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3. 精度評価

3.2 精度評価(対ゾンデ)

算出された大気追跡風データと、ゾンデの観 測位置・観測時間が完全に一致することは非常 にまれであるため、大気追跡風データと空間 的・時間的に十分近くにあるゾンデ観測を比較 対象とする(コロケーション)。大気追跡風は 世界各国の算出センターで算出されているが、

コロケーションの条件が異なると、各センター で算出された大気追跡風の品質を同じ基準で 比較することができない*13。そのため、WMO の 下 に 組 織 さ れ た 気 象 衛 星 調 整 会 議

(Co-ordination Group for Meteorological Satellite: CGMS)や国際風ワーキンググルー プ (International Wind Working Group;

IWWG)の勧告により、できるだけ同じ条件で 統 計 値 を 計 算 す る こ と が 推 奨 さ れ て い る

(Schmetz et al., 1999)。その推奨条件は、表

10、11のとおりである。

13 大気追跡風とゾンデ観測との時間差や空間的距離が統計値に与える影響については Velden and

Bedka (2009)が参考になる。

- 67 - 表10 風ベクトルの地域による分類

緯度、経度による分類

北半球(NH):20N以北 熱帯(TR):20N〜20S 南半球(SH):20S以南

表11 大気追跡風とゾンデのコロケーション条件

水平距離 半径150 km以内 鉛直距離 ±25 hPa以内

時間差 ±1.5時間以内

 

CGMSにより、各国の大気追跡風算出センター が算出した大気追跡風の精度評価としてゾン デ観測との比較を行い、その精度評価結果を IWWG コミュニティ内で共有することが推奨 されている。以前から、気象衛星センターにお いても、CGMSレポートとしてゾンデ観測との 比較結果を毎月報告している。その報告から抜 粋した大気追跡風―ゾンデ統計値時系列を図 41〜図45に示す。各図において、(a)のデータ がゾンデ観測とコロケーションされた大気追 跡風データの数、(b)がコロケーションされた大 気追跡風の平均風速、(c)が風速バイアス、(d)

がRMSVDである。この時系列図の統計期間は

2000年から2012年である。この期間内に運用 衛 星 が GMS-5、GOES-9、MTSAT-1R、

MTSAT-2 と替わっているが、それぞれの衛星

運用期間との対応、主な大気追跡風プロダクト の仕様変更などは、第1章の表1を参照された い。なお、比較に使用した大気追跡風は00UTC

及び 12UTC(ゾンデ観測時刻)のデータであ

る。

  2007 年の中頃にすべての大気追跡風種別で コロケーション数が増加しているが、これは、

それまで配信していたSATOB報の配信を停止 したことに伴い(表 1 参照)、毎月作成してい

る統計レポートに使用するデータを1.0度格子

(SATOB 報に格納するデータの格子間隔)か ら0.5度格子(BUFR報)に変更したことに起 因する。

この図で注目されるのは、季節変動と品質の 時系列変化である。上・中層風、下層風ごとに 傾向は似ているので、それぞれ個別にみていく。

・上・中層風

ゾンデ観測データに対する上・中層風(赤外1 上層風(図41、上層のみ)、曇天域水蒸気風(図

43)、晴天域水蒸気風(図 44))の特徴を確認

する。算出数は、夏半球では多く、冬半球では 少ない傾向がある。特に北半球でその傾向が顕 著である。これは、追跡しやすい上・中層雲の 出現頻度が季節・気候特性により異なるためで ある。また、北半球に比べ南半球でコロケーシ ョン数が少ないのは、南半球では陸上のゾンデ 観測点が少ないためである(図40)。平均風速 の季節変動を見ると、冬季中緯度のジェットの 強まりに対応して、冬半球では風速が速く(特 に北半球では〜40 m/s)、夏半球では風速が遅 く(20 m/s程度)なっていることがわかる。

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        図41 赤外1上層(中層は含まない)風対ゾンデ統計時系列(2000-2012)  QI>0.85

      図42 赤外1下層風対ゾンデ統計時系列(2000-2012)  QI>0.85 (a) 算出数 (b) 平均風速

(c) 風速バイアス (d)RMSVD

(a) 算出数 (b) 平均風速

(c) 風速バイアス (d) RMSVD

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      図43 曇天域水蒸気風の対ゾンデ統計時系列(2000-2012)  QI>0.85

図44 晴天域水蒸気風の対ゾンデ統計時系列(2000-2012)  QI>0.85 (a) 算出数 (b) 平均風速

(c) 風速バイアス (d) RMSVD

(a) 算出数 (b)平均風速

(c) 風速バイアス (d) RMSVD

- 70 -

図45 可視風の対ゾンデ統計時系列(2000-2012)  QI>0.85

熱帯の風速にも同様な周期変動が見られる が、平均風速は 15 m/s程度と小さく、南半球 や北半球ほど顕著でない。風速バイアスの時系 列を見ると、ジェットが強まる冬半球で比較的 大きな負の風速バイアスを持っていることが わかる。ジェット領域での負バイアスは、海外 のセンターで算出された大気追跡風にもみら れ、大気追跡風における世界共通の主要問題と して認識されてきた。Forsythe and Saunders

(2008)では、この負の風速バイアスの原因と して次の5つを挙げている:

1. 算出される風ベクトルは空間的・時間的 に平均されたものなので、(時間的・空 間的に大きく変動する)強風域では、1 つの時間・場所で代表しようとすると代 表性が悪い

2. 大気追跡風はある大きさを持った鉛直

層の動きを追跡しているが、高度指定は 一点のみを指定するため誤差が生じる 3. 雲は基本的にジェット軸から少しずれ

たところ(上下、もしくは横)に存在す るため、ジェット軸の強風域より遅い 4. 風に流されて移動する雲の移動速度は、

実際の風速に達するまでの時定数が大 きい。そのため、大気追跡風では風速を 過小評価する(雲がパッシブトレーサー でない)

5. 高度指定の系統的な誤差

図41、図43及び 図44を確認すると、強風 域でみられる上・中層風の負バイアスは、最近 も多少は見られるものの、算出手法の改良よっ てその大きさは小さくなってきていることが わかる。具体的には、2007年 5 月の上・中層 (a) 算出数 (b) 平均風速

(c) 風速バイアス (d) RMSVD

- 71 - 風へ最頻高度法と黒体線補正アルゴリズムの 導入(今井・小山, 2008)、2009年5月のテン プレートサイズの変更とCCC法導入(Oyama, 2010)の時期に、負バイアスが大きく減少して いる。しかし、曇天域水蒸気風では、この負バ イアスが改善した代わりに、2009 年の中ごろ

から1 m/s程度の正(強風)バイアスが見られ

るようになってきている*14 。RMSVDについ ては、平均風速が大きく、負バイアスの大きな 冬季で大きくなる傾向は依然とみられるが、そ の大きさは上述の改良のおかげで、年々小さく なってきている。近年の、上層風(QI>0.85)

のゾンデと比較した時の品質は、風速バイアス が−2〜2 m/s程度、RMSVDは5〜8 m/s程度 である。

・下層風

ゾンデ観測データに対する下層風(赤外1下 層風(図 42)、可視風(図 45))の特徴を確認 する。算出数は上層風とは逆に、冬半球で多く 夏半球で少ない傾向がある。平均風速を見ると、

上・中層風よりも傾向は小さいが、冬に平均風 速が大きく夏に小さい傾向がある。風速バイア スは、冬の北半球でやや負バイアス傾向にある ものの、北半球・熱帯・南半球とも0 m/s付近 にあり安定している。RMSVDも2005年ごろ 以前は少しばらつきがあるものの、近年はどの 地域・どの季節でも4 m/s程度となっている。

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