2.3 海洋環境・生態系への影響
2.3.1 食物網を通じた間接影響
2.3.1.3 競争者への影響
37
図2.3.1.2f ツノナシオキアミ漁獲量とクロロフィルa濃度の関係(1999~2010年)。
これらの図を見る限り、オキアミの増加→植物プランクトンの減少という関係はみられ ないため、マサバの減少に伴う栄養カスケードは起きていないと考えられる。
以上のことから、マサバを漁獲するまき網漁業が、マサバの餌生物であるカタクチイワ シ、ツノナシオキアミの現存量に対し、さらには低次栄養段階の生産構造に重篤もしく は不可逆的な悪影響を及ぼしているは考えにくい。しかし、ツノナシオキアミについて は、原因がマサバの漁獲の影響とは考えられないものの 1999~2010 年にかけて漁獲
量の23%の減少が見られた。
38 評価根拠詳細
マサバの栄養段階は3.6とされ(Yonezaki et al. 2015)、動物プランクトン並びに魚食 性を示すが、ここでは当該海域表層生態系におけるマサバの競合種として、動物プラン クトン食性魚(栄養段階3)も含め、資源量・漁獲量が多い魚種としてゴマサバ、サン マ、マアジ、スルメイカを挙げた。これらを種ごとに評価を行うと表 2.2.1a-d の通り である。これら競合種とマサバを含む 5魚種の資源量経年変化は図 2.3.1.1cの通りで ある。
競合種 4 種についてはいずれも資源状態は悪くなく、まき網によるマサバ漁獲の影響 を見いだせない。また、それぞれの種とマサバの資源変動の関係は以下の図に示す通り である。近縁種のゴマサバとは正の相関を示すが、他の3種とは負の相関が見られる。
これを見る限り、その因果関係は不明であるもののマサバの減少はこれら 3 種にとっ て悪影響とはなっていないといえる。
図 2.3.1.3b マサバとゴマサバの資源量の関係(1995~2014年)
図 2.3.1.3c マサバとスルメイカの資源量の関係(1979~2014年)
y = 0.4248x + 249.77 R² = 0.6909
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000
0 500 1,000 1,500 2,000
ゴマサバ資源量(千トン)
マサバ資源量(千トン)
y = -0.2588x + 941.42 R² = 0.2298
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
スルメイカ資源量(千トン)
マサバ資源量(千トン)
パブリックコメント版
39
図2.3.1.3d マサバとマアジの資源量の関係(1982~2014年)
図 2.3.1.3e マサバとサンマの資源量の関係(2003~2014年)
表2.3.1.3f マサバ競争者の個別資源状態のCA評価結果
1.1.2の採点基準が適⽤可能な種は、それに従って種ごとの得点を付した。
得点要素 構 成 要 素
得 点
根拠
ゴマサバ 太平洋系群
資源量 5 資源の⽔準・動向は⾼位・横ばい。
1995〜2014年の資源量は、概ね安定した加⼊の継続と1996、2004年
の⾼い加⼊量によって、1995〜2003年の30万トン前後から、2004〜
2008 年は49万〜66万トンに増加し、さらに2009 年の⾼い加⼊量に よって2009年以降は69万トン以上の⾼い⽔準にある。2014年は79.1 万トンであった。2014 年漁獲量は 11.4 万トンであった(由上ほか
2016)。ゴマサバは本来マサバより南⽅系の⿂種であるが、資源量が30
万トンを越えて⾼位⽔準になると分布域は太平洋北区に拡⼤するとさ れる。
y = -0.0555x + 140.23 R² = 0.5267
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
0 500 1,000 1,500 2,000
マアジ資源量(千トン)
マサバ資源量(千トン)
y = -2.634x + 7027.3 R² = 0.3208
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000
0 500 1,000 1,500 2,000
サンマ資源量(千トン)
マサバ資源量(千トン)
パブリックコメント版
40 サンマ
太平洋北⻄部 系群
資源量 4 資源⽔準・動向は中位・横ばい。
資源の指標値である標準化CPUE、親⿂量、加⼊尾数および資源量は、
2010 年に減少してからは横ばいで推移している。2014 年の標準化 CPUEは3.17トン/操業、2014年の親⿂量は前年よりやや減少して99 万トン、2014 年の加⼊量は調査開始後の2003年以降では2 番⽬に少 ない381億尾、2015年資源量は前年をやや下回り227万トンであった
(巣⼭他 2016)。サンマの分布域は広⼤であるが近年は東経162度より
⽇本側の⽔域は分布密度が⼩さく、上記資源量の11%に過ぎない(2015 年)ためマサバ分布域との重複は他⿂種ほど⼤きくない。
マアジ 太平洋系群
資源量 4 資源⽔準・動向は中位・横ばい。
資源量は1982年から1990年代始めにかけて増加し、1990年には⾼位
⽔準になったが、1996年の16.2万トンを頂点として減少した(渡邊他
2016)。2014年の資源量は5.8万トンと推定された。2014年の漁獲量
は2.4万トン。マアジは⽇向灘、豊後⽔道、紀伊⽔道から熊野灘(春か ら秋)、相模湾(春)の漁獲が多く、2012年の漁獲統計では、太平洋南 区、中区、北区、北海道北区の合計に対し、太平洋北海道北区と太平洋 北区の漁獲量は19%であった(農林⽔産省2014)。 したがってマアジ 太平洋系群はマサバ太平洋系群より分布域は南⽅にずれており、マサバ との競争関係は強くないと考えられる。
スルメイカ 冬季発⽣系群
資源量 4 加賀ほか(2016)によれば、資源⽔準・動向は中位・減少。
資源量について、1981〜1988 年は30 万トン以下で推移していたが、
1989年以降増加し、1996 年には134.0万となった。その後は概ね80 万〜110万トンで推移しており、2015年は79.6万トンであった。資源 尾数、親⿂尾数も資源量と同様の傾向で推移し、2015年はそれぞれ25.7 億尾、9.4億尾であった。スルメイカの主要な漁法は釣りでありまき網 のみの影響を評価するのは難しいが、資源が中位⽔準であることから評 価は4点とする。
平均点 4.3
パブリックコメント版
41
図2.3.1.3g マサバ並びにその競争者の資源量変動
資源量を評価要素としてCAによる評価を行った結果から4点とする。
1 点 2 点 3 点 4 点 5 点
評価を実施できな い
多数の競争者に定 向的変化や変化幅 の増大などの影響 が懸念される
一部の競争者に定 向的変化や変化幅 の増大などの影響 が懸念される
CAにより対象 漁業の漁獲・混 獲 に よ っ て 競 争 者 が 受 け る 悪 影 響 は 検 出 されない
生態系モデルベース の評価により、食物 網を通じた競争者へ の間接影響は持続可 能なレベルにあると 判断できる
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020
ゴマサバ、カタクチ 、マアジ、スルメ資源量
マサバ、サンマ資源量
資源量(千トン)
サンマ マサバ マアジ ゴマサバ スルメイカ
パブリックコメント版
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