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結果の統合と提示

第 7 章 本研究 3

7.4. 結果の統合と提示

104 図7.4 対象者の行動面の特徴

表7.5 行動面に関する各教師の因子得点 授業実践

教師の学び 生徒主体 構造化

教師A -.27 -1.45 1.67

教師B .42 1.12 .64

教師C .01 1.13 .16

3名の教師ともに,生徒主体実践においては平均点に近い得点を示していたものの,構造 化実践においては学校1の教師Aの得点が極めて低く,教育課程特例校の教師Bと僻地校 の教師Cには高い傾向が見られた。教師としての学びにおいては,学校1の教師Aが高い 得点を示しており,教育課程特例校の教師Bと僻地校の教師Cもともに平均よりも高い得 点であった。

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合法の提示の仕方としてCreswell (2014) はJoint Displayを提案している (第7章参照)。

Joint Displayでは,結果の配列にしかたにはいくつかのオプションがあるが,本研究では

分析対象者の 3 名の教師ごとに,質問紙調査から得た量的調査の結果,質的調査から得た 構成概念,そしてそれらから得られる結果の統合を一つの表にして提示した。表7.6~表7.8 に教師ごとのJoint Displayを示す。

106 表7.6 学校1教師AのJoint Display

概念 量的結果 質的結果 (構成概念) 結果の統合

教 師 協 力 体制

学校1 (M = 1.40, SD = .78)

教師A (.85)

学校 1 は教師の協力体制においてす べての教師が高い得点を示していた。教 A の得点も高めであり,自校の教師 の協力体制は高めであると認識してい る。

・自校の英語教育を自分たちの手でつく り上げてきた

・どの教科にも共通する教師間で共有さ れた教育課題 (相手意識) や指導観 (子 どもの関わらせ方) の存在

・現在校での意欲的な実践による意識の 変化

・影響力のある同僚の存在

・他の教師の発言による内省 (気づき・意 識化)

「教師の協力体制」に関しては,学校1は全体に非常に高い得 点を示していたが,その中で教師Aも学校1全体と同じ特徴を示 していた。教師Aは,同僚たちと力を合わせて教育実践にあたっ ているという認識をもち,どの教科にも共通する教師間で共有さ れた教育課題や指導観があることを認識している (関係性)。英語 教育に関しても自校の英語教育を自分たちの手で作り上げてきた という自負の中に,関係性と自律性の高さを読み取ることができ る。そうした教師の関係性や自律性の高さが高い協力体制得点の 根底にあるものと思われる。

また教師Aは影響力のある教師の存在に何度も言及しており,

教師の高い協力体制の背景にはリーダーシップをとる教師の存在 もあることがわかる。

教師Aの発言には自身の意欲的実践に対する自覚とともに,同 僚教師の言葉の具体的な引用が多く見られているが,研究対象者 3名の中で他者の言葉に刺激された内省による気づきが最も多 く,普段の関わりあいの高さ (日常的な教師同士の交流) は教師の 内省による気づきを高めるのではないかと推察される。

生 徒 教 師 関係

学校1 自己効力感 (M = .38, SD =.50) 学校効力感 (M = .69, SD = .58)

教師A 自己効力感 (.23)

・学校として共有化された教育課題や指 導観

・子供が懸命にコミュニケーションしようしている 姿からの学び

学校 1の教師たちは全員が高めの効力感を示していたが,教師 A はその中でも特に高い学校効力感を示している。学校の教師間 で共有された教育目標や指導観によって教師が同じ方向を向いて 教育実践にあたっているという認識が学校全体に対する評価であ

107 学校効力感 (1.20)

学校全体としては自己効力感・学校効 力感とも高い傾向があり全員の教師が 両因子ともプラスの因子得点を示して いた。

教師 A は自己効力感はやや高いもの の,学校効力感が非常に高い得点を示し ている。

・英語授業によって子どもが変化した実 体験とそれが学級経営の成果ではなく,

英語教育のもつ力によるものであるとい う認識

・英語教育の成果のエビデンスを示す必 要性

「英語教育は課された使命である」とい う使命感と気概

・英語指導が想定外の世代と想定内の世 代 (若手)

・年齢と実践経験に基づく自信と実践の 手応えからくる効力感

・自校の英語教育を推進してきたという 自負

る学校効力感の高い得点につながっているものと考えられる。

一方教師Aは学校効力感に比べて自己効力感はそれほど高い数 値ではなかった。彼はクラスの子供たちに (望ましい) 変化があっ たことに関して,学級経営の成果ではなく,英語活動の力によるも のであると認識している。その理由は担任になってまだ自身の指 導が浸透していない時期に見られた児童の変化であることによ る。さらに彼は教育の成果を明確に示す必要性も述べており,自己 満足ではなくそうした教育がどう成果をあげているのかを客観的 に確かめることが必要であると考えている。そうした自己評価に おける基準の在り方が自己効力感を阻害している一因なのではな いかと推察される。

教師Aの英語指導に対する意欲を促進している要因は,使命感 (英語指導は想定外であったとしても自分たちに課せられた任務 であるのだから力を尽くすとする気概) や指導実践経験から得 た子どもの望ましい変化の実体験や自信,学校の英語教育を推進 しているという自負であることが読み取られる。

学 習 者 ビ リ ー

学校1 学習適性 (M = .16, SD = .88) 学習方略 (M = .23, SD = .68)

教師A 学習適性 (-.38) 学習方略 (.42)

学校1の教師は学習適性・学習方略と

・英語が専門ではないこと,母語ではない ことの難しさからくる指導内容への不安 (例えば冠詞)

・英語教育の前倒しに関しては,言語材料 の範囲と評価が課題

・学習者として授業経験により培われた スキル重視の不変の意識

研究2では,学校1の教師のビリーフにはばらつきがあり,個々 人によって異なった特徴の学習者ビリーフをもっていることが示 唆されていた。教師Aは,英語の難しさ (例えば冠詞) や英語が専 門ではないことから今後小学校で扱う言語材料がどの範囲になる のかを不安に感じており,そうした語学への自信のなさや不安が 学習適性の低い得点の一因であるものと思われる。

一方,教師Aは学習者として得たスキルの習得の重視に関する

108 もにばらついていて,個々の教師により

ビリーフが多様であることがわかる。教 師Aは学習適性 (英語に対する自信) やや低く学習方略がやや高い。

・変化した意識と変化しない意識 (学習 者として得た意識は変化していない)

・中学校,ゲームによる競い合いや,定着 を目指した繰り返し練習に対する好意的 な印象

・語彙学習への好意的感情

意識は変わっていないと認識している。彼の発言の中で学習方略 に関わるものは,学習者としてゲームによる繰り返し活動や語彙 学習への好意的感情であった。

指 導

学校1 直接伝達主義的

(M = -.96, SD = .50) 構成主義的

(M = .96, SD = .86)

教師A 直接伝達主義的 (-1.50)

構成主義的 (.87)

小学校教師全体に構成主義的指導観 が高い傾向が見られていたが,特に学校 1の教師たちにはその傾向が見られ,直 接伝達主義が低く,構成主義が高い得点 を示している。その中でも教師 A はそ の傾向が顕著である。

・教科性 (教科学習内容)と子どもをどう 育てるか (全人的教育) 2面性

・教科性 (教科内容)から学習への関わら せ方への意識の変化

・問題解決学習へのこだわり

・他教科 (直接伝達主義的) と英語活動

(生徒主主体の傾向) の違い

・担任としての普段の関わりの重要性

研究2からは学校1の教師たちは非常に構成主義的指導観が高 く,そこには子どもと学習との関わらせ方という教師間で共有さ れた教育目標の存在があることが推察されていた。それは,知識の 伝達よりも子供に学習の中心的役割を担わせるという構成主義的 指導観に通ずるものである。教師Aもまた自身が教科性 (教科学 習内容) を重視してきたものの,同僚の影響から子供をどう育て るかということに意識の変化があったことを認識している。さら に彼は専門科目が理科であることから,問題解決学習へのこだわ りを述べており,これは構成主義的指導観に基づく指導法である。

また教師Aは他教科とは異なった外国語活動の特徴として,外 国語活動は生徒主体の傾向が強いことを挙げており,外国語活動 の指導経験が構成主義的指導観をさらに強固なものとしている可 能性がある。また,彼の言葉からは教科指導においても担任として の関わり合いが重要であるとする小学校教師としての意識が見ら れる。

109 外 国

語 学 習 動

学校1 外発的動機づけ

(M = .18, SD = .68) 内発的動機づけ

(M = 68, SD = .79)

教師A 外発的動機づけ (1.01)

内発的動機づけ (1.17)

学校1の教師は全体に内発・外発とも に動機が高い。その中でも教師 A は内 発・外発共に非常に高い。

<学習者経験>

・中学校では,教師の人柄 (親近感) とロ ーマ字の知識により英語への関心

・称賛されることによる学習動機 (外発)

・高校,授業の無意味感による目的・興味 の喪失

・興味をひく教材 (映画教材) にも教師主 導の活動により否定的感情

・大学,は意欲の欠如

・英語論文を書いた達成感による自信

<教師経験>

・現在に至るまで一貫した洋楽に対する 関心と英語学習と結びつき

・コミュニケーションできたという達成感のもてる 場の設定の必要性

学校1の教師は全体に内発・外発ともに動機が高く,教師A 内発・外発ともに非常に高い得点を示している。教師Aの中学校 時代には英語への関心 (内発的動機) とほめられることによる外 発的動機の両方が見られている。しかしその後,教師との距離観,

授業の無意味さや面白味のなさ等多様な要因によって彼の外国語 学習動機は大きく下降している。現在の教師Aの動機づけの高い 得点は,一貫した洋楽への関心や学習者としての経験だけでなく,

教師になってからの教えるという立場が関わっている可能性があ る。特に外発的動機付けが高い理由は,単独で外国語活動の授業を 担当していることが関わっていると推察される。

また自身が達成感による自信を得たことから,児童にもそうし た達成感をもてる体験をさせたいという意識が見られている。

志 向

学校1 仕事志向 (M = .45, SD = .1.33) 交流志向 (M = .58, SD = .1.17)

教師A 仕事 (1.28) 交流 (1.73)

学校 1 の教師は両因子ともに高い群 と両因子ともに低い群に分かれている。

<学習者経験>

・学習者としてコミュニケーション活動体験の欠如

・読解中心の授業体験

<教師経験>

・教師になって変わった意識はコミュニケーション の態度の育成の必要性への気づき

・自分自身のコミュニケーションへの苦手意識と英 語教育の認識による志向性の高まり

教師Aは学習者時代には読解中心の授業体験がおもでコミュニケーショ ン活動の経験はなく,英語学習の目的観 (志向性) が欠如していた と思われる。現在教師Aは仕事・交流ともに志向性が高く,これ は教師になってからの経験が影響していると考えられる。教師 A 自身も教師になって変わった部分としてコミュニケーションの態度育成の 重要性への気づきを挙げている。その起因となったのは,英語教育 の目標の認識と自分自身がコミュニケーションに対する苦手意識をもつこ と,そして子どもたちが何とかしてコミュニケーションしようとする姿であ