5.研究開発マネジメント・体制・資金・費用対効果等
項目H14年度H15年度H16年度H17年度H18年度H19年度H20年度H21年度 機体統合技術の開発 空力設計技術の開発 軽量・低コスト構造 設計製造技術の開発
遷音速機 目標機体仕様検討 遷音速機 エンジン 検討超音速機 エンジン検討 遷音速機 機体形状、空力特性検討 遷音速機主要構造概要検討
共通課題遷音速機課題超音速機課題 市場要求調査・検討 軽量・低コスト複合材構造等の設計、製造技術の検討超音速機 主要構造概要、最適化検討
超音速機 機体・エンジン統合設計検討(エンジン特性はESPRに依頼) 超音速機 機体形状 空力特性解析、改善検討
超音速機 目標機体仕様検討 超音速機 環境特性改善検討 (図5-1-1)超高速輸送機実用化開発調査
5-2. 研究開発実施者の実施体制・運営
本開発調査は経済産業省からの補助を受け、(財)日本航空機開発協会(JADC)にて研究開発 を行っている。機体統合企画・設計については JADC が主体となって行い、また、空力、構造等の専 門分野での詳細な研究については、重要な知見を有する機体メーカー各社(外注作業)にて行う事 業体制とした。
(図 5-2-1) 研究開発事業体制
プロジェクト全体の運営を円滑に行うため、(財)日本航空機開発協会内に企画協議会を設けて 各年度の作業計画、実施状況、成果の審議を行った。その下部機構として技術専門家による技術 分科会を設けて、さらに詳細な研究開発作業全般の審議、検討を行って、研究作業が実効の有る ものとなるよう努力した。
さらに毎年度の事業終了時にモニタリング委員会により、作業内容全般にわたっての妥当性の評 価を行い、かつ今後の方向についての助言等を得て、翌年度計画への参考とした。
また、外注作業も含めた研究作業の中で特に機体仕様自体に大きく影響する研究項目について は調整会議を適宜開催し、研究成果を機体仕様に反映するとともに、研究内容や統一目標、スケ
50% 補助事業
外注作業
新明和工業 株式会社 三菱重工業
株式会社
富士重工業 株式会社
日本飛行機 株式会社 川崎重工業
株式会社
経済産業省
(財)日本航空機開発協会(JADC)
モニタリング委員会
機体統合調整会議
技術分科会
企画協議会
ジュールに齟齬をきたさないように調整を行った。
なお、本開発調査では国内外の機関とも共同研究が行われており、必要に応じてそれらの機関を 交えた調整会議、意見交換会議を開催した。
研究成果等については国内外のエアラインに説明して機体や研究方向への評価を得るとともに、
学会等へも発表を行っている。
5-3. 資金配分
各年度の資金配分を以下に示す。
研究内容は機体統合、遷・超音速域空力、軽量・低コスト構造の3つに分かれているが、空力、
構造の中でも機体統合をサポートするものと、一般的な要素研究に属するものがあり、その時々の 必要性から選定している。そのため常に割合が一定ではないが妥当な配分であったと考える。
(表5-3-1)資金の年度配分 (単位:百万円)
年度 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 合計 機体統合企画・設
計技術の開発
80 188 136 104 105 104 87 804
遷・超音速域空力 設計技術の開発
46 56 35 70 86 100 89 482
軽量・低コスト構造 設 計 製 造 技 術 の 開発
290 856 229 46 67 102 73 1663
合計 416 1100 400 220 258 306 249 2949
5-4. 費用対効果
我々の市場調査の結果では、超高速機の潜在需要は 1,000 機以上と見られている。これを 20 年 で販売すると 50 機/年となり、仮に1機 200 億円とすると年間の売り上げは 1 兆円となる。これは現 在の世界の民間機売上高の約 20%に相当する。
このような巨大プロジェクトであり、そこに我が国が参画することは非常に大きなチャンスであり意 義がある。
我が国はこれまで 767、777、787 と着実に国際共同開発への参画割合を増やしてきた。超高速 機はさらに大きなプロジェクトであり、また技術的困難性や何機種もの同時参入が難しい機種でもあ ることから大規模な国際共同事業体制になると思わる。参画割合は、最低 10%としても年間で 1,000 億円の売上高となり年間1兆円レベルの我が国航空機工業にとって非常に重要なプロジェクトとなり 得る。
また、業界だけでなく、乗客にとっても超高速機は大きな恩恵を与えるものと考える。
現在は航続距離を増大させた新型機や派生型機が続々と登場してきている。これはハブアンドス ポークによる乗り継ぎ方式よりも、直行便による時間短縮を利用者が強く望んでいるからである。しか し、東京-欧州の 11~12 時間、東京-米国東海岸の 13~14 時間という飛行時間は、いかにキャビ ン・エンターテイメントを充実しても乗客にかなりの苦痛をもたらす。最新の長距離機では飛行時間 は 18 時間にも及ぼうとしている。
マッハ 1.6 の超音速機では最大約 45%の飛行時間低減が可能である。また、超音速飛行では飛 行高度が高いため偏西風の影響を受けにくく、往復の時間もそれほど変わらない。
東京-ロサンゼルスは現在の約 11 時間が約6時間となる。これは新幹線での東京-博多より短 い。海外旅行を国内旅行の手軽さに引き寄せることが可能である。運賃上昇があるためレジャー客 は敬遠するかもしれないが、ビジネス客にとっては時間の有効活用と疲労の防止から大きな利点が あることは疑う余地がない。また、レジャー客でも高齢者等には疲労軽減から受け入れられる可能性 がある。
運航者にとっては、高価な機材を遊ばせておくことは大きな損失となる。
現在のマッハ 0.8~0.85 程度の亜音速航空機では1日で往復できる区間距離は、地上でのター ンアラウンド・タイムを 90 分とすると飛行時間で 10.5 時間となり、5,000nm 以下、東京-ロサンゼルス 程度のルートである。これ以上のルートでアイドルが生じないようにするには別のルートを組み合わ せて機材をやりくりするしかない。
マッハ 1.6 の超音速機では東京-ニューヨークが1日1往復、更にニューヨーク-パリ、ロンドンで は1日2往復が可能となる。このことは機材のユーティライゼーションが向上し機数の削減が図れると 言うことである。したがって、機体価格は亜音速機と較べて高価であるが、機数削減により機体購入
費を削減できる効果がある。もちろん補用品のストックも削減出来る。
また、長時間勤務(8~11 時間以上)の場合は交代乗務員を乗せる規則になっているが、飛行時 間が短縮されれば、その必要がなく、直接運航費がその分減ることになる。クルーレスト用のコン パートメントも設ける必要がないため機内の有効利用、重量削減を図ることができる。
本開発調査は実機開発ではないので現在の費用から効果を算定するのは難しいが、この開発調 査の結果、実機開発に結びつけば大きな費用対効果が得られると言えよう。