燃料電池の出力特性 が大きく低下することが示唆された.また,燃料透過の透過液量は電流密度によって異な り,電流密度が増加すると,燃料透過量も増加する傾向を確認した.これはカソード側で 酸素還元反応が進むとカソード側の水が消費され,アノード側とカソード側の水分バラン スに傾きができ,燃料透過が促進されると考える.
81
Fig. 7.5 その場観察時の燃料電池の発電特性と分極データ
Fig. 7.6 その場観察時の燃料電池のインピーダンス
R1: セル抵抗,R2: 反応抵抗
-1.1 -1 -0.9 -0.8 -0.7 -0.6 -0.5 -0.4 -0.3 -0.2
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
Potential (V vs. Hg/HgO)
C el l vol ta ge (V )
Current density (mA/cm2) Cell voltage
Anode potential
Cathode potential
1.3 1.5 1.7 1.9 2.1 2.3 2.5
0.2 0.22 0.24 0.26 0.28 0.3
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
R2 impedance (mΩ・cm²)
R1 impedance (mΩ・cm²)
Current density (mA/cm²)
R1 R2
82
Fig. 7.7 リブした部分の透過X線強度のラインプロファイル