第 7 章7-2-3 生態系(1)工事の実施及び土地又は工作物の存在及び供用
③ 札幌市の指標種
札 幌 市 で は 、 札 幌 ら し い 自 然 環 境 に 生 息 ・ 生 育 す る 代 表 的 な 動 植 物 を 「 指 標 種 」
と し て 選 定 し て お り 、 こ の 指 標 種 の 生 息 ・ 生 育 状 況 を 調 査 す る こ と で 、 そ の 指 標 種
が 必 要 と す る 自 然 環 境 が 守 ら れ て い る か ど う か を 知 る こ と が で き る 。 こ れ ら 指 標 種
選定の観点については 表 3-9に、現地調査で確認された札幌市指標種を表
7-2-3-10に示す。
3)予測内容
① 予測項目
予 測 項 目 は 、 工 事 の 実 施 ( 切 土 工 等 及 び 工 作 物 の 存 在 ) 及 び 土 地 又 は 工 作 物 の 存 在 及 び 供 用 ( 地 形 改 変 後 の 土 地 及 び 工 作 物 の 存 在 ) に 伴 う 地 域 を 特 徴 づ け る 生 態 系 への影響の程度とした。
② 予測方法
予測方法は、図 7-2-3-3 に示すとおり、地域を特徴づける生態 系と工事計画及び 事 業 計 画 を 重 ね 合 わ せ 、 保 全 対 象 と な る 生 態 系 の 注 目 す べ き 要 素 の 直 接 改 変 の 有 無 に つ い て 予 測 し た 。 ま た 、 直 接 改 変 が な い 場 合 で あ っ て も 、 生 態 系 の 質 的 変 化 の 可 能性について検討した。
図 7-2-3-3 生態系への影響の予測手順
事業実施区域及びその周辺における重要な生態系
【予測対象】
植物・動物現地調査結果
(植物相・植物群落・
動物相・生息環境)
事業実施区域内に重要な生態 系が存在する
主な生態 系が消 失又は 改変 さ れ影響を 受ける 量が残 存す る 量と比較して大きい
環境影響を及ぼすおそれがある
(影響の程度が大きい等)
環境保全措置の検討
(回避策・低減策)
移動阻害や生育環境の質的変 化が生じる可能性がある
影響はない
影響の程度は 極めて小さい
YES
YES YES
NO
NO NO
第 7 章7-2-3 生態系(1)工事の実施及び土地又は工作物の存在及び供用
③ 予測地域・地点
予 測 地 域 は 、 事 業 実 施 区 域 及 び そ の 周 辺 地 域 ( 事 業 実 施 区 域 及 び 敷 地 境 界 か ら 200m)とした。
④ 予測時期
予 測 時 期 は 、 工 事 の 実 施 に よ る 影 響 が 最 大 に な る 時 期 と し た 。 ま た 、 供 用 開 始 後 事業活動が定常状態に達した時期とした。
⑤ 予測条件
ア. 予測対象の選定
現 地 調 査 で 確 認 さ れ た 地 域 を 特 徴 づ け る 生 態 系 に お い て 、 注 目 す べ き 生 物 種 又 は 生 物 群 集 へ の 環 境 影 響 に つ い て 予 測 ・ 評 価 が 必 要 と 考 え ら れ る 予 測 対 象 の 選 定 結 果 は表 7-2-3-11に示すとおりである。
表7-2-3-11 予測対象の選定
注目種・群集・生態系 予測対象 備考
注目 すべ き生 物種 又は 生物 群集
上位性 ノスリ ○
キタキツネ ○
典型性
エゾアカネズミ ○
エゾアカガエル ○
森林性鳥類群集 ○
草原性昆虫類群集 ○
特殊性 スナヤツメ北方型 ○
ニホンザリガニ ○
地域を特徴づける生態系
(生息基盤・食物連鎖)
自然林 ○
人工林 ○
雑草草原 ○
緑の多い住宅地 × 直 接 改 変 が な く 、 質 的 変 化 も ないため予測対象と しな い。
水辺環境 ○
注)予測対象の記号の説明は以下のとおりである。
○:予測対象とする。
×:予測対象としない。
4)予測結果
① 注目すべき生物種又は生物群集への影響
事業実施区域及びその周辺地域で生育・生息が確認され、事業の実施による環境影 響 に つ い て 予 測 ・評 価 が 必 要 と 考 え ら れ る 注 目 す べ き 生 物 種 又 は 生 物 群 集 ( 予 測 対 象)の予測結果は、表 7-2-3-12~表 7-2-3-19 に示すとおりである。
表7-2-3-12 注目すべき生物種又は生物群集への影響の予測結果(ノスリ)
種名(学名) ノスリ(
Buteo buteo
) 当該種が生息する生態系 自然林、人工林、雑草草原抽出基準 上位性
生息状況
一般生態
国内では北海道、本州、四国、九州に分布する。
年間を通 して森 林、農 耕地 、河原、 海岸草 原、高 山帯 等幅広い 環境 に生息す る。開 けた環 境で 採餌する ことが 多い。 ネズ ミやカエ ル、
ヘビ、昆 虫類を 捕食す る。 平地~山 地の森 林や農 耕地 等の防風 林で も営巣する。
現地確認状況
・鳥類調査(ルートセンサス、定点観察調査)にて確認 された。
・事業実施区 域で は秋季 に「 自然林 」の上 空を通 過し た 1 個体が確 認された。
・事 業 実 施 区 域 周 辺 地 域 で は 、 春 季 に 「 自 然 林 」 の 上 空 を 通 過 し た 個体が確認された。
生息地と 事業実施区域 との関係
・本種は移動飛翔中の個体を確認したものである。
・事業実施区域及びその周辺地域で繁殖巣は確認されていない。
・事 業 実 施 区 域 及 び そ の 周 辺 地 域 の 「 自 然 林 」 や 「 雑 草 草 原 」 等 は 本種の採餌環境の一部になっていると考えられる。
影響予測
工事の実施
・造 成 工 事 に よ り 、 事 業 実 施 区 域 の 「 自 然 林 」 や 「 人 工 林 」 を 一 部 残して伐採し、「雑草群落」とともに改変する。
・建 設機 械 の 稼 働 や 工事 関 連 車 両の 運 行 に 伴 い、 そ の 存 在 や騒 音・振 動 に よ り 、 事 業 実 施 区 域 で 採 餌 す る こ と が 困 難 に な る と 考 え ら れ る。
・し かし 、 建 設 機 械 の 稼 働 や 工 事関 連 車 両 の 運行 に 伴 う 騒 音・振 動 の 影響は、事業実施区域の近傍に留まると予測されている。
・事 業 実 施 区 域 と 同 質 な 生 息 環 境 は 周 辺 地 域 に 広 く 分 布 し て お り 、 本種はそれらを利用して生息し続けることが可能である。
・以 上 の こ と か ら 、 工 事 の 実 施 に よ る 本 種 の 生 息 へ の 影 響 は 極 め て 小さいと予測される。
土 地 又 は 工 作 物 の 存 在 及 び 供用
・施 設 等 の 供 用 後 、 本 種 が 事 業 実 施 区 域 内 で 採 餌 す る こ と は 困 難 に なると考えられる。
・し かし 、 事 業 実 施 区域 と 同 質 な 採 餌・生 息 環 境は 周 辺 地 域に 広 く 分 布 し て お り 、 本 種 は そ れ ら を 採 餌 環 境 と し て 利 用 し て 生 息 し 続 け ることが可能と考である。
・以 上 の こ と か ら 、 供 用 開 始 後 に お け る 本 種 の 生 息 へ の 影 響 は 極 め て小さいと予測される。
注) 一 般 生態 は 、「 新 訂 北海 道 野 鳥図 鑑 」(平成 25 年 亜 璃西 社)、 「 原色 日 本野 鳥 生 態図 鑑 」 (平 成 7 年 保育社) 、「図鑑 日本のワシタカ類」(平成 7 年 文一総合出版)、「猛禽類保護の進め 方(改訂版)」(平成 24 年 環境省)、及び「北海道の猛禽類 2013 年版」(平成 25 年 北海道猛禽 類研究会)を参考にした。
第 7 章7-2-3 生態系(1)工事の実施及び土地又は工作物の存在及び供用
表7-2-3-13 注目すべき生物種又は生物群集への影響の予測結果(キタキツネ)
種名(学名) キタキツネ(
Vulpes vulpes schrencki
) 当該種が生息する生態系 自然林、人工林、雑草草原、緑の多い住宅地抽出基準 上位性
生息状況
一般生態
北海道のみ分布する亜種である。
都市郊外 から山 岳地ま で様 々な環境 に生息 するが 、主 に森林と 畑地 が混在す る田園 環境を 好む 。ノネズ ミ類、 鳥類、 大型 コガネム シ類 等の小型 動物を 捕食す るす るほか、 コクワ 等の果 実類 や人家の ゴミ も食べる。春先に土中の巣穴で出産する。
現地確認状況
・哺 乳 類 調 査 ( フ ィ ー ル ド サ イ ン 、 夜 間 自 動 撮 影 調 査 ) に て 確 認 さ れた。
・事 業 実 施 区 域 で は 、 年 間 を 通 じ て 「 自 然 林 」 、 「 人 工 林 」 、 「 雑 草草原」に大別された全ての環境で確認された。
・ 事 業 実 施 区 域 周 辺 地 域 に お い て も 、 「 自 然 林 」 、 「 人 工 林 」 、
「緑の住宅地」等、全域において確認された。
生息地と 事業実施区域 との関係
・事業実施区域及びその周辺地域で巣穴は確認されていない。
・事 業 実 施 区 域 及 び そ の 周 辺 地 域 の 「 自 然 林 」 や 「 雑 草 草 原 」 等 は 本種の採餌環境の一部と考えられる。
影響予測
工事の実施
・造 成 工 事 に よ り 、 事 業 実 施 区 域 の 「 自 然 林 」 や 「 人 工 林 」 を 一 部 残して伐採し、「雑草群落」とともに改変する。
・建 設 機 械 の 稼 働 や 工 事 関 連 車 両 の 運 行 に つ い て は 、 人 馴 れ し て い る 本 種 は 、 こ の 様 な 人 為 的 環 境 に も 次 第 に 馴 化 し て い く も の と 考 えられる。
・本 種 の 行 動 範 囲 は 広 く 、 事 業 実 施 区 域 は 本 種 の 広 い 生 息 環 境 の 一 部 に 含 ま れ る と 考 え ら れ る 。 事 業 実 施 区 域 と 同 質 な 樹 林 地 は 周 辺 地 域 に 連 続 し て 分 布 し て お り 、 他 の 移 動 経 路 を 利 用 す る 事 も 可 能 である。
・工 事 関 連 車 両 の 主 要 走 行 ル ー ト は 市 道 駒 岡 真 駒 内 線 を 通 じ て 事 業 実 施 区 域 の 北 西 側 か ら の 出 入 り と な る た め 、 事 業 実 施 区 域 と 周 辺 地 域 を 往 来 す る 動 物 の ロ ー ド キ ル 発 生 の 可 能 性 は ほ と ん ど な い と 考えられる。
・以 上 の こ と か ら 、 工 事 の 実 施 に よ る 本 種 の 生 息 へ の 影 響 は 極 め て 小さいと予測される。
土 地 又 は 工 作 物 の 存 在 及 び 供用
・施 設 等 の 供 用 後 、 本 種 は 事 業 実 施 区 域 の 内 部 を 移 動 す る 事 が 困 難 になるが、周縁部の緩衝帯を利用する事は可能である。
・施 設 等 の 存 在 に よ り 事 業 実 施 区 域 内 の 餌 資 源 が 減 少 す る と 考 え ら れる。
・し か し 、 事 業 実 施 区 域 と 同 質 な 環 境 は 周 辺 地 域 に 広 く 分 布 し て お り 、 本 種 は そ れ ら を 採 餌 環 境 と し て 利 用 し て 生 息 し 続 け る こ と が 可能である。
・以 上 の こ と か ら 、 供 用 開 始 後 に お け る 本 種 の 生 息 へ の 影 響 は 極 め て小さいと予測される。
注)一般生態は、「日本の哺乳類[改訂 2 版]」(平成 20 年 東海大学出版会)を参考にした。
表7-2-3-14 注目すべき生物種又は生物群集への影響の予測結果(エゾアカネズミ)
種名(学名) エゾアカネズミ(
Apodemus speciosus ainu
) 当該種が生息する生態系 自然林、人工林、雑草草原抽出基準 典型性
生息状況
一般生態
北海道のみ分布する亜種である。
低地から 高山帯 まで広 く分 布し、主 に森林 に生息 する が、河川 敷等 の下層植 生が密 生する 環境 でも多数 見られ る。地 上生 活者であ り、
樹上利用 はほと んどな い。 葉緑体を 含まな い柔ら かい 植物の根 茎部 や実生、 種実、 しょう 果、 昆虫類を 食べる 。繁殖 期は 夏季をピ ーク に年 1 回。本種の野外での寿命は 1 年前後と推測されている。
現地確認状況
・哺乳類調査(捕獲調査)にて確認 された。
・「 自 然 林 」 、 「 人 工 林 」 、 「 雑 草 草 原 」 に 設 定 し た 調 査 地 点 で 確 認された。どの地点でも優占種であった。
生息地と 事業実施区域 との関係
・「 自 然 林 」 と 「 雑 草 草 原 」 の 調 査 地 点 は 事 業 実 施 区 域 内 に 位 置 す る。
・事 業 実 施 区 域 及 び そ の 周 辺 地 域 は 本 種 の 主 要 な 生 息 環 境 と 考 え ら れる。
影響予測
工事の実施
・造 成 工 事 に よ り 、 事 業 実 施 区 域 内 の 「 自 然 林 」 や 「 人 工 林 」 を 一 部残して伐採し、「雑草群落」とともに改変する。
・事 業 実 施 区 域 内 で は 、 改 変 に よ っ て 昆 虫 類 や 木 の 実 等 の 餌 資 源 量 や 本 種 の 生 活 の 場 が 消 失 ま た は 減 少 す る こ と で 、 生 息 が 困 難 に な ると考えられる。
・し か し 、 事 業 実 施 区 域 と 同 質 な 生 息 環 境 は 周 辺 地 域 に 広 く 分 布 し て お り 、 広 域 的 に 見 る と そ の 改 変 面 積 は 本 種 の 個 体 群 サ イ ズ が 維 持できないほど大きくない。
・工 事 関 連 車 両 の 主 要 走 行 ル ー ト は 市 道 駒 岡 真 駒 内 線 を 通 じ て 事 業 実 施 区 域 の 北 西 側 か ら の 出 入 り と な る た め 、 事 業 実 施 区 域 と 周 辺 地 域 を 往 来 す る 動 物 の ロ ー ド キ ル 発 生 の 可 能 性 は ほ と ん ど な い と 考えられる。
・以 上 の こ と か ら 、 工 事 の 実 施 に よ る 本 種 の 生 息 へ の 影 響 は 極 め て 小さいと予測される。
土 地 又 は 工 作 物 の 存 在 及 び 供用
・施 設 等 の 存 在 に よ り 、 一 部 の 残 置 林 を 除 い て 供 用 後 に 本 種 が 事 業 実施区域内で生息することは困難であると考えられる。
・し か し 、 事 業 実 施 区 域 と 同 質 な 生 息 環 境 は 周 辺 地 域 に も 広 く 分 布 し て お り 、 本 種 は そ れ ら を 採 餌 ・ 生 息 環 境 と し て 利 用 す る こ と で、個体群を維持することが可能と考えられる。
・以 上 の こ と か ら 、 供 用 開 始 後 に お け る 本 種 の 生 息 へ の 影 響 は 極 め て小さいと予測される。
注)一般生態は、「日本の哺乳類[改訂 2 版]」(平成 20 年 東海大学出版会)、及び「北海道産野ネ ズミ類の研究」(昭和 59 年 北海道大学図書刊行会)を参考にした。