結論 結論 結論 結論
本論文は、更なるエレクトロニクス発展のため、次世代パワーデバイス として期待されているGaNトランジスタのノーマリオフ化を目的とした、非極
性 m 面 AlGaN/GaN FET の検証について述べたものである。非極性 m 面
AlGaN/GaN 構造を用いて、バンド構造の理論計算、デバイス作製、評価を行う
事で、ノーマリオフ動作実現の可能性について検討を行った。本章では、本研 究で得られた成果について総括する。
GaNは、優れた材料物性を持つことから、次世代パワーデバイスとして 期待されている材料である。GaN トランジスタの優れたデバイス性能は、
AlGaN/GaN構造の採用により、高電子移動度を持つ2DEGを利用できることに
尽きる。一方、パワーデバイス用途には、安全性の問題によりVth>+2 Vを持つ ノーマリオフ動作が要求されているが、AlGaN/GaN FET において低 Ronかつ高 Vth を持つノーマリオフ動作の実現は困難である。この原因は、極性 c 面
AlGaN/GaN界面では、分極効果により自然に2DEGが発生してしまうためであ
る。c面AlGaN/GaN FETでは、2DEGを使用すれば高いVthが得られず、2DEG
を使用しなければ高チャネル移動度が望めず低 Ron が期待できないというトレ ードオフが存在する。本研究では、2DEGを利用しながら高Vthを実現するべく、
非極性m面AlGaN/GaN構造を用いたFETの設計、試作、評価を行った。
第3章では、Schrodinger-Poisson方程式を用いて非極性m面と極性 c面
AlGaN/GaN構造の理論的なバンド構造比較、m面AlGaN/GaN構造を用いたFET
の設計について論じた。極性 c面 AlGaN/GaN 構造の持つ分極電荷が Vthへ与え る影響について検証し、非極性m 面AlGaN/GaN 構造では、c面 AlGaN/GaN構 造と比較して
9 V 高い Vthを期待できる事が示された。また、m 面 GaN では、
c面 GaNと同等のバンド構造、µ、φBの物性値を有する事が示さた。これより、
m面GaNを用いる事で、c面GaNと同等のRonかつ高Vth実現の可能性がある事 が示された。m面AlGaN/GaN構造では、分極を持たないため、アクセス領域に 2DEG チャネルが形成されないという問題点がある。この問題に対して、m 面
AlGaN中へのドナー不純物添加により解決を図った。m面AlGaN中へドナー不
純物を添加する事で、m面AlGaN/GaN界面での2DEG生成を確認した。これら の技術を組み合わせた、リセスMIS構造m面AlGaN/GaN FETにおいて、Vth=+2 VかつRon=0.33 Ω•mmのノーマリオフ型AlGaN/GaN FETが設計された。
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第4章では、m面AlGaN/GaN構造の結晶成長と、ノーマリオン型 m面
AlGaN/GaN FETの実証について論じた。m面AlGaN/GaN構造は、MOCVD法に
より[000 1 ]方向へオフ角1 °を持つm面GaN 基板上へ結晶成長された。AlGaN 中へ Si の δドーピングを行う事で m 面 AlGaN/GaN 界面において、µ2DEG=782 cm2/V•s、ns=3×1012 cm-2の2DEG生成が確認された。m面AlGaN/GaN構造では、
Ti/Al/Ni/Au金属を870 °Cでシンターする事で、Rc=2.2 Ω•mmのオーミック電極 が得られた。作製されたm面AlGaN/GaN FETでは、Vgs=+1 V印加時Ids(max)=266 mA/mm、Ron=16.6 Ω•mm、Vgs=-1.2 V印加時gm(max)=77 mS/mm、Vth=-2.7 V、µch=161 cm2/V•sのノーマリオン動作が実証された。
第5章では、ノンドープm面AlGaN/GaN構造を用いたノーマリオフ型
m面AlGaN/GaN FETの実証について論じた。ノンドープm面AlGaN構造を用
いたMIS構造m面AlGaN/GaN FETにおいて、Vgs=+5 V印加時Ids(max)=109 mA/mm、
Ron=21.6 Ω•mm、Vgs=+2.5 V印加時gm(max)=38 mS/mm、Vth=+1.4 Vのノーマリオ フ動作が得られた。m面AlGaN/GaN構造を用いる事で、同構造のc面AlGaN/GaN FETでは得られないほどの高いVthを持つノーマリオフ型AlGaN/GaN FETが実 現された。これより、ノーマリオフ動作実現のために、c面 AlGaN/GaN構造に
対して m 面 AlGaN/GaN 構造を用いる事の優位性が実証された。また、Nd=1019
cm-3の選択再成長n+-GaN層を用いる事で、Rc=0.25 Ω•mmが得られ、Ndを増加 させる事でRc低減できる事が実証された。
第6章では、リセスMIS構造m面AlGaN/GaN FETの実証について論じ た。PECVD で成膜された SiXNY をゲート絶縁膜として用いたデバイスでは、
Vgs=+9 V印加時Ids(max)=130 mA/mm、Vgs=+8 V印加時gm(max)=25 mS/mm、Vgs=+7 V
印加時Ron=50 Ω•mm、Vth=+2 Vのノーマリオフ動作が得られた。ALDで成膜さ
れたAl2O3をゲート絶縁膜として用いたデバイスでは、Vgs=+6V印加時Ids(max)=68 mA/mm、Vgs=+4.5 V印加時gm(max)=22 mS/mm、Vgs=+6V印加時Ron=40 Ω•mm、
Vth=+2.2 Vのノーマリオフ動作が得られた。Al2O3ゲート絶縁膜を用いたデバイ
スは、SiXNYゲート絶縁膜を用いたデバイスと比較して Vth の計算値と実験値の 差が小さく、かつ、高いµch=61 cm2/V•sを示した。Al2O3ゲート絶縁膜の方がSiXNY ゲート絶縁膜より、MIS 界面準位に起因するヒステリシス、イオン化不純物散 乱が小さいためだと考えられる。ALD 成膜された Al2O3ゲート絶縁膜を用いた リセスMIS構造ノーマリオフ型非極性m面AlGaN/GaN FETでは、リセスエッ チング深さに対してVthが変動しないノーマリオフ動作が確認された。非極性で
あるm面AlGaN/GaN構造では、分極による2DEGが発生しないためである。ゲ
ート電極を、Niより仕事関数の大きいPtに変更する事で、Vth=+3 Vのノーマリ オフ動作が実現された。仕事関数を変化させる事で、Vth を制御できる事が確認 された。選択再成長n+-GaNコンタクト層を用いる事で、Ndの増加によりRc=3 Ω
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•mmから1 Ω•mmへ減少し、デバイスのRon=20 Ω•mmから17 Ω•mmへと減少
した。選択再成長 n+-GaN コンタクト層を用いる事で、高い Vthを保持したまま Rc低減の分だけ Ronの低減が可能である事が実証された。リセス MIS 構造ノー マリオフ型m面AlGaN/GaN FETで得られたVth=+3 V、 Ron=17 Ω•mmを、第3 章で得られた計算値と比較を行った。第3章ではVth=+2 V、Ron=0.33 Ω•mmが予 測されていたが、この値は実現されなかった。この原因は、Al2O3/m 面 AlGaN のMIS界面準位に起因するヒステリシス、イオン化不純物散乱によるµch減少の ためと考えられる。
以上より、非極性m 面 AlGaN/GaN 構造を用いる事で、2DEGを使用し つつVth>+2 Vを持つノーマリオフ型AlGaN/GaN FETが実現された。m面GaN を用いる事は、パワーデバイス用GaNトランジスタのノーマリオフ動作実現の ため、非常に有効な方法である事が実証された。
本論文では、m面AlGaN/GaN FETにより、優れた特性を持つノーマリ オフ動作が確認されたが、課題も残る。通常のスイッチング用途パワーデバイ スでは、動特性が非常に重要であるが、GaN FETでは電流コラプス現象による 動特性の悪化が懸念される点である。電流コラプスとは、スイッチング動作中 にRonが増加してしまう現象であり、この原因は、AlGaN表面のトラップ準位が 関係していると報告されている。[1][2] c面AlGaN/GaN構造では、表面のドナ ー準位が 2DEG発生の起源であるため、AlGaN 表面における電子の捕獲、放出 過程が電流コラプス発生のメカニズムだと考えられる。[3][4][5] しかし、m 面
AlGaN/GaN構造では、AlGaNバリア中にドープされた不純物により2DEGが生
じているため、AlGaN 表面のトラップに起因する電流コラプスを抑制できる可 能性がある。今後、m 面 AlGaN/GaN 構造を用いた、電流コラプス現象の評価、
改善を期待する。
本研究で得られた成果を基に、窒化物半導体パワーデバイスの開発が進 展し、パワーエレクトロニクスの更なる発展に貢献する事を願う。
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参考文献 参考文献 参考文献 参考文献
[1] R. Vetury, N. Q. Zhang, S. Keller, and U. K. Mishra, “The impact of surface states on the DC and RF characteristics of AlGaN/GaN HFETs” IEEE Transaction on Electron Devices, Vol. 48, pp.560, 2001.
[2] H. Hasegawa, T. Inagaki, S. Ootomo, and T. Hashizume, “Mechanisms of current collapse and gate leakage currents in AlGaN/GaN heterostructure field effect transistors” Journal of Vacuum Science & Technoligy B : Microelectronics and Nanometer Structure, Vol.21, pp. 1844, 2003.
[3] T. Mizutani, Y. Ohno, M. Akita, S. Kishimoto, and K. Maezawa, “A study on current collapse in AlGaN/GaN HEMTs induced by bias stress” IEEE Transaction on Electron Devices, Vol. 50, pp. 2015, 2003.
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“Polarization effects, surface states, and the source of electrons in AlGaN/GaN heterostructure field effect transistors” Applied Physics Letters, Vol. 77, pp. 250, 2000.
[5] B. Jogai, “Influence of surface states on the two-dimensional electron gas in AlGaN/GaN heterojunction field-effect transistors” Journal of Applied Physics, Vol.
93, pp. 1631, 2003.
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謝辞 謝辞 謝辞 謝辞
本論文を完成するにあたり数々の方に御指導を賜りました事を深く感 謝し、ここに謝辞を表します。
本論文を遂行、完成するにあたり、終始御親切かつ御丁寧な指導と有益 なる御助言、また、研究方法、実験計画、考察等、研究者としての基本を御教 授いただきました、豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学専攻 若原 昭浩 教 授、岡田 浩 准教授、吉田 明 名誉教授に甚大なる感謝の意を表します。
本論文の遂行において多大な御支援賜りましたローム株式会社 常務取 締役 高須 秀視 氏、研究開発本部 副本部長 神澤 公 氏、パワーエレクトロニ クスユニット ユニットリーダー 中村 孝 博士、チームリーダー 済藤 匡男 氏、
チームリーダー 中原 健 博士に心より御礼申し上げます。
2007 年 9 月より 2011 年 6 月まで在籍させていただいた University of
California, Santa Barbaraでは、世界各国の研究者と共に研究に携わる事ができ、
研究、実験について議論し、研究以外でも多くの事について学ばせていただき ました。本論文遂行のための御議論、アイデアを賜り、また研究者としてだけ でなく前向きな姿勢、人生を楽しむ姿を御教授いただきました University of California, Santa Barbara, Prof. Umesh K. Mishraに深く感謝の意を表します。本論 文 遂 行 の た め の 御 議 論 賜 り 、 設 備 を 御 提 供 い た だ き ま し た 、University of California, Santa Barbara, Prof. Steven P. DenBaars, Prof. James S. Speckに感謝の意 を表します。本論文遂行のための御議論、設備を御提供いただき、また日米に おける研究の差異、研究者としての心構えを御教授いただきましたUniversity of California, Santa Barbara, 中村 修二 教授に感謝の意を表します。
本論文中の結晶成長、結晶評価において御議論、御教授いただきました University of California, Santa Barbara, Principal Development Engineer, Dr. Stacia
Kellerに感謝の意を表します。本論文中のデバイスの設計、作製、評価について
御議論、御教授いただきましたThe Ohio State University, Assistant Prof. Siddharth
Rajanに感謝の意を表します。本論文中のデバイス設計、作製、評価、論文執筆
方法について御教授、また海外生活において公私共に御援助いただきました情 報通信研究機構 東脇 正高 博士に感謝いたします。
本論文執筆のため、数多くの御助言、適切な御指導、激励いただきまし た福井大学 電気・電子工学専攻 葛原 正明 教授に深く感謝いたします。本論 文執筆のため、適切な御指導、激励いただき、また公私共に御援助いただきま したMcKinsey & Company, 太田 裕朗 博士、Massachusetts Institute of Technology, 藤蔦 辰也 博士に深く感謝いたします。本論文執筆のため、御助言いただきま