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日米貿易問題の今後の展望と対策 1 国際金融政策による貿易の調整

米国は、変動相場制下で世界の基軸通貨であ るドルの為替レートの調整により、しばしば自 国の貿易収支の改善を図ろうとしてきた。為替 の調整は、ときに主要七ヶ国蔵相会議などでマ クロ的に、また日米通貨当局間の対話を通じて、

或いは米国の一方的な政策で(明示的でないこ とが多いが)行われてきた。

為替の問題は、単に貿易問題にとどまらず、

経済全体に及ぶことが多い。従って、米国から みて円高に誘導して貿易インバランスを改善し ようとしても、必ずしも意図通りの効果がでな いことがある。

例えば、現時点(1999年3月)では、1ヶ月 前の1ドル113円から120円程度と相当円安に 参考3 日米経済分野合意等

1.一般

(1)枠組み文書(93年7月10日)

(2)枠組み文書を明確化する決着(94年5月24日)

2.個別分野の決着

(3)木材製品(90年6月15日)

(4)知的所有権(94年1月20日)

(5)知的所有権(94年8月16日)

(6)保険(94年10月11日)

(7)衛星の政府調達(90年6月15日)

(8)コンピュータの政府調達(92年1月20日)

(9)スーパーコンピュータの政府調達(90年4 月19日)

(10)電気通信分野の政府調達(94年11月1日)

(11)NTT調達(94年11月1日)

(12)医療技術分野の政府調達(94年11月1日)

(13)半導体(86年8月1日〜91年7月31日、91 年8月1日〜96年7月31日、96年8月2日)

(14)紙(92年4月5日〜97年4月4日)

(15)板ガラス(95年1月25日)

(16)金融サービス(95年2月13日)

(17)投資(95年1月20日)

(18)自動車・同部品(95年8月23日)

(19)リンゴ(93年9月13日)

(20)建設(94年1月18日)

(21)移動電話(94年3月12日)

(22)航空貨物(95年1月21日)

(23)航空貨物(96年4月16日)

(24)保険補足的措置(96年12月24日)

(25)港湾運送(97年4月11日)

(26)航空(98年3月)

3.ウルグアイ・ラウンドでの決着

(27)コメ(94年4月15日)

(28)化学品ハーモニゼーション(94年4月15日)

(29)非鉄金属(94年4月15日)

(30)マーケット・アクセス(94年4月15日)

4.日米規制緩和対話強化(97年6月19日)

(31)金融

(32)電気通信

(33)住宅

(34)医薬品・医療機器

(35)構造問題

(36)エネルギー(98年5月15日に追加)

(備考)日米合意について、日米両国政府として合意件 数を公表したものはない。本資料は、グレン・フクシ マ氏(在日日本商工会議所会頭、元USTR 代表補佐)

の提供資料をベースに筆者が整理したものである。

なお、米国商務省資料には、日米間で1986年以降 45の合意(Agreement) があるとする資料がある。

なっている。その背景に、最近まで米国政府が とってきた「円高・ドル安」姿勢が円安容認に 転換されたとみている。

即ち日本側にとって、円安は、輸出拡大即ち 経済成長へのプラスの寄与(理論的には円レー トが10%減価すれば輸出の増加による企業収益 増で0.6%の経済成長率の増加)となる。

すなわち、米国は、日本の債券安が米国の債 券安ひいては米国株安をもたらすことを回避す るために、日本が景気対策上長期金利抑制策を 講ずることを前提に、一時的に「円安・ドル高」

を認めたとみている。従って、米国貿易収支及 び経常収支の赤字拡大を、米国政府としては、

当面容認せざるを得なくなったのである。

8. 2 スーパー 301 条を中心とする米国の 対外制裁強化の動き

クリントン大統領の1999年の年頭の一般教書 演説における日本からの鉄鋼製品輸入急増に関 する厳しい警告は、米国の鉄鋼業界からのアン チダンピングについての商務省への提訴が背景 にある。

米国政府は、与謝野通産大臣がバーシェフス キーUSTR代表及びベイリー商務長官と1999年 1月に会談した際に、日本からの鉄鋼の輸出が 減少しなければ、通商法201条或いは関税法に 基づくアンチダンピングのセルフイニシエイテ ッド(一方的)な措置を打つ用意があると強く 主張した。

1999年2月に、米国商務省は、日本及びブラ ジルからの熱延鋼板のアンチダンピング及び相 殺関税提訴(日本についてはアンチダンピング のみ)の仮決定を発表した。

商務省の仮決定が行われると、仮決定日から 90日遡及した日(この場合には1998年11月中 旬)よりアンチダンピング税が付加されること になる。日本の企業毎に格差があるが、通関価 格の25.14%から67.59%のアンチダンピング関 税が仮決定において課せられることになる。日 本企業は、この税率に相当する保証金を通関の 際に商務省に寄託しなければ通関できない。従 って、本決定は後日であっても、仮決定の段階 で事実上輸出が極めて困難になるという厳しい 措置である。

クリントン政権は、米国が自由貿易のリーダ ーとして次期WTO新ラウンドへ積極的に取り 組むことを宣言しながら、他方で鉄鋼のような 個別分野について、保護主義的な姿勢を強く打 ち出している。クリントン大統領に理解を示す 立場でいえば、米国産業界の圧力を受けての議 会の保護主義に対抗するために、こうした発言 を敢えてせざるを得ないということであろう。

他方、クリントン大統領としては、自身のお かれた個人的かつ政治的な困難な立場を打開し、

財政赤字の解消に成功した反面累積するもう一 つの貿易赤字の縮減を、任期中に、なんとか実 現したいということでもあろう。

ごく最近(1999年3月17日)、米国下院で米 国への鉄鋼製品の輸入数量を米国政府の許可制 等により規制する「鉄鋼回復法案」が可決され た。

こうした個別業種を数量規制等で保護するや り方は、戦後米国が自由貿易の敵として最も排 撃してきたものである。

さすがにクリントン政権は、バーシェフスキ ーUSTR代表をしてこの法案に反対を表明して いる。しかし、この法案が下院で三分の二以上 の多数で可決されていることから、例えば通商 法201条の強化により何らかの輸入規制を認め ざるを得なくなる可能性が少なくない。

(注)米国議会殊に下院は、その仕組みからして、米 国内の地域的・個別的利害に敏感に反応しやす い。二年毎に下院議員選挙が行われることから、

選挙区の利益を強く主張することが少なくない。

これは、貿易問題だけでなはない。例えば、か つて旧ソ連に工作機械をココム違反で輸出した 東芝機械事件で、下院議員が、東芝家電製品を 斧で叩き割るような行為をしたことがある。

こうしたことを背景に、米国政府は、スーパ ー301条(1974年通商法に基づく)とタイトル

Ⅶ(セブン)を復活することを決定した。

これは、米国に対し外国政府が不当な貿易制 限等を行っていると米国政府が認めた場合にこ れに対抗する権限を認めた1974年通商法301条 の特別手続きを定めたものである。1989年及び 1990年の時限立法であったものが、1994年3月 に大統領令により復活し、1995年9月の大統領 令によって2年間延長され、1997年に失効して

たとして、1999年2月にWTOのDSB(紛争解 決機関)会合でパネルの設置を要請している。

EUは、DSBの勧告に従って1999年1月から 新バナナ輸入制度を導入したが、米国は新制度 が依然としてWTO協定違反であると主張して いる。米国は、EUが新制度をWTOの決定に従 って整合的に修正しない場合には、スーパー 301条に基づきEUに対し報復措置を発動すると している。EUは米国の1974年通商法タイトル 3第一章(301条から310条、特に305・306条)

は、EUに対し、一定の場合に硬直的な日程に従 って自動的に制裁発動を義務付けているとして、

DSU23条(一方的措置の禁止)、WTO設立協定 16条4項(自国の法令のWTO協定整合性の確 保)等に違反しているとしている。

8. 3  1999 年通商政策アジェンダ及び 1998 年通商政策報告書と米国政府の今後 の動き

米 国 政 府 は 、1998年 3 月 、 議 会 に 対 し 、

「1999年通商政策アジェンダ及び1998年通商政 策報告書」を提出している。

本報告書は、1974年通商法163条に基づき、

大統領が議会に提出するものであり、内容は USTRが作成している。

今後、本報告書をベースに、USTRが外国貿 易障壁報告書(NTEレポート)を3月末に議会 に提出し、4月末にスーパー301条による「優 先外国慣行」及び「監視品目の特定」が行われ る予定である。

米国政府が、今後産業界及び議会の保護主義 勢力の圧力をうけて、強い姿勢を示してくる可 能性が高い。(参考4参照)

いた。これを、今回大統領の行政命令(エグゼ クティブオーダー)により復活することにした のである。

スーパー301条は、通商法301条と異なり、

優先外国貿易慣行の議会への報告を政府に義務 付け、その後も外国政府との協議で満足な解決 が得られない場合には、調査開始を政府に義務 付けている。即ち、議会の政府に対する監視が、

一段と強化されたものである。

タイトルⅦ(セブン)は、1988年包括通商法 に根拠をおくものである。タイトルⅦ(セブン)

によれば、差別的な政府調達を行う外国政府に 対し、米国の政府調達において、当該国の製 品・サービスの調達を制裁措置として禁止する ことができるとするものである。1988年包括通 商競争力法により導入され、1996年に失効して いた。

スーパー301条の定めるところによればUSTR は、1999年3月末に外国通商障壁(NTE)レポ ートを議会に提出する。そして、4月末までに スーパー301条に基づく優先外国貿易慣行を、

またタイトルⅦ(セブン)に基づく差別的外国 政府調達を議会に報告する。その後90日間、

USTRは満足のいく解決を追求する。また外国 政府とも協議をする。その後満足の行く解決が 得られない場合、USTRは調査を開始しなけれ ばならない。

調査期間は、WTOの紛争解決手続きを要する

場合には18か月、優先外国貿易慣行については

12か月、差別的政府調達については6か月とす るとされている。そして、調査により不公正な 貿易慣行、差別的外国政府調達が存在するとさ れた場合には、政府は、制裁措置を決定しなけ ればならないとしている。

日本政府は、スーパー301条等の米国政府の 一方的な措置にはかねてから反対しており、今 回のスーパー301条及びタイトルⅦ(セブン)

の復活についても強くこれを非難している。

EUは、日本と同様にスーパー301条等に基づ く一方的措置について強く反対している。日本 における鉄鋼問題は当面関税法等に基づくアン チダンピング問題であり、スーパー301条と直 接関係はないが(スーパー301条復活の背景に は鉄鋼問題が深く関係していることは当然であ る)、EUには、バナナ問題に関連してスーパー 301条により米国により一方的な措置が行われ

参考4

(1)1999年通商政策アジェンダの概要

1999年通商政策の重点項目のうち、対日政策 に関わる需要事項抜粋

1.WTO 2.貿易と環境

3.域内・二国間アジェンダ

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