139 医薬産業政策研究所 製薬産業を取り巻く現状と課題~よりよい医薬品を世界へ届けるために~第三部 社会環境とビジネス構造(産業レポート No.5)http://www.jpma.or.jp/opir/sangyo/201412_3.pdf
(2019.01.30 アクセス)
140 経済産業省、バイオベンチャーの現状と課題
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/bio_venture/pdf/001_07_00.pdf(2019.01.30 アクセス)
- 146 -
本編 要約
第1部第2部第3部第4部第5部資料編
第6部免疫チェックポイント阻害療法は、特許出願動向調査では 2012 年、研究開発動向 調査では、2013 年以降に活発化している技術分野であることが示された(図 9-a、図 17-a)。また、この出願や論文発表の多くを、PD 系阻害(特許出願:54.3%、論文発 表:47.8%)、及び CTLA-4 阻害(特許出願:13.0%、論文発表:32.7%)、PD 系+CLTA-4 阻害(特許出願:7.7%、論文発表:2.1%)が占めている状況にある(図 9-a、図 9-a-1、
図 9-a-2、図 17-a、図 17-a-1、図 17-a-2)。特に PD 系阻害に関して特許出願や論文 発表が集中している要因は、臨床における有効性が CTLA-4 阻害と比較し高いことが 示唆されていること141、及び PD 系阻害との併用を軸とした新規がん免疫療法の開発 に注力しているためと推測される。
PD 系阻害、CTLA 阻害とは異なる免疫チェックポイント阻害療法のターゲットとし て、LAG-3 阻害、TIGIT 阻害等が挙げられているが、特許出願動向、研究開発動向で は、PD 系阻害や CTLA-4 阻害のような急激な増加傾向は認められない(図 11-a、図 19-a)。前述したとおり、臨床上の有効性が示されれば、PD 系阻害や CTLA-4 阻害と 同様の増加の傾向になると推測される。
(2)その他免疫抑制阻害療法・免疫増強
その他免疫抑制阻害療法・免疫増強に関する医薬品として承認された製品はない。
現時点で確認されている免疫チェックポイント阻害療法以外のターゲットの動向と しては、PhaseⅢ試験では、IDO 阻害と抗 PD-1 抗体の併用療法、CXCR4 阻害と G-CSF の併用療法の開発が進んでいる(第 2 章第 2 節)。近年だと特許出願では IDO 阻害に 関する出願が増加しており、論文発表では制御性 T 細胞をターゲットにした論文が最 も多い(図 11-b、図 19-b)。
現在免疫増強の PhaseⅢ試験のターゲットとしては 4-1BB、IL-2 受容体、TLR9 と各 社別々の開発を進めている。また、3 製品については抗 PD-1 抗体との併用療法の開 発が実施されている。(第 2 章第 2 節)。特許出願件数はサイトカイン・ケモカイン(抑 制性を除く)と TLR アゴニストが拮抗しており、論文発表件数はサイトカイン・ケモ カイン(抑制性を除く)が拮抗しており、次いで TLR アゴニストが多かった(図 11-c、
図 19-c)。
その他免疫抑制阻害療法・免疫増強ともに今後の臨床開発成功についてはターゲッ トの選択が大きく鍵を握ると推察される。
3.養子免疫療法
養子免疫療法では CD19 をターゲットとした Kymriah、Yescarta が米国で先行して上市 されており、市場が形成されている(第 2 章第 1 節)。
特許出願動向調査では 2013 年を境に急増し、論文発表件数については特許出願動向調 査ほどの 2013 年以降の顕著な立ち上がりはないものの 2002 年以降継続的に増加してお り、研究活動が活発化している技術分野であることが示された。具体的には導入遺伝子
/ターゲットに特徴がある特許出願・論文発表について、CAR は特許出願:62.6%、論文
141 Jeffrey Weber et al. (2017) Adjuvant Nivolumab versus Ipilimumab in Resected Stage III or IV Melanoma. N Engl J Med. 377(19):1824-1835.
- 147 -
本編 要約
第1部第2部第3部第4部第5部資料編
第6部発表:66.9%、及び TCR は特許出願:31.5%、論文発表:26.6%を占めており、全体の増加 を牽引している状況にある(図 9-d-2、図 9-d-2-1、図 9-d-2-2、図 17-d-2、図 17-d-2-1、
図 17-d-2-1)。
薬効に関する技術として、特許出願では導入遺伝子・ターゲットや、エフェクター細 胞、抗原受容体の配列設計・改変、細胞の製造技術等の技術開発に特徴を有する出願は、
米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人が中心であり(図 10-d)、論文発表に関 しては、米国籍出願人、欧州国籍出願人が中心であった(図 18-d)。
特に抗原受容体の配列設計・改変の特許出願件数は 2014 年以降に大きな増加が認めら れた。要因としては、米国籍出願人、欧州国籍出願人、中国籍出願人による大幅な出願 件数の増加が挙げられる(図 9-d-1)。また、論文発表件数は 2008 年からの増加が認め られた(図 17-d-1)。特許出願・論文発表シェアは米国籍出願人・研究者、欧州国籍出 願人・研究者の割合が高いことが示されている(図 9-d-1、図 17-d-1)。
細胞の製造技術は米国籍、欧州国籍、中国籍を中心に取り組まれている傾向にある(図 10-d、図 18-d)。一方、製剤化に関する特許出願・論文発表は少ない傾向であることが 示された。また、剤形については、米国籍出願人・研究者、中国籍出願人・研究者に特 許出願・論文発表が集中していることが示された(図 10-e、図 18-e)。
この分野における我が国の特許出願及び研究開発のシェアは高いとは言えない一方で、
iPS 細胞を含む再生医療の施策や法整備が進められ、細胞製剤を開発する環境が整いつ つある。武田薬品工業、ニプロ、タカラバイオにより新たな CAR-T 細胞療法、TCR-T 細 胞療法の開発の開発が進められている。また、京都大学 iPS 細胞研究所による iPS 細胞 由来のキラーT 細胞療法など、養子免疫療法への適用の動きもある142。
4.腫瘍溶解性ウイルス療法
2016 年の Imlygic の世界での売上高は、4,500 万ドルであり、2022 年には 2 億 5,000 万ドルという約 5.6 倍の成長が見込まれている。今後、他の臨床試験が良好な試験成績 を示すことができれば、市場は拡大していく可能性がある(第 2 章第 1 節、第 2 節)。
腫瘍溶解性ウイルス療法の上市製品である Oncorine、Imlygic のうち、適応拡大に向 けて開発を進めている Imlygic が注目に値する。現在、Imlygic と Yervoy の併用療法の 臨床試験が進行しており、有効性・安全性が認められれば強力ながん治療の選択肢の一 つとなり得る(第 2 章第 1 節、第 2 節)。
特許出願動向調査からは、暫定値ではあるが 2016 年に急激に増加をしており、研究開 発動向調査からは、全期間にわたって論文発表件数が 2002 年から 2017 年の間に 2.8 倍 と漸増していることが示された(図 9-e、図 17-e)。また、ウイルスの種類としてはいず れもアデノウイルスが最も多い状況ではあるが(図 11-f、図 19-f)、開発が進んでいる ウイルスの種類は単純ヘルペスウイルス1型である(第 2 章第 1 節、第 2 節)。
我が国のシェアは特許出願動向・研究開発動向のいずれも 6%台と低い状況にはあるが
(図 9-e、図 17-e)、タカラバイオ、オンコリスバイオファーマ、アステラス・アムジェ ン・バイオファーマ、第一三共等が臨床試験を進めており、国内の開発企業数は海外企
142 京都大学 iPS 細胞研究所 ニュース 研究活動
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/181116-010000.html
- 148 -
本編 要約
第1部第2部第3部第4部第5部資料編
第6部業に匹敵することから、我が国においても開発が活発な分野であると考えられる(第 2 章第 1 節、第 2 節)。
5.がんワクチン療法
当該領域において、抗原提示細胞ワクチンである Provenge が米国、及び欧州で承認さ れていたが、開発企業の倒産、欧州での販売承認撤回等から市場としては限定的である ことが窺える。(第 2 章第 1 節)
特許出願動向調査としては、2002 年~2014 年の期間では、特許出願件数が減少傾向で あったが、暫定値ながら 2015 年に欧州国籍出願人、米国籍出願人、中国籍出願人が出願 件数を伸ばしている(図 9-f)。研究開発動向調査としては漸増の傾向にある(図 17-f)。
がんワクチン療法では他領域と比較し我が国のシェアは高いという特徴があり、特に ペプチドワクチン(特許出願:15.1%、論文発表:15.0%)、抗原提示細胞ワクチン(特許 出願:18.4%、論文発表:12.8%)のシェアの高さが示すように、日本ががん免疫療法にお いて継続的に研究を重ねてきた領域であることが窺える(図 9-f-1、f-2、f-3、図 17-f-1、
f-2、f-3)。我が国では久留米大学、東京大学医科学研究所、大阪大学、三重大学等がが んペプチドワクチン療法の研究を進めており(表 29)、抗原提示細胞ワクチンは再生医 療等の安全性の確保等に関する法律のもと、第三種再生医療等製品として医療機関を中 心に利用されている。
6.その他
(1)併用に関する動向
本調査結果により、特許出願、及び論文発表のいずれにおいても、がん免疫療法と 化学療法・放射線療法等との併用、またはがん免疫療法との併用が盛んに取り組まれ ていることが明らかになった(図 10-a、図 11-e、図 18-a、図 19-e)。特に、がん免 疫療法と、がん免疫サイクルの異なるステップをターゲットとしたがん免疫療法との 併用については、特許出願動向において併用全体のうち 64%を占める状況となってい る(図 10-a、図 18-a)。
また、2012 年を境に免疫チェックポイント阻害療法との併用療法の特許出願は 2015 年まで増加傾向にあった(図 9-h)。現在、作用機序及び奏効率の観点から、免 疫チェックポイント阻害剤である PD-1 阻害剤が、当面の併用療法に用いられるがん 免疫療法の主役であり、このことは欧米製薬企業が各社独自の PD-1 阻害剤を開発し ていることからも推認できる(表 4、表 13)。
特許出願件数及び論文発表件数の結果より、併用の組み合わせとして最も多いのは がんワクチン療法と、アジュバント、免疫増強であり、がん免疫療法全般と併用が多 いのは化学療法またはがんワクチン療法であった(図 10-a、図 18-a)。がんワクチン 療法は古くから研究され、併用に関する研究が進んでいることに対して、その他のが ん免疫療法は研究の歴史が浅いことから、研究開発が行われてきた割合としては少な いことが推察される。
免疫チェックポイント阻害療法と養子免疫療法または腫瘍溶解性ウイルス療法と の併用に関する特許出願件数及び論文発表数は、ともに世界的に非常に少ない状況に ある(図 10-a、図 18-a)。このような傾向は、免疫チェックポイント阻害剤を主軸と