4 .
研究活動実績4 ‑ 1 .
研究の理念・目標研究の理念 ・目標として、「高次生命システムの解明と維持 ・保全」をうたい、特 に専攻横断的に推進すべき課題として、以下の
4
つを挙げている。( 1 )高次脳機能を支える神経基盤の構築と動態の研究
( 2)生体シグナルとセンシングの分子、細胞、個体レベル統御機構の研究
( 3
)環境変動下における高次生命システムの創出 ・維持・保全の研究 ( 4)高次生命現象の統合的理解のためのゲノム、ポストゲノム研究4
・2 .
研究実施体制本研究科は分子生命科学専攻(
3
講座1 2
分野)、生命機能科学専攻(4
講座1 5
分 野)、生態システム生命科学専攻(5
講座12
分野)の3
専攻からなり、教授40
名(う ち客員教授3
名)、准教授2 2
名、講師3
名、助教32
名を擁する組織である(協力講 座、連携講座、協力教員を含み、GC O E
助教等定員外スタッフを含まない。平成23
年度実績)。これらの教員が中心となって、大学院生、ポスドクなどの参加のもと、研究を行っている。研究支援組織は、事務職員
1 6
名(うち常勤職員1 1
名)、技術職 員5
名、その他の職員6 1
名からなる。各分野がそれぞれ実験装置、機器等を保有、管理するほか、平成
21
年度に全学組 織の「東北大学研究教育基盤技術センタ一片平分室」を生命科学フ。ロジェクト総合研 究棟1
階に誘致し、ここに設置された最新鋭の共通利用機器(次世代シークエンサー、共焦点レーザー顕微鏡、質量分析装置、等)を活用して研究を推進している。本研究 科が主体となって活動しているこつの
GC O E
、及び全学の神経科学者を糾合する 「東 北大学包括的脳科学研究 ・教育推進センター(脳センター)J
(平成21
年度発足)を 運営することで、重層的な研究の展開をはかつている。この脳センターの活動、並び に若手研究者海外派遣事業「生命科学における英国・欧州研究機関との組織的研究協 力体制の構築のための若手派遣J(平成2 1
〜24
年度 −代表−仲村春和教授)を土台として
U n i v e r s i t yCo l l e g e L ondon(UCL
)の神経科学部と緊密な連携を進めた結果(図4
・2 ‑ 1
)、本研究科とU CL
との間で図 4・2・1 若手派遣プログラムに基づく UCLでのワークショップ風景
図
4 ‑ 2
・2
包括的脳科学センターの活動を土台に、本研究科と UniversityCollege Londonの神経分野との組織協定の締結を実現
4
・3 .
研究成果(論文・著書等の発表)図
4 ‑ 3
・1
は平成18
〜23
年度に本研究科の構成員によって発表された原著論文なら びに著書・総説の件数を、年次を追って示したものである。先行する5
年間と比して、 やや増加している。専攻別の論文発表数は図4 ‑ 3 ‑ 2
に示されている。各専攻を構成す る分野の規模(所属大学院生の数)にほぼ対応した分布となっている。こうして発表 された原著論文の大半はI S I
にindex
される国際誌に掲載されており、平均のインパ クトファクター(IF
)は3 . 2
から5 . 2
と非常に高くなっている(図4
・3
・1
)。平成18
〜2 3
年度のIF
平均は4 . 1 1
であり、これは平成1 3
〜17
年度の5
年間の平均、3 . 2 1
と比較して顕著な上昇といえる。とくに、最近の
2
年間のIF
はそれぞれ5 . 2
、4 . 5
であり、 発表論文の質が急速に高まっていることを意味している。実際この問、本研究科の教 員の論文は、IF
が30
を越えるNatur e
やS c i e n c e
に複数掲載されており 、評価対象 期間以降ながら平成24
年度にはC e l l
への掲載をも果たしている。250 200 150 100
50
。
H18
I S I掲載とそのIF
H19 H20 H21 H22 論文数 ISI掲載紙 IF平均
図 4す 1 教員の発表論文数等の年次推移 論文数には左の目盛り、IFは右の目盛りが対応。
6 5 4 3 2
。
1 H23専攻ごと論文執筆数
一
日unununununununununununununU
3 2 1 0 9
8
7 6 5 4 3 2 1 111i司i 1 i
トー‑t
・ 一 一 一
生態システム同生命機能H
分子生命
生 態 シ ス テ ム 凶 生 命機能H 分 子 生命
分 生 生 分 生 生 分 生 生 子 命 態 子 命 態 子 命 態 生 機 シ 生機、ン 生 機 シ 命 能 ス 命 能 ス 命 能 ス
ア ア ア
ム ム ム
H20 H21 H22 回論文数 鼠著書 ・総説
生態システム
生命機能
分子生命
H23
図 4す2 専攻別の教員発表論文数年次推移
4 ‑ 4 .
研究成果(代表的な研究内容)平成
18
〜23
年度に行われた研究の中から、特に注目される成果を以下に挙げる。
4 ‑ 4 ‑ 1
動物発生生物学研究生命科学研究科では、動物の個体発生に関する研究において国際的に評価の高い研 究成果を多数挙げている
。特筆すべき点として
、浅虫海洋生物学教育研究センターの 存在がある。ここでは、陸奥湾に面したその環境を活かし
、独自性の高い海洋生物の 発生学研究が実施されている。これらの動物発生学研究は、遺伝的疾患の病態の理解 や治療法の開発の基礎となり 、医療分野への貢献も大きい。このような研究環境から、生み出された成果は国際的に高い評価を受けている
。た
とえば、田村教授は、恐竜の前足の指と鳥類の翼の指の作られるしくみが同じである ことを証明し、2011
年にその成果をS c i e nc e
誌に発表した(図4 ‑ 4 ‑ 1
動物発生研究)。
現存する動物の形態を解析する発生学によって動物の進化過程を説明する手法は、進 化研究における先駆的な研究手法として注目されている。
この成果はNHKや朝日 ・ 読売・毎日 ・日本経済新聞をはじめとする多数のメディアで紹介された。
田村教授は、内閣府「最先端 ・次世代研究開発支援プログラム」にも採択されており、さらに高度 な研究を推進している
。
仲村教授は脊椎動物の脳形成にF g f 8 ‑ R a s ‑ERK
シグナル経路 が重要であることを証明した。浅虫海洋生物学教育研究センターにおいては、ウニ幼 生の神経系形成機構(加藤教授)、赫皮動物や原索動物の卵成熟および受精機構(経塚准教授)、ウニ類の発生メカニズムの多様性(美濃川准教授)についての研究を実 施し、成果を挙げている。
発生初期 指定時期
=今
(C)小学館21世紀こども百科「恐竜舘」
Utako Kikutani
3
本の指が形成される=今
ZPA:指の番号を指定するはたらき AER:指の原基を成長させるはたらき
図 4す 1 動 物発生研究
4 ‑ 4 ‑ 2
脳神経科学研究東北大学重点戦略支援プログラムとして採択された包括的脳科学研究・教育進セン ターやグローバル
C OE
「脳神経科学を社会へ還流する教育研究拠点」に参加するこ とにより、先進的な脳神経科学研究を実施してきた。用いている実験系はショウジョ ウパエからマウス ・サルと多岐にわたり、研究分野も行動遺伝学 ・神経発生学 ・ニュ ーロンネッ トワーク研究、認知行動神経科学など広い領域を網羅している。このよう な充実した研究環境から生み出された成果は、基礎生物学分野のみならず、医学分野 へも大きな貢献をしてきた。最近の成果として、山元教授はショウジョウパエをモデルとした神経細胞の性差や 求愛行動を解明し、その成果を
Ce l l
誌やN e u r on
誌などの一流国際誌に論文を発表 しているほか、文科省科学研究費 ・特別推進研究や基盤研究(S
)を獲得してさらに高 水準の研究を推進している。飯島教授はハイリスク ・ハイリターンを好む脳の領域を 発見した。筒井准教授はサルを用いた実験心理学研究により、前頭連合野における推 論・意思決定のメカニズ、ムの解明を行なっており、文科省科学研究費・若手研究(S)[平成
24
年度からは基盤研究(S
)]を獲得して研究を実施している。八尾教授は光で脳神経細胞を操作する技術の開発を行なっている。
4‑4‑3 分子イメージング技術
生命科学研究科においては、最先端の生体分子イメージングおよび生体内イメージ ング技術の開発と応用を実施し、高い評価を得てきた。とくに、一分子イメージング および生体の
3
次元ライブイメージング技術は国際的に見てもトップレベルの設備 が整備されているとともに、新規技術開発も活発に行われている。これらの高度な生 体分子・生体内イメージング技術は基礎生物学分野で重要で、あるだけでなく、医療分 野への応用が期待されていることから、国内外の研究者との共同研究も多く実施され ている。近年の成果として、渡謹直樹教授はアクチン重合促進分子の回転運動の可視化に成 功し、
S c i e n c e
誌に論文を発表した(図4
・4
・2
)。十川教授は蛍光寿命測定が可能なノミ ルスレーザー顕微鏡を、理学研究科物理化学講座福村教授と共同研究で構築し、単一 生細胞でのFLIM‑FRET
計測によるタンパク質ータンパク質相互作用の可視化を実 施している。高橋聡教授、石島教授は生体分子一分子観察・計測を実施している。一 方、杉本教授は線虫腔における細胞内のタンパク質の3
次元ライブ観察技術を駆使し、細胞動態を制御するメカニズムの解明を推進することで、
NatureC e l l B i o l o g y
誌やDevelopmental C e l l
誌に成果を発表してきた。渡漫教授・杉本教授は内閣府「最先 端・次世代研究開発支援フOログラム」にも採択されている。FLv
国回目回目盟国・・・・・・・盟国司回目・
凡H 回・・・・園田盟国周回目•••••••11
4
ロ0.6 商~
0.3世 m 栄 一
ぎ 心
3雪 心
.6,.弾 5 図 4・4・2
4‑4‑4 生体内シグナル伝達研究
10 15 20 25 時間(秒)
30 35
分子イメージング技術
40
生命科学研究科では、生体内シグナル伝達についての研究で多数の成果を挙げ、国 際的にも高い評価を得ている。生体内シグナル伝達研究は、がんを始めとする疾患病 態の理解や新薬開発などに貢献できる重要な研究領域であり、医学分野・薬学分野と の共同研究・融合的研究が推進されていることから、グローバル
COE
プログラム「
NetworkMedicine
創生拠点」にも参加している。たとえば水野教授は、アクチン骨格や微小管夕、、イナミクスを制御する細胞内シグナ ル伝達ネットワークの解析を進め、がん細胞の浸潤・転移のメカニズムの理解と治療 薬の開発に貢献している。十川教授は低酸素ストレスやダイオキシンなどの環境汚染 物質に対する生物応答の分子機構の解明を行なっている。