• 検索結果がありません。

7.4 排 泄

8.3.3 経 皮

雌ICR Swissマウス30匹に1回につき18または54 mg(それぞれおよそ0.9および2.7 g/kg体重)のテトラクロロエテンを、週3日、最低440日間皮膚適用したが、皮膚腫瘍の増 加はみられなかった(Van Duuren et al., 1979)。暴露時間の短さ、動物数の不足、処置雄の 欠如、皮膚に限定した検査組織が、本試験の発がん性の検出能力を著しく制限している。

8.3.4 腹腔内投与

高感受性系のマウスにテトラクロロエテンを週 3 日腹腔内投与したが、肺表面腺腫は誘 発されなかった。マウスに80 mg/kg体重を14回、あるいは400 mg/kg体重を24回投与 し、初回投与24週間後に屠殺した(Theiss et al., 1977; see also HSE, 1987)

8.3.5 イニシエーション・プロモーション試験

1件の試験(経口投与モデルラットを用いる)では、テトラクロロエテンは発がんプロモー ション作用を有するがイニシエーション作用を有しないと示唆している。部分肝切除した ラットにさまざまな暴露法を施し、肝臓における酵素変化病巣(肝細胞がんに進行する可能 性がある前腫瘍性病変)の有無を検査した。テトラクロロエテンを単回腹腔内投与(最大耐 量:6 mmol/kg体重)し、続いてフェノバルビトン(phenobarbitone)を7週間飲水投与し、

病巣数を記録してイニシエーション作用を調べたが、この実験ではテトラクロロエテンの 影響はみられなかった。ジエチルニトロソアミン(diethylnitrosamine)の単回腹腔内投与後 にテトラクロロエテン(6 mmol/kg体重/日)を強制経口投与(週5日、7週間)し、発生した病 巣数をプロモーション作用の指標とみなした。この実験で、テトラクロロエテンは病巣の 増加を誘発した(Story et al., 1986)。他の試験では、ジエチルニトロソアミンをイニシエー ターとして用いたが、このモデルで発がん促進作用を確認することはできなかった (Holmberg et al., 1986; Lundberg et al., 1987)。そのうちの1件の試験で、イニシエータ ーの投与に続きテトラクロロエテン1.1 g/kg体重/日を週5日、7週間、部分肝切除ラット に強制経口投与したが、肝病巣の数あるいは大きさに影響はみられなかった(Lundberg et al., 1987)。マウスを用いた肺腫瘍プロモーション試験でもそうした作用を検出することは できなかった(Maronpot et al., 1986)。

詳細な報告に欠けるが、ある試験で雌ICR Swissマウス30匹にテトラクロロエテン163

64

mgを単回皮膚適用し、酢酸ミリスチン酸ホルボール(phorbol myristate acetate)を最低428 日間反復適用したが、イニシエーション作用はみられなかった(Van Duuren et al., 1979)。

14000 mg/m3に1日8時間、週5日、10週間吸入暴露した雌Wistarラット新生仔の肝 臓に、テトラクロロエテンは前腫瘍性病巣を誘発しなかった(Bolt et al., 1982)。

8.4 遺伝毒性および関連エンドポイント

8.4.1 in vivo 試験

ある限定的な報告によると、2050または4100 mg/m3への1日6時間、週5日、12ヵ月 間の吸入暴露は、ラット(各群雌雄各3匹)の骨髄で染色体異常を増加させなかった(Rampy et al., 1978)。ラット(各群雌雄各10匹)を最高3400 mg/m3まで週7日、1日または5日間 吸入暴露した骨髄染色体試験ではあいまいな結果が報告されたが、試験物質の純度が低か った(91.4%)ことが解釈を妨げている(Beliles et al., 1980)。あるテトラクロロエテン試料の 単回または反復(1日1回を5日間)腹腔内投与は、マウス骨髄で染色体異常を誘発しなかっ た。用量はLD50の0.17(=1/6)および0.5(=1/2)といわれているが、試験の詳細な報告はない (Cerna & Kypenova, 1977)。最高2 g/kg体重までを腹腔内投与したマウスの骨髄で小核誘 発は起こらなかったが、1および2 g/kg体重を投与した部分肝切除マウスの肝臓では、用 量に依存した小核細胞の有意な増加がみられた (Murakiami & Horikawa, 1995)。

テトラクロロエテンは、チャイニーズハムスターやラットで精子頭部異常を誘発しなか っ た が 、 低 純 度 サ ン プ ル(91.4%)で は マ ウ ス に 陽 性 結 果 が 出 た(Beliles et al., 1980;

Mennear, 1985)。ラットおよびマウスを用いた試験で、700あるいは3400 mg/m3を1日7 時間、5日間暴露し、最後の暴露後1、4、10週目で精子の検査を行った。4週時点で、マ ウスの異常精子の割合は、0、700、3400 mg/m3でそれぞれ6.0%、10.3%、19.7%であっ た(Beliles et al., 1980)。

雄Sprague-Dawleyラット10匹を700または3400 mg/m3に1日7時間、5日間暴露し た試験で、テトラクロロエテンは優性致死変異を誘発しなかった。5日間の暴露期間後、各 雄を雌2匹と毎週交互に7週間交配させた。雌を妊娠14日に致死させ、胚の初期死亡の有 無を検査した。1群あたりの雌の数は少なく(13~19匹)、雄は濃度がより高くても忍容性を 示した可能性がある(Beliles et al., 1980)。

テトラクロロエテン1000 mg/kg体重の強制経口投与は、ラットの腎臓で不定期DNA合 成(UDS)を誘発しなかった。1000 mg/kg体重での3週間反復暴露後、複製DNA合成の増

65 加がみられた(Goldsworthy et al., 1988)。

0.65~1.3 g/kg体重のテトラクロロエテン(純度99.8%)を腹腔内投与後、一本鎖切断が雄

マウスの肝臓および腎臓で誘発されたが、肺では誘発されなかった。鎖切断の程度は23時 間後には正常に戻ったが、その生成メカニズムは不明である。テトラクロロエテンはトリ クロロエテンより強力であった。トリクロロエテンはテトラクロロエテンに比べてより迅 速に、より高度に酸化されトリクロロ酢酸になるので、DNA損傷は単に酸化的生物変換に よらないと考えられる(Walles, 1986)。雄F344 ラットに1 g/kg体重/日を7日間強制経口 投与したところ、テトラクロロエテンは腎臓でDNA鎖切断を誘発しなかった(Potter et al., 1996)。

マウスへの放射標識テトラクロロエテンの吸入(4100 mg/m3を6時間)あるいは強制経口

(500 mg/kg体重)による暴露後、肝DNA に結合した放射能は検出されなかった。しかし、

試験の感度はかなり低いものであった(アルキル化 10~14.5/ヌクレオチド 100 万個) (Schumann et al., 1980)。より感度の高いアッセイ(検出限界0.13~0.94付加体/ヌクレオ チド100万個)では、14C-放射標識テトラクロロエテン1.4 mg/kg体重の腹腔内投与22時間 後に、低レベルのDNA結合がマウス肝臓で明らかになり、さらにより低レベルでもラット 肝臓、ラットおよびマウスの腎臓と胃で検出された。他の高分子との結合はDNAとの結合 レベルよりはるかに高く(タンパク質とは3~40倍、RNAとは30~2000倍)、検出された とみられるDNA結合は、実際には、中間代謝の間にDNAへの放射性標識炭素の取込みを 反映していた可能性がある(Mazzullo et al., 1987)。

酸化的DNA損傷(肝臓およびリンパ球DNA 中ならびに尿中の8-ヒドロキシデオキシグ アノシンを測定してモニターした)は、テトラクロロエテン100、500、1000 mg/kg体重を 単回腹腔内投与した雄 F344 ラットで、24 時間後に検出されなかった(Toraason et al., 1999)。

キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)へのテトラクロロエテンの吸入

(3400 mg/m3までを7時間)、混餌、注入による暴露は、染色体に伴性劣性致死突然変異を

誘発せず、影響はみられなかった(Beliles et al., 1980)。同様に、NTP試験では、4000 mg/L のテトラクロロエテン溶液を雄に投与した(無処置雌との連続交配前に3日間の注入あるい は混餌)が、伴性劣性致死突然変異は誘発されなかった(NTP, 1986)。

8.4.2 in vitro試験

細菌を用いる試験(エームスアッセイなど)で、高純度のテトラクロロエテンが変異原作用

66

を示す証拠は得られていない(Greim et al., 1975; Bartsch et al., 1979; Hardin et al., 1981;

Kringstad et al., 1981; Stanford Research Institute International, 1983; Williams &

Shimada, 1983; Connor et al., 1985; NTP, 1986; Milman et al., 1988; Warner et al.,

1988)。試験は液相および気相で行われた。通常のネズミチフス(Salmonella)菌と同様、使

用頻度が高くないサルモネラ菌UTH8413や UTH8414も、大腸菌(Escherichia coli)K12 株も用いられた。肝臓の生物変換酵素の誘導剤としてアロクロール-1254またはフェノバル ビタール(phenobarbital)を投与したラット、ハムスター、マウスの肝ホモジネート(S9)を 用いて、哺乳類の代謝への影響が調べられた。これらの一部の試験では、市販のあるいは 工業用のテトラクロロエテンでも試験を行ない、突然変異を誘発することを認めた。純度 の高いテトラクロロエテンを用いると同じ試験でも陰性結果が出たため、純度の低さが変 異原性の原因であると思われる。ネズミチフス菌TA100で陽性を示した1件の試験(スポッ トテスト)では、試験物質の純度についての報告はない(Cerna & Kypenova, 1977)。テトラ クロロエテンをグルタチオンとラット腎画分の存在下に精製したラット肝グルタチオン-S-転移酵素でプレインキュベートとすると、生成物がエームス試験で変異原性を示したが、

これは遺伝毒性中間物 S-[1,2,2-トリクロロビニル]システインの生成によると思われる (Vamvakas et al., 1989)。原資料によると、テトラクロロエテンは大腸菌を用いたSOS染 色体試験で陰性であった(de Raat, 2003)。

細菌とマウスを用いた 2 件の宿主経由試験で、テトラクロロエテンは陽性を示した。し かし、試験物質の純度は1件目では低く(91.4%)(Beliles et al., 1980)、2件目では報告され ていない(Cerna & Kypenova, 1977)ので、結論は出せない。

テトラクロロエテンは発芽酵母Saccharomyces cerevisiaeを用いる試験で、点突然変異、

有糸分裂遺伝子変換、有糸分裂遺伝子組換えを誘発しなかった。さまざまな限界をもつ(強 い毒性、適切な陽性対照の欠如、純度不明)他の酵母試験では、陰性結果、あいまいな結果、

あるいはボーダーライン上の結果が出ている(HSE, 1987; ECETOC, 1990)。酵母とマウス、

ならびに非標準的なプロトコルを用いたある宿主経由試験では、陰性結果が得られた (Bronzetti et al., 1983)。

S9添加の有無にかかわらずチャイニーズハムスター卵巣細胞で、テトラクロロエテンは 染色体異常あるいは姉妹染色分体交換を誘発しなかった(NTP, 1986; Galloway et al., 1987)。

高品質のマウスリンパ腫試験(L5178Y細胞を用いる)で、テトラクロロエテンは S9添加 の有無にかかわらず突然変異を誘発しなかった(NTP, 1986)。

67

ヒトリンパ球、WI-38ヒト線維芽細胞、ラット・マウス肝細胞を用いた不定期DNA合成 (UDS)試験で、DNA 損傷能の証拠は認められなかった(Beliles et al., 1980; Williams &

Shimada, 1983; Costa & Ivanetich, 1984; Milman et al., 1988)。ある抄録報告によると、

ラット肝細胞を用い強毒性用量でテトラクロロエテンの安定化サンプルを調べた不定期 DNA合成試験で、陽性結果が出ている(Shimada et al., 1983)。

S9 非添加処理において、BALB/c-3T3 細胞を用いた 2 件のアッセイ(Tu et al., 1985;

Milman et al., 1988)、あるいは BHK 21/C13 細胞を用いた第 3 の実験(Milman et al.,

1988)で、テトラクロロエテンは細胞形質変換を誘発しなかった。Rauscher 白血病ウイル

スに感染させたラット胚細胞F1706p108を用いたアッセイで、陽性結果が得られた(Price et al., 1979)。

ラット肝細胞とインキュベートすると、テトラクロロエテンはギャップ・ジャンクション 細胞間連絡を阻害した(Benane et al., 1996)。

テトラクロロエテンを、代謝酵素が発現するよう設計されたヒト細胞系(MCL-5、h2E1) とインキュベートすると、動原体陽性の小核が有意にかつ用量依存的に増加した(Doherty et al., 1996)。

8.5 生殖毒性

8.5.1 生殖能への影響

2世代生殖試験において、ラット(各群雌雄各24匹)を0、700、2100、7000 mg/m3に、

交配前には1日6時間、週5日、11週間、次いで交配終了時までは毎日吸入暴露した。雌 には、その後妊娠20日まで毎日暴露した。F1出生仔が6日齢になった時点で暴露を再開 し、離乳仔を 2 世代目の親として選抜するまで毎日継続した。選抜した離乳仔を交配前に 週5日、少なくとも11週間暴露した。F2として3群の同腹仔が生まれた。F2A同腹仔に 対して、母仔をF1同腹仔と同様に処置したが、7000 mg/m3では授乳期に暴露しなかった (1世代目でこの濃度で認められた鎮静状態と哺育放棄を防ぐため)。毎日最低2週間の暴露

(0、2100、7000 mg/m3のみ)後の交配から生まれた仔をF2B同腹仔とし、母ラットへの暴

露を妊娠1~20日に続けたが、授乳中は非暴露とした。最後に、対照群および7000 mg/m3 群の雄を非暴露雌と交配させて生まれた仔をF2C同腹仔とした。受胎能と生殖能は、2100 mg/m3までは影響を受けなかった。7000 mg/m3では、母体毒性(交配前および妊娠・授乳 期間中の成長抑制)ならびに出生仔毒性(同腹仔数、新生仔体重、および授乳期間中の仔の生 存率の低減)がみられた。F2C仔では影響がみられず、変化は雄由来性ではないことを示し

68 ている(Tinston, 1995)。

テトラクロロエテン0、500、1600、3200 mg/m3に1日8時間、週5日、28週間暴露し

た10~12匹の雌ラット群で、受胎能や生殖能への影響はみられなかった(Carpenter, 1937)。

12000 mg/m3に1日1時間を2回、週5日、2週間反復吸入暴露した雌ラットから得た 卵母細胞の、in vitroでの受精能力は若干低かった。テトラクロロエテン0.9%を2週間飲 水投与したラット(溶解補助のため Tween 担体を使用)では、そうした影響はみられなかっ た。しかし、テトラクロロエテンは排卵雌の割合を低下させた(53% vs 78%、P<0.05) (Berger & Horner, 2003)。

8.5.2 発生毒性

ラットに0、700、2100、7000 mg/m3を、交配前には1日6時間、週5日、11週間、お よび交配・妊娠・授乳(一部)期間中には毎日吸入暴露した 2 世代生殖試験(§8.5.1 に記載) で、 おそらく試験は限定的であったとはいえ、発生毒性の証拠は2100 mg/m3まではみら れなかった。新生仔の体重および生存率は、母体に神経毒性および腎毒性も誘発した濃度 の7000 mg/m3で低減した。2100 mg/m3では絶対的精巣重量のわずかな減少(6%)がF1雄 で記録され、7000 mg/m3では16%の減少が認められた(Tinston, 1995)。

テトラクロロエテンの発生毒性が、少数のラット(投与群17匹、対照群30匹)を0または 2100 mg/m3に1日7時間、妊娠6~15日に暴露して調べられた。母体体重増加量がテトラ クロロエテン群で若干減少したが、肝重量は影響を受けなかった。同腹仔数、黄体数、着 床数、生存胎仔数、性比率、胎仔体重・体長には影響は見られなかった。わずかだが有意 な胚吸収率上昇(9% vs 4%)が投与群で観察された。軟部組織の異常と骨格への影響の検査 では、投与関連の影響は認められなかった。胎仔毒性が母体毒性用量でみられたが、催奇 形性作用の証拠はなかった(Schwetz et al., 1975)。

妊娠ラット20匹からなる3群をテトラクロロエテン3400 mg/m3に1日7時間、1) 妊 娠0~18日、2) 交配前3週間および妊娠0~18日、あるいは3) 交配前3週間および妊娠 6~18日に暴露したが、胎仔毒性や催奇形性は見られなかった。唯一認められた母体への影 響は肝あるいは腎重量のわずかな増加で、群間で一貫してみられたわけではなかった。ウ サギを用いた類似の試験で、唯一報告された投与関連の影響は、妊娠 7~21 日に暴露した 群で胎盤異常が増加したことであった(Beliles et al., 1980; Hardin et al., 1981)。

1件の試験が、妊娠期間中のテトラクロロエテン暴露は、出生仔の中枢神経系機能に影響

69

を 及 ぼ す 可 能 性 が あ る と す る い く つ か の 証 拠 を 示 し た 。 各 群 13~21 匹 か ら な る Sprague-Dawleyラットに700 mg/m3を妊娠14~20日、あるいは6000 mg/m3を妊娠7~

13日または14~20日に暴露した。母ラットの接餌量および体重増加量が、妊娠7~13 日

に6000 mg/m3を暴露した群で減少したが、顕微鏡検査では肝臓も腎臓も正常であった。生

産仔数は投与による影響を受けず、奇形仔も報告されていない。行動試験の結果、700 mg/m3 群の出生仔に有害作用がないことが判明したが、母ラットが妊娠7~13 日に 6000 mg/m3 に暴露した群の出生仔では神経筋機能の低下(10~14 日齢時)が指摘された。しかし、妊娠 後期に暴露された母ラットから生まれた仔の成績は、神経筋機能を調べた別の試験で対照 群より優れていた。神経化学的所見から、21 日齢の出生仔の脳で、6000 mg/m3両群では アセチルコリンの減少が、6000 mg/m3に7~13日に暴露した群でドパミンの減少が明らか になった。新生仔では神経化学的影響は観察されなかった。出生仔脳病理組織への影響は 観察されなかった。31~32 日に、6000 mg/m3群の仔ラットはオープンフィールド試験で 著しく高い運動量を示した(Nelson et al., 1980)。

各群18~19匹からなるCFYラットを0、1500、4500、8500 mg/m3に妊娠期間を通し て(0~21日)1日8時間暴露した結果、1500 mg/m3は母体毒性や胎仔への有意な影響を誘 発しなかった。4500 mg/m3以上では、毒性影響が母ラット(成長抑制と相対肝重量の増加) と胚/胎仔(着床前胚損失の増加、胎仔体重の低下、骨格発達の遅延および過剰肋の増加) で観察された(Szakmáry et al., 1997)。一部の出生仔(同一試験の出生仔かどうか不明)で、

神経行動学的検査を離乳後から 100 日齢時点の屠殺日まで行った。一般に、これらの検査 の結果は正常であった。100 日目に雌で探索行動がわずかに一時的に減少し(暴露濃度は明 らかにされていない)、自発運動が増加した。性的な発育は影響を受けず、解剖では大奇形 や小奇形の増加は認められなかった(Szakmáry et al., 1997)。

あるスクリーニングプロトコルにおいて、母体毒性量(失調性歩行および体重増加量の減 少)の900 mg/kg体重/日のテトラクロロエテンを、F344ラットに妊娠6~19日に経口カテ ーテルを用いて投与したところ、胚吸収、奇形(小眼または無眼)、出生後死亡が投与に起因 して増加した。低用量での試験は行われていない(Narotsky & Kavlock, 1995)。

テトラクロロエテンの発生毒性の可能性を調べる試験が、0または2100 mg/m3に少数(投 与群17匹、対照群30匹)のマウスを1日7時間、妊娠6~15日に暴露して行なわれた。テ トラクロロエテンは母体肝重量の増加と胎仔平均体重の低下を誘発した。同腹仔ごとに表 す(データは胎仔ごとには分析されていない)と、頭蓋骨および胸骨分節の骨化遅延、胸骨分 節分離、皮下浮腫の増加がみられた(Schwetz et al., 1975)

C57BLマウスを0(n = 77)または1500 mg/m3 (n = 10)に、妊娠の器官形成期を通して1

70

日8時間暴露したところ、投与群の母マウスに毒性(相対肝重量の増加)が認められた。報告 された胎仔毒性は、生存胎仔数の減少と内臓奇形(詳細不明)の増加(0.8%から 14%へ)であ った(Szakmáry et al., 1997)。対照群の数が多い理由は説明されていない。

雄マウスにテトラクロロエテン5または320 mg/kg体重/日を生後10~16日に経口強制 投与したところ、自発運動量の測定値は生後17日には正常であったが、生後60日には両 用量レベルで歩行量と総運動量(P<0.01)および他の行動の変化に増加がみられた。用量反 応関係を示す明らかな証拠はなく、1つの変化は他の所見から予測されたのとは逆の方向で あった。しかし、この結果から、幼若マウスでは行動に永続的な変化をもたらす神経発達 毒性が発現することが示唆される(Fredriksson et al., 1993)(さらなる詳細については§

8.2.2.3参照)。

New Zealandウサギをテトラクロロエテン0(n = 10)または4500 mg/m3 (n = 16)に、妊 娠の器官形成期を通して1日8時間暴露したところ、投与群の母ウサギに毒性(体重増加量 の抑制と相対肝重量の増加)が観察された。報告された胎仔毒性は、着床後胚損失および全 胚吸収母体数の増加であった。催奇形性の証拠はみられなかった(Szakmáry et al., 1997)。

8.6 他の毒性

ウサギの皮膚に原液を24時間密封塗布したところ、テトラクロロエテンは重度の皮膚炎 (Duprat et al., 1976)および壊死(Wolf, 1956)を引き起こした。原液への4時間接触で、ウ サギ皮膚は著しい刺激反応を示したが腐食はみられなかった(Van Beek, 1990)。モルモット の皮膚に適用(glass ring depotsに入れて)したところ、適用15分~16時間後に採取した皮 膚の生検で、表皮の退行性変化、接合部分離、真皮細胞浸潤がみられた(Kronevi et al., 1981)。

テトラクロロエテン原液0.1 mLをウサギの眼に滴下したところ、軽微の刺激性(110段階 で4)が報告された(Duprat et al., 1976)。ウサギの眼に直接噴霧すると、眼瞼痙攣、顆粒状 で光学的不規則性を呈する角膜上皮、斑状に剥離した上皮細胞が観察されたが、2日以内に 回復した(Grant, 1962)。

スプリットアジュバント法を用いた試験で、皮膚感作性は観察されなかった。試験した モルモットは9匹のみで、感作相と誘発相についての報告は不十分である(Rao et al., 1981)。

呼吸器暴露についてテトラクロロエテンは十分に調査されているが、実験動物では気道 の刺激性や感作性を指摘する報告は得られていない(de Raat, 2003)。

ドキュメント内 68. Tetrachloroethene テトラクロロエテン (ページ 63-104)

関連したドキュメント