2)神経幹細胞の非対称分裂を支配する細胞の極性とはなにか.
これらの研究を通して,神経細胞が多様性を獲得するための基本的な遺伝的プログラムを解きあかす
ことをめざしてる.2.研究報告
1)著書
1.松崎文雄.神経幹細胞の非対称分裂による細胞運命の決定.実験医学増刊・転写因子研究1999,
pp. 170‑176,羊土社,印刷中.
167
168 加齢脳・神経研究部門
2)英文論文
1. Ikeshima‑Kataoka H, Sheath JB, Nabeshima Y, Doe CQ, Matsuzaki F・ Miranda dir∞ts Prospero
to a daughter cell during DflOSOPhila asymmetric divisions・ Naturle 390 : 625‑629, 1997・
2・ Nakagoshi H, Hoshi M, Nabeshima Y, Matsuzaki F・ A novel homeobox gene mediates the Dpp
signal to establish mnctional sp∞mcity within target cells. αnes Dev 12 : 2724‑2734 (1998)i
ノ■′
3. Matsuzaki I, Ohshiro T, Ikeshima‑Kataoka H, Izumi H. Miranda localizes stauren and prospero asymmetrically ln mitotic neuroblasts and epithelial cells in early Drosophila embryogenesis・
Development 125 : 4089‑4098, 1998.
4. Torii M, Matsuzaki F, Osumi N, Kaibuchi K, Nakamura S, Casarosa S, Guillemot F, Nakamku M・ TranscrlPt10n factors Mash‑ 1 and Prox‑ 1 delineate early steps in diHerentiation or neural stem cells in the developing Central nervous system. Development 126 : 443‑456, 1999・
3)和文論文
なし
3.国際学会・海外での講演およびセミナー
1)シンポジウム
1. Ikeshima H, Skeath JB, Nabeshima Y, Doe CQ, Matsuzaki, F : Miranda dir∞ts Prospero to a
daughter cell during asymmetric divisions・ Neurobiology of Drosphila, Cold Spring Harbor, September 24, 1997.
2. Ikeshima‑Kataoka H, Skeath JB, Nabeshima Y, Doe CQ, Matsuzaki F : Miranda dir∞ts Prospero
to a daughter cell during DflOSPhila asymmetric divisions・ The 3rd UK‑Japan Cell Cycle Workshop, November 26, 1997・
3. Matsuzaki F : Roles or miranda in the asymmetric divisions or neural stem cells. 39th Annual Drosophila Research Conference. Washington, April 25, 1998・
4. Matsuzaki F : Asymmetry ln neural development. The llth EMBO Workshop on Mol∞ular and
Developmental Biology of Drosophila, Crete, July 12‑18, 1998・
5. Matsuzaki F : Assymme叫in neural development. 5th CGGH Symposium 1998/平成10年度日 本生化学会春期シンポジウムGeneration and Lineage Commitment of Stem Cells, Tskuba, Japan, July 9‑10, 1998・
4.国内学会での発表
1)シンポジウム
1.松崎文雄:神経系の遺伝的プログラムと可塑的メカニズムの研究.戦略的基礎研究推進事業「脳
を知る」の研究代表者によるシンポジウム「脳神経科学の最先端」,東京, 1997, ll, 17.
2.松崎文雄,池島宏子, Doe Chris Q,鍋島陽一, Sheath James B:神経分化における神経幹細胞
の非対称分裂の役割.第20回日本分子生物学会年会ワークショップ「グリアとニューロンの分
化」,京都, 1997, 12, 19.
3.鳥居正昭,松永栄治,加藤真樹,松崎文雄,中村 俊,貝淵弘三,中福雅人:哺乳動物中枢神経
系におけるニューロン・グリアの分化機構.第20回日本分子生物学会年会ワークショップ「グリ
アとニューロンの分化」,京都, 1997, 12, 19.
4.松崎文雄:神経幹細胞の非対称分裂と細胞極性.第71回生化学会大会シンポジウム「非対称分
裂と細胞の極性」,名古屋, 1998, 10, 14.
5.松崎文雄:細胞の多様性を生む非対称分裂:ショウジョウバエをモデル系とした解析.第21回
日本分子生物学会年会 ワークショップ「発生における原理とは?」,横浜, 1998, 12, 18.2)一般演題
I
1.松崎文雄,池島宏子, Doe Chris Q,鍋島陽一, Skeath James B:神経分化における神経幹細胞 の非対称分裂の役割.第20回日本分子生物学会年会,京都, 1997, 12, 18.
2.池島(片岡)宏子,平田 丞, Skeath James B,鍋島陽一, Doe Chris Q,松崎文雄: Prospero を非対称に分配する因子の探索及びその解析.第20回日本分子生物学会年会,京都, 1997, 12, 18.
医用細胞資源センター
担当教授 工 藤 俊 雄
岳コ
1.施設紹介
昭和的年11月培養細胞・腫瘍細胞(吉田肉腫,腹水肝癌AHシリーズなど)を凍結保存し供給する
ため,抗酸菌病研究所 肺癌部門(佐藤春郎教授)に腫瘍銀行TumorBankを開設した.これは日本で最初の細胞バンクであった.癌研究の進歩に伴って癌研究の資材の供給体制の確立を求める声が高ま
り,細胞バンクの一層の充実を図るため当時の対癌10カ年計画の一環として昭和59年4月癌細胞保存
ノ
施設が設置され,昭和00年3月癌細胞保存施設棟が竣工した.
さらに,学術審議会の答申などを背景として平成9年4月癌細胞保存施設を廃止し発展的に医用細胞
資源センターに改組された.全国の国立大学の唯一の細胞バンクとして有用な細胞株の収集,保存,品質管理を行い細胞の供給を全国規模で行ってきた.そして日本の医学,生物学研究に多大の貢献をはた
してきた.とくに最近は,細胞株に対する需要は毎年増加し, 8年前に比較し, 7.5倍の細胞供給件数を示している.なお,本細胞センターの活動に,文部省科学研究費「がん研究に係る特定領域研究A (が ん特定)」資材班から援助を受けている.
1.保有細胞株
癌細胞保存施設開設時には,吉田肉腫,腹水肝癌などが主であった.細胞株数にして132株であった
が,現在の保有細胞株数は520株を越えている.特に,東北大学に在籍する研究者,あるいは,東北大学にゆかりのある研究者が樹立し,性格を明らかにした細胞株が多く含まれているのが特徴的である.
吉田肉腫,腹水肝癌などのラット可移植性腫瘍が多いことの他に,保有されているヒト食道癌細胞株,脂 癌細胞株,膵臓癌などのヒト癌細胞株は東北大学で樹立されたもので貴重なものである.癌研究におい
ても,外国で樹立された細胞株に依存せず,我が国独自の細胞を持つべきであるとの声も聞かれる時,本施設の存在はますます貴重になるものと思われる.
また,モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ株のコレクションは日本で最も多い.マウス由
来のみならず当施設でつくられたヒト由来の抗体を産生するハイブリドーマも含まれており,これもま た貴重である.ハイブリドーマを作製するときのパートナー親細胞株としてのミエローマ細胞株も数多
く保有している.
171
2.細胞株供給状況
各年毎に供給状況を見ると年毎に細胞株の供給は急増し8年前に比較し7.5倍以上となった.特にヒ ト由来の細胞株の供給の増加が著しく,最近の研究の動向を伺わせる.しかしながらラット腹水肝癌に 対する需要も依然として根強く,このラット腹水肝癌が癌化学療法や昇圧癌化学療法のよい研究資材で
あるためと思われる.ハイブリドーマの供給も増えてきた.供給先を調べると,圧倒的に大学,公共の研究機関が多く,民間の研究機関(製薬会社などの研究所) への供給は少ない.また外国へも供給を行っている.
3.細胞の品質管理
高品質な細胞株を求める声が高まり,細胞株に品質管理はきわめて重要となってきた.マイコプラズ
マ汚染検査を定期的に行い,もし汚染細胞株が見つかった時には, MC210とBMサイクリン1を用いた マイコプラズマ除去作業を行い, 90%以上の細胞株で除去に成功している.また,細胞株識別も重要で あり,最近世界で最初に新しいヒト細胞株の識別法を報告した(∫. Exp. Appl. Cell. Cult. Res.).ヒト の個体の多型マーカーの1つであるSTR (shontandemrepeat)を利用し, PCRで短時間に明瞭なバンドが得られ,高感度であり,再現性がすぐれているため細胞バンクのスタンダード法になろうとしてい る.また細胞凍結法の改良を試みている.
4.データベース作製
細胞株カタログの刊行とともにインターネットホームページを開設し,細胞株のデータを公開してい
る.細胞株の増加に伴い随時データのupdateを行っている.最近細胞株の写真画像をホームページに取り込み充実を図っている.また,以前から本センターで全国の研究者にアンケート調査を行い,集計し 編集していた「日本で維持されている可移植性腫瘍株一覧表」の第11版を刊行した.現在第12版のア
ンケート調査を終了し近日中に刊行予定である.この「可移植性腫瘍株一覧表」の一部(細胞の所有者,所属,住所)もインターネットホームページに公開している.日本国内の他の細胞バンクとの連絡を密 にしており,最近出版された『細胞バンクの遺伝子バンク‑情報検索と研究資源の入手法』 (共立出版) によって容易にデータ入手が出来るようになった.
5.腫瘍に対する免疫療法の基礎的研究
乳癌,肺癌,消化器癌,ミエローマなどに広く分布している, MUCl抗原を標的としたantibody‑based immunotherapyの研究を行っている. 2種類のバイスペシフィック抗体(BsAb),すなわちMUCl抗原 に対する抗体とCD3に対する抗体を結合させたBsAb (Mx3)ど, MUClに対する抗体とCD28に対す る抗体を結合させたBsAb (Mx28)を用いたsp∞inctargetingtherapyがヒト胆管癌移植sCIDマウスに
医用細胞資源センター 173
非常に有効であった.また,細菌性由来スーパー抗原(SEA)結合抗MUCl抗体とヒトリンパ球を併用
する治療法もヒト胆管癌移植scIDマウスのモデ)レ実験で有効であった.遺伝子工学的手法で作製した SEAと抗MUCl抗体との融合蛋白伍sionprotein)も特異的抗腫瘍活性を示すことを報告した.さら にSEAの一部を改変して作製した変異型SEA (m‑SEA)がT細胞活性化能を保ちながら,副作用が軽 減しているので 臨床への応用を考慮するとき,有利であることが見出されている.変異型SEA (m‑sEA)をBsAbに結合させたとき,さらに一層特異的抗腫瘍効果が高まることを最近見出した.
一方,強い抗腫瘍活性を示すキラー細胞を誘導する目的でclass I, classllをほとんど発現していない K562にMUCl geneを導入して癌ワクチン細胞を作製した.このワクチン細胞をX線照射後健常人リ
ンパ球と混合培養すると非常に強いキラー細胞が得られることが見出されている.
さらにヒト型モノクローナル抗体の開発も行っている.