第 2章にて述べた MPMSを用いてベクトル磁化計測を行う。そこで、まず実験装置におい て試料を正しく回転させ、mL、mTを正しく測定できるか確認を行った。実験は温度30 Kで行
い、90 deg付近において試料に外部磁界5.0 Tを印加後、0 Tに減磁し試料を磁化させ、ゼロ磁
界中で試料を回転させつつ各磁気モーメントを測定した。そして、得られた実験結果より以下 の式を用いてベクトル合成を行い、磁気モーメントmmを求めた。ここでθは図 2.16に示すよ うに磁界と膜面がなす角度である。
m
2 m
2 L2 T2m
m sin m cos m m
m
(4.1)実験的に得られた mL、mTを及びベクトル合成したmmを図 4.2にシンボルとして示す。また、
mL及びmTの理論値としてmmsin、mmcosと、この二つから計算されるmtheoryを求め、図 4.2 にそれぞれを実線として重畳した結果を示す。mmの値は角度に対して一定値になっている。ま たmL、mT、mmの理論値であるmmsin、mmcos、mtheoryはそれぞれ実験結果と良い一致を示す ことから、本装置によりmL及びmTを正しく測定でき、かつ試料を正しく回転させられること が示された。
-0.15 -0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20
-150 -100 -50 0 50 100 150 Field Angle,
[deg]Magnetic Moment, m m [emu]
mL m
T
mmcos
mmsin
mtheorymm
図 4.2 磁気モーメントmm、mL、mTの角度依存性(シンボル)と理論値(実線)との比較
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ここで、mLに0 deg付近で見られる信号の飛びは装置に起因したものである。この飛びにつ
いては検出電圧のピックアップコイルの鉛直方向位置xに対する依存性を示すrawデータを参
照し、0 deg 付近のある点を基準に差分を取って再度フィッティングすることによって、信号
を取り出すことができる。図 4.3に信号の飛び付近について詳細なデータを取得した際の、raw データの補正前と補正後の波形を示す。信号の飛びを補正出来ていることがわかる。
-2.0 10-2 -1.5 10-2 -1.0 10-2 -5.0 10-3 0.0 5.0 10-3 1.0 10-2
210 220 230 240 250 260 270
before correction after correction
T = 60 K B = 1.0 T
(a)
Field Angle,
[deg]Magnetic Moment, m m [emu]
-0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6
0 1 2 3 4
Long Voltage, V [V]
Position, x [cm]
= 230 deg
(b)
-0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6
0 1 2 3 4
= 232 deg
(c)
Long Voltage, V [V]
Position, x [cm]
-0.05 0.00 0.05 0.10 0.15 0.20
0 1 2 3 4
= 232 deg
fitting (d)
Long Voltage, V [V]
Position, x [cm]
図 4.3 0 deg付近で見られる値の飛びの補正例 (a)補正前(青)と補正後(黒)のmm-θ特性
(b)参照rawデータ (c)補正前のrawデータ (d)補正後のrawデータとフィッティング波形
次に、着磁の手法について説明する。非常に薄い試料のため磁化電流は膜面にのみ流れると 仮定し、磁気モーメントは膜面に垂直に感じる磁界を遮蔽するように発生すると仮定する。す なわち、磁気モーメントは膜面に対して垂直であると仮定することで、角度によっては外部磁 界に対して磁気モーメントは必ずしも同一方向を持たないこととなる。そこで、図 4.4に示す、
膜面に対して垂直に感じる外部磁界B⊥の角度依存性を図 4.5に示す。外部磁界Bは鉛直方向
5.5 Tとした。0 deg付近においても垂直磁界成分は単調減少していることから、B⊥の掃引によ
って着磁が可能となる。
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図 4.4 膜面に対して垂直に感じる磁界B⊥の模式図
-6 -4 -2 0 2 4 6
-100 -50 0 50 100
E xt e rn a l F ie ld, B
⊥[T ]
Field Angle, [deg]
図 4.5 B⊥の角度依存性
𝑚
TApplied field B [T]
θ 𝑚
L𝑚
msample
B
⊥B
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