ソ 連崩壊(199D
図9
「短い20世紀」論の帝国主義は,自由貿易帝国主義の理論も加味して資本主義の最終 段階としての独占・金融資本の形成と資本輸出という経済的側面と,シュムペ一匹ー及び 社会帝国主義という政治的側面を軸に,世界分割・再分割をめぐる対立から世界大戦にい たるという展開とした。
一方「長い20世紀」論の帝国主義は,現代の始まりとしての視角に基づくとともに政 治・経済も含めた社会史的な側面から工業化・国民統合・グローバル化という視点で諸現象 を捉えている。
帝国主義の時代をどの年代からに設定するかについては,「短い20世紀」論に基づく帝 国主義では自由貿易帝国主義論が主張する1840年代を,「長い20世紀」論に基づく帝国 主義では本格的な植民地獲得競争がはじまった1870年代を開始期とし,終了期はそれぞ れ第一次世界大戦,第二次世界大戦とした。また,20世紀の時代区分は「短い20世紀」
論ではロシア革命からそれ崩壊まで,「長い20世紀」論では1870年代から現在までと設
定した。
なお,「長い20世紀」における帝国主義の構造図中,三つの視点(工業化,国民統合,
グU一バル化)の下位概念は三視点のいずれにも関係があり,相互に影響し合うものであ るため,一応便宜的に区分したものである。
*1アントニニネグリ,マイケル=ハート『〈帝国〉グローバル化の世界秩序とマルチチュ ードの可能性一』以文社,2003年,pp。4−6
*2紀平英作『帝国と市民一苦悩するアメリカ民主政』山川出版社,2003年
*3藤原帰一『デモクラシーの帝国』岩波新書,2002年,p.30
*4山下範久『現代帝国論人類史の中のグローバリゼーション』NHKブックス,2008年,
pp.9−10
*5山下範久,同上書,pp」1−15
山下氏は帝国を領域的な存在としてではなく,空間的な想像力の構造化として捉え,
「長い16世紀」のあとに現れた複数の帝国的秩序である「近世帝国」が19世紀前半まで 続き,それ以降,現在までの「長い20世紀」が終わったときに再び帝国状況が来ること
を予想する。そこで経済学者カール・ポラソニーの「大転換」の概念を導入するとともに
「人間の定義の変化」の可能性について述べている。定義の流動化に対する「ポラソニー 的不安」の分析が山下氏の論考の中心であるが,数百年から数千年に及ぶ長い人類史レベ ルの視角は,高校世界史の射程からは離れている。
*6杉山正明「帝国史の脈絡」(山本有造編『帝国の研究一原理・類型・関係一』名古屋大 学出版会,2003年)
*7杉山正明,同上書,pp.38−42
*8杉山正明,同上書,p.45
*9杉山正明,同上書,pp.42−50
*10櫻井よしこ『異形の大国中国』新潮社,2010年
*11杉山正明,同上書,pp50−55
*12杉山正明,同上書,pp.64−66
*13杉山正明,同上書,pp.76−77
*14杉山正明,同上書,p.34
*15山本有造,同上書,pp5−10
*16山本有造,同上書,pplO−13
*17『ビクトリア現代新百科』1973年置PP.32−33
*18『世界大百科』平凡社,1972年,pp.152−153
*19アフリカ分割の混乱を調停するため,ドイツ帝国宰相ビスマルクの提唱によりベルリ ン会議が1884年11月〜85年2月に開催された。この会議ではコンゴ地域での権益調整
の他に,アフリカ分割の原則が取り決められた。まず沿岸部の新規併合は後背地併合をも 意味すること,新規領土併合には列強への通告を必要とすることなどを取り決めた。同会 議後,列強は特定地域での相互の利害調整を図り,現地社会を無視したまま「分割」をお
こなった。
*20木谷勤『帝国主義と世界の一一体化』世界史リブレット,山川出版社,1997年
*21・レーニン『帝国主義』岩波文庫,1956年,p.144
*22木谷勤,前掲書,PP.8−9
*23木谷勤,同上書,p.26 木谷氏はソ連圏以外の教条主義的マルクス主義をこう呼び,
現在のマルクス主義はこれしかない,としている。
*24A・G・フランク『リオリエントアジア時代のグローバル・エコノミー』藤原書店,2000 年
*25山室信一「空間認識の視角と空間の生産」『岩波講座帝国日本の学知第8巻空間形 成と世界認識』岩波書店,2006年,p.6
*26山室信一,同上書,pp2−7
*27阿部謹也『社会史とは何か』 洋泉社,2009年
*28黒田卓「新聞の中のイラン立憲革命」『岩波講i座世界歴史23アジアとヨーロッパ』岩 波書店,1999年,p.84
*29木村靖二「公共圏の変容と転換」(『岩波講座世界歴史23アジアとヨーロッパ』)1999
年,pp.184−185
*30福井憲彦「ヨーロッパの世紀」(『岩波講座世界歴史18工業化と国民形成』)岩波書 店,1998年,P.34
*31福井憲彦,同上書,p.18
*32福井憲彦,同上書,pp.26−27
*33福井憲彦,同上書,p。26
*34福井憲彦,同上書,pp25−26
*35アンドリュー=ポーター『大英帝国歴史地図』東洋書林,1996年,pp153.154
*36福井憲彦,同上書,p5