• 検索結果がありません。

3.1 アクチニドまたは希土類を含む溶融塩化物中における液体金属電極挙動

3.1.2 アクチニドを含む溶融塩化物中での液体 Al 及び液体 Ga 電極の基礎特性

3.1.2.3 結果及び考察

(a) 溶融LiCl-KCl-UCl3中及び溶融LiCl-KCl-PuCl3-AmCl3中での液体Ga電極挙動

図3.1-23 に溶融 LiCl-KCl-1.6wt%UCl3(浴温773 K)中での Ta 電極及び液体 Ga 電極のCVを示 す。Ta 電極の CVには、0 V付近のLi金属析出(3.1-2式)・溶出(3.1-3式)に起因する酸化還元 対の他に、1.0 V 付近に U 金属析出(3.1-27 式)及びその溶出(3.1-28 式)に起因する酸化還元電 流ピークが観測された[1、6]。

U3+ + 3e- → U (3.1-27)

U → U3+ + 3e- (3.1-28)

液体 Ga 電極の CV では、1.55 V 付近に還元電流の立ち上がり及び酸化電流ピークが観察された。

これらは、UCl3を添加していない溶融LiCl-KCl中では観察されなかった電流であり、液体 Ga 中 へのU析出(3.1-29式)及び液体 Ga 中Uの溶出(3.1-30式)に起因すると考えられる。

U3+ + 3e- → Uin Ga (3.1-29)

Uin Ga → U3+ + 3e- (3.1-30)

以上の結果から、1.55 V よりも卑な電位領域において U-Ga 合金が形成し、貴な電位領域におい

てはU-Ga 合金からのU脱合金化が進行することが示された。

浴温 723 K 及び 823 K においても 773 K の結果と同様に、Ta 電極の CV には、Li 金属析出 (3.1-2式)・溶出(3.1-3式)及びU金属析出(3.1-27式)・溶出(3.1-28式)に起因する酸化還元対 が観測された(図 3.1-24 及び 3.1-25)。また、液体 Ga 電極の CV には、1.58 V(723 K)、1.54 V(823 K)付近に還元電流の立ち上がり及び酸化電流ピークが観察された。これらは液体 Ga 中へ のU析出(3.1-29 式)及び液体 Ga 中 Uの溶出(3.1-30 式)に起因すると考えられ、1.58 V(723 K)

又は 1.54 V(823 K)よりも卑な電位領域において U-Ga 合金が形成し、貴な電位領域においては

U-Ga 合金からのU脱合金化が進行することが示された。

図3.1-26に試験後の液体 Ga 電極外観を示す。アルミナ坩堝の縁及び液体 Ga 表面には UCl3由 来の濃紫色の塩が付着している様子が見られる。純液体 Ga 金属をアルミナ坩堝に装荷した際に は、アルミナ坩堝との濡れ性が悪いためにアルミナ坩堝内の液体 Ga 表面が中央に向かって盛り 上がる。しかし、理由は現在のところ不明であるが、試験後に得られた U-Ga 合金ではアルミナ

18

との濡れ性がよく、図3.1-26のようにアルミナ坩堝内の液体 Ga 表面は平らであった。

2wt%PuCl3及び0.02wt%AmCl3を含む溶融LiCl-KCl(773 K)中での Ta 電極及び液体 Ga 電極のCV を図3.1-27に示す。Ta 電極のCVには、0 V付近のLi金属析出(3.1-2式)・溶出(3.1-3式)に起 因する酸化還元対の他に、0.8 V付近に Pu金属析出(3.1-31式)及びその溶出(3.1-32式)に起因 する酸化還元ピークが観測された[1、7]。

Pu3+ + 3e- → Pu (3.1-31)

Pu → Pu3+ + 3e- (3.1-32)

液体 Ga 電極の CVでは、1.4 V 付近に還元電流の立ち上がり及び酸化電流ピークが観察された。

これらは、PuCl3や AmCl3を添加していない溶融 LiCl-KCl 中では観察されなかった電流であり、

液体 Ga 中へのPu(Am)析出(3.1-33式)及び液体 Ga 中Pu(Am)の溶出(3.1-34式)に起因すると考え られる。

Pu3+(Am3+) + 3e- → Pu(Am)in Ga (3.1-33)

Pu(Am)in Ga → Pu3+(Am3+) + 3e- (3.1-34)

以上の結果から、1.4 V よりも卑な電位領域において Pu(Am)-Ga 合金が形成し、貴な電位領域に おいてはPu(Am)-Ga 合金からのPu(Am)脱合金化が進行することが示された。

浴温 723 K 及び 823 K においても 773 K の結果と同様に、Ta 電極の CV には、Li 金属析出 (3.1-2 式)・溶出(3.1-3式)及びPu 金属析出(3.1-31 式)・溶出(3.1-32 式)に起因する酸化還元 対が観測された(図 3.1-28 及び3.1-29)。また、液体 Ga 電極のCV には、1.42 V(723 K)、1.39 V(823 K)付近に還元電流の立ち上がり及び酸化電流ピークが観察された。これらは液体 Ga 中へ のPu(Am)析出(3.1-33 式)及び液体 Ga 中 Pu(Am)の溶出(3.1-34 式)に起因すると考えられ、1.42 V(723 K)又は 1.39 V(823 K)よりも卑な電位領域において Pu(Am)-Ga 合金が形成し、貴な電位領 域においてはPu(Am)-Ga 合金からのPu(Am)脱合金化が進行することが示された。

2wt%CeCl3、2wt%NdCl3、1.6wt%UCl3又は2wt%PuCl3-0.02wt%AmCl3を含む溶融LiCl-KCl中におい て液体 Ga 電極の分極測定を行った。図 3.1-30、3.1-31、3.1-32 はそれぞれ 723 K、773 K、

823 Kで測定を行った結果である。CVから得られた結果と同様の電位領域において各合金形成が

進行することが示されている。これらの図より、Ce-Ga 合金と Nd-Ga 合金形成はほぼ等しい電位 領域において進行し、これら希土類合金形成よりも約0.1 V貴な電位においてPu(Am)-Ga 合金形 成が進行することが分かる。この結果から、提案プロセスのアクチニド/希土類分離ステップに おいて、Pu(Am)-Ga 合金が形成し、希土類合金が形成しない電位(図 3.1-30~3.1-32 の点線で囲 む電位領域)に液体 Ga 電極を保持することで、高い Pu(Am)/希土類分離性能が得られると期待さ れる。

(b) 液体Ga中UおよびPuの活量係数測定

19

3.1.1.3(d)に述べた液体 Ga 中Liおよび Ceの活量係数測定と同様に、液体 Ga 中U およびPu の活量係数測定を起電力測定法により行った。浴温 723 K、773 K、823 K の溶融 LiCl-KCl-1.6wt%UCl3中において、液体 Ga-U 合金の浸漬電位を U 金属棒の示す電位を基準として測定した。

測定結果、3.1-20 式より求めた各測定点における活量係数および 3.1-22 式で定義される相対部 分モル過剰自由エネルギーを表3.1-14に示す。液体 Ga 中Uが飽和している際の相対部分モル過 剰自由エネルギーが報告されており[8]、本研究での値とほぼ等しいことが分かる。

溶融 LiCl-KCl-2wt%PuCl3-0.02wt%AmCl3中(浴温 723 K、773 K、823 K)において、液体 Ga-Pu 合金の浸漬電位を Ta 線電極上に析出させたPu金属の示す電位を基準として測定した。測定結果 を図3.1-33および表3.1-15に示す。図3.1-33より、浸漬電位や起電力はln(1/CPu)に比例する ことが分かる。またその回帰曲線の傾きは、図 3.1-33 中の直角三角形により示される各温度に おける理論的な傾き(=RT/3F)とほぼ等しい。各測定点において 3.1-20 式より求めた活量係数お

よび3.1-22式によって定義される相対部分モル過剰自由エネルギーを表3.1-16に示すように、

測定した Pu濃度範囲(液体 Ga 中Pu:0.0044~0.083 mol%)においてほぼ等しい活量係数が得られ た。これらより、測定濃度範囲において液体 Ga 中Puの活量係数は一定であり、その平均値とし て、1.95×10-10 (723 K)、1.55×10-9 (773 K)、7.55×10-9 (823 K)が得られた。

(c) 溶融LiCl-KCl中での液体Al電極挙動

図 3.1-34に溶融 LiCl-KCl 中(973 K)での Ta 電極及び液体 Al電極の CVを示す。Ta 電極のCV には、0 V 付近にするどい還元電流の立ち上がりとこれに対応する酸化電流が観測された。これ らは、それぞれ Li 金属析出(3.1-2 式)及びその溶出(3.1-3 式)に起因する電流である。液体 Al 電極の CV には、0.9 V 付近に還元電流の立ち上がり及びこれに対応する酸化電流ピークが観察 された。これらは、液体Al中へのLi析出(3.1-35)式及び液体Al中Liの溶出(3.1-36)式に起因 すると考えられる。

Li+ + e- → Liin Al (3.1-35)

Liin Al → Li+ + e- (3.1-36)

この結果から、提案プロセスのアクチニド/希土類分離ステップにおいてアクチニド-Al 合金形 成反応(2.1-3 式)を利用する際に 0.9 V よりも卑な電位領域では液体 Al 中への Li

析出((3.1-35)式)が副反応として進行することが示唆される。また1.3 V付近に、急激な酸化電流の立ち上

がり及びこれに対応する還元電流ピークが観察された。これらは、液体 Al の溶出(3.1-37 式)及 び液体Al析出(3.1-38式)に起因すると考えられる[1]。

Al → Al3+ + 3e- (3.1-37)

Al3+ + 3e- → Al (3.1-38)

よって、提案プロセスのアクチニド回収ステップにおいてアクチニド-Al 合金からのアクチニド

20

脱合金化反応(2.1-8 式)を利用する際に、1.3 V よりも貴な電位領域では液体 Al の溶出(3.1-37 式)が副反応として進行することが考えられる。以上の結果から、溶融 LiCl-KCl(973 K)中では、

0.9 V から 1.3 V の電位領域において液体 Al 電極を使用することが望ましいことが示唆される。

(d) 溶融LiCl-KCl-CeCl3中及び溶融LiCl-KCl-NdCl3中での液体Al電極挙動

図3.1-35 に溶融 LiCl-KCl-1.6wt%CeCl3(浴温973 K)および溶融 LiCl-KCl-1wt%NdCl3(浴温957 K)中での液体Al 電極のCVを示す。溶融LiCl-KCl-1.6wt%CeCl3中での CVには、1.2 V 付近に還 元電流の急激な立ち上がり及び酸化電流ピークが観察された。これは液体 Al 中への Ce 析出 (3.1-39式)および液体Al中Ceの溶出(3.1-40式)に起因すると考えられる。

Ce3+ + 3e- → Cein Al (3.1-39)

Cein Al → Ce3+ + 3e- (3.1-40)

溶融LiCl-KCl-1wt%NdCl3中においても同様に、液体Al中への Nd析出(3.1-41式)および液体Al 中 Nd の溶出(3.1-42 式)に起因すると考えられる還元電流の増加および酸化電流ピークが 1.2 V 付近に観察された。

Nd3+ + 3e- → Ndin Al (3.1-41)

Ndin Al → Nd3+ + 3e- (3.1-42)

溶融 LiCl-KCl-CeCl3中及び溶融 LiCl-KCl-NdCl3中ともに 1.3 V より貴な電位領域で観察された 酸化電流は、溶融 LiCl-KCl 中での結果より、液体 Al の溶出(3.1-37 式)に起因すると考えられ る。

(e) 溶融LiCl-KCl-UCl3中及び溶融LiCl-KCl-PuCl3-AmCl3中での液体Al電極挙動

図3.1-36 に溶融 LiCl-KCl-1.6wt%UCl3(浴温973 K)中での Ta 電極及び液体 Al電極のCVを示 す。Ta 電極の CVには、0 V付近のLi金属析出(3.1-2式)・溶出(3.1-3式)に起因する酸化還元 対の他に、1.0 V 付近に U 金属析出(3.1-27 式)及びその溶出(3.1-28 式)に起因する酸化還元ピ ークが観測された[1、6]。液体 Al電極のCVには、1.3 V 付近に酸化電流の立ち上がり及び還元 電流ピークが観察された。溶融 LiCl-KCl 中での結果とあわせて考えると、1.3 V より貴な電位 領域では、液体Alの溶出(3.1-37 式)と液体Al中Uの溶出(3.1-43式)が同時に進行しているこ とが示唆される。

Uin Al → U3+ + 3e- (3.1-43)

また、1.3 Vよりも卑な電位領域では、液体Al析出(3.1-38式)と液体Al中へのU析出(3.1-44 式)が同時に進行していると思われる。

21

U3+ + 3e- → Uin Al (3.1-44)

1 V 付近に見られる還元電流の増加及び酸化電流ピークは、3.1-44 式により形成した Al-U 合金 表面でのU金属析出(3.1-27式)及びその溶出(3.1-28式)に起因すると考えられる。

2wt%PuCl3-0.02wt%AmCl3を含む溶融LiCl-KCl(973 K)中での Ta 電極及び液体Al電極の CVを図 3.1-37に示す。Ta 電極のCVには、0 V付近のLi金属析出(3.1-2式)・溶出(3.1-3式)に起因す る酸化還元対の他に、0.7 V 付近にPu金属析出(3.1-31 式)及びその溶出(3.1-32式)に起因する 酸化還元ピークが観測された[1、7]。液体Al電極の CVには、1.2 V 付近に酸化電流の立ち上が り及び還元電流ピークが観察された。これらは、液体 Al 中 Pu(Am)の溶出(3.1-45 式)及び液体 Al中へのPu(Am)の析出(3.1-46式)に起因すると考えられる。

Pu(Am)in Al → Pu3+(Am3+) + 3e- (3.1-45)

Pu3+(Am3+) + 3e- → Pu(Am)in Al (3.1-46)

ただ、液体 Alの溶出(3.1-37 式)及び液体 Al 析出(3.1-38 式)が進行する電位に近いことから、

これらも液体Al中Pu(Am)の溶出(3.1-45式)及び液体Al中へのPu(Am)の析出(3.1-46式)とそれ ぞれ同時に進行していると思われる。以上のようなアクチニド-Al合金形成・脱合金化電位がAl 析出・溶出電位に近いという結果は、3.3 章において述べるように、液体 Al と溶融塩中のアク チニドイオン(U3+、Pu3+、Am3+)との化学反応(3.3-12 式)により、Al 中にアクチニドが抽出される ことと一致する。

以上の結果から、液体 Al 電極を提案プロセスに用いた場合、アクチニド回収ステップにおい て、合金中のアクチニドの溶出とともに Al の溶出も同時に進行することが定性的に示唆された。

3.1.3 液体Ga合金形成・脱合金化挙動