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立体選択的ドミノ型ラジカル付加-転位反応

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第1章 ドミノ型ラジカル付加-転位反応を利用したベンゾフロ[2,3-b]ピロール合成法

第2節 立体選択的ドミノ型ラジカル付加-転位反応

次に、多様なベンゾフロピロールの合成を目指して、様々なヨウ化アルキルから発生す るアルキルラジカルとのドミノ型反応を検討した (Table 7)。共役オキシムエーテル 6Aを 基質として、ヨード酢酸エチルとの反応を検討したところ、ベンゾフロピロールにエステ ル官能基の導入された4Abを得ることに成功した (entry 1)。また、2級ラジカルであるイ ソプロピルラジカルやシクロペンチルラジカルとの反応ではエチルラジカル付加反応の場 合と比べて立体選択性が向上し、ベンゾフロピロールexo-4Ac、4Adが主生成物として得ら れた (entries 2 and 3)。興味深いことに、3級のtert-ブチルラジカルとの反応ではexo-4Ae

が 66%の収率で高立体選択的に得られた (entry 4)。なお本反応では、,-不飽和ラクタム

76が副生成物として生成していることが明らかとなった。

Table 7. Domino reaction with various alkyl iodides.

そこで、ベンゾフロピロールexo-4AeをTable 7、entry 4と同様の反応条件に付したとこ ろ、,-不飽和ラクタム76へと90%の収率で変換された (Scheme 27)。

Scheme 27. Conversion of exo-4Ae into ,-unsaturated lactam 76.

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また、本ドミノ型反応終了時に反応溶液が赤く着色していたことからヨウ素の生成が示 唆された。したがって、ヨウ素を捕捉するためにチオ硫酸ナトリウムを添加して反応を検 討した。27) その結果、,-不飽和ラクタム76は副生せず、ベンゾフロピロールexo-4Ae

収率は98%にまで向上した (Scheme 28)。

Scheme 28. Stereoselective domino reaction with tert-butyl iodide.

続いて、ヨウ化 tert-ブチルを用いた立体選択的ドミノ型反応におけるオキシム酸素上に 存在するベンゼン環の置換基効果について検討した。メタ位にトリフルオロメチル基を有 す る 共 役 オ キ シ ム エ ー テ ル 6H は 第 1 章 第 1 節 第 3 項 と 同 様 の 手 法 に よ り (2E)-4-oxo-2-butenoic acid ethyl ester (61a) から3工程、53%の収率で合成した (Scheme 29)。

Scheme 29. Preparation of conjugated oxime ether 6H.

まず、パラ位に置換基を有する共役オキシムエーテル 6B-D を用いて、チオ硫酸ナトリ ウム存在下、ヨウ化tert-ブチルおよびトリエチルボランを加えて反応を行った (Scheme 30)。

その結果、いずれの場合も高立体選択的にドミノ型反応が進行し、ベンゾフロピロール

exo-4Be-Deが得られた。置換基が収率に及ぼす影響はエチルラジカル付加反応 (第1章第1

節第 3 項) と同様の傾向を示し、電子求引基を有する基質のほうが電子供与基を有する基 質よりも良好な収率でベンゾフロピロールを与えた。また、オルト位にトリフルオロメチ ル基およびメチル基を有する共役オキシムエーテル 6E、6F の反応は、いずれの場合も中 程度の収率でベンゾフロピロール4Ee、4Feが得られた。さらに、メタ位にトリフルオロメ チル基を有する共役オキシムエーテル 6H についても検討した。その結果、高立体選択的 に反応は進行したものの、転位反応における位置選択性は満足のいくものではなく、4 位

置換体4Heおよび6位置換体4He’がそれぞれ1 : 2の比率で生成した。

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Scheme 30. Substituent effect.

以上のことから、本ドミノ型反応における立体選択性はラジカル付加反応により導入さ れる置換基に依存することが明らかとなった。特に tert-ブチルラジカルとの反応では高立 体選択的にexo-ベンゾフロピロールが得られた。

ここで、tert-ブチルラジカル付加反応から開始されるドミノ型反応における立体選択性 の発現理由について考察する (Scheme 31)。本反応の立体選択性は[3,3]-シグマトロピー転 位の段階で決定されるために、その遷移状態を考える必要がある。一般に[3,3]-シグマトロ ピー転位は六員環遷移状態を経て進行するため、まずエナミン部分のA1,3-strainが最小にな るコンホメーションAB (式1、2) を考えた。ABを比較すると、ペンタフルオロフェ ニルエステルに比べて嵩高い tert-ブチル基側からフェニル基の転位が進行する遷移状態 B は立体障害が大きいため不利なコンホメーションであると考えられる。したがって、ペン タフルオロフェニルエステル側からフェニル基が転位する遷移状態Aを経由する経路が優 先すると考えられるが、本経路ではendo-4Aeが生成するため、実験結果と矛盾する。そこ で次に、A1,2-strainが最小になるコンホメーションCD (式3、4) を比較した。この場合 も同様に、より立体障害の小さいペンタフルオロフェニルエステル側から転位が進行する と、遷移状態Dを経由してsyn-77が生成すると考えられる。その結果、exo-4Aeが生成す るため、本転位は遷移状態Dを経由して進行したと考えられる。また、遷移状態Aから転 位が進行しない理由は、遷移状態Dと比較してフェニル基とペンタフルオロフェニルエス テルとの立体障害が大きいためであると考えられる。

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Scheme 31. Stereochemical feature of [3,3]-sigmatropic rearrangement.

なお、エチルラジカル付加反応によって生成する N-ボリルエナミンの[3,3]-シグマトロ ピー転位では、エチル基とエステルとの間に立体的な大きさの影響が少ないため、endo-4Aa

exo-4Aaの生成比に差がみられなかったと考えられる (Scheme 32)。また上記の理由から、

エチル基より嵩高いイソプロピル基やシクロペンチル基を有する基質では exo 体の生成比 が向上したと推測される。

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Scheme 32. Stereochemical feature of [3,3]-sigmatropic rearrangement.

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