株式会社の設立(公募会社の設立)
〔解 説〕
1。 株式申込証の形式 会社が資金の公募により設立される場合,株式引 受人の義務は株式申込証の署名によって確認される。フランス法においてこの株式 申込証は1937年8月31日のデクレ・・ワにより初めて会社法に採用された(1867年 法1条4項)。この制度を引続き採用した本条および命令第61条の規定は,株式の 申込にあたり錯誤または詐欺から株式引受人を保護する目的をもって定められたも のである。しかし,実際においては,銀行から交付される株式申込証を読まずに,
また理解することなく,いかに多くの引受人が申込証に署名していることであろう か。このような現実からすると,立法者の期待はイリュージョンにすぎない場合も 少なくない(Ripert par Roblot,P.611)。
株式申込証が株式引受人またはその代理人により署名されることを要するのは 旧法の場合と同様であるが(1867年法1条4項),さらに株式引受人は日付を付し,
かつその引受けた株式の数を文字をもって(en toutes Iettres)記載しなければな らない(令61条1項)。この点につき,一定額の金銭またはその他の代替物の給付 を目的とする一方的債務(obligation un量1at6rale)を記載する私署証書の作成に ついての特則を定めている民法典第1326条によれば,義務を負う当事者はその私署 証書を全部自から記載して署名するか,あるいはその署名のほか少なくとも債務の 額または物の数量を文字をもって記載し,これに《bon》または《approuv6》の文 字を付加することを要するものとしている。これは偽造および白地署名(blanc seing)の濫用を防止するために古くから行なわれていた慣行を成文化したもので あるといわれている(仏蘭西民法皿,現代外国法典叢書(16),265頁)。株式申込証 の作成方式を定めた本命令第61条の規定はこの民法典の規定に類似するものである。
株式引受の実際ににおいても,引受人の署名の上に,その引受けた株式の数を記載 して,これに《Bon Pour》の文字を付加している(Ripert par Roblot,p.612;
H6mard et a1.,p.614)。
命令第61条第2項は株式申込証の記載事項を1号から12号にわたり法定してい るが,このうち,第2号の《会社の形態》には,会社の指揮にっき董事会および監事 会の新しい型を採用した場合には,さらに《会社法第118条ないし第150条の規定の
384
第76条 適用を受ける株式会社》なる旨の語句を記載すべきものと解される(H6mard et aL,t・1・,P・615)。第6号は《定款案の提出の目時および提出先》を定めているが.
これによって株式の引受が定款案の提出および設立趣意書の公示後に行なわれたか どうかを審査することができる。なお,若干の外国法の例にならって,会社設立の ために支払われ,または支払が約されている手数料の額を記載させるべきかどうか が考えられたが,結局この案は採用されなかった。定款案を裁判所の書記局に提出 した日から6ヵ月以内に会社が設立されないときは,株式引受人はその払込金の返 還を求めることができるが(法83条2項,令71条),株式申込証にもこの旨を記載 せしめて株式引受人にその権利を想起させることは無駄ではなかったように思われ
る。
2. 株式引受の承諾 株式引受人がその引受けた株式の数を株式申込証に 記載して署名のうえ,これを交付したとき,その株式の引受は確定する。したがっ て株式引受人はそれ以後はもはや株式の引受を撤回することはできない。なるほど,
19世紀の判例によれば,株式の引受は発起人による承諾(acceptation)を必要と するものとされている(Paris,22janv・1853,D。1854・2.258;16nov・1853,D・
1885.2.126;:Lyon,7jui11.1902,Rev・soc.,1903,22)。しかしこの判例は,株 式の引受が法定の条件および方式なくして行なわれていた時代に形成されたもので あり ,今日のように,会社の設立が法令の定める手続にしたがって行なわれるよう になってからは,この判例はもはや認めがたいものと解される(Ripert par Roblot,
t.1,p.612)。株式申込証は,発起人による申込(offre)に対する株式引受人の 回答(r6ponse)である。発起人は,時機に遅れた株式の引受を拒絶し,または株 式の引受を減少する権利をもっているのは確かである。なぜなら,既述のように,
引受があった株式の総額が資本の額を超過する場合には,発起人にこの権利が留保 される必要があるからである。これに反して発起人は,株式の引受人が好ましから ざる人物であるとか,支払能力にすこし欠けるのではないかとの理由をもって株式 引受人を排除することはできない。株式会社は,それが公募によって設立される場 合には入社しようとする者の個人的要素にたいする承諾を含まないからである。
3.適法な株式申込証によらない株式引受の効力 株式申込証によらない 385
株式会社の設立(公募会社の設立)
で,または違法な株式申込証にょりなされた株式の引受は有効であろうか。すくな くとも,1937年法による改正前のもとにおいては,その株式の引受がなされた方法 のいかんを問わず有効であることに疑問はなかった。株式の引受が商行為であると されるからには,その行為はあらゆる方法をもって立証することができるとするの が判例であった(Req,,250ct。1899,D.99.1.560,S・1900。1・65,note Lyon−
Caen)。しかし,1937年8月31日のデクレ・・ワによる改正いらい,株式の引受は 株式申込証によって確認されることを要する(doit6tre constat6)ものとされた
(1867年法1条4項)。そこで,株式の引受が株式申込証によることを要するのは,
要式行為として(ad solemnitatem)要求されているのか,それとも単なる立証方 法とし.て(ad probationem)求められているのであろうか。すでに旧法のもとに おいては,この点につき次のように見解が分かれていた。
(1)証拠方法説 若干の学者は,株式申込証は立証方法として要求されてい るにすぎないと解し,したがって株式申込証がなくとも,株式の引受は宣誓により,
あるいは書証による立証の開始(commencement de preuve par6crit)がある ときは証言によってさえもこれを立証することができると説いている(Hamel et Lagarde,t.1,P・712)これらの学者は,その根拠として,法律は株式申込証にた いして株式の引受契約をr確認する」配慮を与えている事実をとくに主張する。
1867年法は,r株式の引受契約は株式申込証によって確認されなければならない」
と規定していた(同法1条4項)のに対して,1966年法は,株式の引受は株式申込 証によって確認される(est constat6e Par un bulletin)とのみ規定しているとこ ろからみて,新法はこの立場をさらに強化するものと評価されるのではなかろう
か。
(2)要式行為説 この説によると,株式申込証は株式の引受を要式行為とす るために法定されたものとみる。というのは,1937年いらい立法者は,株式引受人 を保護するために株式の引受に関する明確な規定を設け,それまでのあいまいな株 式申込証の慣行と戦うことを意図したものである。したがって株式引受人は違法な 株式引受にょる義務の無効を主張することができる(Trib、com.Seine,7d6c.
1964,Joum。agr6es,1965,73)。この方式の椴疵にもとづく無効は,それぐも矢張
第77条 り保護のための無効(nullit6de protection),したがって相対的無効の性質を有 する(Ripert Par Roblot,p.612)。公正証書をもってする株式の引受および払込 の申告のみをもってしては,法律上十分な立証があったものとすることはできない。
旧法上用いられていた《doit》という語についても,第1説の立場に立つ学者自身 も認めているように,そのことはとくに意義を有するものではない (Hamel et Lagarde,P・712)。したがって株式申込証が欠けている場合.引受人はその株式の 払込を拒否することができる。もっとも,この引受人が総会に出席したときは,そ
の事実により自ら株式の引受の無効を主張する権利を失う。それは,無効な行為を 追認したからという理由によるのではなく,彼の態度がいわばその理疵ある事態を 治癒する効果をもったからにほかならない(H6mard et aL,P.617)。
法第刀条〔株式払込金の寄託〕
①株式払込金および各引受人による払込金額を付記した引受人名簿は,
命令の定める条件にしたがってこれを寄託しなければならない。命令は
また,この名簿を閲覧できる条件を定める。②前項の命令により定められた払込金の保管者をのぞぎ,何人も,設 立中の会社の計算において集められた金銭を8目を超えて保持すること
はできないoLoi Art.77.一Les fonds provenant des souscriptions en num6raire et la liste des souscripteurs avec1 indication des sommes vers6es pa1・chacun d eux font 1 objet d un d6p6t dans les conditions d6termin6es par d6cret l celui・ci丘xe6galement les conditions dans lesquelles est ouvert le droit a commmication de cette liste.
A1 exceptiondesd6positairesvis6sparled6cretpr6vua1 alin6a
pr6c6dent,nul ne peut d6tenir plus de huit jours les sommes
recueillies pour le compte d une soci6t6en formation.387