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図5-3R putida KT2442ArpoS株の細胞タンパクの二次元電気泳動図

○で囲ったタンパクは、KT株に比べてKT-oxyR1株で存在量の上昇したタンパク。

1,KatB;2, AhpF;3, KatA;4, TrxB;5, AhpC。

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図5-4P〆」ぬK壬oxyRl亙ρos株の細胞タンパクの二次元電気泳動図

○で囲ったタンパクは、KT株に比べてKT-oxyR1株で存在量の上昇したタンパク。

1,KatB;2, AhpF;3, KatA;4, TrxB;5, AhpC。

元電気泳動による解析を行った。結果を図5-1、5-2、5-3および5-4に示した。R putida

においては、oxyR1変異の導入によって、5種のタンパクの細胞濃度の顕著な上昇 がみられた(図5-1、5-2)。TOF-MSによる解析の結果、これまでにタンパク量の 増加が確認されている、KatA(図中1で示した)、 KatB(図中3で示した)および AhpC(図中3で示した)量の上昇が確認された。また、α11ρCとオペロンを形成す るahpFによってコードされるペルオキシレドキシン還元酵素のAhpF(図中2で示 した)および、チオレドキシン還元酵素であるTrxB(図中4で示した)の濃度が 上昇していることが明らかとなった。

 rpoSの欠損によって、 KT株、 KT-oxyRl株ともにKatBの存在量が著しく減少す ることが確認された。また、KT株においてrpoSの欠損によりKatA量が減少する ことが見出された。一方、KT・oxyRl株においてはKatAの存在量の顕著な減少は認 められなかった。また、oxyR1変異条件下においてrpoSが欠損することによって AhpFの存在量が増加していることが分かった(図5-5)。この現象はKT株のrpoS

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 図5-5rpoSの欠損によるKatA、 KatBおよびAhpFの存在量の変化

KT2442株、 KT2442△rpoS株、 KT-oxyRl株およびKT-oxyRl△rpoS株の二次元電気 泳動におけるKatA、 KatBおよびAhpFのタンパクスポット周辺の拡大図。

欠損株でははっきりとは確認できなかった。

2. rpoS欠損によるα妙C一励ρF転写量の上昇

 二次元電気泳動による解析の結果、rpoSの欠損によりAhpF量の顕著な増加が認 められた。ゲル電気泳動図解析ソフトによる解析により、AhpCは約2倍、 AhpFは 約13倍タンパク量が増加したと推定された。このため、ahpCおよびahpFの転写 量を測定し、rpoSの欠失がこれらの転写に与える影響を調べた。KT-oxyRl株のahpc

およびahpFのmRNAに起因するRT-qPCRにおけるサイクル数は、それぞれ

9.41±0.48および14.64±0.25であり、これに対して、KT-oxyR1△rpoS株ではそれぞ れ7.37±O.45および11.49±0.30であった。これらの結果から、rρoSの欠失により ψρCの転写は約4倍、ψρFの転写は約9倍上昇したと推定された。

第3節 考察

 oxγR 1変異によるタンパク発現量への影響

 KT-oxyR1株において存在量の増加が確認されたタンパクは5種類あった。その 内3種は、これまでの研究においてOxyRによる制御が確認されたAhpC、 KatAお

よびKatBであり、oxyR 1変異によりその存在量が増加することが、ここでも確認 された。これらに加えて、AhpFおよびTrxBについてもKT-oxyR1株で細胞内濃度 が上昇していたが、TrxBの濃度上昇は他の4種に比べて著しく低かった。この結 果、oxyR1変異により存在量が顕著に増加するタンパクは、いずれも過酸化物の分 解に関係する酵素であるAhpC、AhpF、KatAおよびKatBであるがことが判明した。

これらのことから、OxyRは過酸化物分解酵素、特にH202の除去に関わる酵素の発 現制御において中心的な役割を果たしていると考えられた。4種の過酸化物分解に 関与する酵素の中で、特に顕著に存在量が増加していたのがAhpCであった。 AhpC については、α11ρCの転写量が他のタンパクをコードする遺伝子よりも高いことか

ら、細胞内での産生速度が分解速度よりも速いことが予想され、対数増殖期から定 常期にかけてその蓄積が起こったと推測された。ペルオキシレドキシン還元酵素で あるAhpFをコードするα1!ρFはahpCとオペロンをなすが、図5-6に示すステムー ループ構造をとると予想されるα11ρC一ψρF遺伝子間領域の存在により、転写量が 顕著に減衰することが知られている(Fukumori and Kishii, 2001)。

 チオレドキシン還元酵素であるTrxBは、酸化されたタンパクを還元するチオレ ドキシンを還元する役割を持つため、酸化ストレスに対する防御タンパクの1っで あると考えられる。しかしながら、第3章のリアルタイムPCRによる転写量の測 定の項で示したように、チオレドキシン還元酵素をコードするtrxBの転写量は oxyR1変異を導入しても大きな変化は見られなかった。 trxBの転写開始点が特定さ れ、プロモーター上流に隣接してOxyR結合領域と相同性のある領域が見出された。

さらに、ゲルシフトアッセイによってOxyRのtrxBプロモーター領域への結合も確 認されている(未発表)。これらのことから、OxyRがtrxBの制御に重要な役割を 果たすと思われるが、kOtA、 katBおよびψρCとは異なった様式で行われているも のと推察される。

 rpoS欠損によるタンパク発現量への影響

 rpoS欠損株において、 KatB量が著しく減少していることが観察された。 rpoSの 欠失は第6章で述べるように、野生株においてみられる定常期におけるkatBの転 写量の上昇を妨げる。このことは、R putidaのRNAポリメラーゼによるkatBのプ

ロモーター領域の配列認識に、RpoSが重要な役割を果していることを示すもので ある。R putidaにおいても、 RpoD(σD)-RNAポリメラーゼがハウスキーピング遺伝 子を含む多くの遺伝子の転写を担うが、プロモーターの認識が厳密でないため、

RpoS.RNAポリメラーゼが転写する遺伝子の限られたものについては、効率は低い ものの転写できることが知られている。oxyR1変異をもつrpoS欠損株で、わずかな がらKatBが存在しているように見えたが、 RpoD-RNAポリメラーゼによってkOtB が転写されたためであると考えられた。rpoSの欠損により、KT株においてKatA

存在量が減少していたが、変異株においては明確な減少は確認されなかった。RpoS が存在しないことによって、KatAの分解に関与するプロテアーゼの生産、 hatAの 転写もしくはKatAへの翻訳段階が抑制されたことなどが考えられた。 oxyR1変異 株においてこの減少が確認されなかったことは、oryR/変異の導入により、転写お

よび翻訳段階での制御、あるいは翻訳後の制御をKatAの生産の増加が上回ったこ とによると予想することが出来るが、OxyRが活性化することにより、細胞内の抗 酸化タンパクを安定化するような機構が発現する可能性もあり、詳細にっいては明

らかでない。

 oxyR 1変異条件下においてrpoSが欠損する事によってAhpFが増加していたが、

KT株のrρoS欠損株ではこのような増加は、明確には確認されなかった。 AhpFは 分子量約55,000DaのFADを含む分子で、過酸化物を還元して酸化されたAhpCを、

NADHを供与体として還元する役割を担っている。ゲノム上では、 ahpFはahpCの 下流に存在し、オペロンを形成している。oxyR 1変異を導入した際にもahpCの転 写量の上昇に伴いahpFの転写量が上昇することが確認されているが、 ahpFの転写 量はahpCの50分の1程度に減衰することも分かっている。このことは、 ahpCと ahpFの遺伝子間領域が安定なステムループ構造(図5-6)を取ることに起因してい

ると考えられ、このステムループが取り除かれることによってAhpFの量が顕著に

増加することが、E. coliをもちいた実験により確認されている(Fukumori and Kishii,

2001)。タンパク存在量については、AhpC量がoxyR1変異の導入により著しく上昇 するのに対して、AhpF量の増加はAhpCほど顕著ではないことから、 AhpFの翻訳 に関わる因子が存在する可能性も考えられる。AhpFは基質であるAhpCに電子を 供給するが、低いながら酸素の還元能を有しているため、細胞内のNADHを消費

したり、一時的に活性酸素分子を産生したりするため、細胞内濃度を制御する必要 があると考えられる。そのため、転写や翻訳に影響を及ぼすステムループ構造が存 在することが推察できる。oxyR1変異条件下においてrpoSが欠損することによって、

AhpFがAhpCに比べて高い割合で蓄積したことから、このステムループ構造を解

くような因子が生産、もしくは活性化され、AhpFの過剰な蓄積が起こった可能性 もあるが、現在のところ詳細は明らかではない。

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図5-6 R putida ahpC・ψμF遺伝子間領域に存在するステムループ構造

第6章 Pseudomonas putidaにおける酸化的ストレス応答機構の発現に関与する因 子の探索

緒言

 これまでに述べた結果から、kOtA、 hatBおよびahpc-ahpFはOxyRレギュロンに 含まれ、その発現にはOxyRの活性化が必須であることが明らかになった。これら

の遺伝子は酸化ストレスに対する防御機構において重要な役割を果たしているこ とは確実であると考えられる。ψρCについては、すでに欠損株の取得が試みられ たが、AhpCの生理的機能の重要性のためか、破壊ahρCのみをもつ変異株の所得は

これまでできていない。一方、カタラーゼ遺伝子の欠損株を取得することができれ ば、これらの酵素の抗酸化活性に対する役割をより詳しく知ることができるのに加 えて、これらの欠失により生産量の変化するタンパクは、細胞の酸化的ストレス応 答に関与する可能性が高いと考えられる。このため、2種のカタラーゼ遺伝子の欠 損株の取得を試みた。また、プロモーター周辺にOxyRが結合する領域を有する遺 伝子は、何らかの形でOxyRにより調節を受けることが予想され、酸化的ストレス 応答に関与する可能性があると考えられたため、Rputida染色体DNAを断片化し てリンカーDNAを結合し、 oxyRおよび抗oxyR抗体と反応させた後にPcRを行

うことで、OxyRの結合部位の探索を試みた。さらに、細胞内タンパクの熱などに よる変性の影響を抑える役割を持っタンパクの発現に関与する、マイナーシグマを コードするrρoHの酸化的ストレス応答における機能を調べるために、 oxyR1変異 株を用いてRpoHの高発現を試みた。

第1節 試料および方法

1.使用菌株・培地・培養条件および試薬

 第1章に記載したKT株およびKT-oxyR1株は、第1章記載の培地および培養条 件で培養した。特記なき試薬はシグマあるいは和光純薬の特級品を使用した。

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