5.3 筋系
5.3.2 筋モデルの配置
それでは次に,どちらの筋をどこに用いればよいか探るため,また,体の各セグメント(体 節)の運動関係を見出すために,あらゆる筋における解剖図を基にモデル化する.なお,モ デル化する際,体の前後方向の運動に関係するものだけを取り上げることとし,その他の セグメントをねじる動作のための筋肉などは無視する.
はじめに,脊椎を守るために付着している筋について述べる.脊柱付近の筋の様子を図 5.24に示す.
図5.24 脊柱を取り巻く筋
脊椎を取り巻く筋は数多く存在し,腰痛付近だけ取り上げてもその周辺のセグメント(体節) 全てと繋がっていることが分かる.例えば,腰椎1番(L1)ならばその筋は骨盤と肋骨,胸椎,
そして,L2,L3,L4,L5と繋がっている.
これらのことから,腰椎を取り巻く筋のモデルでは,腰椎周辺の各セグメント全てにマ クスウェルの筋モデルを配置する.この筋モデル配置により,腰痛は単独の動きをするの ではなく,その周りとの運動関係が生まれる.
さらに,椎骨の間に存在する椎間板はクッションの代表的な表し方である,バネとダン パーを並列に並べたものにする.
このようにして作成した腰椎モデルを図5.25に示す.
なお,胸部は一つの剛体とみなし筋モデルは考慮しない.頚椎モデルは腰椎モデル同様 の筋配置とする.
これらを合わせた脊柱の筋・骨格モデルを図5.26に示す.
図5.25 腰椎・筋モデル 図5.26 脊柱筋モデル
次に腕,脚,骨盤付近の筋の付き方をみる.運動関係を見出すきっかけとなるので,各 筋についてそれぞれ見ることにする.
そこで,各筋とそのモデル化について表5.3にまとめた.
ここで,表の見方を説明する.実物欄には実際の解剖図を載せる.A~K の分類方法は,
代表的な関節,又はセグメント(体節)間をつなぐ筋群としてまとめた.次にモデル欄には本 研究において考慮すべきものである場合にのみモデル化した図を載せる.
抵抗欄には,座位姿勢において人間が体を動かそうとしたとき,抵抗となりうるものに は○,抵抗成分とみなさない場合は☓をつける.
アクチュエータとしてモデル化した場合,抵抗成分としては考えない.
最後の用途・特徴欄には筋の動き,そして筋の付着位置などを記す.
表5.3 A. 肩甲骨と上腕を結ぶ筋(15)
以上の表からどの筋をモデリングに考慮するか,そしてアクチュエータの働きをする筋 はどれかが決まった.
この時点でアクチュエータの働きをする筋は大随骨から腰椎にかけて伸びる大腰筋(腰の 前に付く力)と背中(後ろに付く力)につく背筋の 2 つである.さらに人間モデルを作るにあ たって頭を前方に向けるためにアクチュエータを付ける.これで,3つのアクチュエータを 使用することになる.
このモデルで,座位における人体の挙動を表現出来る.
この人体モデルの理想的動作を述べる.
・座位において姿勢が崩れる→骨盤が後方回転し,腰椎の湾曲が無くなる
・しかし,人間は姿勢が崩れたとしても前方を見るために頭の向きは変えない →頭のアクチュエータの働き
・姿勢が崩れ,痛みや疲れを感じると姿勢を直そうとする→大腰筋で腰椎を前方に引っ張 り湾曲を生み,背筋で骨盤を前方回転させ姿勢を理想の状態へと戻す
実際の人体においては様々な筋の制御によって地面に対して垂直に立つことが出来る.
その制御は計り知れないものである.しかし,座位において腰痛を考慮するにはこの 3 つ の筋モデルの制御で大まかな人体制御が出来る.
ここまでの筋モデルを含む全人体モデルを図5.27に示す.
図5.27 筋・骨格モデル