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「国外  

→  ニ  

落昇\⊥慧諾⊥///落昇  

第 6 図  

ラシャ   リンネル   イギリス  6■s.   4S.  

ドイツ   6S.   3S.  

99)臓d,p628   100)乃諺,p624  

香川大学経済学部 研究年報 24  

−32−   ノクβイ   

他方,.丁..Sいミルによる比較生産費の原理の貨幣交換における実現は,次のよう   に説明される。いま,第4図において各商品のJヤールを貨幣表示に改めるな  

らば第6図を得るものとする。この場合,リンネルはイギリスヘ送られ金で支   払われる。その結果,ドイツにおける物価騰貴とイギリスにおける物価下落を   招く。ドイツのリンネルは3シリング以上に引き上げられ,−・方イギリスのラ  

シャは6■シリング以下に引き下げられる。そして,ラシャはドイツへ送られて   上昇したドイツの貨幣所得から支払われることになる。かくして,輸出と輸入   は均等となり,貿易は止むに至たる。このとき,ラシャはイギリスからリンネ   ルはドイツからそれぞれ輸出せられており,物々交換における比較生産費原理   はそのまま貨幣交換においても実現されている。そこでJ..S、ミルは,「われわれ   は,貨幣およびその代替物の仲介が近隣地に当てはまる価値の法則に何の差異   をも生じないことを見出す。物々交換の方法で価値が相等しい物品は,貨幣の   額においても相等しくなる。貨幣の導入は,常に一つの商品をつけ加えただけ   のことであり,その価値は他のすべての商品と同じ法則に支配される。したが   って,国際価値もまた,物々交換制度の下におけると同様に貨幣および手形制   度の下においても同一・の原因によって決定されることになる。貨幣は,価値を   比較するための便利な手段を提供するだけで何等重要な役割を演じていないの   である。すべての交易は,実体においても効果においても,物々交換である。」101)  

と言う。   

なお,J小S.ミルは貨幣量の増加および紙幣の増発が金の各国への均等な再配   分あるいは為替の名目的悪化(不換券の場合)を生じるだけであり,貿易のリ   アルな関係に何の影響も与えないと言う。さらに,以上のような流通媒介を通   じて貨幣・金が流入する場合だけでなく,輸入商品として導入されてくる場合   においても,その価値を規定する法則は,全く同じであるとみる。すなわち,  

「貨幣が均衡を回復するために交換を通じて−・国に流出入しそれによって貨幣   の価値をある国で引き上げ他の国で引き下げる原因となるものは,各国の貨幣   の価値が一つの商品として鉱山から直接輸入される場合と全く同じである。  

101)乃∠d,p630 

購買力平価説と国際的貨幣ベール観   一且ヲー  

……すなわち,それは,その国の商品に対する外国需要の増大あるいはその国   の外国商品に対する需要の減少のいずれかが生じたためである。−−・国の商品に   対する外国の需要の増大あるいはそ・の国の輸入品に対する国内需要の減少は,  

一・般的貿易の原理からみて,その国がすべての輸入品を,そして当然のことと   して貴金属をより安く購入しうる原因となるものである。ゆえに,貴金属を贋   得する二種の異なる方法は,その結果において,何等の矛盾もなく,むしろ完   全な合致をみるものである。」102)   

以上の如くして,JルS山ミルの国内経済に関する貨幣観は,国際経済において外   国為替および金を媒介とする取引が比較生産費原理と相互需要均等の原理の両   者をともに成立させる点に現れてくることがわかる。そ・こで,われわれは,以   下これらの原理をより詳細に考察することとする。   

まず,相互需要均等の原理についてみる。J.S.ミルが貨幣交換において相互需   要均等の原理を成立するとして挙げる理由は,同じ貨幣(−・般に金)で測って   輸出と輸入が相等しくなり均衡すること,すなわち輸出と輸入が物対物におい   ても相償っていることであるとする点にある。しかしながら,通常の場合,物   をもって物を需要するとき(物々交換)と貨幣を媒介として売買するときとで   は,成立する物対物の交換比率(およびその額も)が同じになるという保証は,  

存在しない。外国品に対する需要が増加し交換比率が不利化する場合に,各国   の国際的決済手段を保有しようとする欲求を考慮に入れるならば,交換比率が   同じように不利化するとすることは,できない筈である。このような場合,当   然貨幣交換より生じる比率と物々交換での比率とは,異なっていなければなら   ない。かくして,.JS.ミルの相互需要均等の原理が成り立つためには,少なくと   も国際貨幣・金(あるいは国際的決済手段すなわち国際通貸)に対する保有欲  

求がなく国際取引が全くのべ・−ルであることが必要となる。なお,.JりS..ミルの相   互需要均等の原理は,上記のように通常のケースと異って各国の需要条件を重  

視し(究極的に需要に従属するものとして)供給条件を軽視する。しかしなが   ら,これは必ずしもJnSいミルの真意ではない。なぜなら,彼自身次のような場合  

102)乃まd,p.603 

ー34−   香川大学経済学部 研究年報 24   ノ タβ〃  

供給側の条件に言及するからである。すなわち,J.S…ミルは,各国がそれぞれ与   えられるものをすべて需要するという極端なケースにおいては,各国の輸出が   すべて相手国に需要しつくされ供給側の条件のみが国際間の交換比率の決定因   として残されてくると指摘するからである。例えば,ドイツは貿易前にラシャ  

ヱ0ヤールをリンネル20ヤールと交換し総計でラシャ80万ヤールを消費し  

ていたものとし,一・方イギリスはラシャJOヤールをリンネルJ∂ヤールと交   換し総計でそれぞれJOO万ヤールを消費していたものとする。貿易開始後は,  

ドイツではラシャの生産を止めリンネルJ戊)万ヤールを余分に生産し,イギリ   スではリンネルの生産を止めラシャ了の万ヤールを余分に生産することにな   る。各国とも特化後の商品をこれ以上生産しえないものとすれば,両国の交換   比率は,この供給の条件すなわち両国の生産限度量の比率であるラシャJOヤ   ール対リンネルJ6ヤールによって決定されることになると言う。   

次に.J..S..ミルの比較生産費の原理を考察する。彼は,第4図から−・見して明ら   かなようにリカアドォにおいて生産費(労働)で表されたものを各国国内の同  

一生産費による生産量に書き改め各国の生産性差異を強調するように構成し説   明している。しかしながら,この第4図においてもなお両国の生産性を国際比   較するための基準となる財(ニュメレール)を暗々裡に仮定していることに注   意せねばならない。すなわち,ラシャの輸入を決定するに際しては両国でリン   ネルヱヤールの価値を相等しいものとしてそれによって換算した結果安価で   ある(この場合より生産的である)としてイギリスから輸入するのであり,他   方リンネルの輸入を決定するに際しては両国でラシャヱヤールの価値を相等  

しいものとしてそれによって換算した結果安価である(より生産的である)と   してドイツから輸入するのである。かくして,この点に関しては,.J.S..ミルの比   較生産費原理は,リカァドォと大きく異なっていないことになる。しかしなが  

ら,ひとたび貨幣を含むリカァドオの比較生産費原理の特徴(iii)をJ。、S..ミルと   比較するならば,そこに大きな差異があることが判明する。リカァドオの特徴  

(iii)とは,貨幣・金の国際取引での価値決定に関わるものであり,前節で考察   したように出来る限り貨幣の価値をその購買力から区分しようと努めたもので   あった(結果として成功しなかったけれども)。したがって,例えば一・般物価の   

購買力平価説と国際的貨幣ベール観   −35一  

変動は,リカァドオにおいては貨幣の価値(生産費)の変化の結果として生じ   るものであった。ところが,J…S.ミルにおいては,それは上記考察のように貨幣   数量の変動によって生じるのである。明らかに,ミルは貨幣数量説に立脚して   いると言えよう。かくして,彼は,リカァドォの特徴(iii)を取り除き,それに   代わって貨幣の数量に依存する貨幣価値規定を設定し,それによって貨幣交換   での比較生産費原理の実現を説くこととなる。そこで,この場合,貨幣・金が  

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ニ国間の異質生産費を換算し国際的に比較可能にするというかなめの財として   の役割を演じているとの認識は,弱められ姿を消してくる。そして,.J.S…ミルの   貨幣・金は,国際取引においても国内と同様に特別の機能を果たさず,まさに   機械油のような存在となるのである。このことは,.J…Sいミルの比較生産費原理が   貨幣交換において妥当するためにはすべてのリアルの関係(例えば相対価格)  

を不変のまま残し価格を比例して上下させる場合のみであることから,理解し   得るところである。なぜなら,もし貨幣・金の国際的移動が国内のリアルの関   係に作用し例えば相対価格を変えるとするならば,国際貿易を決めるものは,  

物の側ではなく貨幣の側にあることとなり,物々交換での比較生産費原理を貨   幣交換で実現しえないこととなるからである。   

以上の考察よりして,.J.S、ミルの国際取引における貨幣観は,一・方において貨   幣・金を保有し 

ルな諸関係への影響を無視するときのみ,妥当するものであると言える。すな   わち,それは国際的貨幣ベール観に立脚しているのである。そして,国内経済  

と同じように国際経済においても貨幣ベー/レ観の打破という観点に立つならば,  

J.S..ミルの比較生産費原理および相互需要均等の原理は,貨幣を媒介とする経  

済において実現する保証のない理論であるということになる。   

さて,為替相場の変動は,.J1Sいミルでは金の輸出入点内に限定されており,そ   の関係で余り言及されていない。しかしながら,彼は,それが,比較生産費原   理と相互需要均等の原理とを実現するように変動するものとみていたようであ   る。このことは,為替相場の金輸出入点をこえる変動が金の国際的移動となっ   て現れることから推察し得るところである。したがって,上記のミルの貨幣を   媒介とする国際貿易の性格は,当然の帰結として為替理論にも影響を与えてい   

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